新たに.raincoat0710様☆9高評価ありがとうございます。
緑光石による光源が多少はあれども薄暗い、五十階層の一隅にある不思議な様式の人工建造物に向けハジメは歩を進める。バジリスクの肉を食べて得た夜目の能力のお陰もあって、ハジメの眼は多少周囲が暗かろうとも細部まで昼と変わらないレベルで視えているので問題は無いのだが。
ハジメは油断なく警戒を怠らず歩を進め、特に何事もなく扉の前にまでやって来た。改めて近くで見れば、その建造物には見事な装飾が施されている事が見て取れた。そして中央には何かをはめ込む為の物だと思われる、二つの窪みのある魔法陣が描かれている。ハジメはその魔法陣を凝視しする。
「何だこれ、王国の図書館の蔵書にあった物ともトール達から教わった物とも違う、見たことも無い式だな。」
しげしげと魔法陣に記された式を見やるも、その意味するところを解読出来ず、さてどうした物かと思案する。しかし結局のところ解らない物はどう考えても理解出来るはずもなし。
「実際に触ってみるしか無いんだよな。そんで、その結果どうなるのかも、大体見当は付くんだけどな。」
魔法陣と左右の壁面に半ば身体を埋めて鎮座している巨体を見遣って、ハジメは独り言ちる。どうみてもそう言う展開になるのは、明らかだろうし厄介だと思いながらも此処はやるしかなかろうと溜め息吐きつつ、魔法陣に触れてみる。
しかし、魔法陣は何らの反応も示さない。やはりそれだけじゃあ駄目だったかと、自身も予想していた様で此処はやはり十八番の錬成の技能を使ってみるべく魔力を集中し始める。すると、その瞬間に魔法陣に触れていたハジメの掌にバチリッと電撃の様な衝撃が走った。
「うをぉッ!?」
思わぬ衝撃にハジメはややオーバーなリアクションを取って、魔法陣から掌を離すと手首を振って衝撃を手から取り払うのだが、その掌からは皮膚が焼けた匂いと僅かな煙が立ち昇っており、ハジメは手早くポーチからポーション水を取り出して一口にそれを煽った。“何か反応があるとは思っていたがこう来るか”と予想しておりながら嵌ってしまった事を苦々しく思いながら。
すると、ハジメがポーション水による回復を図る迄の時間を待っていたのでは無いのだろうが、まるでそうであるかの様なタイミングで異変は起こり始める。
『オァルォォォォォォォ』
野太い咆哮の様な声がまるで3次元音響の如く空間を震わせて響き渡る。それに呼応する様にハジメは素早くバックステップで離れると、その音の発生源である二体の巨像を確認する。
「やっぱりそう言うパターンで来るんだな。
それまでは無機質で鉱物の様な色をしており、生命を持っている様には感じられ無かった。半身を壁の中に埋めていたサイクロプスの像に生命を感じさせる彩りが現れ始めるとはいえ、その色は灰色から暗緑色へとの変化であり、それ程劇的な変化とまでは言えないが、且つ緩やかに動きだし壁面から身を乗り出して来る。片手には刃渡りが四メートルは有ろうかと云う巨大な剣を携えて。
「二千年の眠りから目覚めるのは柱の男達だけで間に合ってるってんだよ!ほれ、逝っとけ!」
二体のサイクロプスの内の右側の一体が壁面から顔を完全に現したタイミングで、早々にハジメはホルスターから引き抜いたドンナーを、サイクロプスの顔面に目掛けてお見舞いする。いつもの様にドパンと強烈な発射音を響かせたかと思うとその瞬間には、既にドンナーの弾丸はサイクロプスの顔面の真正面の巨体な瞳を撃ち抜いていた。
その威力はサイクロプスの脳をグチャグチャに掻き回して完全破壊して、後頭部を抜けて飛び出して壁面にもダメージを与える。憐れな右のサイクロプス君は、サメ君に続く出落ち要員となってしまうのだった。
『…………………!?』
相方が予想だにしていなかったタイミングで敵に殺される場面を眼前で見せ付けられた左側のサイクロプスが、現状をまるで理解出来ないとばかりに呆気に取られ動く事も忘れ、残酷な加害者を見る。
その表情が語っている。信じられない、こう言うのは待ってやるのがお約束だろう?と加害者を問い詰めているかの様に。それに気付いたハジメはフッと嗤って、永遠に相方を喪ってしまった壁の巨人に話し掛ける。
「何を呆けてんだよ。生憎の俺は特撮の悪役じゃあ無いんでな。スポンサーの都合でヒーローの変身や合体が終わるまで、悠長に待ってやる程お人好しじゃねぇからな。」
ハジメ自身特撮番組が好きであるにも拘らず、身も蓋も無く特撮番組全否定な、番組スポンサーの逆鱗に触れる様なセリフを宣うのだった。しかし現実に生死が掛かった戦場ならばハジメの発言は尤もなものである。この迷宮では、油断は即刻死に繋がってしまうリスクを孕んでいるのだから。いや何ならリスクしか無いまであろう。
「と言う訳で、お前も一丁死んどけよ!」
ドパンと一発流れるような動作で、ハジメは直ぐ様左側のサイクロプスへと向けてドンナーの弾丸を叩き込む。もう既に九割方壁面より脱していたサイクロプス(左)に向けてプラズマスパークの尾を引きながら着弾した弾丸だったが、それは先の如くサイクロプス(左)の頭部を破壊する事は敵わなかった。
「おっ!?やるな!」
「コイツはちょっと面白いかも知れねぇな。良いぜ、少し待っててやるからちゃんと其処から出て来いよ。」
どうやらサイクロプスは己の皮膚を硬質化させてドンナーの弾丸を弾いてしまった様で、想定していなかった意外な結果にハジメはまるでそれを称賛する様な一言を贈る。
有言実行。ハジメは右手に持ったドンナーをホルスターへとしまい込んでサイクロプス(左)の再起動を待つことにし、その場から数歩歩いて距離を取ってみせた。
『…………………!』
ハジメの言葉を理解した訳では無いのだろが、瞬時にサイクロプス(左)は己の身に掛けた硬質化を解いて再起動する。
『オォォアォォ!!!』
怒りに燃える巨眼を輝かせて右手に持った巨大剣を大上段に構え、それをハジメへと向けて振り下ろす。自分へと向けて振るわれた大剣の軌道を確りと捉えているハジメは慌てる事無くギリギリまで引き付けてから、空力によって空中へと回避する。
『やっぱりデカイだけあって、動きは遅いか。』
轟音をたてて地を打つ大剣が破壊した地面の石礫を周辺へとはね飛ばすが、そのまましばらくサイクロプス(左)は次の動作へと移れていない。スピード勝負ならば完全に自分の勝利は確定だとハジメは判断する。ならばパワー勝負ではどうだろうか、これ程までにウエイトの差がある相手にハジメが身に付けた力は通用するだろうか。
「しゃあッ!」
気合一発。天歩の技能を用いて空間を蹴って、ハジメはサイクロプス(左)に向かってハイスピードで突進する。そのスピードをサイクロプス(左)は捉える事も出来ずに相手を見失い、気が付いた時には我が身に途轍も無い衝撃を感じ、たたらを踏んでいた。天歩から空かさず、サイクロプス(左)へと迫ったハジメは流れる様な動作で、豪脚による激烈な威力の高速回転蹴りをお見舞いしていたのだった。
豪脚によってその場から十メートル程も吹き飛ばされたサイクロプス(左)は頭からもろに地面へと強かに叩き付けられて、憐れな格好でダウンを喫してしまった。その姿は恰も車田落ちの如く。
「決まったぜリアル竜巻旋風脚!あのデカブツを一発で吹っ飛ばしたとこを見ると、連撃のケンのタイプじゃ無くて一撃必倒のリュウのタイプだな。」
会心の一撃が極りハジメが気分良く嘯く。ダウンの衝撃にその身をピクピクと痙攣させながらよろよろと起き上がろうとするサイクロプス(左)を見やり、止めの一撃を食らわせようとハジメはドンナーを取り出す。
「狩って兜の緒を締めよだ。お前がスッとろいからって油断はしねぇぜ!」
ハジメの力を思い知りサイクロプス(左)は恐れ慄き、後退りつつ悪足掻きの様に再び我が身を硬化させる。先程ドンナーの弾丸を弾いた程の硬度なのだから簡単に攻略とは行かないだろう。しかしハジメもこの事態も想定していた様でその顔に焦りの色は無かった。
無造作にハジメは硬質化したサイクロプス(左)へと歩み寄る。そして腰にドンナーをしまい込み背嚢から替えの義手を取り出して交換する。へたり込む様に尻餅を付いた格好のサイクロプス(左)を眼前にして、ハジメは物言わぬ彫像と化したサイクロプス(左)に呼び掛ける。
「ソイツは謂わば自分の体を金属化しているのも同然なんだよな。この世界では鍛治をやるのにあまり火を使わないから、そう言う知識は無いかも知れないがな。俺達の世界は逆に錬成なんて技能は存在しないから、鍛治をやる為に火ってのが必要不可欠なんだよ。高温で熱する事で金属ってのは組成が薄くなる性質があってな。」
ハジメはそう言うと左手の義手をサイクロプス(左)の背後に回り込んで、その左側頭部付近へと持ってゆく。
「また、その性質を利用して鉄板なんかの切断加工も行っていてな。こうやって超高温の炎でたっぷり炙ってェ!」
義手の掌が展開して高温である事を示す青白い炎が放射され始め、サイクロプス(左)の左側頭部から頭部全体へと熱が伝導してゆく。魔法式を組み込んで酸素と化合した、摂氏五千度を超える炎がサイクロプス(左)の頭部を苛む。
「そして、細く収束させた高圧の酸素を吹き付ける事で温度差と酸化作用を利用して切断するんだ。こんなふうにな!」
ハジメの義手が放つ炎の中心部から長く伸び上がる超高圧の酸素の剣がサイクロプス(左)の頭部を無残に切り裂いてゆく。ボソボソと音をたてて酸素の剣がサイクロプス(左)の頭部を細く吹き飛ばし切り飛ばしてゆく。十数秒の時間を掛けてサイクロプス(左)の頭部は横方向に真っ二つに切り分けられてしまうのだった。
頭部を破壊されて完全に生命活動を停止したサイクロプス(左)の死体は力無くその場に沈む様に仰向けに倒れてしまう。恐らくは数百年の眠りから覚めたであろうに、その力を十分に発揮する事も敵わずに呆気なく。
「運がなかったな。これか、ガンダムファイトなら国際条約第一条!頭部を破壊されたものは、失格となる!だけで済んだんだろうが、生憎俺たち生き物は頭を失ったちゃ死んじまうからな。」
生命を失い、もう動かなくなった敵に、ハジメは
慰めにもならない言葉を掛ける。此処から先、ハジメはもう一仕事残っており、それを済まさなければならなく何時までも死んだ相手に拘っている場合でも無いのだから。腹をさらけ出して死に絶えたサイクロプス(左)の腹を風爪で掻っ捌いて、ハジメはその中から巨大な魔石を探して取り出した。
「よし、ビンゴ!」
その魔石の形も大きさもハジメが予想していた物ともピッタリと合致したのだった。同じ様に先に撃ち殺していたサイクロプス(右)にも同様の処置を施して魔石を回収し、その二つの魔石を扉の前の魔法陣へとセットする。何の抵抗も見せずに、拳大の大きな魔石は魔法陣の石板の窪みにピタリと嵌まり込むと直後に、魔石から赤黒い魔力光が迸ほとばしり魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして、何処からか、パキャンという何かが割れるような音が響き光が収まった。
「おおっ!」
同時に周辺に魔力が行き渡ってか、門扉の周辺に人工的な光が輝き周囲を明るく照らし出す。久しく忘れていた人工的な灯りに、ハジメは郷愁もあってかいたく感動を覚えた。
「さっきの音は間違い無く、封印の鍵的な物が外された音だよな。まぁ、最初っから中に行くつもりだったし。早速行くとするか………」
この扉の封を取り払う為に、サイクロプスの様なガーディアン的なモノを用意するくらいであるのだから、その扉の向こうにも恐らくは何らかの仕掛けがあって然るべし。用心は幾らしてもし過ぎると言う事も無いだろうと警戒しながら、ハジメはゆっくりとその扉に手を掛けて開いて行く。
扉の向こうに見える光景は、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りをしており、幾本もの太い装飾柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、室内に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。
その立方体を注視していたハジメは、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気が付いた。きちんと近くで確認しようと扉を大きく開けて光源を増やし、ハジメは油断無く周囲の確認を怠らずそれに近付いて行く。そして見付けた。見付けてしまったのだ。
「……だれ?」
それはかすれた、聞き取り辛いが、弱々しい女の子の声だ。ビクリッとしてハジメは慌てて部屋の中央を凝視する。すると、先程の〝生えている“何かがユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴きたててくる。それは紛れも無く人の姿をしていた。
「人………なのか……」
その“生えていた”何かは人の姿をしていた。
上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔から胸元付近だけが出ており、長い金髪が
「何だよこれ………」
流石にこの邂逅はハジメも予想外だったのか硬直してしまい、紅の瞳の少女もハジメをジッと見つめていた。その光景に、ハジメの中であの日の光景が過る。あの娘と初めて出逢ったあの日の光景が。
「あなた………誰?」
物言わぬ来訪者に怖ず怖ずとしながらも、少女はハジメに尋ねる。その声音にもハジメは何故か既視感と郷愁とを思い起こされた。
「と、通りすがりの一般人だ。」
「………一般人は、此処には、多分来れない。」
少女は目の前の少年から返された返事があまりにもこの場にそぐわない答えであった事に、少々“ムッ”とさせられるが、務めて平静に言い返す。
『そりゃそうだわな』とハジメもそれは自覚しているのだが、目の前の少女がどの様な存在なのかまだ解らない内に個人情報を晒すべきでは無いとの判断からそう返事をしたのだった。この異世界トータスには様々な技能が存在しており、名前を告げた途端に少女と自分との立ち位置が入れ替わっていたりとかありそうだなと、オタク的な危機感を抱いているが故に。しかしそれは置いて、やはりハジメはこの少女の事を知らなければならないとの気持ちは変わらず、更に問い掛ける。
「幾つか聞きたいんだが、アンタは何でそんな格好をしているんだ。見た感じ何処ぞのお嬢さんっぽい雰囲気が感じられるんだが?」
「助けてくれるの?」
眼の前の少年が発した言葉に少女は一縷の望みを掛けて、尋ねる。この機を逃しては二度と自分は此処から脱する事など叶わぬと。
「それはお前の返答次第だな。もしもお前がトンデモない大悪党で、何らかの大きな罪を犯してこんな所に閉じ込められているとか封印をしなきゃならない化け物とか魔王だったってんなら、その願いは聞き届けられない。」
そしてどうやら、眼の前に居る少年は、きちんとした倫理観を有している様で返答次第では助けてくれる可能性高いと思われる。ならば自分は素直に話すだけ。
「……違うっ、それは……私、悪く無い。」
「私、裏切られた、だけ……」
途切れ途切れに紡がれる少女の言葉を聴いていたハジメは、裏切られたと言う少女の言葉で己がどうすべきかは既に答えは出ていた。
「詳しく話してくれ。」
しかし何故裏切られたのか、その経緯を知るまでは迂闊な真似は出来ないと、少女に詳細を尋ねる。
しかし少女は話しだそうとせず、その事にハジメは多少苛つきながらも少女を待つ。
少女が言葉を発さないのは、単に永い時をこの部屋に封じられたった一人話す相手も存在しなかったが為に言葉を紡ぐ事が不得手になってしまったていただけなのだった。彼女自身は少年に対して自分の身の上の全てを語るつもりでいて、少し言葉に詰まりながらも少女は話をはじめた。
「私、先祖返りの吸血鬼、すごい力持ってる……だから国の、皆のためにいっぱい頑張った。でも……ある日家臣の皆……お前はもう必要無いって……おじ様、これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……此処に……」
少女の語る話に嘘は無いと、ハジメは其れが理解出来た。それだけの真摯さをハジメは少女の言葉から感じ取っていた。
「お前、何処かの国の王族だったのか?」
少女は首を縦に振り頷く。
「殺せないってなんだ?」
「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」
成る程ソレは吸血鬼あるあるだな。内心にハジメはそう感じながらも、確かにソレは凄いと認めながらもトール達と比べてどうなのだろうかとも思わなくも無い。だが流石にトールでも首をはねられては生きてはいられまい。
「確かにそいつは中々凄まじいな。すごい力ってそれか?」
「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」
ハジメは少女の言葉に納得する。魔物を喰ってから、魔力操作が使える様になった。身体強化に関しては詠唱も魔法陣も必要無いし、他に錬成などに関しても詠唱は不要だが。ただ、ハジメの場合、魔法適性が皆無なので魔力を直接操れても魔法陣は当然必要となる。尤もハジメの場合は術式作成と術式付与で、それをかなり簡略化出来ている上に、その物体に魔力を流し込む事で発動させる事が出来るのだが。
「助け……て……」
それだけ知れればハジメには十分。眼の前の少女を助けない理由は無い。あの日出逢った彼女と、そして自分とも似た境遇にある眼の前の少女を。
ハジメは迷うこと無く少女を捕える立方体に手を置いた。少女はその意味に気がついたのか大きく目を見開き少年を見る。ハジメはそれを一瞥して錬成を始めた。
ハジメの魔物を喰ってから変質した赤黒い、否、濃い紅色の魔力が放電する様に迸る。しかしイメージ通り変形する筈の立方体は、まるでハジメの魔力による干渉に抵抗する様に錬成を弾く。コレはまるで迷宮の上下の岩盤の様だと、ハジメは一層で試した事を思い出す。だが、全く通じないわけではないらしく、少しずつ少しずつにじむようにハジメの魔力が立方体に侵食する。
「ぐっ、抵抗が強いな。だが、今の俺ならコレくらいッ!」
元から高かった上に魔物を食らい更に上昇した魔力の大半を注ぎ込んで、ハジメは力押しで錬成を掛ける。魔力量にして既に最上位クラスを遥かに越える魔力量だ。爆発的に輝きを増す紅い輝きに、少女は目に希望の色がありありと浮かぶ。少女はこの光景を一瞬も見逃さないとでも言うように、ジッと見つめ続ける。そして。
少女の周りを覆う封がドロリと融解したように流れ落ちていき、少しずつ彼女の枷を解いていく。
トールに比べればささやかながらも、それなりに膨らんだ胸部が露わになる。次いで腰、両腕、太ももと彼女を包んでいた枷が流れ出す。一糸纏わぬ少女の裸体はやせ衰えていたが、それでもどこか神秘性を感じさせる程に美しかった。
身体の全てが解き放たれ、女の子は地面にペタリと力無く女の子座りで座り込んだ。どうやら立ち上がる力も無かったらしい。それはそうだろう、いくら不死の存在と言えども栄養を摂る事が出来なければ十全な力を発揮出来よう筈もないだろう。
ハジメもそれは同様で、疲労からその場に座り込んだ。肩で喘鳴の様な息をし、エンプティ・ゲージが点灯している魔力のせいで、激しい倦怠感がその身を襲う。
「………ありがとう……」
呼吸を整え、ポーチの中からポーション水を取り出し飲もうとしていたハジメの手を、少女は両手で大切なものに触れる様に掴むと己の胸元付近で抱えて、包み込む様に抱きしめて感謝の言葉を告げるのだった。
その言葉にハジメは、やはり自分の行いが間違いの無いものだったと確信する。目の前の少女の安らぎと神聖さを感じさせる表情に安堵しながらハジメは左手の義手でポーションを取り出しながら、優しい笑みを浮かべていた。
「おう、どう致しまして。すまんが、チョット待っててくれるか、コイツを飲んどかないと、魔力が空っ欠なんでな。」
少女に応えてハジメはポーション水を指し示し、封を解いて一口に煽るのだった。
遂に出逢いました原作のメインヒロイン様。