ハジメ達の日本からの消失より一月あまり、彼の行方を求めて数多の異界を巡り探索の旅にたったトールは、途中経過の報告の為に一時帰宅の報告にハジメの父『南雲愁』が経営する会社へと立ち寄ったのだが、其処で彼女は期せずして愁の口よりハジメの行方についてのか細い手掛かりとなる情報を得る。
「それで父様、その私に見せたい物ってなんなんですか?」
「ちょっと待っててね、もうすぐだから。」
愁は社員一同に一旦自宅へ戻ることを伝えると、本来のドラゴンの姿へと変じたトールの背に乗り彼女と共に帰宅すると、彼の自室へと共に入室し直ぐ様に自身のパソコンを起動させた。
「良しっと、待たせたね。トールちゃんに見て欲しい物ってのは、この動画なんだけど。」
室内に、パソコンの駆動音と冷却ファンの回転する音とが微かに響いてからごく短時間。トールが見つめる中で愁はデスクに設置しているマウスパッド上にマウスを操作し、目的の物をモニターに表示するとトールに呼び掛けた。
「はい…………」
その声に答えて、トールは愁が起動させたパソコンのモニターへと目を向けるが、其処に映し出されてきた映像はトールも少しだけ知っている、ハジメのクラスの男子生徒と女子生徒の姿が見られた。
それはトールも僅かながらも知っている、トールの目線から見れば何時もハジメに難癖を付けていて、近い内に一度分からせる必要があると思っていた
「実はね、二日前にハジメ達の事件を捜査している警察の方からの依頼があってね。」
トールが内心にその様な思いを抱いているとも知らず、愁は事の経緯を語る。其処には普段の飄々とした態度の彼とは違い、真剣な面持ちをしていた。そしてもう一品、愁はデスクの引き出しから取り出してトールにそれを指し示す。
「警察の方でハジメ達の教室内に残されていた生徒達の遺留品の中から、この映像が見つかったんだよ。それはこのハジメのクラスの女子生徒が所持していたスマートフォンで撮られたものなんだけど。」
「あまり人のプライバシーに踏み込むのは良くない事だけど、このスマートフォンの持ち主のフォルダー内には、ここに映っている天之河君って男子生徒のね、言っちゃ悪いけど隠し撮りの写真や画像だらけなんだ。おっと、言ってる側から僕が人のプライバシーを侵害していたよ、ははは……」
「はぁ……ふむふむ?」
南雲家で生活を始めてから、トールも多少は地球の機械や技術等のテクノロジーに付いて理解しているのだが、それは主に生活家電方面の知識であり残念ながらコンピュータ関連の知識は殆ど学んでおらず、彼女の返答からも今一つ要領を得ていない事が愁にも見て取れた。
そんなトールの様子に愁は苦笑すると、要点をかい摘んで説明をしなければと自分の言を省みて思い本題に入る事とした。
「先ずはこれを見てもらった方が早いね。」
愁はマウスを操作し、停止状態に合った動画を再生しトールはそのモニター上の動画を食い入る様に見つめる。
「さて、もうそろそろだよトールちゃん。あの日トールちゃんが感知した魔力の反応だと思われる魔方陣が、天之河君の足元から展開されるよ。」
録画されていた動画はほんの数分程度の時間だった様で、愁が言う様にその瞬間はすぐに訪れた。
モニター上の天之河をメインに映した画像、その天之河の身体を下方から照らす様に眩い光の奔流が立ち上り始め、やがて異変に気がついた生徒の声が響き渡る。その異変にこの撮影者も気が付き狼狽えたのだろうか、天之河をメインに捉えていたカメラは撮影者の意図と反して、否おそらくは撮影をしている事さえも忘れてしまったのだろう。
やがてそのカメラは天之河の下方へと向けられ、そして彼を中心として拡がり行く魔方陣の様子を映し出していた。
「父様、止めて下さい!」
食い入る様にモニターを凝視していたトールが、動画上の魔方陣がある程度展開を完了したと思われる辺りでトールは愁に申し出る。
「よし!」
トールの申し出に応えて、マウスを操作してクリックし愁が動画に一時停止を掛ける。トールはその停止されたモニター上の画像を真剣を超え突き刺すかの様な視線を向けて、それに見入る。その魔方陣の構成を紐解いているのだろう、ブツブツと呟くトールの小さな声が愁にも微かに聴こえてくる。
此処で少し愁が警察より捜査に重要である筈の、遺留品である生徒のスマートフォンを預け調査を依頼をしてきた経緯を説明しよう。
ハジメ達の消失の連絡を受けた警察は直ぐ様生徒達の行方についての捜索を開始するが、その行方は杳として知れず。だが、幾人かの生徒達の証言による、突如として教室内から発せられた眩い閃光が収まり目をやれば、教室内に居た生徒達全員の姿が消え去っていたなどと云う、あまりにも非常識すぎる言葉を信じる事など出来ようも無かった。
しかしどれ程警察が足を使って捜査に当たろうとも、前述の通り消失した生徒達の行方は知れなかった。
同時に事件当日、ハジメ達の教室内に残されていた生徒達の私物等の遺留品を押収し、当然警察はそれらの物品の調査にも時間と人員を割き綿密な調査を行い、このスマートフォンの映像を発見するに至ったのだった。
「これは……何処の世界の文字かは解りませんが、しかしこの図形にしても配置にしても随分と無駄が多いですねぇ。ですけど、あの日の魔力の反応から見てもこの魔方陣から発せられた魔力量だけは相当な物でしたし。あぁ、でもこれに無駄が多いからこそ相当に無理矢理魔力を込めなければハジメさん達を時空転移させるには不足だったのか……」
画像の魔方陣をジッと見つめるトールが評する。
警察の遺留品捜査に当った警察官もこの映像を発見し、証言を残した生徒の話と同様にこの動画に映る魔方陣から確かに眩い光が発せられている事を認めたものの、しかしだからとてこの様な非現実的な光景を現実として受け入れる事が容易い筈も無いだろう。故に警察もこの動画を科学的に解析するも答えなど出ず、かと言ってこれを現実として世間に発表する事も、見つけ出したこの手掛かりがあまりにもファンタジーが過ぎる為に憚られたのだった。
その様な経緯から、警察は消失した生徒達の保護者の中にいた、ゲーム制作会社を経営するクリエイターならば創作物にも造詣が深いだろうとの考えから愁にこの画像の解析を依頼する事となった。
「どうだい!?トールちゃん何か解ったのかい!?」
警察からの協力を依頼されるも、魔法の事などトールやルコアから聞き齧った程度の知識しか無い愁がトールの呟きに食い付く様に問う。
「はい、私の捜査方針に間違いがあった事が解りました!」
が、トールから返って来た返事は彼の求めていたモノとの乖離が大きかった様で、愁は小首を傾げる。
「どう言う意味かな?」
「私はあの日感じた、比較的膨大な魔力反応から、ハジメさんを攫った愚か者は魔法文明の発達した比較的高位世界の存在だと思って、そちらの世界の方から探していたんですけど、これを見るに、相手はどうやらそれ程高い次元世界のモノでな無さそうですね。」
愁からの問にサラッとトールは自らの所見を述べる。ハジメ達を召喚した犯人の特定までは出来なかったが、相手がトールの言によると低位の次元の物だと知れたのだから、であるならば。
「はいお陰で捜索範囲がかなり絞られました。とは言ってもまだまだ次元世界はまだまだ無数に存在しているん出るけどね。」
「いや、それが解っただけでも充分だよトールちゃん!今後もトールちゃんには苦労をかけてしまうけれど、どうかハジメ達の事をよろしくお願いするね。」
トールはふっと愁はへと微笑みかけて条件付きながらの希望的観測を語り、その柔らかな笑顔と言葉とに愁も娘同然のドラゴン娘に暖かな笑顔で応えた。
今後の捜索方針も決まり、トールは南雲家の玄関で自分の鱗から作り出した、ヒールの低いパンプスを履くと見送りの為に此処まで同行して来てくれた愁に向き直る。
「では父様、もう一度行ってきますね。母様とカンナとイルルにもよろしく伝えておいて下さい。」
ハジメを捜し出す為の手掛かりが見つかった事もあり、愁には彼女の顔は心なし先程再会した時よりも幾分明るいものの様に見えこんな場合であるにも関わらず喜ばしく思えたのだった。
トールによりハジメ達が異なる世界へと連れ去られた事を知らされている、ハジメの両親である愁と菫は今も必死に我が子の行方と身の安全とを心配する生徒達の保護者達や、その行方についての手掛かりが掴めずとも懸命に捜査に当たっている警察組織が知り得ない情報を知っていると言う事実に申し訳無さを感じているのだが、仮に二人がその事実を世間に公表したとしてもその発言がまともに取り合ってもらえるかと言えば、そうはならないだろう。
「うん了解。行ってらっしゃいトールちゃん、くれぐれも道中気を付けてね。」
「はい!」
その様な内心は置いて、愁は再び我が子の捜索へと向かうトールに見送りの言葉と、その身を案じる言葉とを掛けて彼女もその言葉に笑顔で応えると踵を返して玄関ドアへと向かうと、外部からの呼び鈴が鳴らされた。
『おやっ、こんな時間に!?』と訝しみつつも二人は玄関ドアに目を向けつつも、トールは玄関の先に居るであろう相手に『はいは〜い、今開けますね』と返事をしつつその扉を開くと、其処に佇む者は彼女のよく知る相手であった。
「あら、ファフニールさんじゃないですか!久しぶりですね。」
「おや、ファフニールさんだったんですか。」
トールと同じく異世界よりこの世界へと訪れた、異界の高位のドラゴンであるファフニールが、その身にまるで可視化されたかの様な重いオーラを纏って佇んでいた。
「ああ、久しぶりだな………」
二人からの挨拶の言葉をうけてファフニールもまた応えるのだが、その声はやはり彼が身に纏う重いオーラと等しく、重く静かな声だった。
「すいませんファフニールさん、折角来てもらってなんですけど、私これから出掛けなきゃいけないんですよ。」
トールがファフニールに詫びると愁も彼女の言葉に合わせて彼に頭を下げて詫びる。旧知の仲である者の来訪に、本来ならば何らかのもてなしをすべきなのだろうが、トールも愁も直ぐに家を出なければならない身である。
「ああ、だろうな解っている。小僧を探しに行くのだろう。」
しかしファフニールは端からトールがハジメを探す為に一月あまりの時を費やしていた事も、またこれから再びその捜索を続ける事も知っていたと、その返答から二人も理解できた。
「っ……ファフニールさん、それは。」
その事実にトールでは無く愁の方が言葉に詰まってしまう。トールの方はファフニールが自分にも勝るとも劣らぬ程の実力を持っ者と知っている事もあり、やはり彼ならば知っていただろうなど得心する。
「流石ですねファフニールさん。それで一体何事ですか?」
それを知ってのファフニールの来訪ならば、彼は何かしらトールに会う必要があったからこそこの場に現れたのだろう、それを理解しトールは簡潔にそう尋ねる。
「大した用事は無いんだが、一応お前に渡す物があってな。」
するとファフニールははじめから用意していたであろう、自らの右手に持っていた小さな包をトールの前に差し出した。
「はぁ?渡す物ですか……」
ファフニールの答えに疑問符を浮かべつつトールは、ファフニールがそうだと言わんばかりに頷く様を見て両手を差し出す。
「持って行け。」
トールの差し出した掌の上に包を置くと、一言呟く様に言葉を発するファフニールに戸惑いつつも謝辞を述べると、トールはその小さな包を開いて中を確認する。そして。
「………っ、これは!?ファフニールさん!!」
その中身を見てトールは、その中身のあまりの価値に驚きを隠せず、彼にそのアイテムをトールに渡した事の真意を確かめずにはいられなかった。
「もしかすると必要になるかも知れないだろう、そう思ってな。まあ使わなければそれでも構わんが。」
事も無げに、さも当然だろうとばかりにファフニールはトールに答える。自分の興味がある事以外の事象に対しては、まるで無頓着な彼がわざわざこの様なモノを届けに来てくれたのだ、遥か以前から彼を知るトールにはこの事態に驚きを隠せないのだが、その内心の思いはおくびにも出さずトールは彼に感謝の言葉を伝える。
「ファフニールさん……ありがとうございます。」
「あの小僧が居ると何故だかお宝の入手率が高くてな。それに狩りの方も捗る………」
トールの謝辞に、ファフニールは自分に似合わない事をしてしまったとでも思ってか、言い訳がましくそんな事を口に出てしまうのだった。
南雲家の玄関の前では、家長である愁が今、トールがファフニールから受け取った品物を手にして、再びハジメ達の捜索へと向かう彼女を見送り、空に現れた一般の人間には不可視の異界へ渡るゲートへと消え去ってしまった空を暫しの間眺めていた。
「行ってしまったか、トールちゃん。」
要件を済ませたファフニールもまた居候先へと引き返しその玄関口には、取り残された様に愁は一人彼女と息子の身を案じつつ呟く。
「しかし、あのスマートフォンの中のデータをトールちゃんに見せずに済んで良かったな。」
警察から預かったハジメのクラスメートの女子生徒のスマートフォンだが、件の映像の分析を行う為にとは云えどそれはプライバシーを侵害する行為に当る。詳しく解析するためにスマートフォンのデータを出立は自分のパソコンへとコピーしたのだが、その結果。
「まさか、持ち主が天之河君に好意を抱いているって事実は兎も角、そのせいでハジメに対してちょっとした隔意の恨み言まで書かれてあるなんてな。トールちゃんがそれを知ったら彼女、思いっきりトールちゃんから殺意を向けられるかも知れなかったよなぁ。はぁ〜っ、南無三。」
何かとハジメに絡む天之河にハジメが反論を行う為か、スマートフォンの持ち主の天之河光輝に対する妄信的な想い故に、ハジメに対する恨み言が一杯にメモされていた。
まるで精神を病んでいるかの様な息子に対する恨み言を目にした愁のメンタルはわずかばかり疲労感を感じていた。
「何事も無く無事に帰って来てくれよハジメ。トールちゃん。」
閑静な住宅街の一軒の玄関口に息子と娘のの無事を、青空に願う父親の姿が其処にはあった。
トールが再びハジメ捜索の旅路へと向かったその頃、一方そのハジメはと言うと。ハイリヒ王国の王城にて、王国騎士団団長にしてハジメ達の教育係を勤めるメルド団長の号令の下、オルクス大迷宮への遠征へと向かうべく王国が用意した(ハジメと鍛冶師達が改造した)馬車へと乗り込んでいるところであった。
「良し、全員乗り込んだな。では出発するぞ!」
生徒全員の乗車を確認すると自らは馬車では無く軍馬へと跨り、よく通る大きな声で出発を告げる。メルドと共に生徒達と遠征へと向かう軍馬に乗った騎士を先頭に、その後を追うように生徒達を乗せた場所が隊列を組んで次々と王城の城門をくぐり抜けて目的地へと出立していく。
「それでは陛下、そして皆様方も行って参ります!」
「うむ、道中気を付けてな。皆のことを宜しく頼むぞ。」
「はっ!必ずや、この命に代えましても。」
生徒達の出陣を見送りに来ていた国王はじめ、王家の一族と国家首脳陣とに挨拶の言葉と一礼を持って告げると軍馬を巧みに操りメルドは先行する馬車を追う。
蹄の音を響かせてメルドの軍馬は十数秒程で最後尾の馬車に追い付くと、手綱を操り軍馬に速度を落とさせると一行の最後尾に殿を務める様に歩速を合わせ、オルクス大迷宮への遠征へと向かうのであった。
さて、オルクス大迷宮へと向かう一行が乗る馬車であるが、その馬車の隊列の一番最後尾の馬車の車室内には、まるで図ったかの様にハジメと遠藤とが乗車し、その馬車の御者を勤める騎士が御者席に着座している。
基本的には一台の馬車に三〜四人の生徒と御者を勤める騎士一人が乗り込んでいるのだが、他の生徒達に先を譲り余った端数となったハジメと遠藤とが最後の一台へと搭乗する事となったのだが、因みに早々と天之河一派幼馴染四人組が最初の一台目に搭乗していったのたが、その際チラチラと白崎香織が名残惜し気にハジメを見ていたのだが、そんな彼女からの視線が何ともむず痒くもあり且つ何故その様な視線を彼女が自分に向けるのか、ハジメにはそれが理解出来ないでいた。
『そう言えば、僕が国王に称揚された日、白崎さんが何か言ってたけど結局その事について話さなかったんだよね』
車窓からゆっくりと流れ行く景色を見るでなし眺めながらハジメは、普段はあまり考える事の無いクラスメートの事を考えていた。このトータス世界に拉致同然に連れてこられてから一月、ハジメが獲得した技能による仕事により作り上げてきたアイテムの数々、その利便性の恩恵を受けた多数のクラスメート達からのハジメの高評価。その後の彼等、彼女等からは地球に居た時とは違い友好的な物となったのだが、考えてみたら白崎はその様な評価など関係無く地球に居た時からハジメに対して友好的であった。
『当時のクラスのみんなからの目や態度が痛くて白崎さんを避けてたけど、一貫して白崎さんは僕に対する態度を変える事も無かったんだよな、まあそれは八重樫さんもなんだけど』
改めて考えて見るに、地球に居た頃の決して評判の芳しく無かったハジメに対しても、親しげに話し掛けていていた白崎の態度はある意味高く評されるべきなのかとハジメは、その様な事を連連と考えていたのだが、その影響もありクラスメート達からの批判を買っていた事情もあったからハジメは彼女を疎んでいた。
『一度僕も、白崎さんに対して“きちん”とした対応で話し合う必要があるのかな』
寄る辺ない異世界で、一部生徒達の様に以前と変わりなくハジメに嫌悪をむき出しにする者達は除外するとして、好意もしくは友好的態度で接してくれる人に対してならば、ハジメも以前の様に頑なな態度で接する事は生存率を上げるうえでは愚策でしか無いだろう。その様な心境の変化がハジメの身の内に生まれていたのだった。
「いや、それにしても南雲の作ったサスペンションがすっごい効いてるんだな。道はまともに舗装もされて無いのに振動が殆ど無いよな。」
車窓の向こうの景色をぼんやり眺めるハジメに遠藤は話し掛けるが、自分の考えに浸るハジメには彼の言葉が届いていないのか、それ言葉に答えること無く車外を一見ぼんやりした様に眺め続けている。
「おい、南雲!お〜い、俺の話聞いてるのか!?お〜い。」
ハジメの真正面から、遠藤は掌をヒラヒラとハジメの顔の前で振ってその気を引こうとしているのだが、三十秒程振り続けてもハジメは反応を示さない。それが何故だか無性に悲しい気持ちになった遠藤は、微かに目元に雫を溜めつつハジメの眼の前で手を振り続ける。
「はっ!?何……遠藤君、いつの間に居たのッ!?」
遠藤のその思いが天に通じた!訳では無いだろうが、漸くハジメは遠藤の行動を認識する事が出来たのだった。
「いや!俺最初から居たよね。何なら一緒にこの馬車に乗り込んだよねッ!てか俺の存在感のなさをネタにするの止めようね、いい加減飽きられるからね!」
それを何時ものいじり行為だと思うと遠藤は悲しさと言うよりも遣る瀬無さ、もしくは切なさを感じて涙をちょちょ切らせながら声を大にして切に訴えた。
「ははは……ごめん遠藤君。ちょっと個人的な事で考え事してたんだよね。」
乾いた笑顔で誤魔化して遠藤に謝罪するハジメにジト目を向けながらも遠藤は、自分の存在感のなさは生来のものでもあるし今に始まった事では無いしなと深いため息を一つ吐いて、結局はハジメの謝罪を受け入れるのだった。
投稿頻度が度々空きますが宜しくお願いします。