ちょっと長いですがどうぞ( ^-^)_旦~
1
「風神副所長、お待ちしてました」
闘技場の自分の指定席の入り口についた、風神総司を出迎えたのは、先に来ていた弟の他人行儀な挨拶だった。
普段あまり敬語を、使わない弟の
挨拶はぎこちなかったが、まぁギリギリ礼節に外れてはいなかった。
あまり様になってない敬語で、兄を迎えた彼は早速席に案内する。
それを苦笑気味にすまないと答え、総司は自分の席に座る。
兄弟の取った観覧席は、特別に囲われた密室になっており、中には自身の視野を補佐するモニターが付けられ、色んな角度から、試合が見られるようになっている。
最高級の観覧席だ。
チケット代は1人百万という、VIP専用だ。
「お疲れでしょう、飲み物は何にいたしますか?」
派手なタンクトップに、首に二つの銀のネックレスをつけ、Gパンという
およそ給仕にふさわしくない格好を
している、総司の弟風神雷(かぜかみあずま)は丸太のように太い両腕を動かしながら揉み手で、注文を聞く。
太い両腕にはそれぞれ別のタトゥーが
入れられ右腕には、苦しみもがく人間の顔が、左腕には鬼の顔があり悪趣味極まりない。
そんな奇怪な格好をしている、弟を特に不思議がらずに普通に接する時点からして、総司もただ者ではない。
そんな似合わない事をしている弟を、総司は困った顔で見やる。
「ミルクティーを頼む、それと雷」
総司が弟の名を呼ぶ
「何でしょうか?」
「プライベートだ。 普段通りでいい」
総司は雷にそう言うと、備え付けのモニターの電源を入れようとする。
「そいつは助かったぜ〜」
兄から許可を貰った弟は、疲れてたとばかりに両肩をガクッと下げる。
「周りの眼があるからなぁ〜、一応気をつけてたんだが、肩が凝って、凝って」
そう言い雷は、左手で右肩をほぐす。
さっきまでの敬語とはまるで違う。
とても軽い気安い口調だが、先ほどのような違和感はないこれが彼の素なのだ。
そんな弟の様子を兄は呆れた顔で見ると弟の顔を指差す、正確にはその目を
「気を抜きすぎだ。出てるぞ」
「嘘、マジで」
そう言った雷は、ポケットから携帯を
取り出すと、そのカメラ機能で自分を写す。
「うわ危ねぇ〜もし他の客と鉢合わせしたらまずいことになってた」
サンキュー兄貴と片手拝みに雷は、礼をする。
雷が写した携帯の画面には、眼球が赤くなってる雷自身の姿が映っていた。
それは世間ではこう呼ばれる。
赫眼(かくがん)と赫眼それは喰種の証。
総司の弟、風神雷彼は喰種なのだ。
だが、総司は人間だ、何故人間の総司に喰種の弟がいるのかは、深い事情があるのだが、ここでは割愛させて貰う。
2
「これで大丈夫っと」
現れてた赫眼を制御して、普通の眼に戻すと、雷は観覧席の中に用意されてる、無料の自販機のボタンを押して、ミルクティーを買い、次に自分用の、六甲の美味しい水も買いそれを、飲みながら席に座って闘技場を見ている兄に注文のミルクティーを渡す。
「コーヒーでなくて良いのか?」
「このおやつには、水の方があうんでね〜」
雷は、嬉しそうに笑うと白い包み紙に包まれた物を、携帯を出したのとは反対側のポケットから取り出す。
「おやつだと?」
「ああ夕方手に入れたばかりの、珍味さ」
そう言って雷が白い包みを開く。
「綺麗だろう〜、引きちぎらないで
ナイフでちゃんと斬ったからな」
雷は、子供が自慢の玩具を見せびらかすような、優越感に浸った顔をしながら、白い包みから取り出した物を、総司に見せた。
それは付け根から、切り取られた指。
細く綺麗な肌色から見て、女性いや、
指自体が、か細く小さい点を見るに、女の子のものだろうと見受けられる。
雷の持つ、白い包みには同じく切り取られた指が九本入ってる。
つまり人間の両手の指を切って、おやつにしてるのだ。
「小さな指だな、子供か?」
雷が、指を横にくるくる回してる指を見て問う。
「流石だな、よく気づいたな」
「仕事柄、死体をよく見るからな」
「いやぁ〜、今付き合ってる彼女が
看護士でさ、今日入院患者の子供が病死したって情報くれてよ〜ちょっと、貰ったってわけ
いや便利だね〜看護士の彼女がいると」
今度は切り取った指を、雷は舐る。
「食糧は、ちゃんと腹が満たされる量を与えているはずだが」
総司はそう言うと、非難の目で雷を見る。
足りないとでも言うのかとばかりに。
実は総司は、MO手術に失敗して
死亡した被験者を研究のためと称し、保管しその死体から肉を切り取り、弟である雷に食糧として渡しているのだ。
「まぁそうなんだけど、兄貴に貰った分は部下に分けちまうんでなぁ」
舐めていた切り取った指を、ポッキーを食べるように、細かく口を動かしながら雷は食べる。
「うめぇ、コリコリしてるのに、あまり固くなくて食べやすい。
ドナートポルポラが、ガキばかり喰ってたのがわかるぜ」
一本目の指を食い終わった、雷が二本目を包みから取り出す。
「そんなに旨いのか?」
堪らないと、ご満悦の笑みを浮かべて
指を食べる、弟を総司は、興味深そうな顔で見る。
「食べてみるか?」
皮肉たっぷりの笑みを浮かべて、冗談交じりに、雷は兄に食人を促した。
普通ならこんな、悪ふざけをする雷に
激怒するのが当たり前、だが喰種を
弟にする総司は違った。
総司は、無言で席から立ち上がると、
雷の元に行き、その切り取った指の入った包みから、指を一本取り出すと
まじまじと見る。
「ほんとに小さい指だな、何歳ぐらいだ?」
「えっ……ああっ今朝、亡くなった
七歳の女の子だ、元々病弱でずっと入院してた」
予想外の行動に、食人を日課とする、喰種の雷が困惑しながら答える。
「7歳か」
そう呟くと、総司は躊躇いもせず、指を一口に放り込み、咀嚼(そしゃく)する。
「う〜ん。柔らかく噛みちぎり、安くて食べやすいが、あまり旨くはないな」
食べながら、味の感想を呟いた総司は、指を呑み込むと、さっき渡されたミルクティーを飲み、口の中の指を流し込む。
そんな兄の行動を、雷はあっけに取られた顔で、見る。
「何を驚いてる?
お前たち喰種も共食いするだろう。
まさか、人が共食いしないとでも思ってたのか?
食人は何も、喰種の専売特許ではないぞ」
あっけに取られてる、弟にそう答えると、総司は、席に戻って座る。
総司が座ると同時に急に周りが暗くなる。
闘技場内のライトが消されたのだ。
「どうやら始まるみたいだな。
雷いつまで突っ立ってるんだ?
早く座れ」
総司は、弟に着席するよう、言う。
「ああっ……わかった」
何の躊躇いも見せずに、人の指を食らった兄に、面食らって呆然としてた
雷は慌てて自分の席に向かう。
雷が席に座ると同時に、天井に設置されたスピーカーから、マーズファイトの試合の開始を告げる、アナウンスが
流れて来た。
最後まで読んで頂きありがとうございました(^-^)
何故、人と喰種が兄弟なのかは、後々説明させて貰います