南雲さんちのメイドラゴン   作:佐世保の中年ライダー

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第四話

 

 眩い閃光に視界を白く染められ奪われて、夢現の虚無の様な空間に追いやられたかと思えば其処で不可思議な感覚を味わされ、更に再び視界が一面の白に染められる。

 やがてその白い閃光もゆっくりと薄れゆくと、視覚が暫しの間奪われていたその役割を徐々に取り戻し始める。

 それと同時に其れまでは気が付かなかった事だが、聴力もまた徐々にクリアになりはじめている様だ。周りのクラスメート達のガヤガヤとした声が聴こえる。

 

 『ああ、そうだったな。あの魔方陣は教室の中で発動したんだから、みんなが巻き込まれていてもおかしく無いよね』

 

 思考能力の方もまだ視力同様に若干薄ぼんやりとしてはいるが、その程度の思考は働かせる事が出来る様でハジメはそんな事を心中に思う。それからほんの僅か数秒程度の時間でハジメはその働きのあらかたを取り戻した眼で周囲を見渡し、そして完全に常態に戻った思考能力とで自らの置かれた状況を確認する。

 

 『明らかに知らない場所だ。て事は転移とか召喚の魔方陣だったんだな、さっきのは。しかし何処だろうな此処は』

 

 明らかに先ほどまで自分達が居た教室ではないその場の光景に、ハジメはそう結論づける。

 しかし自分と同じ様に周囲を見渡すクラスメート達は自らが置かれた状況をハジメ程には達観して受け止める事が出来ていない様で、不安気な様子で周りの状況を確認してはそれを共有しようと思ってか、ちらほらと話し合っている者もいる。

 ハジメ達が今居るその場所は、美しい白亜の天井があるしその場を照らす照明器具的なモノもある様で依って室内だと云う事は伺い知れる。そしてその周囲だが先ずは、大理石だと思われる材質の壁や神殿作りの精緻を尽くし装飾された柱に巨大な壁画に絵画が飾られ、更には不可思議な文様や文字らきし意匠が彫刻された広々としたかなりの規模の建造物の様だ。

 そしてハジメ達が今立っているのはその様な空間内にあって、床が高くせり上がった舞台かもしくはステージ上とでも形容出来そうな場所であった。

 

 『あまり詳しくはないけど、建築様式的には昔の地球上のモノとあんまり変わらないみたいだよね。でも少なくとも、今まで目を通したメディアとかでコレと同じ物は視た事が無いと思うな』

 

 インターネットの画像やテレビ番組の世界紀行バラエティなどで今居るこの場所、建物内の装飾品を視た事は無いとハジメの脳内の記憶野にはファイルされていない様だ。まあ然程興味のある分野では無いから若干あやふやではあるのだが。

 

 『だからって事は無いんだろうけど、地球上の何処かの国の歴史的な建造物なんて事は無さそうだな。それに“彼ら”の存在からして何だかヤバそうな集団っぽく感じるし。いやでも僕が知らないだけで、やっぱり此処は何処かの外国の建物と人達だって可能性もあるのかもだけど』

 

 ぶつぶつと呟きながらこの状況について思考をつづけ、この場で視たものから状況分析を続けるハジメだが、此処で一つ説明しよう。

 

 それはハジメが今し方この場を確認して見留めた“彼ら”について。

 

 それはハジメ達が無法にもいきなり呼び付けられた、このステージの足下に集う一団の事である。その一団の事を大まかに説明すると、外見は華美にならない程度に金糸の刺繍が施された法衣の様な衣装を身に纏い、その傍らには錫杖を床に置いて恭しく跪いている。ざっと見渡し人数を数えると、大凡三十人前後程の人達がそうしている。

 彼らのその姿勢からしても、何処からどの様に捉えても一般の人では無いと云う事は察しが付くと言うものだろう。且つまたその衣装からも同様で、例えるならばカルト的な秘密結社とか宗教団体とかだろうか、しかもかなりの時代がかった。

 この様に自らが置かれた現状それらの状況を鑑みて、ハジメは自分なりに答えを導き出してみる。ただし今のところは情報が少ない事もあり確定とまではいかないが。

 

 『だとしたらアレはきっと、彼らが行った召喚の魔法だったんだろうな。断定するには早過ぎるかもだけど、まあ十中八九間違い無いんじゃないかな。そして多分』

 

 おそらくは彼等は神官なのだろうなとハジメは自分でも何故なのか解らないが、この状況を冷静に分析し推察を進める自分に微苦笑する。

 

 『此処で僕がパニクらないのもトール達のおかげだな』

 

 トール達との出会いがあればこそ異世界と云うモノが実在していると知ったし、魔法や魔術も現実にある事を知った。そして多分、此処は地球でもトール達が居た世界でも無いのだろうともハジメは検討をつける。

 

 『もし此処がトール達の世界ならもしかしたら今頃トールがこの場に現れてくれているかも知れないだろうしね』

 

 その事だけはハッキリと断定出来る、ほんの一年程度の時間だけれども彼女はハジメにとって、否南雲家みんなにとって間違い無く大切な家族なのだから。そして彼女も間違い無くみんなを家族と思っていてくれる。

 

 「ようこそ、トータスへ。勇者様並びにご同胞の皆様。歓迎致しますぞ」

 

 ハジメがこの場で一人推察を進めていると、それを遮るかの様に神官の一団から一人の男が進み出て口上を述べ始めた。

 一団の中でも一際豪奢で煌びやかな法衣を纏い、無駄に長く華美な意匠を施した烏帽子を被った齢七十代程と思われる老爺、と言うには覇気とでも云えばよいのだろうか、その様な雰囲気を醸し出す老人。

 

 「私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後宜しくお願い致しますぞ」

 

 異様な程に眼力もあり精強さも感じさせる、明らかに油断ならない上に一筋縄では行かないと印象付けさせる老人。その老人がハジメ達を指して、そう言ったのだ。

 トータスと言うのがこの国なのか或いは世界なのか、多分後者なのだろう。それから勇者というあからさまに出来過ぎな呼称で、ハジメ達の中の誰かを指して呼ぶところから。

 

 『っ…勇者とその同輩と来たか!そして聖教教会に教皇なんて肩書が出てきたし、百パー宗教がらみと言うか宗教が主体で行った無法な行為だよ。うん間違い無いね、絶対にコレはあかんタイプの異世界召喚だ。ハァ……どうしたものかな』

 

 などと、勇者召喚に巻き込まれ、異世界でテイムした魔物達に得意な料理を振る舞うサラリーマンと同じセリフを思い浮かべていた。

 

 

 「さて、この様な場所ではろくな話も出来ますまい。ゆっくりと落ち着いて話が出来る部屋を用意しておりますので、勇者様もご同輩の皆様もそちらへ参りましょうぞ」

 

 好々爺然とした態度を崩さずにイシュタルはハジメ達にこの場からの移動を促す。因みにこの世界に到着して後、状況の推察を続けているハジメの隣には遠藤が居り、幾度かハジメに呼び掛けていたのだが、彼の呼び掛けにハジメが気が付く事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その身に認識阻害を施し、愁の会社から飛び立ったトールはハジメの通う学校へと程無く到着した。ドラゴンの羽を背中に展開した状態で校舎の屋上くらいの高さに滞空し、眼下の構内の様子を強化した目と耳とを用いて確認をはじめる。

 そして気が付く。この場に居るはずの、トールにとって何者にも替えの効かない最愛の少年の存在が感じられない。その事にトールは激しい焦燥に駆られそうになるのだが、現状この場で何が起こったのかがまるで解らず、手の打ち様も無いのだから先ずは情報の収集こそを優先せねばと、トールは周囲に気を巡らす。

 

 『本当なんです!私が廊下を歩いてたら突然教室の中が光り出したんです。それでその光が消えたと思ったら教室の中のみんなが消えていたんです!』

 

 『そっ……そんな事を云われてもだね、そんな非現実的な事を、はいそうですか等とおいそれとは言えないんだよ事が事だけにね。先ずは警察に連絡を取って力を借りなければ………』

 

 すると一人の女子生徒と教員らしき中年男性との会話をトールの研ぎ澄まされた聴力が捉えた。どうやらこの学校の教職員達も異常事態が起こったと言う事事態は認識している様だが、魔法や魔術の存在を知らぬ人類では彼女の証言も意味をなさない。

 

 『先生私っ、嘘なんか言ってませんッ!本当に本当なんです……』

 

 教職員になおも言い募る女子生徒を他所に、職員達は関係各位への連絡を優先し誰もが忙しなく動いている。女子生徒は己の言葉を信じてもらえない事、そして自身が目撃した驚異的な事象に不安をつのらせ今にも泣き出しそうな表情をしている。

 

 「くっ、どうやら召喚魔術が使われた様ですね。しかもハジメさん達が連れ去られた………おそらくは此処とは違う異界に!」

 

 魔力の発動、突然消え去ってしまった生徒達、会話から拾ったその情報を元にトールは何者かにハジメ達が連れ去られてしまったとの答えを導き出した。

 

 「数え切れない位に無数に存在する異界からその世界を特定するなんて容易にはいきませんけど、幾つか除外出来る条件もある。だけど!」

 

 ”ビシィィッ“と眩ゆ過ぎる幾筋もの雷光が空に輝き、耳を劈く雷鳴を伴ってこの場に響く。それはトールの昂る感情の発露である。

 

 トールにはこの事件の首謀者が何のつもりで召喚の魔術を使用したのか、その理由は解らないし理解しようとも思わない。しかしかけがえのない家族であるハジメを、この件に巻き込んだ犯人に対しての怒りが込み上がってくる、破壊的衝動に囚われそうになり全てを消し去ってしまおうかと。

 だが、はたと気が付きトールは自分の感情を極力抑えて努めて冷静であろうとテンションをクールダウンさせる。

 

 「くっ、まあ良いでしょう。もう此処で得られる情報はあまり無さそうですしね。取り敢えずは今は父様と母様と合流しましょうか」

 

 滞空状態から踵を返しトールは元来た方角、南雲愁の会社へと向かい飛び去って行く。

 しかし、この判断によりトールはこれから後の数週間を無駄に過ごす事となる。それは何故か、実はハジメ達の教室にはこの事件の重要な手掛かりが残されていたからであり、その存在が公になる頃にはトールは数多在る異世界の探索に出立していたからである。

 まあ尤もトールがこの場に残りハジメ達の教室を捜索したとしても、機械文明の産物である電子機器などのツールにまでは目を通さなかっただろうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     

 場所を変え、ハジメ達はその神殿造りの宗教建築物の大広間に案内された。幾つもの高級感漂うテーブルと椅子が設えてあり、更には先程まで居た召喚の間と同様に絵画や骨董品や宝飾品などが飾られた、如何にもな空間だ。

 その大広間の壁際、センター付近に設置されたテーブルのその中央の席所謂お誕生日席に教皇イシュタルが収まる。その後背左右に一人ずつ側近の様な立場であると思われる神官を従えて。

 

 「お茶をお持ちしました、どうぞお召し上がりくださいませ」

 

 「ん?ああ、ありがとうございます」

 

 ハジメ達、日本から召喚された生徒達と畑山愛子教諭ら全員は、用意された席に各々着席し教会側が用意したお茶と茶請けを受け取る。しかもそのお茶をハジメ達への受け渡しを担当しているのは、何とも衣装も所作もその容姿さえも加えて全てに於いて洗練されたプロのメイド達だったのだから驚きだ。

 

 『へぇ凄いな、まさか異世界にもメイドが居るなんて。まあ僕はジョージーさん程詳しくは無いけど多分この人達の衣装って地球の物とそれ程違いは無いんじゃないかな。と言うかジョージーさんがこれを見たらどんな反応を示すか、ちょっと興味あるな』

 

 一礼した後、ハジメは優雅に職務を熟すメイド達に感心してみせると少しだけ場違いな想像をしてしまうが、『いかんいかん』と首を左右に振り気を引き締めて再び推察をはじめる。先ず、ありきたりだが思い当たる一つ目は、イシュタルがハジメ達の内の誰かの事を称して勇者と呼んだと云う事実から、昔ながらのロールプレイングゲームよろしく魔王とか邪神の討伐を勇者パーティーにやらせようとしているのではないかと。

 

 『う〜ん、流石にそこまでありきたりじゃ無いかなぁ?』

 

 自らの推論に自らが駄目出しをして、ハジメは用意されたこの世界のお茶を一口啜る。見た目は兎も角味の方は案外悪く無かった。

 

 『まあコレは考え付く内でも楽観的なヤツだしね、おそらく実際はもっと碌でも無い事を言ってくるんだろうな』

 

 何とはなしに、ポリポリと右手人差し指で顎を搔きながら更にハジメは推察を続けようと改めてお茶をもう一口啜っていると。思い掛けずも左隣から声を掛けられた。

 

 「なあ、南雲。これから俺達どうなってしまうんだろうな」

 

 微かに不安な気持ちが顕れた、沈み気味な声音でハジメに尋ねてきたのは、存在感の薄さに定評があり過ぎる同級生。

 

 「そうだね……まあ多分あんまり気分の良いものじゃ無いのは確実だとおもうよ。だから遠藤君も今の内から覚悟っ、て遠藤君居たの!?」

 

 「居たよッ!てかこのパターン今日だけで二度目だよ。お笑いの芸じゃ無いんだから同じネタを擦るの止めてね!」

 

 このトータスへと喚ばれてから遠藤は何度もハジメに呼び掛けていたのだが、何時もの如く彼の存在感の薄さから気付いてもらえなかった訳だが、それが漸く反応を返されたのかと思えばこの対応。遠藤で無くともこんな反応を示されれば泣きたくもなるだろう、まあしかしハジメの遠藤に対するこの対応を少しばかり擁護するのであれば、遠藤の常からの存在感の薄さに加えていきなり知らぬ間に見知らぬ場所へと転移させられてしまったが為に遠藤自身の声音に、そんな不可思議な現象を体験させられた事による不安な思いが宿ってしまい、それが何時にまして彼の声が聴き取り辛くなっていたと云う理由だ。

 

 「……うぅっ……何かゴメンね遠藤君」

 

 悲しみの泪をちょちょ切らせる遠藤に対しハジメは宥めつつ謝罪の言葉を述べると、直ぐに遠藤も気を取り直してハジメと二人でこの状況についての意見交換をはじめる。

 とは言えどもその話とは、ここに拉致られて後今迄にハジメが推察してきた事を遠藤に掻い摘んでササッと伝えるだけだったが。

 

 「すげぇな南雲。みんな内心パニクってる中で其処まで考えていたのか……」

 

 遠藤はハジメからの説明を受けると心からの称賛の言葉を贈る、その賛辞の言葉は嘘偽りの無いモノであり、それを受け取った側のハジメは何だかその言葉に座りの悪さを感じる。

 

 「いや、まあ僕ってほら基本オタクだからこう言う状況に置かれたらつい、色々と考えを巡らせてしまうんだよ……あはは……」

 

 それは何故か。トール達との出会いによって魔法や異世界や人外の存在と云った諸々の、地球上では非現実的だと思われているだろう事が事実として存在している事を知っているのだから。

 それらを知っていると云うアドバンテージがある自分だからこそハジメは割合冷静で居られるのだと。

 

 「さて、皆様方もそろそろ精神もいくらかは落ち着かれた事でありましょうかな」

 

 遠藤とハジメが二人で現状のすり合わせを始めて間もなく、イシュタルの多少加齢により嗄れてはいれども朗々としてよく通る声が響き、この場に参じた皆の注目を集める。

 確かにクラスメート達もお茶と茶請けを口にし、厳選されたであろう見目麗しい妙齢の美しいメイド達の所作に見惚れたりとした事で多少落ち着いている様だ。

 

 「先ず、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

 自らに皆の注目が集まった事を、この大広間をゆっくりと見渡してイシュタルはフッと一旦表情を緩めて好々爺然とした雰囲気を醸し出してから、そう告げる。

 

 『やっぱり、上手いな。語り口に緩急や強弱を付けた上に表情をその場に合わせて作り出して、自分に注目が集まる様に演出しているんだ。こう言うのを経験に依って培った老獪さって言うんだろうな』

 

 イシュタルのもつ巧みなテクニックには称賛を贈るが、でもこれから彼の口から語られる話は碌なモノでは無いんだろうなとハジメは警戒を緩めない。そして案の定、イシュタルが告げる話はハジメの予想から大きく外れる事無く碌でも無い、身勝手でどうしようも無く呆れ返る様なモノであった。

 

 曰く、この世界は地球とは違う異世界であると言う事。

 

 曰く、この世界にハジメ達を召喚したモノはこの世界の創造神であり唯一絶対の神である、エヒト神だと言う事。

 

 曰く、この世界には人間族に魔人族に亜人族と云う、大まかに分類して三種の種族が存在している事。

 

 曰く、彼ら人間族と魔人族との間で数百年に渡り終わり無き戦争が続いていると言う事。

 

 「此れ迄は数の上で我ら人間族が有利でしたので総合的な戦力は魔人族と拮抗しておったのですが…」

 

 つい最近になって、魔人族側が此れ迄は不可能だと思われていた魔物の大量使役を行い始め、その均衡が崩れてしまい天秤が大きく魔人族側に傾いてしまったと。

 

 「であるからして、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています」

 

 ハジメの世界である地球を含む宇宙世界が、この世界よりも上位にある。つまりは世界の格が上と言う事だが、以前にハジメはルコアにそう言った話を聞いた事があった。

 その世界の文明や文化、その世界に住まう生物の心身の成熟度や精神性。その世界の開闢から経過した時間などにもよって、世界の格が上がるのだと。それに加えて、その世界を管理する神の神格も其処に加わるのだとか。

 神の存在なんてと、ハジメはルコアの話を聞いて最初はそう思ったのだが、トールやエルマ達から実はルコアが元は神の座にあった存在だったのだと教えられ、且つルコアの竜化した姿を見せられてからハジメは神も実在しているのだとすんなり受け入れることが出来たのだった。

 

 そのルコアの話を参考にこの世界の事を評するならば、このトータスと云う世界は地球よりも文明文化も住まう存在の精神性も成熟度も、管理する神の神格も総てに於いて未熟もしくは惰弱な世界であると言う事だろうか。

 

 「召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですあなた方という〝救い〟を送ると。ですのであなた方には是非その力を発揮し〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたいのですじゃ」

 

 だから、この様な無法で無体な事を行い、あまつさえ己等の世界の問題を異世界の人間に、それも年端も行かぬ幼い少年少女に押し付けるが如き言動をさも当然の様に、何食わぬ顔で言ってのけられるのだろう。

 ハジメはこのイシュタルの、神託とやらを受け取れ、それを勇者とやらに告げると言う役どころを与えられた己に陶酔、否泥酔しきった狂信的な眼差しに薄ら寒さ以上の不快感を感じずにはいられなかった。

 

 そしてこう思うのだった。

 

 そんな悪酔いしかしない性質(たち)の悪い安いアルコールなど、さっさと抜いてしまえ、と。

 




作中トールが雷を放った様な描写がありますが、雷ならカンナだろうと思われるでしょう。
あの描写はトールの怒気と魔力が大気中に放出された事によって起こった現象だと思っていただければ。

ニンジャ0号様、LeonardRuin様、椿桜様、華奢あ〜ん様、パンツマン様、小面様、新たに高評価ありがとうございます。
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