相変わらずの、のんびりな更新です。
毎回の誤字報告ありがとうございます。
「ああ、そうだろうな。そうだろうよ。そうなんだろうけどさ」
薄暗い洞窟の中で、しみじみとしたハジメのぼやき節が木霊する。大迷宮最奥、オスカー・オルクスの隠れ家を後にしたハジメとトールとユエは、そのオルクス大迷宮を脱する転移魔法陣を起動し、遂に地上への帰還を果たした。
のだが。
「ハジメ。ドンマイ」
ハジメの傍ら、左隣に立つユエがポンポンとぼやくハジメの腰を軽く叩いて宥め、トールは声を抑え顔だけが笑っている。
意気揚々と転移魔法陣を発動させたハジメ一行。これで遂に数ヶ月ぶりに本物の太陽を拝めると、ハジメのテンションも爆上がりだったのだが、移動したその先は薄暗い洞窟の中だったのである。
「イヤな、普通に考えて大切なものは隠しておくのはごく当たり前の事だってのは理解できるんだよ。言うなれば、誰だってそーする。俺もそーするさ」
神代に近い遠い時代に、一人の天才(ある意味ハジメに取っては天災)が創造した大迷宮。その最奥に自らがその身を隠し、その命が尽きる迄の時を過ごした隠れ家。その隠れ家にいずれ訪れるだろうと希望を託した来訪者を、現界に帰すべく設えられた転移魔法陣。その様な重要なモノを吹きっ晒しの外界に目立つ様に設置している訳がない。
「まあまあハジメさん。ハジメさん的には期待外れだったでしょうけど、この先にはハジメさんが求めてたモノがあるんですから、気を取り直して行きましょう!」
溜め息を吐きつつぼやくハジメの目の前に、その身を軽く傾げて両手を腰の後ろに回して上目遣いな体勢で、トールがハジメを宥める。ふわり揺れるスカートとリズミカルに弾む膨らみに、ハジメの目はそれを追ってしまう。彼女自身にそんな自覚は無いが、まるで計算されたかの様な、その仕草が何ともエロく、しかも可愛らしくあざとい。
「そっ、そうだよな。うん。じゃあ早速行くとしようか」
いかん!と頭の中の邪念を追い祓って、ハジメは二人に呼び掛けて先頭に立って歩き始める。それに呼応してトールは微笑んで返事を返すのだが、ユエは少々ご不満の様子である。
「……………」
無言で己の胸部に目をやって、そして先を行くトールの胸部に視線を向ける。そして、その格差に憮然として心の中で呟くのだった。
『トール姉さまの、ハジメを簡単に落とす膨らみ。コレが胸囲の格差社会………』
気を取り直したハジメ一行は外界を目指して洞窟を進む。途中に幾つかのトラップが仕込まれていたが、オスカーの隠れ家から徴収した指輪がトラップを自動で解除していき、苦労も無く歩みを進めるのだが。
「最後の最後迄こんな罠を仕掛けてるのかよ。全く、どんだけ性格がねじ曲がってるんだよ」
そんな風にオスカーを評するハジメなのだが内心、オスカー達が何に抗い戦っていたのかを(不本意ながらも)知ってしまったハジメは、このくらい慎重でなければ戦えなかっただろうし、その後に此処を訪れる(願わくば彼が望んだ、人類の悪神からの解放を託せる)者への警鐘でもあるのではと、古の技術者の思いを少しばかり汲み取っていた。
それなりに長い洞窟の回廊を抜けて、遂にハジメ達は本物の空の下へと辿り着き、数カ月ぶりの、ユエに至っては三百年ぶりに目にした人工の物ではない自然の光なのだ。思わずハジメとユエは掌を庇にして眩い空を見上げる。疎らに白い雲が浮かぶさわやかな青い空を。しかし。
「オイオイ何だよ此処は。トンネルを抜けると、そこは窪地だったってかよ」
青と白のコントラストに帰還の喜びを感じていたハジメだったが、改めて周囲を見渡して自らが置かれた場所の状況を見定めると、憮然とした呟きを漏らした。
其処はあまりにも深すぎる峡谷だった。空を見上げるほどに高く、切り立ったように聳えるは両サイドの断崖絶壁は高さが一キロメートルを雄に越えており、ロッククライミングを趣味とする者ならばおそらくは、張り切って挑戦したいと望むだろうが、生憎とハジメにはその趣味は無かった。
であるので、
「ハジメ。それ、何?」
「ん。俺の国の昔の小説っても分かんねぇか……まあ、物語の文章の一節だな。原典ではトンネルを抜けた先は雪国なんだがな」
「ん。そんなに風景が変われば、何か書き残したくなるのも解る。」
「まあ……な。」
そんなハジメのボヤキ節の意味をユエが尋ねすると、ハジメはその出典について軽く説明し彼女は得心したのか、それ以上は問わなかった。それは彼女もまたハジメとは違うが理由だが、現況この場所に対して些か以上に不満を抱いていたからだ。
「ハジメ、トール姉さま。此処、魔力が阻害されてる。かなり厄介………」
洞窟を抜け地上に出てから感じていた、非常に強力な魔力への干渉。戦闘に於いて魔法を主体とするユエには、この場所で戦うには魔力の消費が激しく著しい戦力、継戦能力の低下を余儀なくされてしまう。
「そうか、確かにユエの戦闘スタイルを考えるとかなり厄介だな。一応、俺が渡したアイテムがあるから魔力のストックがそれなりに在りはするが、回復時間なんかを考えると節約した方がいいな」
「ん」
オスカー・オルクスの隠れ家で鍛錬を行なっていた一月程の期間、ハジメは空いた時間にユエの為を思い、魔力のストックや彼女の身を護る為に意匠を凝らした指環やネックレス等の、身に付けても可怪しく無い否、非常に優れたデザインの品々を贈っていたのだ。
『ハジメ、私にプロポーズしてる!?』
そのアイテムの出来栄えに外見の態度こそ淡々として見えるが、ユエは心の内に大きな感動を感じながらそう言った物だ。ハジメとしては彼女を大切な仲間として想っていはいるのだが、それは現在のところ恋愛感情には至っておらず『違うわい!』とトールの前で否定してみせた。
二人の女性に想われて、肉体は変貌してしまっているが心根は健康的な普通の男子であるハジメ。理性を強く保ってユエからのアプローチに耐えているのだ。
「俺は武器主体だからそんなに問題無いんだが、トールはどうだ?」
「私ですか?そうですねぇ。確かにユエが言う様に何か阻害されてる感は“ちょっとだけ”ありますけど、まあそんなのは私には問題にもなりませんよ」
ユエの事は一旦置いてハジメはトールにも確認を取ると、トールは気負いも何も感じさせず、しれっとした顔で何事も無いと答える。
「そうか、やっぱりトールは規格外なんだな。」
「ん。トール姉さまなら、アリ。そうだ思い出した。此処は、ライセン大峡谷で間違い無い」
そんなトールを乾いた笑みでハジメが称すると、ユエも頷いたそれに同意し納得。その流れからユエは遠い昔の記憶を思い出しこの場所が何処なのかを思い出し二人に告げる。
「ライセン大峡谷って、此処がか」
「ハジメさん。知っているんですか?」
「ああ、この世界に来て直ぐに王国の図書館でこの世界の地理や魔物の事を調べたからな」
ライセン大峡谷。王国の図書館で読んだ記述によると、この場所は魔力を分解し散らしてしまう性質があるらしく、それにより魔法の使用が著しい制限を受けてしまう厄介な場所である。ユエほどの魔力量を有していても通常の小規模の魔法を放つにも十倍の魔力を消費してしまほどであり、其処らの凡百の魔法使いではマトモに魔法など使えない、謂わば魔法使い殺しの酷所である。
「なるほど、そんな場所なんですね。まあ私とハジメさんが居ればこの程度どうとでもなりますからユエは大人しくしていれば良いですよ。あっ、ついでですからアレ殺っときますね!」
掻い摘んで簡潔に、ハジメは自身が得たこの峡谷の知識をトールに説明し、彼女も理解する。そのついでとばかりにトールは自分の左側方に顔を向ける事さえせずに、左手をそちらに向けて掌を開くと目に見えない突風を放った。
「おう、流石はトール。気が付いていたのか」
その突風は幾つもの風の刃を伴って真っ直ぐに突き進んで、百メートル程先にいた複数の魔物達を物言わぬ肉塊へと、たちまちの内に変えてしまった。その瞬殺劇にハジメが称賛を贈ると、トールはハジメに向けてふんわりと微笑み、処分を終えた魔物の群れに向けていた左手を下ろす。
「ええ、あれだけ殺気を向けられてたら当然ですよ」
「そりゃそうか。トール次は俺に殺らせてくれ。迷宮と地上の魔物の強さがどれくらい違うか、実地検証したいからさ」
何の気負いもなく答えたトールに、ハジメは次は自分にやらせてくれと要請する。トールの了承を得て、ハジメはホルスターからドンナーを引き抜いてその銃身を一瞥すると、自分の後方から近寄って来ていた別の魔物の群れに向かってそれを構える。
「はい!わかりました。お任せましますね、ハジメさん」
「ああ」
軽い調子で交わされる二人のやり取り。ハジメは撃鉄を起こして続け様に引き金を引く、稲妻が迸り超音速の弾丸が一瞬の内に近寄っていた魔物の頭部を撃ち抜き、その威力が魔物の肉体全体を破壊してグズグズのミンチに変えた。
突然仲間の内の一体が肉塊にされた事と、ハジメから放たれる恐ろしいほどの重圧を感じさせる殺気に、残りの魔物達がその動きを強制的に停止させられる。
「フッ、こんなものか。それじゃ此方を使ってみるかな」
普通に纏雷を発することが出来た事を確認し、ハジメはドンナーをホルスターへと収納して、新たに宝物庫から一つの銃を取り出してニヤリと嗤う。
「迷宮の最奥で使ったバスターランチャーは、素材の強度が脆くて出力も安定しなかったから結局ぶっ壊してしまったが、ビームライフルくらいの出力なら問題なく使えるんだぜ」
そう、嘯きながらハジメはその銃にエネルギーパックを装填する。それは見るものが見れば何を模しているのか一目で理解出来るだろう。
「型番XBRー87ーC(諸説あり)ガンダムMarkⅡのを模して造ったビームライフルだぜ。試射は済ませてあるが、生きてる物に使うのは初めてだ。どうなるかその身で食らって逝っちまいな!」
この世界でその出典を知る者は居ないのだが、それでも自分の好きを語りたいオタク心から、それが口から吐いて出る。
右手に銃把を握り、左手をフォアグリップに添えて引き金を引く。その銃口から超光熱のピンク色の光が放たれ、その劫火の直撃を受けた魔物は忽ちに、塵一つ遺さずこの世から消え去った。しかもその熱波のエネルギーの余熱でその付近に居た数匹の魔物の命を狩り取ると云うおまけ付きで。
「フッ、ハハハ。コイツは思った以上に使えるじゃないか!感謝するぜオスカー・オルクス。アンタが俺の頭に仕込んでくれたモノが大いに役に立ったようだぜ」
ビームライフルの想定以上の威力にハジメの口から笑いが漏れる。オスカー・オルクスがハジメの脳に刻んだ神代魔法(生成魔法)を用い、それまで以上に技能の向上を成したハジメが造りあげた新たな装備。
「コイツはヤバいな。世紀末の住人みたいにヤッハーしたくなっちまうぜ!」
亜音速で放たれたビームの熱が冷めず陽炎を揺蕩わせている銃身に、ふぅ~ッと息を吹きかけて物騒な事を口にしてハジメは再度ビームライフルを構えて、残敵の掃討に取り掛かった。とはいえそれは然程の時間を要せず、ビームライフルの射撃三回で完了してしまうのだった。
魔物を殲滅し、取り敢えずの役割を終えたビームライフルを宝物庫にしまうハジメを見つめるトールとユエ。意中の男の一連の行動を頬を染めつつ見つめていた二人だったが、うっとりタイムは終わりとばかりに気を改めて、今後どうすべきか行動の指針をハジメに問う。
「アッサリ終わってしまいましたね。流石はハジメさんです。ところでこれからどうします?ぶっちゃけ私が元の姿に戻ってハジメさんとユエを乗せて飛んでいけば、直ぐに此処から出られますけど」
「それも一つの手ではあるな。いや、現状最も最適な選択なんだろうが、取り敢えずは、このまま樹海の方へ向かおう」
「ハジメ。私、トール姉さまに賛成」
トールの提案通りに彼女が本来のドラゴンの姿に戻って二人を乗せて飛べば、こんな峡谷など文字通りにひとっ飛びで脱する事は出来る。しかしそれを、ハジメは敢えて却下してこのまま峡谷を進み方針を示した。だが、以前迷宮における攻略行の最中にハジメからドラゴンの姿になったトールの背に乗り空を飛ぶ経験をしたハジメの話を聞いてから、ユエは自分もトールの背に乗り空中散歩を楽しんでみたいとの欲求を抱いていた。
表情こそ変わらぬものの、その目がワクワクの色に染まるユエ。その姿に苦笑しつつハジメは自分の意見の真意を二人に伝える。
「まあ、そうなんだがな。俺的にはもっとパワーアップを図りたいんだよ。だから一応強い魔物がいたらソイツを食ってスキルを手に入れたいって考えてんだ」
「ん。なるほど、納得。でもハジメ、どうして樹海側?」
ハジメの真意を知り、ユエは納得する。己の欲求はまたの機会に取っておき、愚かな偽神を斃す為にも、自分とハジメは今以上に強くならなければならないのだと。
しかしそれとは別に、何故ハジメは樹海を目指すのかとユエは問う。
「そりゃあ、クソ暑いだろう砂漠方面へ行くよりも最初は樹海側の方が人里とかありそうだし、そっちの方が良いだろう」
「ん。それも、納得」
そのシンプルな答えにもユエも納得し、一行は峡谷の底を樹海方面へと向けて旅立つのだった。
ウィーンという電動モーターの様な音を立ててハジメが創り上げた移動用のメカが、地面から八十センチ程の高さに浮遊した状態で軽やかに進み行く。そのメカの形状はソレを知る者ならば突っ込みを入れる事間違いない。
フロント正面には夜間の暗がりでも走行が出来るように複数のライトが添え付けられており、そこから一メートル程の位置に運転席が設けられており、その下部は両サイドが少し膨らみを持ち、更にそこから先端がスキー板の様に少しだけ出っ張りがある、ランディングギアが装備されている。
ハンドルはアメリカンなエイプハンガーほど派手では無いが、かなりアップな位置にあり、やや内側に絞り気味だ。
横から見ると座席を含むボディは流線型をしており、運転席と後部座席の間にはカウルに寄って隔たれており、着座中は互いの身体に触れられぬ様に作られている。
乗員は最大三名でフロントは運転者一人で、リアシートには二名まで搭乗可能。しかも一人で乗車する場合はリアのシートをカウリングの開閉機能により隠すことが可能である。その後部座席、タンデムシートの後方なだらかな下り曲線を描いた部位には、ハジメ謹製の魔導エンジンが収められており、操縦者の魔力を流す事により後部の巨大な円形のホバーを回転させ、その風力とトールにより監修を受けた重力軽減の魔法プラグラムを発動させ機体を浮遊、そして前進させるのである。
此処まで説明すれば知っているものならばこの機体のモデルが何であるのかお解りだろう。そう『戦闘メカザブングル』に登場する、作中第一話での活躍が強く印象に残る、キャラクター達にバイク感覚で使用されていた『ホバギー』である。ただし、原作設定とは違い三人が搭乗出来る様に全長を長く造っているが。
「ハジメさ〜ん!こう言うのも悪くありませんね!」
後部シートに収まったトールが走行風に長い金色の髪をはためかせ、満面笑顔で楽しげにハジメに話し掛ける。
「ハハハッ、そうだろうトール。こういうのも悪く無いだろう」
魔導モーターが発する駆動音と後部のファンが回転する音、そして走行風により人が話す言葉は聞き取り辛いはずなのだが、ドラゴンであり身体スペックが高いトールと魔物肉を食べて肉体の機能が超強化されたハジメにとっては、この程度の物は何の障害にもならず、普通の会話が可能であるのだ。
「はい!」
トールとハジメが会話を交わす中で、ユエは後部シートの前方に着座しトールの両手で肩を支えられ、その身を彼女に預けて気持ち良さげにマッタリとした表情で、ホバー走行を楽しんでいる。
トールと同様に彼女もまた金色の長い髪を風にたなびかせ、後ろをトールに支えられている安心感にみをゆだねている。更には危険な場所であるにも関わらず、警戒心さえ忘れそうになっている程だった。
警戒心を忘れてしまう、それもある意味では仕方ない事でもある。何故なら彼女の同行者である二人、ハジメとトールが強すぎる為である。走行中に発見した魔物は発見次第ハジメのドンナーと、トールの放つ魔法や気弾に依って瞬く間もなく消し去られているからである。
そんな感じでユエはやる事も無く、まったりとした時間を満喫していたのだ。殊にその身を預けているトールの膨らみの柔らかさには、大いな安らぎを感じさせられるのだ。彼女自身のソレはお世辞にも豊かさは無く、ともすれば嫉妬心を抱いてしまうモノなのだが、トールに対して敬意を抱いているユエにはそんな感情を抱かずに済んでいた。
そしてトールもまた、ユエに対してハジメを巡る敵手だと思いながらも、何故か自分を慕ってくる彼女に複雑な思いを持ちながらも突き放す事も出来ず、気が付けば彼女の事を気に掛けていることを自覚していた。もしかするとそれは、ユエも自分と同様に人知れず緩やかに死を迎えるしか無い状況下でハジメに見つけてもらい、一命を取り留めたと言う共通点があるからなのかもしれない。
数十分のまったり(常人ならば、とは言えない)ホバギー走行を満喫していた三人だったが、やはりと言うか厄介事は向こうから訪れてハジメ達を何時迄ものんびりとはさせてくれない様だ。
途中の崖を迂回し終えた時だった。遠く前方より響いてくる魔物の咆哮、まだそれなりに距離は離れているものの、三人の聴力と視力はバッチリとそれを捉えていた。
「わりとデカい魔物の様だな」
「みたいですね」
軽い調子でハジメが言うと、トールものんびり口調で答える。かつて迷宮で見たティラノサウルスに似ている魔物だが、頭が二つある。双頭のティラノサウルス的な魔物だ。更にそれに加えて彼らがその目に捉えたモノがこの場にはひどく異質なモノだった。
「ん。ハジメとトール姉さまなら、問題無い。でも、どうするアレ?」
その、双頭のティラノサウルスの足元をぴょんぴょんと跳ね回りながら、涙をちょちょ切らせて逃げ惑うウサミミを生やした少女。ハジメはホバギー浮遊状態で停止して、三人で今にも喰われそうなウサミミ少女を色んな目で見やる。
『ああ、また厄介な事になるかもな』とハジメは内心に感じながら、この世界には疎いハジメは「あれは何だ?」とユエに問う。
「兎人族?」
若干疑問形だが、ユエがその少女の見た目から、そう判断する。ハジメも王国の書物から獣人族の事を知識として知っていた事から、ユエの言葉に納得するのだが。
「何でこんな所にそんなモンが居るんだ?兎人族ってのはこんな峡谷に住んでいるもんなのか………」
「そんな話、聞いた事無い」
それでも、獣人族の中でも力が弱いと記述されていた兎人族の、しかもハジメ達と変わらぬ年齢だと思われる少女がこんな場所にいるのか、疑問がわく。
「じゃあ何で…もしかして罪を働いてこの峡谷に落とされたのか」
「だとしたら悪兎、放っといて構わない」
「まあ、そうだと決まった訳じゃ無いが面倒事は避けるか」
「ん」
ユエが言う様に放っておく方針を固めかけていたハジメの耳に、その兎の少女の必死こいた声が掛けられる。
「ゔあ〜んっ、だずゅげでぐだざ~い! ひっぃ〜っ、死んじゃう!死んじゃうよぉぉ! だじゅけてぇ~、おねがいじますぅ~ぅッ!」
滂沱の涙を流し顔をぐっじゃぐじゃにして、ウサミミ少女は必死こいてハジメ達の方へと駆けてくる。そのすぐ後ろには双頭ティラノが迫っていて、今にもウサミミ少女に食らいつこうとしていた。このままでは、ハジメ達の下にたどり着く前にウサミミ少女は喰われてしまうだろう。面倒くせぇなと思いながら、ハジメはウサミミ少女とそれを追う双頭ティラノを眺めるのだった。
更新停滞中も新たに評価をいただきありがとうございます。
高い評価をいただけて、とても嬉しく存じます。
まあ人それぞれ思う処はおありでしょうが、自分的には原作と違い出会う人が違えばその人に多少は影響を受けて、性格などが原作とは若干違う事になるのではと考えて(後は自分の趣味丸出しで改変している部分も多々あります。二次創作ですしね)いるのですが、それが受け入れられないのならば、どうかスルーしていただきたいと思っております。