南雲さんちのメイドラゴン   作:佐世保の中年ライダー

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お久しぶりです。
構成力の無さから無駄に長くなりました、ご了承ください。

新たに☆9、☆10評価をいだきました、神祖様、アルシェレウス様、琉球紫様、memetoranuau様、ありがとうございます。


第四十一話

 

 南雲ハジメはすごいヤツだった。この右も左も分からない異世界で、自分達を戦争の道具として使い倒そうとしている異世界人達を相手に、その相手の出方を推察し的確に対応し、自分達が消耗品として扱われない様にと、相手に対し卓越した知識と技術により己の有用性を示し、王国内にある程度の地歩を築き上げるまでに至ったのだ。本当に大した奴だと遠藤浩介は思う。

 

 あの日、遠藤は、勇敢にも自らを囮として皆を逃がす為に一人恐ろしい化け物と対峙し、これを見事に足止めして皆を生還させる為に囮となり、奈落の底へと消えて行った友に対して何も出来なかった事を酷く後悔していた。

 

 『南雲、俺達とうとう今日、迷宮に再挑戦する事になったよ。だから見ててくれよな。』

 

 迷宮受付け前の広場の一角で引率のメルド団長の言葉を聴きながら、遠藤は今は亡き友に心の内で語り掛ける。悪夢の記憶をクラスメイト全員に深く刻み込んだ因縁の化け物『ベヒモス』を斃し、その先へと進む為に、戦う意思を失わなかった者達は三ヶ月の間鍛錬を積んで来た。

 ある者は、心から異世界トータスの人類の為を思い。ある者は、生き延びて日本へと帰還できる日を夢見て。ある者は、無茶を仕出かしそうな友人をフォローする為に。またある者は、心の内に邪な思いを潜めながら。そして。

 

 『でも俺は、こんなのは現実的じゃ無いかも知れないけど、俺はお前は死んでないんじゃないかって思ってんだよな。案外、得意の発明品で下層の魔物を相手に戦えてたりとか……………』

 

 遠藤はあの日消えて行った友が、今でも奈落の底で生き延びているのではないかとの、僅かな希望を胸に秘めて本日の実戦訓練に臨もうとしているのだった。遠藤は知る由もない事なのだが、それはハジメに想いを寄せる白崎香織と共通していた。尤も、その内の中の感情が恋心に友情と、それぞれに違いはあるのだが。

 

 『それに、そうでなきゃ俺達、トールさんや南雲の親父さんやお袋さんに、あわせる顔がねえよ。』

 

 遠藤の脳裏に一人の少女の姿が過る。存在感が薄く、人はおろか機械にさえも其処に居る事に気が付いてもらえないと言う、かなり不憫な特徴を持つ遠藤の事を、何時も気が付いてくれる南雲家のメイドさん。その彼女に遠藤はほのかな恋心を抱いていたのだが、当の彼女がハジメの事を誰よりも想っている事を知っており、その気持ちを捨て去っていた。

 

 メルド団長からの訓示も終わり、一行はいよいよオルクス大迷宮へリベンジマッチを行うべく、多少雑然としてはいるが、皆ひとしい足並みで迷宮の受け付け窓口へと向かい歩き始めた。その一行の最後尾を、影の薄い遠藤は何時もの如く仲間達に認知されること無く歩き出した。心の中でその事を少しだけ淋しく思いながら進んで行く彼の背後から、思い掛けず掛けられた声は、間違い無く彼の名を呼んでいた。

 

 

 

 

 白崎香織はこの日を待ち侘びていた。

 

 あの日、奈落へと墜落して行く想い人の姿を目の当たりにし、何も出来ずに只その名を呼ばわるだけの不甲斐ない自分。その弱さを克服するべく、親友や幼馴染達と共に鍛錬に励みこの日を迎えた。あの階層を越えて南雲ハジメを探し出して、共に日本へ帰る為に、そして彼に自分の想いを伝える為に。

 

 『絶対に行くから、だからそれまで、死なないでいてね南雲君!』

 

 メルド団長の訓示が語られる最中に、その言葉ももあまり頭に入らずに、彼女も遠藤と同様に心中にて消えて行った想い人に呼び掛ける。両手で持った杖を、彼女は何時しかグッと力一杯に込めて握り締めて自らの心を鼓舞する。

 

 『南雲君の心はトールさんへの想いでいっぱいなのは分かってるけど、私だって!』

 

 王国や教会はおろか、クラスメイト達までもが南雲ハジメを死したものとして認識しており、あまつさえ国葬までも執り行われたのだが、彼女はそう思ってはおらずハジメの生存を信じているのだ。絶対に彼を救いに行くと、そして自分の想いを彼に告げるのだとその思いをモチベーションに彼女は三ヶ月の月日を鍛錬に励んで来たのだ。

 そうして暫し行われたミーティングも終わり、騎士団を先頭に、迷宮の受け付けへと向かい歩き始めたその時。

 

 「やっと見つけましたよ遠藤さん!ハジメさんは何処ですか!?何処に居るんですかッ!!」

 

 後方より聴こえて来る思い詰めた様子の年若い女性が、クラスメイトの遠藤にハジメの行方について問い質す声に香織はハッとして、思わずそちらを振り返り見ると。

 

 「とっ、トールさんッ、何でッ!!?」

 

 その声の主に問い質され、素っ頓狂な声を上げる遠藤の姿があった。

 

 

 

 

 この事態を誰が予測出来ただろうか。遠藤に詰め寄りハジメの行方を問う、メイド衣装の背の高い女性の姿を、一堂は呆けた様に見やる。

 美しい金髪を長いサイドテールに纏めた、人間離れした美貌の少女。一年程前から彼等が住まう朧塚の町に現れ一躍町の人気者となった、クラスメイトである南雲家のスーパーメイド。

 

 「えっ!?ウソ、なんで?」

 

 「何でトールさんが!?」

 

 「うそ、トールお姉さま……本当に!?」

 

 あり得ない事態にクラスメイト達がざわめく。彼らからすれば、地球に居るはずの人であるトールが何故かこの世界に現れたのである。誰もがこれには驚かずにはおられまい。

 遠藤にハジメの消息を問い質すトールに、迷宮へと向かう足を止めてクラスメイト達のある者はざわつき、ある者は暫し呆然と眺めやる。それからややあって、幾人かのクラスメイトが遠藤とトールの元へと歩み寄って行き、どうして此処にいるのかとトールを質問攻めにしはじめた。

 

 「トールさん!どうしてトールさんが此処に居るんですか!?どうやって此処に来たんですか!?まさか誰かが召喚魔法を使って、それでトールさんが呼び出されたんですか!?」

 

 わらわらと自分の周りに集ってきたハジメのクラスメイト達に、トールはその勢いに鬱陶しさと少しばかりの苛つきを感じるも、ハジメの行方を彼らから聞き出す為にも、それを抑えて精神を冷静にと自らに言い聞かせるが、蟀谷が微かにヒクつくのを抑られないでいる。

 

 

 

 思わぬ人物の登場に感情が追いつかず、白崎香織は呆然と眺めやる。クラスメイト達が彼女の周りに集まって行く様を、思考が追いつかず目を見開き、言葉も無くして。

 

 『トールさん……どうして………此処に……』

 

 答えの出ない疑問を脳内で巡らせ、周囲の様子も気が付かないでいる香織、彼女が気が付かない間に幼馴染達もトールの側へと駆け付けていた。

 

 「香織、あのメイドの女性は誰なんだ、お前達の知り合いの様だが。」

 

 軽く香織の肩に手を添えて、メルド団長がトールの事を尋ねる。その声と肩にかかる人の手の感触に香織はハッと我に返る。

 

 「メルド団長………それは、その……」

 

 今だにトールがこの世界に居ると言う現実に思考と感情が追い付かない香織は、トールの事をどの様に伝えるべきか判断が出来ず言い淀む。

 

 「みんなの様子を見るに、お前達の知り合いだと言う事は分かるんだが。」

 

 言い淀む香織を気に掛けつつも、子供達の様子から件のメイドが子供達の知り合いだと言う事は想像するまでも無く理解も出来ようと言う物。故にメルド団長は何気ない態度でどう口にする。

 

 「えっと、トールさんは……ハジ、南雲君の家のメイドさんなんですけど………」

 

 其処まで団長が理解しているのならばと、香織は若干の躊躇いを覚えつつもトールが南雲家のメイドである事を告げる。彼女もまた日本に居るはずのトールが異世界であるトータスに来ていると言う現実に理解が追いついていないのだ。

 

 「何だとッ!?坊主の家のか、しかしそれがどうやってこの世界に………」

 

 香織の返答にメルド団長は驚きの声を上げるとトールに目を向けて、何やら複雑そうな厳しい顔付きとなり沈黙する。全話でも触れたが基本的に人の良いメルドは、ハジメを含む子供達の事に付いて思う所は多々あり、どの様な方法でこの世界に現れたのかは理解の範疇に無いが、その身内と思しき者の出現に胸中複雑な思いが掻き立てられる。

 

 

 

 

 わらわらと群がるハジメのクラスメイト達に苛つき、肝心のハジメの事を知りたいのに知る事が出来ないトールのストレスは加速度的に溜まって行くのだが、しかし彼らからしてみれば思い掛けない人物と出会ったのだから、その事に対する疑問もあればもしかしたら日本へ帰れるかも知れないのではとの思いもあり、テンションが上がるのと致し方無しだろう。だが、そんな彼らの思いなど事はトールにとっては二の次三の次である。

 

 「えぇい、鬱陶しいですねっ!そんな事よりもハジメさんは何処なんですか!?」

 

 ピシりと、力強くキッパリとした声音でトールはクラスメイト達の群れに、声を上げる。ぶっちゃける迄も無く、トールにとっては彼らの存在など二の次以下であり只何よりも重要な事はハジメの行方のみなのだ。

 

 「…………っ、それは…………」

 

 トールにハジメの事を問われた生徒達は一斉に押し黙ってしまう。それは彼女から発せられる恐ろしいまでのプレッシャーを、数カ月の間の戦闘訓練により幾らかは生徒達が感じ取れる様になった事もあるが、彼らの間にハジメが奈落の底へと落ちて行ったあの日の何も出来なかった自らの弱さを、改めて突き付けられた様に感じたからなのだろうか。

 

 「どうしたんですか皆さん黙り込んで。もう一度言いますよ、早く教えてもらえませんか?ハジメさんの事を!?」

 

 重苦しい程の凄みを効かせた声音で、トールは遠藤だけでは無く群がるクラスメイト全員に再度ハジメの事を尋ねる。遠藤も雫も龍太郎も痛ましげに表情を歪め、言い淀んでいるのだが。

 

 「トールさん。あのですね………」

 

 「待て遠藤。此処は俺が話すよ。」

 

 何時までも黙っている訳にも行かないと、遠藤が恐る恐るトールに説明を始めようとするも、其処に割り込む様に遠藤を遮り、しゃしゃり出てくる者がいた。自分の右肩に添えられた手の感触に遠藤はその人物に目を向ける。

 

  「あっ、天之河っ!?」

 

 彼の言葉を制したのは天之河光輝だった。悲痛な表情の遠藤と違い、俺に任せておけば間違い無いとばかりに、何処か爽やかささえ感じさせる表情を見せる天之河に。遠藤は少し不安を覚える。

 

 「貴方は………」

 

 その天之河にトールは眼光鋭く睨めつける。それはまるで、お邪魔虫が出張って来るなと言外に言っているかの様だ。しかしそんな彼女の内心など知らず意に返さずに、天之河はトールに向き直り少しだけ表情を引き締めて語り掛ける。

 

 「お久しぶりですトールさん。」

 

 ありきたりな定型文に演技掛かったそれは、彼に惹かれているモブな女子生徒達には受けが良く、黄色い声援が飛んでくるのだろうが生憎、トールの心を女子生徒の如く黄色く染める効果は、ほんの小さな塵一粒程の力も無かった。

 

 「まさかこんな所に貴方が居るなんて、一体どうやって此処へ来られたのか聞きたい所ですが、俺達はこれからやらなければ………」

 

 「五月蝿いッ!」

 

 そして聞きもしていない事をペラペラと語り始めそうな天之河の言葉を、トールはピシャリと一言の元に斬って捨てる。幾度かの顔合わせでこの男の為人を多少は知っているが、やはりこの男の所作は一々トールの癇に障りウザったい。なのでトールとしてはそれに付き合ってやる暇も義理も無いとの気持ちが爆発する。

 トールの身から溢れるプレッシャーに天之河だけでは無く、周りの者達も息を飲み込み押し黙る。何やら言葉にするのは難しいが、まるで心身をガリガリと削り取られてしまうかの様な感覚である。心底恐ろしいと、このプレッシャーを受けている誰もがそう思った。

 

「何度言えば解るんですかッ!?御託はけっこうです。それで、ハジメさんは何処に居るんですか?」

 

 加えて、圧の籠もった低い声音で響くトールの声に、恐ろしさのあまりガタガタと震え出す者まで出て来る始末だ。この様子では、そのうち失禁する者や気を失う者も出てくるかもしれない。それ程のプレッシャーをトールは発して周囲を威圧しているのだ。

 

「早く答えなさいッ!!」

 

 悠々としてしゃしゃり出てきたにも拘らず、プレッシャーにより押し黙ってしまった天之河に鋭い、眼光をぶつけてトールはその答えを迫るのだが。

 

 「う、ぐぅッ………そっ、そ……れ………」

 

 呻き、途切れ途切れに掠れた不明瞭な言葉ともつかないモノが、天之河の口から漏れる。トールから発せられるプレッシャーを恐れ、答えたくとも答えることが出来ないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 「なっ、なんと云う威圧だッ……」

 

 トールと生徒たちの群れから少し離れた場所から成り行きを見守っていたメルド団長だったが、突如発せられたトールのプレッシャーは、直接当てられている訳でも無い歴戦の猛者であるメルドさえもが気圧される程だ。

 

 『ただのメイドにしか見えない娘が、これ程の圧を発するとは……一体………だが!』

 

 『あの者が坊主の身内だと言うのならば、俺も無関係ではおれん。』

 

 しかし、慄きながらもメルドは生徒たちの身を案じ動き始める。重い足取りでトールの元へ向かい歩を進める。メルドと彼等との距離はほんの数メートルしか無いのだが、メルドは今その距離がとても遠くに感じられていた。しかし体感でなくその様に感じていたとしても、所詮はほんの数メートルの距離であり、現実としてはあっという間にメルドは生徒たちの元へとたどり着いた。

 

 『グッ、なん……と、近付くと、これ程……までとは……』

 

 しかし、近付いてみて改めてトールが放つプレッシャーの強さにメルドはより強い恐れを抱く。おそらくはこの世界に、この者に勝てる者はいないのではなかろうか。そして、誤ってこの者の逆鱗に触れてしまえばこの国は壊滅してしまうのではなかろうか。

 その様な事態になってはならない。メルドは慎重に事に相手を怒らせない様に、よりも子供達を守らなければならないと気を引き締める。

 

 「すまんが、その威圧を解いてくれないか。メイドの娘さん。そうでなくては誰も口を開けんのだからお前さんが求める答えも聞けぬだろう?」

 

 プレッシャーに抗い天之河の後背へと近寄り、彼の方に右手を置いてから、覚悟を決めてメルドは威圧を放つトールへと語り掛ける。

 

 「誰ですか貴方は!?」

 

 「これはすまぬ、申し遅れた。俺はメルド・ロギンスと言う。このハイリヒ王国の騎士団長で子供達の戦闘教官を務めている者だ。」

 

 眼光鋭く、ギロリと縦長の瞳孔を大きく見開き、メイドの少女トールは突然の闖入者に対して誰何する。言われて確かに自分が放つ威圧の前で、ただの人間が正気でいれる道理は無いと思い至り、トールは静かに放っていた圧を緩める。それに内心安堵しながらメルドは彼女に対して一礼し、自らの役職と立ち位置を包み隠さず少女に伝える。内心にそうせねばならないと、この者の前で一言の嘘でも言おうものなら、間違いなくその存在さえもが跡形もなく滅されるだろうと、冷や汗をかきつつメルドは理解する。

 

 「……貴方の言う子供達の中には、ハジメさんも含まれているのですか?」

 

 「ああ、その通りだ。」

 

 メルドから申告を聞き、トールは彼の目を見据えて問い返せば、彼は真剣な眼差しを彼女に向けて返答を返す。するとトールは、むすっと口をへの字に曲げて不機嫌さを顕にして彼に問いを続ける。

 

 「そうですか。所で此処にハジメさんが居ない様ですが、一体ハジメさんは何処に居るんですか?」

 

 肝心のハジメが此処に居ない事をトールが単刀直入に問い質すと、メルドはグッと顔を顰めて表情に悲痛さを滲ませる。しかし何時までもそうしては居る訳にもいかずメルドは重い口を開くのだった。

 

 「それなのだが………実はハジメの坊主は、三ヶ月前の実戦訓練の時にベヒモスと云う魔物から俺達を逃がす為に囮となり、その最中に……迷宮の奈落へと落ちて行ってしまったのだ、申し訳無い。謝ってすむ事では無い事は重々承知しているが、坊主の身内に対して出来る事が今の俺にはそれしか無い。申し訳無いお嬢さん、全ては俺の監督不行き届き故に起こった事だ、すまぬ。」

 

 詳らかに、メルドは事の経緯を語り謝罪の言葉を告げて再びトールに対して頭を垂れる。

 

 「ハジメさんが消息不明だと!」

 

 それを聞いたトールの口から、低くドスの効いた声が溢れ出し再び重圧が周囲の人々を襲う。更にはその周辺に幾十もの小さな紫電が迸り、賑わいを見せる通りの店の軒先の看板や売り物の金属製品にちょっとした被害をもたらす。

 

 「ひィッ!?」

 

 「きゃッ!?」

 

 突然の事に、至る所で人々の悲鳴や叫声が響く。一つ一つの被害は小さな物だが、関係の無い人々にとっては何の前触れもなく突如、瞬間的に起こった原因不明の災害に、対応など出来ようも無かろうと云うもの、ちょっとしたパニック状態となる。

 

 「無理矢理ハジメさんの日常を奪っておいて、戦いを強要し、その結果が消息不明……巫山戯るのもいい加減にしろッ!」

 

 慄きながらもトールに頭を下げ続けるメルドを前に彼女は怒声をあげる。頭部の両サイドに結わえた長い髪と長いスカートがブワリと、彼女の怒を顕したかの様に揺らめきはためき、紫電が迸る。彼女の怒りが発する波濤に、またしても生徒達が中てられてしまう。

 

 「言い訳のしょうも無いッ。君の言う通り、この世界の諍いに無関係の子供達を巻き込んだ事はこの世界の我々の無力さ故の事。この様な事で赦されようとは思わんが、俺に出来るのはこれだけなのだ。重ねて詫びる!本当に申し訳無いッ。」

 

 トールの怒りに恐れを抱き、微かに震えながらもメルドは必死に頭を下げもう一度詫びる。彼が言う通り詫びるしか無かった。

 

 「ほぉ、三カ月もの間、奈落とやらに落ちて行ったハジメさんを放っておいて頭を下げるだけで済ますつもりですか、呆れたものですね。」

 

 ふくよかな膨らみを持つ胸元で、トールは腕組みをしながら少し冷めた様な淡々とした、嫌味成分を多分に含ませた言葉をメルドに放つ。彼女の怒りと呆れの感情が、頂点を突破し突き抜けてしまったのだろう。

 

 「ぬぅ…………」

 

 淡々と告げられたトールの言葉は、あまりにも的を射過ぎておりメルドは彼女に何も言い返す事も出来ない。ただトールに頭を下げ続けるのみ。

 しかし、そんな彼の謝罪の言葉などでトールの感情を軟化させる事などあろう筈もなく、頭を下げている事で視界に入ってきたメルドの後頭部を不機嫌に睨み付ける。苛立たしげに何やら黙考しているトールだったが、とりあえずいったん気持ちを落ち着かせる為に一呼吸おいて、トールはメルドに声を掛ける。

 

 「先ずは、どうしてそうなったのか詳しく聞きましょうか。」

 

 トールは一刻も早くハジメの元へと向いたいとの逸る気持ちを抑えて、状況説明を聞くことにする。その言葉にメルドはサッと顔を上げてトールへと向き直り、真摯な眼差しを向けて一礼して頷き了承の意を伝えて三ヶ月前の事のあらましを語り始めるのだった。

 

 

 

 

 ハジメに殺意を抱き、悪意ある攻撃を仕掛けた小悪党、檜山大輔は焦りから背筋が凍え冷たい汗が滴っている。その顔は青ざめ口の中で小刻みに、カチカチと振動するかの様に上下の歯がかち合っている。あの日何が起こったのか、メルドがトールへと説明を始めた事により檜山はトールに自分がやらかしたヘマと、バレる事はないだろうがハジメに対して向けた悪意と悪行とが、もしも知られてしまったらと恐れ慄いているのだ。

 

 『ヤバイヤバイヤバイヤバイ………どうすりゃいいんだよぉ!?』

 

 今直ぐにでもこの場から逃げ出したいとの思いに駆られるが、この異世界において何不自由なく生活ができているのは、偏に召喚された勇者一行の一人であるとの立場故であり、それ故に王国により衣食住が保証されており、その庇護を失ってしまっては明日をも知れぬ身となる事は間違いなく、なので檜山にはその選択肢を選べる筈も無かった。

 

 『どうか、バレないでくれぇ〜ッ!!』

 

 内心で信じてもいない神を拝み、トールへ事の説明を行なっているメルドにどうか自分の事は上手く誤魔化して説明してくれと願う、何処までも自分本意なクズである。

 

 

 

 

 

 『一体どういう事よ、何であの人が。日本に居るはずの人がどうやって!?まさか、僕たち以外にもエヒトって神が召喚したのッ!?』

 

 そして、あの事件の経緯を知り檜山を利用しようとしている人物もまた、トールの突然の登場に内心に焦りを感じていた。裏で何やら画策しているこの人物の目的と計略とに、この後どの様な影響が現れるか、この時点では未知数である。

 

 『仕方無い、ちょっと動いた方がいいかな……』

 

 そう独り言ちて、その者は小刻みに震える檜山の後ろへと静かに歩み寄り、彼だけに聴こえる程度の声音で囁くのだった。

 

 

 

 

 メルドからトールはこの世界の境遇からハジメが迷宮で消息を絶つまでの経緯を聴く。メルドの後方に控える生徒達や騎士団員達が、メルドの語りに頷く。その様子からも、この男が嘘を吐いてはいないという事を、トールは理解し最後まで聴いてみる事にした。この世界で確実に地歩を築き、存在感を示したハジメの話を聞いた時は、流石は私のハジメさんです!と胸の内で頷く。

 一月程度の月日でそれをやってのけたのだからハジメは大した奴だと、メルドも騎士団員も高く称賛する。そんな日々の中でついに敢行されたオルクス大迷宮への実戦訓練。

 

 「そうしてトラップが発動し、俺達は六十階層へと強制転移をされ………」

 

 檜山がまんまとそれにハマってしまうのを止められなかった事を、酷く悔やむ様子のメルドは言葉に詰まりグッと拳を握りしめる。

 

 「なるほど、周りが見えない馬鹿者共が調子に乗り状況を引っ掻き回して、挙句に見え見えなトラップに引っ掛かってしまい、周囲の者までも危地に追いやったと………全く、一片の庇いようも無い。愚かにも程があるッ!」

 

 後悔の念に駆られ悔やむメルドに、トールは一瞥をくれながら皮肉を込めて吐き捨てる。言い終わるとトールは彼の傍らで土下座の構えを取る檜山に、殺意を込めた眼光を向けて睨めつける。この下らない愚物の軽率な行動が引き金となりハジメの身に厄災が降り掛かったのだ!叶う事なら今この場でその身をズタズタに引き裂いてやりたい。トールはそう思わずにはいられなかった。

 

 「…………………」

 

 土下座をしながら浴びせられるトールの殺気を全身に浴びせられている檜山は、その恐ろしさに正気を放り出して絶叫し、この場から逃げ出したい思いに駆られている。改めて彼女の発する殺気を全身に浴びせられる現状に、だらしなく小便を漏らしそうなほど震える。

 ほんの数分前、自らに接触を図ってきたあの者の入れ知恵により前回もまた、帰還後に王城で行った様に土下座による謝罪を二番煎じの様に実行してみたのだが、今はその事さえも後悔していた。逃げ出したくとも肉体に思う様に力が入らないのだ。

 

 「そして、転移させられた先に待ち構えていた悪意ある仕掛けの前に、そこから逃げ出す為にハジメさん一人に厄介事を押し付けて、他の者達はのうのうと逃げおおせたと言う訳ですか。」

 

 檜山の抱いている恐怖心など知った事かとばかりに、トールはメルドを先回りして単純化してその結果を告げてみせると、歯噛みしそうな苦い顔をしたメルドは返答する言葉に詰まってしまう。

 

 「……………」

 

 「ちょっと待ってくださいメルドさん!あの状況は仕方が無かったんだッ!俺達もまだ経験不足だったし、状況もちゃんと認識出来なかった。それに檜山だって、望んでトラップを発動させた訳じゃないんですよ。知らなかっただけなんです!」

 

 そのメルドの様子にまたしても、可怪しな正義感を発動させた天之河がしゃしゃり出て来て彼を庇いたてるのだが、なるべく事を穏便に済ませるべく動いていた彼からすれば、此処で天之河に出て来られるのは悪手でしか無い。

 

 「光輝、お前の言う事も確かにあの日起こった事実の一端ではあるだろう。だかな、その辺りも含めてお前達にきちんとした判断能力や心構えと言う物を教えてやる事が出来なかった、俺達の落ち度でもあるのだ。」

 

 自分の正面に立つ恐ろしいまでの威を放つ事が出来る、得体の知れないメイドの少女。もし迂闊なことを言おうものなら、我々など言葉を発する事も出来ずに瞬時に滅されてしまうだろう。国家の為にも人間族の未来の為にも、これ以上は一人たりとも生徒達を犠牲にしてはならない。

 ステータス上のスペックでは既に自分を上回っていようとも、まだ子供である天乃河達に多くの経験を積ませ戦いを生き残らせ、何れは彼らを元の世界に帰してやる。そのメルドの決意は固い。

 

 「だけどメルドさん!あの日からメルドさんは俺達にそう言う事も教えてくれる様に、教練の内容も改めてくれたじゃないですかッ!そんなメルドさんの教えを、これから俺達がちゃんと実践出来るってところを俺達ちゃんと示しますから…」

 

 しかし人の心の機微を読み取れない若すぎる天之河には、メルドの思惑など慮れずに感情論を繰り出してくる。その彼の意思や思い自体は間違ってはいないのかも知れないが、その様な些末な発言などトールが求めている答では無い。

 

 「ああもう鬱陶しいッ!いい加減、そんな茶番を聞いてる暇は無いんですよ此方はッ!もういいッ。単刀直入に聞きます、ハジメさんが消息を絶ったというその場所を教えなさいッ!!」

 

 茶番はもうウンザリとメルドと天之河との会話をバッサリ斬り捨て、トールはハジメが消えた奈落の場所を教えろと要求する。しかしその言葉があまりにも意外過ぎだと感じたのか、メルドと雫以外の者達がその言葉に愕然とした表情をトールに向ける。

 

 「なっ、何を言い出すんですかトールさん!?いくら何でも迷宮へだなんて危険すぎます。しかもただの女性である貴女が、迷宮へ行った所でどうなると言うんですか?」

 

 しかし、そこから逸早く復旧した天之河がトールを諌めるべく忠告めいたことを述べるのだが。

 

 「黙れ!相手の力量も測れない愚物が喋るな。引っ込んでいろ!」

 

 「なッ!?なにッ!?」

 

 口調こそ淡々としているが、もうこの愚物を視野の中に入れたくないとばかりに、トールは視線を向ける事もなく天之河を制止する。元から彼に対してと言うより、遠藤と八重樫以外のクラスメイト達に対して、あまり良い印象を抱いていなかったトールからすると、それは至極当然な対応なのだが、基本的にハジメ以外の者にその様な塩対応をされない天之河は不機嫌さを露わにする。

 

 「彼女の言う通りだ光輝ッ、控えていろ。」

 

 「しかしッ………くッ!」

 

 そんなあからさまに不機嫌さを表す天之河の態度に危惧を覚えたメルド団長が、直ぐ様彼を諫めて下がる様に促し、渋々と言った体で天之河が拳を握りしめて唸り悔しげに引き下がる。

 

 「その溢れる威圧の程から、お嬢さんが只者では無い事は十分に理解出来る。恐らくお嬢さんならば、かの世界の伝説の冒険者が打ち立てた記録も易々と越えられよう。」

 

 天之河とは違い実戦経験豊富であり、その経験から相手の力量をある程度推し測れるメルド団長はトールをそう評する。しかしその評価さえもがまるで無意味な程にトールの内包する力が異次元レベルにある事までは、流石に想像も出来ないのだが。

 

 「なっ、何を言っているんですかメルドさん。いくら何でもそれは大袈裟すぎじゃないですか!?確かにトールさんが強いって事は俺達の町でも有名だったたけど、だからって……」

 

 しかも天之河はこの世界に召喚され勇者としての能力を授けられ、更に三ヶ月程の期間を訓練に費やし自らの能力が日本で暮らしていた頃と比して数百倍以上も増している事を自覚しており、且つそれが自信に繋がっていた。その様な事もあり、自分の実力はトールよりも上なのだと見当違いの自己認識をしていたのだった。だがしかし。

 

 「光輝ッ、いい加減に黙りなさい!さっきから団長とトールさんの話に首を突っ込んであーだこうだと邪魔をしてッ!」

 

 「しかし雫ッ、俺はッ!」

 

 天之河よりも敏感にトールの内包する実力の程をハッキリと認識している八重樫雫が、声を大にして天之河に苦言を呈するのだが、そんな幼馴染の苦言にも反論を試みようとするのだが、雫はスッと右手を正面へとまっすぐに伸ばして天之河の眼前に掌を差し出し黙らせる。

 

 「はぁもうッ!何時までも現実を理解出来ていない貴方に言っておくわ。以前ウチのお祖父ちゃんが言っていた事よ、よく聞きなさいッ。お祖父ちゃん曰く、トールさんは『只人では無い、決して敵対する様な真似はするな』とね。」

 

 大きな溜息を一つ吐くと、キリッとした眼差しで天乃河を睨みつけて、トールの強さに対する一端を天之河に知らしめるべく、かつて祖父から告げられた忠告を天之河に伝える。

 

 「なっ……まさか、それ程なのか………」

 

 八重樫道場の総帥である雫の祖父『八重樫鷲三』の実力の程は、日本に居た頃の天之河には底が知れなかった。ただ鷲三が恐ろしい程に強いのだと言う事は、何となくだが入門当初から本能的に理解出来ており、そんな鷲三の事を天之河は尊敬しているのだった。 

 

 「トールさんは、そんなに凄い人だったのか。」

 

 その尊敬する師匠をして恐れさせる人物に、天之河は頼もしさや敬意にも似た思いを抱き始める。この人が居ればきっと、この世界の困っている多くの人達を助けられるだろうと夢想する。

 

 「マジかよすげぇッ、流石トールさん!」

 

 天之河の側でトールに対して土下座をかましていた檜山が、如何にもお調子者感丸出しで顔を上げてトールの顔を見ながら称賛する。しかしトールは以前より、この檜山と言う愚物がハジメに対して常日頃から嫌味妬み嫉みなどの感情をぶつけていた事を知っていた。そんな事もあり、この愚物からそのようなその様な態度を取られる事に嫌悪感を掻き立てられる。

 

 『何を調子に乗っている!この愚物は!!』

 

 そしてその怒心の嫌悪感に抗わず、トールは心底からの蔑みを表情に現し、ギロリと檜山を一睨みして黙らせる。序に殺気を加えたそれは檜山の心胆を寒からしめるに十分だった。

 

 「ひぃッ!?」

 

 それに当てられ情け無く小さな悲鳴を上げて腰砕ける檜山に、トールはもう興味も失せたと視線を外しメルド団長へと向き直る。そして目でもって返答を促す。

 

 「あなたほどの実力者ならば、迷宮へ赴くに当たり問題は無いだろうな。」

 

 トールの実力を認めたメルド団長はそう言うと、トールに対してオルクス大迷宮やその他付随する必要事項を手短にまとめて説明する。

 

 「と、言う訳で迷宮に入場するには本人確認の為にステータスプレートの提示が必要なのだが、君はそれを持ってはいないだろう。我々の側もあいにく今は予備のプレートを持ってきてはいないので、もし必要ならば冒険者ギルドの受付で冒険者として登録してもらう事になるのだが………」

 

 「なるほど、でもソレは必要ないでしょう。私は認識阻害の魔法が使えますから、それで受付には気付かれずに入場出来ますよ。」

 

 心配は無用と認識阻害の魔法を皆の前で実際に使ってみせると、一同から驚きの声が溢れる。突然目の前で、その人の存在が消え失せてしまったのだから驚くのも当然だろう。しかし日本育ちの生徒達は、それを見て疑問に思う。トータスに召喚されるまで魔法などフィクションの中のモノであったはずなのに、トールはそれを当たり前の様に披露してみせたのだ。一体トールは何者なのだろうかと。しかし彼らにとっては、これからあの忌まわしい迷宮のボス的存在であるベヒモスと相対するかも知れない事を思うと、トールの存在が頼もしく感じられるのだった。

 

 「さすがはトールお姉さま!鈴たちが知らないうちに、平然と当然みたいに魔法を使えるようになってるなんて、そこにシビれるあこがれるゥ!」

 

 女子のムードメーカーであり、心にオッサンを飼っていると称される谷口鈴がネタを交えてトールを称賛し、幾人かの生徒がそれに合いの手を入れると生徒達に笑顔が溢れる。因縁の大迷宮へのリベンジマッチを目前に、生徒たちの固さが僅かながらも取れた様で、監督役のメルド団長も内心で安堵する。

 

 『浮かれ過ぎるのは良く無いが、今くらいのリラックスムードなら悪くない。まぁ、コイツらもその辺りの事は分かって来ているだろうしな。』

 

 そう思いながら、そろそろ迷宮へと向けて出発の号令を発しようとしたその時、事は起こったのだった。

 

 「トールさん。貴女がどうやってこの世界に来たのかとか何故魔法が使えるのか、聞きたいとは思いますが今は問いません。ただ、力を持つ者として共にこの世界の為に戦いましょう。そうすればきっと死んだ南雲も喜んでくれるはずです!」

 

 「そっ、そうっすよトールさん!あの時しくじった俺が言えた事じゃ無いっすけど、絶対天之河の言う通り、南雲だってあの世で浮かばれるっすよ!」

 

 思わぬトールの能力の高さに感銘を受けた天之河が、よせば良いのにまたしても彼女を称賛すると調子に乗った檜山がそれに追従する。天之河が、にっこりと笑みを湛えて如何にもフレンドリーな態度を繕って、トールに右手を差し出して握手を求めているのだろうが、しかしこの二人の愚か者は気付かなかった。

 

 「………お前等今なんて言った!?」

 

 短く、その様に問われた言葉は、まるでミシミシと地鳴りを伴っているかの様な、異様な迫力を感じさせる恐ろしい声音だった。

 

 「えっ??」

 

 右手を差し出したポーズのままに脳内と口からは戸惑いと疑問符を露わにして、天之河とその隣で追従していた小者過ぎる愚者(檜山)が言葉を失いフリーズする。

 

 「今、なんて言ったかと聞いているんだ、この愚劣な下等生物がぁッ!!」

 

 普段の元気で明るく聡明で理知的な受け答えをするトールしか知らないハジメのクラスメイト達は、怒髪天を衝く勢いで失言をした二人に食って掛かるトールの様に驚き言葉を失う。先に彼女が周囲に対して威圧を掛けてきた時も少し強い口調で詰問して来たが、今の言葉と声音はそれとは違う、彼女の怒りが迸っていま。例えるならばそれはまるで、ロックを嗜むお嬢様達の如くに変貌したと言えようか。そんなトールに二人だけでは無く、他の生徒達もどう接すれば良いのか分からず、その答えも見出せずにいる。

 

 「どうしたッ!早く答えて見せろッ!!」

 

 「なっ、どうしたんですか!?何を怒り出したんですトールさんッ!?俺には貴女が何故怒っているのか分からないんですが、一体俺達が何を言ったと言うんですか?」

 

 ハッとしながらも硬直から解かれた天之河が、理由(わけ)が分からないとばかりにトールに問い掛ける。その隣では無様にも未だ硬直している檜山が青褪めた顔をしている。

 

 「自分達が何を言ったのか、たった今言ったばかりの言葉も憶えていない程に耄碌しているのか、情け無いにも程がある!」

 

 激昂し怒りを込めた言葉を相手にぶつけた事で幾許か冷静さを取り戻したのか、トールは少しだけ語気を普段に近しいくらいに和らげて二人に告げる。とは言え、その胸の内は未だ怒りが治まってはいないのだが。

 

 「では、私から言ってやろう!何がこの世界の為に戦いましょうだッ!勝手にこんな世界に拐かされて来たハジメさんがそんな事を望んでいる理由(わけ)が無いだろう。」

 

 トールの口から放たれた『勝手に拐かされた』との言葉に生徒達の幾人かは、ハッと気づかされる。そして声に出さず内心でトールの言葉に頷く。そうなのだ、自分達は相手の都合で一方的にこの世界に連れて来られ、その一方的な都合の為に望まぬ戦いの為の訓練をさせられているのだったのだと。

 そんな中で南雲ハジメは当初から、この世界のあり様や皆が置かれた立場や現状と言った諸々の事に警鐘を鳴らし、皆に対して自らの考えを持って行動する様にと促してもいたのだ。そんな人物がこの世界の人達の暮らしを憂うだろうか、その答えは否だろうとハッキリと言える。その事に天之河と檜山以外の生徒達は思いが至った。

 

 「トールさん……………」

 

 殊に、ハジメに思いを寄せている白崎香織などはトールの激白に共感さえ抱くのだが、心根が優しく面倒見が良い性格である事も然ることながら、この世界で数ヶ月を過ごし幾人かの知己も得ておりこの世界に対してのしがらみも出来ていた。そんな事もあり彼女はトールに共感しながらも全面的に賛成とは言えなかった。

 

 「当然、私からハジメさんを奪ったこの世界の為に働く事などある訳が無いだろうッ!」

 

 「しかし、俺達や貴女には力があるんですよッ、誰かを助ける事が出来る力が!なら俺達がやらなきゃいけないんです!」

 

 「何度も言わせるな!知った事かッ!!」

 

 「うっ………でも……」

 

 「大体、日本にいた頃から常日頃ハジメさんに対して、病的にまで批判的な態度を取って邪険に扱っていたお前達を私は気に入らなかったんだ。事ある毎に何かにつけてハジメさんの言葉やあり様を否定し下等で愚かな価値観で批判するばかり。しかもハジメさんの方に正当性や分があれば、むくれるだけで謝罪のひとつもしようとはしない。そっちの小物に至っては自分の愚かさを自覚出来ず常にハジメさんを侮辱し貶める始末。嗚呼全く、ハジメさんが止めていなければ貴様の命など私の手で刈り取ってやるものを!」

 

 「ひぃぃっ………」

 

 トールは毒の籠もった皮肉ったらしい眼で一瞥して天之河に対し、ハジメに対する彼らの言動を当て擦りつつこれまでに溜まっていた鬱憤をぶつける。そして次にハジメに対して以前より侮辱的な言動を取っていた事もあり、トール自身も蛇蝎の如く嫌悪していた檜山を“ギンッ”と効果音を発するかの様に怒りを込めて睨みつけ、更に右掌を顔の付近へと持ち上げてメキメキと骨を鳴らしながら、その気持ちを吐露すると、檜山はまたしても無様に小さな悲鳴を漏らす。

 トールの発する本物の殺気を受けてビクつく檜山に対して、イカれた義憤を発動させた天之河が無謀にも咄嗟に檜山とトールとの間に割って入り庇い立てる。

 

 「貴女はッ!正気なんですかトールさん!?いくら何でもそんな簡単に人の命を刈るだなんて、どうかしてますよ。そんな事は、人道的に許されて良い事では無いですよッ!」

 

 天之河は声を大にしてトールに意見する。本気の殺意を見せるトールを前に、その様に身を挺して仲間を庇い、怒れる相手に己の意見を言える事は、ある意味では彼の天職である“勇者”の名を正しく体現しているのかも知れないが、しかしトールを相手にするには、力量の差が圧倒的に開きがあるという事に気が付けない愚鈍で無知蒙昧なだけとも言えるのだが。

 

 「ハンッ!救いようが無い程におめでたい頭をしている愚者が、一人前に何を言う!不当にも下らぬ一方的な理由で拉致されて来た別の世界で、まんまと乗せられて、その世界の戦争に加担しようとしているお調子者の馬鹿にそんな事を言われる筋合いは無い!それに、戦うのならば、相手に危害を加えるのならば、当然逆撃を受け危害を加えられると言う覚悟を持ってなければならない事を理解しているのか!?お前はッ!!」

 

 「なっ!?」

 

 しかし、天之河の言葉にトールの心を動かす力など1ミリグラムたりとも在りはせず、アッサリと言葉による反撃を喰らい撃沈する。

 

 「この世界の神とやらが、お前達を召喚するに際して事前にお前達にお伺いでもたてたか!?自分の世界の人類が危機に晒されているから助けてくれと予め許可を求めてきたか!?そうでは無いだろう!何の了解も得ずに拉致同然に連れて来られただけだろう!」

 

 更にトールは生徒達全員に対して語りかける。トールの言う事も尤もであると、天之河以外の生徒達は口にこそ出さないが内心にはそう思っているが、しかしこの世界に召喚されて以後、それ以外に取れる選択肢が無く生き残る為に強くなる為に、そして帰れるかも分からないと云う現実から目を逸らす為に戦闘訓練に励むしか無かった事もまた事実。なのでトールの言葉に多少だが、腹が立つところがあるのもまた事実。

 

 俺達、私達が、生きる為に頑張って来た事を簡単に否定して欲しくは無い。と言った所だろうか。

 

 「まあ、けれどもこの世界に来てそれなりの期間居れば、何かしらのしがらみが出来ているかも知れないし、何かしら思う所はあるかもだけど、そんな事は私には関係無い。だからお前達がこれから先この世界で何を行おうと、どうでも良い。」

 

 「………………」

 

 しかし、そんな生徒達の思いも、トールに取ってはどうでもいい事と一刀のもとに斬り捨て、生徒達はトールのその言葉に何の反論も出来なかった。

 押し黙る生徒達に、トールはもう一瞥もくれる事なく溜め息を付くと、これで最後とばかりに彼らに告げるのだった。

 

 「私は、ハジメさんを迎えに行くだけだ!」

 

 そう告げて、トールはこの一団の指揮官であるメルド団長へと向き直り、案内を頼もうとしたその時に、またしても天之河が出しゃばり、トールにとって赦されざる一言を発した。

 

 「ですから、言いましたよねトールさん。南雲は“死んだ”んですよ!現実を見てください。」

 

 天之河としてみれば彼女を気遣うつもりでそう言ったのだろう。差し詰め、何時までも後ろを向かずに前を見て歩いて行きましょうよ!と言った感じなのだろうが。

 

 「“あぁッ”!?お前今なんて言ったッ!!」

 

 しかし、それは触れてはならないモノに触れてしまったも同然。力を込め瞳を大きく見開き、縦に長い瞳孔を更に細めて怒りを顕にトールは天之河を睨めつける。暫し緩んでいたプレッシャーが再び彼女の身から発せられ、周囲の者達をその殺気と重圧に慄かせ震え上がらせる。

 

 「で、です……ら、な……もは………だ……」

 

 その中にあって、問われた天之河は言葉を途切れさせながらも、返答を返そうとする。それはいっそ天晴と言っておこう。ただ単に相対する者の心の機微に鈍いだけなのかも知れないが。

 

 「それで、一体誰がそれを確認したんだ!?誰がハジメさんが死んだと確認した!巫山戯るなッ!ハジメさんは生きている!私とハジメさんとの繋がりはまだ途切れてはいない!」

 

 “ギンッ”と鋭い擬音を発しそうな強力な眼力で天之河を睨め付けトールは怒鳴る。そして釘を差す様に告げるのだ、自分とハジメとの間にある確かな繋がり、それが未だ途切れてはいないのだと。その言葉の意味を当然この場にいる者達は知る由もない。

 

 「な……を……訳……なこ……」

 

 尚も何かを言いたそうな天之河だが、トールが放つプレッシャーに気圧されまともに言葉を発せないでいる。その隣にはガタガタと恐怖のあまりその身を震わせた檜山が天之河に腰巾着の様に無様に張り付いている。そんな二人を見ている内にトールはその心が何やら虚しく冷めて行くのを感じる。

 

 「はぁ……私とした事が、分かろうとしない者に何を言っても無駄でしたね。」

 

 そして溜息を吐くと、ひどく冷めた口調で呟く。もう既に彼女のその目は無様な二人に向けられてはおらず、冷や汗を流しながら事の成り行きを見守っていたメルド団長へと向けられている。今直ぐにハジメが消息を絶ったと云う迷宮の階層への案内を、改めて要請する為に。

 

 「改めて、案内を………」

 

 天之河達を捨て置きメルド団長の方へと歩みを進めてトールがその様に要請を申し出た時だった。彼女のその発言を遮り、その声に被せる様にまたしても学ばない馬鹿が吠え盛る。

 

 「いい加減に、現実を受け入れたらどうなんですかトールさんッ!!南雲はもう三ヶ月も前に死んだんですよッ! 家族であった貴女がそれを受け入れ難い気持ちも分からないでは無いですが、それじゃあ檜山が言った様に南雲だって浮かばれませんよ!だから、死んでしまった南雲の為にも共にこの世界の為に力を合わせて戦いましょう!」

 

 懲りもせず学びもせずにまたしても、相手の気持ちも慮らない自己中心的な価値観による主張を、且つまたトールに対して言ってはならない事を自身も訳もわからないままに、堂々と叫ぶ様にぶつけて来たのだった。それは即ちハジメを死んだものとして扱う事。その言葉こそが何よりもトールにとって受け入れ難く、許されざる事である。しかし不思議なもので、ハジメの死を声高に主張する天之河に対して心の底から強い怒りが沸いて出て来るのにも拘らず、酷く心は冷めておりトールは至って緩やかな動きで自分の背後にて吠える天之河に一瞥をくれると右手を掲げ、天之河に感情の欠如した淡々とした口調で一言添をえて“パチン”とフィンガースナップを響かせた。

 

 「お前達はもう、黙っていろ………」と。

 

 その冷めきった声音に周りに居る生徒達とメルドをはじめとする騎士団員達も、背筋に途轍もなく重く冷え冷えとして凍えそうな空気を感じて言葉を失い“シン”と静まり返る。天之河への一瞥と共にトールの指先から打ち鳴らされたフィンガースナップ、所謂指パッチンの動作が一体何をしたのか、何を意味するものなのかとの疑問が皆の脳裏に過ぎる。そしてそれは当事者たる天之河と檜山も同様で、一体トールが何を思ってそれを行ったのかと訝しみ。

 

 「な………何を一体………っ!?」

 

 トールが今何をしたのかを問おうと口を開いた天之河だったが、言葉を発する毎にちょっとした違和感を感じ始めるのだった。最初はほんの少し何かが変だなと感じる程度だったが、時間を経る毎に天之河は息苦しさを感じ始める。それは彼の側で腰を落としていた檜山も同様であったらしく、彼も次第に息を荒げ始めていた。

 

 「ハァ……ハァ、ハ………?!」

 

 「ハッ、ハ………ハァ……カハッ!?」

 

 二人はひどく苦しげに途切れがちな呼吸を繰り返し、片手を地に付き胸元を押さえて苦しそうにしている。その二人の容態に周囲の者たちも何らかの事象が二人の身に起こっているのだと気が付き、それをやったであろうトールに恐る恐る目をむける。

 

 「おい止めてくれお嬢さん、光輝と大介に一体何をしたんだ!?」

 

 その異常な事態を重く受け止めたメルド団長は、トールに二人に対する仕打ちを止める様に要請すると同時に、彼らに対して何を行ったのかを慄きながらも問うのだった。

 

 「………この馬鹿共を黙らす為に、二人の周りの大気の組成を変えただけですよ。酸素を薄くして二酸化炭素を増やしただけです。」

 

 「………?」

 

 馬鹿二人に一瞥をくれてトールはメルド団長の問に答えるのだが、化学分野の発展が遅れているトータス世界の住人には大気の組成などの知識は持ち合わせていないのだが、苦しむ二人の様子からそれが怖ろしい事であると、理屈では無く本能的に理解出来た。

 

 「た……大気の組成を変える!?ト、トールさんまさかそんな事が出来るんですかッ!?どうしてそんなッ………」

 

 「この世界にトールさんが居る事が疑問だったけれど、まさかトールさんは………」

 

 その恐ろしさの程を知識として理解している生徒達の中でも成績優秀な雫や香織は、驚愕も露わに慄きつつもそんな疑問を抱く。

 

 「自分で言うのもなんですが、私は魔法に関するスペシャリストですからね。その程度は朝飯前ってなもんですよ。なんなら、一酸化炭素や硫化水素でもぶち込んでも構わないんですけどね。」

 

 そんな声が耳に届き、トールはそれを誇るでも無く淡々とした声で答える。尤もその答えは生徒達の疑問を解消する様な回答では無く、もっと空恐ろしい答えだった。一酸化炭素や硫化水素、化学的知識があればそれの意味するところがどういうことなのか容易く想像が付き、生徒達は顔を青褪めさせる。

 

 トールを怒らせたら、自分達は一瞬にして二人と同じ目に遭わされるだろう。今自らの主張を声高に張り上げトールにそれを押し付けようとした天之河と、あの日の南雲ハジメの危難の間接的にも原因を作った檜山とが、彼女の逆鱗に触れて苦しんでいるのだから。

 生徒達と騎士団員達があまりにも驚異的な魔法を駆使したトールと、その魔法を受けて苦しむ二人とを落ち着きなく右往左往するかの様に交互に見やる。そんな彼らの狼狽えざまを前にしてトールは淡々とした口調で告げる。

 

 「まあこの魔法をハジメさんは『大気変換破壊

魔法(オキシジェン・デストロイヤー(意訳))』と名付けてくれましたけど。」

 

 「えっ!?」

 

 その言葉は生徒達に新たな疑問を提示する事となった。それは即ち、南雲ハジメはこのトータス世界へと召喚される以前から魔法と云うモノの存在を知っていた事を表しているのだから。

 

 「トールさん貴女は………」

 

 淡々と事を行い解説を済ますトールに雫は改めてかつて祖父が言った言葉を思い出す。彼女に敵対してはならないと、その言葉の意味を雫は今まざまざと見せつけられたのである。その事に恐怖を抱かないはずも無く彼女は戦慄する。

 

 「トールさん、貴女の二人に対する怒る事は尤もだと思います。私だって南雲くんが死んだなんて思っていませんし、出来れば私自身で南雲君を助けに行きたいって思っています!ですけど今回だけは二人を赦してもらえませんか!?二人には後で私の方からもキチンと言っておきますから。どうかお願いします!」

 

 トールやハジメに対する疑問や恐怖感は抱いていれども、白崎香織は呼吸困難に陥り苦しむ二人の様子を見かねて、容赦を願う。大気の組成を思うままに変換できると云う恐るべき魔法を見せられても、彼女は持ち前の面倒見の良い優しい為人を発揮してそう願い出たのだ。

 

 「……………」

 

 トールは恐ろしさに小さく震えながらも、自分に対して願い出てきた香織の目を向けて無言で睨みつける。トールから発せられる無言の圧力に気圧されながらも香織は、その目をトールから逸らす事無く受け止める。そう言えばこの女は、日本にいた時から何かとハジメに対してチョッカイを掛けていたなとトールは思い出す。先に発したハジメを助けに行くとの言葉からも、彼女がハジメに対して好意を抱いている事は容易に想像がつく。そして、彼女が以前からハジメに対してチョッカイを掛けていたのは、その好意の表れだったのだとも。

 

 「トールさん私からもお願いします。あの二人の馬鹿さ加減に苛つかれているのは私にも理解できますけど、流石にこの場で命を奪うのは勘弁してやって下さい。」

 

 香織を前にして、何やら心中複雑な思いにかられるトールにだったが、其処に香織と馬鹿勇者天之河の共通の幼馴染である八重樫雫もが、香織と同じく愚か者達に対する赦しを乞うてきた。この娘は日本にいた頃より、ハジメや自分に対して何やら気を遣っていた節があったなと、トールは日本での事を思い出す。

 

 「はあ、そう言えば貴女は以前より何かとハジメさんに対して気配りをしてくれていましたね。」

 

 自分に対して頭を下げる雫を前にして、トールは少しだけ彼女に気遣わしげな声音で、思いだしたかの様にそう答えると、張り詰めていた気を落ち着ける。一年余りの日々を南雲家で過ごしたトールは、人間と言う種族に対して故郷の世界に居た頃よりも理解度を増していたのだ。それに、ハジメも以前からこの少女に対しては、それなりに信用も置いていたようでもあった事だしと、此処には居ない愛するハジメの面目の為にもと矛を収めるのだった。

 

 「まあ私としても早々にハジメさんを探したいですし、此処は貴女に免じて手打ちとしましょう。」

 

 パチンと再度トールはフィンガースナップで指を弾くと、天之河と檜山の周辺を覆っていた変換された大気が元に戻る。

 

 「ハッ……はぁ、はぁ………ハァァッ………」

 

 「フッは……はあはぁ、ハァ………」

 

 酸欠状態で呼吸もままならなかった二人は、薄れていた酸素を供給すべく、貪欲に呼吸を行い体内に酸素を行き渡らせる。流石にこれ程の魔法を掛けられては、いくら馬鹿者でもこれ以上はトールに対してチョッカイを掛けてくることも無かろう、無いと思いたいが馬鹿とは常人の思考の斜め下を行くモノであり、熱さが喉元を過ぎればまた何かやらかすかも知れない。しかし、その時は…………

 

 「大丈夫、光輝君!?」

 

 トールの魔法から解放され、苦しみながら呼吸を整えている天之河と檜山の元へ、二人の身を案じた中村恵里をはじめとしたクラスメイト達が駆け寄り手を貸す。その様子を一瞥してトールはもう、この馬鹿達には目もくれずメルド団長に迷宮への再度の要請する。

 

 「あ……ああ、了解した。すまん子供達が迷惑を掛けた。二人の体調が戻り次第、迷宮へ向かうから着いてきてくれ。」

 

 メルド団長はトールの要請を了解し、謝罪の言葉を述べると天之河と檜山の様子を確認すべく二人の元へと歩み寄り、二人に気遣いの言葉を掛ける。体調の戻り始めた事を確認するとメルドは二人に対してトールへの態度や対応に付いての苦言を呈して窘める。トールは興味も無さげにそんな彼等のやり取りを眺めていたが、其処へ香織が怖ず怖ずとした様子でトールへと近付いて来る。

 

 「あのトールさん…………」

 

 躊躇いがちに香織はトールに呼び掛けるのだが、何を話せば良いのか香織自身も思いも思考も纏ってはおらず、との言葉は途切れてしまう。目の前で俯き押し黙ってしまった香織を見つめて、トールは一言釘を刺す。

 

 「一つ言っておきますけど。ハジメさんは渡しませんよ。」

 

 香織はその言葉に顔を上げてトールを見つめる。口の端を口角をにんまりと笑みの形に曲げて勝ち誇るトールに、しばらく呆気にとられていたのだが、何故だか香織はそれが可笑しくて何時しか彼女も微笑みを浮かべていた。時空を超えてまで愛する人を迎えるべくやって来た規格外の恋のライバルとも言える(香織目線で)女性を前に、自分も負けては居られないと気持ちを改めるのだった。

 

 それから五分程の後、天之河と檜山が体調を整うのを待って、一団はオルクス大迷宮へと乗り込むのだった。

 




色々と個人的に別活動を行なっている為に投稿頻度が遅いと思いますが、よろしければこれからもお付き合い頂ければ幸いです。
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