南雲さんちのメイドラゴン   作:佐世保の中年ライダー

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誤字報告毎度ながらありがとうございます。

今回は遂にハジメ君が………そして。


第二十六話

 

 ガツガツとした咀嚼音をたてながらテーブルマナーも何もあった物では無いとばかりの勢いで、焼き終えたばかりの狼の肉に食らい付く。まあ地べたに胡座をかいて座り込んでの食事なのだから、テーブル自体が無いのだが。

 

 「クッソ不味ぃな……コイツぁ……端っから予想しちゃいたが………」

 

 文句を良いながらも噛み切っては咀嚼して胃の中に流し込む、不味いし食えたものでは無いとの思いもあるのだが十日余りの間水しか飲んでいなかったハジメの身体は固形物を求めて止まず、その様な物さえもの兎に角食べすにはいられないのだった。

 しかしいきなり与えられた固形物にハジメの咽頭や胃が抗議をする様に痛みを上げるがそれを誤魔化す様に神水を飲んで食べ続けた。不思議な物で、それ程に不味い肉であるにも拘らず何時しかハジメは腹が満たされてゆく幸福感と陶酔感を味わう。

 一切れ目を食べ終えそれなりに腹も膨れたが、もう少しばかり食そうと二切れ目を手にし、それに食い付こうとしたその時だった、突如としてハジメの全身に異変が起こった。

 

 「うぐぁッ………ァがッ!?」

 

 ハジメの顔が苦痛に歪み口からは呻き声が吐いて出る。激しい痛みが突然ハジメの全身を襲った。それはまるで肉体の内側から何かに侵食されている様な悍ましい感覚。その痛みを例えるならば、秘して伝わりし暗殺拳により経絡秘孔を突かれ、内側から時間を掛けて自らの肉体が崩壊していく様を味合わされていると言えるだろうか。しかもその激痛は時間が経つと共に更に激しさを増してハジメに耐え難い苦痛を与える。

 

 「あグァ、何だっ!?がぁぁァぶァァァァ…」

 

 体内の筋肉や臓器や血管や骨といった人体を構成する総てが内側から外側へと激しく盛り上がり爆裂でもしたかのように弾けるが、先の飲んでいた神水の効果の表れなのか、それを修復しようと働いている様だった。しかしそれでも尚、それに抗う様に肉体を破壊しようと異変の原因は活動を続ける。

 これは溜まったもので無いとハジメは苦痛に喘ぎながら必死にベルトに仕込んで置いた、錬成によって作成した試験管型の石製の容器に手にして強引にその封を口で噛み砕いて、中身の神水を飲み干す。

 

 「ハァ、ハァ、うぐっ………落ち着いた……ッあがぁァァッ……また……がぁぁぁ………」

 

 神水を飲んで一旦症状が治まったかと思えば、数秒程でまた痛みがぶり返し、再度我が身を襲う異変による激痛がハジメをこれでもかと言わんばかりに苛む。呻き、喚き、のたうち、壁や地面に頭を叩き付けて耐えようとするが、その行為には何の効力も無く激痛は消えること無くハジメの身体を蝕む。

 

 『いっそひと思いに死なせてくれ』と、この激痛から逃れられるならば命さえ要らないとまで思える程にハジメの心が追い詰められる、しかし神水の効力がそれを許されず激痛は際限無く永遠に続くかと思われたが、しかしそれも収束の時が訪れた。ハジメの肉体に劇的な変化を伴って。

 

 まず髪から色が抜け落ちてゆく。許容量を超えた痛みのせいか或いは別の原因なのか判然としないのだが、黄色人種の特色である黒髪がどんどんと色を失い白くなってゆく。

 次いで、筋肉や骨格が徐々に太くなり、身長までもがそれに合わせる様に伸びる。そして体の内側に薄らと赤黒い線が幾本か浮き出始める。

 その様な変化がハジメの身に現れる、それは所謂超回復と言う現象だろうか、魔物の肉を取り込んだ事により肉体を破壊しようとする効果と神水による回復を促す効能とがひしめき合い、やがて神水の効能が勝利を収めて起こった奇跡的な現象。それによりハジメの肉体はより強固な物へと造り変えられたのだった。

 それはハジメが人外、人間を越えた存在究極生命体(アルティメットシイング)へと生まれ変わった証である。と言うには大袈裟過ぎるだろうが、しかし間違い無く人間としての箍は外れ、生物としての階梯が一段上がったのは確かだろう。

 痛みがいつの間にか治まっている事にぼんやりと気が付いたが、どうにも頭の回転の方はまだボヤけているハジメはうずくまった状態からもぞもぞとしながら身を起こし、我が身を包み込む切りを振り払う様に頭を振って思考をクリアに持っていこうとする。それが功を奏したか、ハジメは自分の身を襲った変異と向き合う。

 

 「ふぅ……一体どうなっちまったんだ、俺の身体はよ!?取り敢えず錬成っと。」

 

 ドームの壁面に右手を当てて錬成を掛けて表面を平らにして、更に鏡面の様にツルツルに仕上げる。それを広範囲に立ち上がって自分の背丈よりも少し高い範囲までそれを及ぼさせ、作業を終えると自らの身体の状態を確認してみる。

 

 「なっ、何だよこりゃぁ!?………あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!俺は二本尻尾の狼の肉を食っていたと思ってた、有り得ない程の痛みに襲われたら、いつのまにか髪は白髪になってて、身長も十五センチは伸びているし肉体も良い感じな細マッチョ状態になっちまっていた。な……何を言ってるのか、わからねーと思うが俺も何でそうなったのか今一解らなかった…頭がどうにかなりそうだった……超魔術とかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ…もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…ってネタを言ってる場合じゃねえかこりゃ、しかし何だよこの線……気持ち悪ッ!」

 

 常識的に考えてあり得ない程の変貌を遂げた己の肉体を確認したハジメは、現実逃避のネタを口にするのだがそんな場合では無いかと気を改めるが、やはり突然に変わり果てた己の身が魔物にでもなってしまった様で気持ち悪いと感じたのだった。

 

 「でも、まぁなっちまったモノはしょうがねぇよな。問題はこんな俺をみんなが受け容れてくれるかどうかだよな。トール、俺こんなになっちまったけど、構わないか?」

 

 この魔境で生き抜く為ならば、己の変容も仕方が無いと自分は納得出来るが、しかし愛する人達が変わり果てた自分をどの様に思うのだろうか、それだけが今のハジメに取っての不安要素である。胸に去来する愛しい人達との暖かな日々、胸元に手を当ててハジメは不安を掻き消すように首を振って眦を上げて頷く。その時はその時だと。

 

 「ん!?おっと、そうだった。コレがあったんだよな。」

 

 胸に手を当てた時に感じた感触、それはハジメが騎士団より受け取ったステータスプレート。今の今まで忘れていたソレをハジメは手に取って確認して見る事にした。

 

 「ステータスオープン!」

 

 ハジメの声に反応してホログラムの様に浮かんで見える己のデータ。ハジメはソレを食い入る様に確認してゆく。

 

 南雲ハジメ 17歳 男 レベル8

 

天職∶創造者(クリエイター)技術者(エンジニア)

 

 筋力:250

 

 体力:400

 

 耐性:200

 

 敏捷:350

 

 魔力:1500

 

 魔耐:1800

 

 技能∶錬成・術式作成(プログラミング)術式付与(インストール)術式削除(アンインストール)術式改良(アップデート)・慈竜之愛・賢竜之加護・毒耐性【強】・魔力操作・胃酸強化・纏雷・言語理解

 

 「……何じゃこりぁッ!?」

 

 昭和の時代の刑事ドラマのジーンズファッションで決めた刑事(デカ)の殉職シーンの様にハジメは変化した自分に呆れ、やってられねぇとばかりに叫ぶ。これまでの訓練で魔力以外の数値はあまり伸びなかったのが、魔物の肉を食べただけでこの数値である。

 

 「サイヤ人じゃあるまいし、死の淵から生還したらパワーアップとか漫画のキャラかよ。ってか違うか、まぁ原因は間違い無く魔物の肉だろうがな。」

 

 この世界の魔物の肉はとある世界の魔物と違い人間にとって猛毒である。異世界モノにありがちな設定だが魔石という特殊な体内を持ち、それが魔力を直接体に巡らせ驚異的な身体能力や特殊な技能やスキルを発揮する。加えて体内を巡り変質した魔力は肉や骨にも浸透して頑丈にする、ある意味カルシウム超絶強化版か。

 

 「そう言や魔物の肉は毒だって言われてたじゃねぇか、飢えすぎてスッカリ忘れてたぜ。」

 

 迂闊だった自分と神水によって奇跡的に命を繋げられた幸運とを思い、ハジメは冷や汗を流しながら頬が引き付かせ九死に一生を得た事に安堵する。

 

 「とまぁ、結果オーライって事で、それじゃ俺の身に起こった事とか色々と検証していくかな。」

 

 レベルは前回確認した時とそのままで、数値は極端な迄に上昇した上に新たな技能が三点追加されていた。魔力操作に胃酸強化と纏雷と言う技能。

 

 「先ずは魔力操作だが、これは………」

 

 額面通りに受け取れば直接魔力を操って魔法を発動出来ると言う事だろうかと見当を付ける。そして先刻から感じている今までに無かった奇妙な感覚こそが魔力なのではと推測、ものは試しだとハジメは己の中のその感覚と向き合い意識を集中する。

 集中を始めるとハジメの肉体に刻まれた魔物と同じ様な赤黒い線が浮かび上がり脈動する。此奴はビンゴだなと、内心に思いつつハジメは集中を乱さない様に改めてその感覚を右手に集中する様に意識すると、その通りに奇妙な感覚が右手へと集中してゆく事が感じ取れた。其処から更にハジメが右手に装着している錬成の魔法陣が描かれたグローブに収束された。

 

 「おおっ、こいつは………」

 

 妙な高揚感を感じてハジメは声を出したが、自分の考えに間違えが無かったと結論が出て満更でもない気分だった。其処からは早いもので、ハジメは良しとばかりに右手を壁に付けて魔力を流す。これ迄は其処に『錬成』と口に出して唱えていた詠唱を行っていたのだが、ハジメは無言のままに脳内で描いたイメージを直接壁面へと叩き付ける。

 結果は言わずもがな、壁面はハジメの描いた通りに変質されてしまったのだった。しかもその速度はこれ迄よりも効率よくしかも二割程のスピードアップまで成していた。

 

 「予想通りだな。詠唱も要らない上に作業効率もアップか、これも魔物の特色を取り込んだって事で間違い無いな。じゃあ次はこの纏雷って奴か。」

 

 この世界の魔法はトール達が使うそれとは体系が違うのか、魔力の直接操作は出来ないとされていたが魔物はそのカテゴリーから外れており直接操作を可能としており、それがここ迄に体験して来た其々の魔物達の技能や攻撃法であった。

 

 「これは、多分アレだよな狼が使ってた尻尾からの電撃で間違い無いだろうが、俺がやるとしたらどうやりゃ良いんだ?頭に静電気みたいに電力を集中して鬼太郎みたいに髪の毛に電気を帯びさせて発射するとか……………は、無理だな。逆にその過程で俺の脳が電気でやられちまう可能性もあるよな。」

 

 試しにと頭に電気を集めるイメージを浮かべて見たがそれは叶わず無理と断定。早々に諦めて次を試す事にする。しかし先の魔力操作と同様にこの纏雷の能力も集中やイメージが成功の鍵であるとは推察出来る。ならばとハジメは右手への集中を試みて見る。イメージとしてはグレートマジンガーのサンダーブレイクとまでは言わないがスター・ウォーズエピソード6に於いてパルパティーンが見せた手先からの放電を模倣するつもりでハジメは集中する。

 

 「おおっ!」

 

 ほんの数秒程集中して見るとハジメの指先からバチバチと僅かにだが放電現象が確認された。流石にパルパティーンの放電現象には届きそうにも無かったが。と言うか、残念ながら放電を飛ばす事自体が出来なかった。

 

 「まぁ、しゃあ無しだな。訓練を積めばそのうち出来そうな気もするが、今後に期待だなそれは。」

 

 「それに纏雷って字面から意味を紐解けば雷を纏うだから、文字通りに全身に雷のエネルギーを纒わせる事も可能かもな。それも訓練次第か……」

 

 纏雷の能力に付いての考察から今後の方針を決めて、ハジメは次に移る。最後の胃酸強化、これも文字通りの意味合いだろう。魔物の肉を食らった事でそれに対抗する為に胃が強化され、消化できる様になったのだと。

 ハジメは試しに先に焼いていた狼の肉を手にしてみる、ゴクリと緊張感から喉が鳴る。先刻の様に魔物の肉を食って、あの途轍も無い激痛を再度味わうのではないかと躊躇う。だがしかし、生きてこの迷宮を脱する迄に魔物以外に喰える物など期待出来ないだろうは、容易に想像がつく。食べる事にあの苦しみを味わうのか、座して飢え死にを待つのか、究極の選択である。

 

 「えぇぃッ儘よッ!」

 

 覚悟を決めてハジメは焼いた肉に齧り付く。何度も噛んで噛み砕いて飲み込む、咽頭を通り食道を越えて胃に収まる。一分を越えて二分、三分、と待っても何も起こらない。そして時間は十分は経過しただろうか。

 

 「よし!大丈夫だ!」

 

 結果にハジメは歓喜する、これで魔物を食べる事に苦痛を味合わずに済むのだと安堵と同時に早速とばかりに腹を満たす為に肉を切って焼いて行く。一頻り空腹を満たしてハジメは一度拠点としている、神結晶を発見した場所へと撤収する。当分の間の食糧とする為に他の狼の肉も切り分けて、錬成により作成した大きな瓶に詰め込んで。

 

 拠点へと戻ったハジメは、折角得た能力を十全に生かせる様にすべく早々に訓練へ取り掛かった。数日間の訓練でハジメにさらなる能力が開花した。

 

 「鉱物系鑑定!?うをっ!マジか!!」

 

 ステータスプレートに記された、その技能を確認してハジメは歓喜する。技術者として製品を作製して行くに辺り、その素材がどの様な性質を持っているのか、又どれ程の硬度や柔軟性を持っているのかと云った情報を得て知る事は極めて重要な事であるのだから、これは願ってもない幸運である。

 

 「へへっ、やったぜ。そんじゃ早速!」

 

 口の端をニヤッと歪めてハジメは集めて来た照明代わりの緑光石に触れてみた。その結果は直ぐ様展開していたステータスプレートのモニターに表示され、緑光石に付いての解析結果が表示される。

 その解説文は簡素で理解り(わかり)易く書かれており然程深く書かれている訳でも無かったが、ハジメに取ってはそれでも充分であった。

 

 「へへ、待ってろよ鉱物ちゃん達、今俺がニギニギしてやるからな!」

 

 何とも締まらない顔で阿呆っぽく宣ってからハジメは手当たり次第に辺りに存在する全てに触れては解析を掛けて行く。やっている内にハジメはその行為がとても楽しく思えて休憩も取らずに鑑定をし倒して行く。そして数時間後、ハジメはとんでもないお宝と出会うのだった。

 

 それは燃焼石と言う名の鉱物だった。

 

 それは可燃性の鉱石であり、点火すると構成成分を燃料に燃焼し、消費しながらやがて燃え尽きる。密閉した場所で大量の燃焼石を一度に燃やすと爆発する可能性が高く、その威力は量と圧縮率次第で上位の火属性魔法に匹敵すると言う。

 

 「マジかよ、これってもしかすると火薬の代わりにもなるよな。それにもしかすると他にも使い道がありそうだな。すっげぇ何か夢が膨らむな!先ず可能性が高いのは、本体の素材にも依るが拳銃やライフルも作れるだろうし、もっとすりゃ架空の兵器とかも行けるかも知れないぜ、お馴染みのレールガンとか荷電粒子ビーム砲とか、ビームサーベルとか出来んじゃね!?」

 

 銃火器の本体となる構造材を得られ、ソレを上手に加工が出来て、更にハジメが狼の肉から得た纏雷の能力と術式作成(プログラミング)によってビームを形成出来る様に組み込めば時間は掛かろうとも出来る筈だと独り決意する。

 

 「よしやってやるぜ!オタクのヤル気と妄想力を舐めんじゃねぇぞ異世界トータスッ!」

 

 グッと右腕を突き上げて、暗い奈落の底でこの理不尽を強いた世界に対して人知れず宣戦布告を叫ぶハジメであった。

 

 

 それからハジメは数日間寝食も忘れてアイテムの製作に没頭した。この拠点する穴蔵の中で採れた鉱石を色々な組み合わせで合金を作成、中々上手い組み合わせが出来ず何度も失敗しながらも、漸くハジメが求める精度と強度を持つ合金から銃器を形作っていった。片手故に作業が難航した部分もあるが、どうにかハジメは創り上げた。

 現在見つけた鉱物の中でも最高の高度を誇るタウル鉱石をベースにして数種類の鉱石を混合して作り上げたのは、全長三十五センチの六連装回転式弾倉を持つ、所謂リボルバー式拳銃。

 

 「銃弾もタウル鉱石で上手く作れたし、これに纏雷の力による電磁カタパルトでの加速がちゃんと機能すれば、とんでもない威力が発揮出来るぜ。」

 

 出来たての拳銃をスチャっと片手で構えてデモンストレーション。その出来映えにハジメは北叟笑みクククと嗤う。

 

 「よし、それじゃ早速試射してみるか。出来たは良いが、いざ実戦でクラッシュしてちゃ意味が無いからな。」

 

 そう言って立ち上がりハジメは拠点から出口方向へと向けて拳銃を構える。別にターゲットとなるモノがある訳では無いのでただ一直線に構え、そして撃鉄を起こして、引き金を引く。

 途轍も無い衝撃と共に電磁加速された弾丸が真っ直ぐに出口へと向けて射出される。それは音をも遥か後方へと残し肉眼ではほぼ捉えるこ事の出来ないスピードであっという間も無く消えて行った。それが消えた後に漸く空気を切り裂く轟音が弾丸の後を追う様に響く。その速度は爪熊の斬撃をも遥かに越える高速であった。

 

 「………よし、成功だ。」

 

 まだ、射出の衝撃が残っているのを右手に感じながらハジメは喜びを噛み締めてその一言を呟く。構えを解き銃を下ろして拠点の地面を見る。其処にはハジメがこのサバイバルを勝ち残る為に創り上げた幾つもの兵装が綺麗に並べられていた。

 

 「こんだけありゃあリベンジは出来るはずだろうが、欲を言や荷電粒子ビーム砲を完成させたかったな。まあ、硬度が足りなくて作れなかったからそれは追々適した鉱物を発見次第改めて創りゃ良い。それと、創作物には名前か型式番号をふるのが習わしだよな。スタンドにだってみんな名前が付けられてるんだから……」

 

 今回は作れなかった兵器に未練はあれども無い物は作れはしないのだからと、それは今後の課題として残して、今はこの兵装で満足しようと自らに言い聞かせてハジメは頷く。そして今手に持っている拳銃に相応しい名前を付けるべくハジメは思案する。

 

 「よし決めたぜ、お前の名前は『ドンナー』に決定だ。」

 

 数分間の思案の末にハジメは右手の銃を目の前に掲げて告げる。

 

 ドンナー 。それは北欧神話に登場する雷神トールのドイツでの呼ばれ方。その名の由来は違えども大切な家族である、あの娘の名前と同じ名をハジメはこの銃に名付けたのは偶然では無いだろう。この世界でこの奈落で使う最初のメインウェポンの名にトールの名を付けるのは、ハジメに取ってはごく当たり前のことであった。

 

 「待ってろよ、ウサギに熊公!お前らも俺が食ってやる!」

 

 再度ハジメは顔を上げて弾丸が消えた出口を見やって今は見えないウサギと爪熊に対するリベンジを口にする。

 

 「おっと、その前に、この作った武器をちゃんと装着しないとな。」

 

 こりゃウッカリと思い出してハジメは地面に置いてあった創作武器を、狼の皮で作ったマントのポケットに収納して準備を整える。何処か抜けたところのあるハジメであった。

 




偶然でしょうが、ドンナーがトール。
トールちゃんのネーミングはダモクレスさん曰く雷神トールでは無く、作家のトールキンから拝借との事ですが、当作的には思わぬところでガッチリハマってちょっと嬉しかったりします。
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