【腐】黒子と高尾が王位継承者な話【にょた】 作:mizuhara_0-0
今のところ、高尾と黒子がにょた
火黒描写あり
モブ高描写あり
けっこうえげつない
色々ごめんなさい
高尾和成は、絶望を知っていた。
それは、真っ黒な暗闇で、実体を持っている。
真っ黒な手、荒い息遣い、それは一方はくるぶしから膝裏をたどり内股へ伸び、もう片方は耳の裏首筋うなじ背中から腰へと落ちていく。
彼女の性感を煽る部分ばかりを撫でるその行為は、彼女に無力感を植え付ける絶望の序章に過ぎないのだ。
貴女が高尾さんですか。
高尾が初めて社交界の公式な場に出て、真っ先に対面させられたのは同じ年の少女だった。
黒子テツナ。水色を身にまとった、華奢な少女。
夕陽のような橙を主張する高尾は、一目見てピンと感じた。
あ、この人は自分と同族かも。
後にそれは、一部当たっていて、大部分は外れているとわかった。
高尾との短い社交辞令の後、彼女はいそいそと壁際に戻った。彼女は傍らに控える彼女の騎士と目を見交わし、そっと笑った。燃えるような髪の騎士は、姫一人につき一人ずつ付くと言う専用の守り人なのだろうとわかった。厳しい自然と子育てに不向きな土地柄から生まれた北部の習わしだ。
豊かな南部で育てられた高尾には、ずっと同じ人がそばに付き従うことはない。付き人なんて、いくらでも替えがいるからだ。
何人の貴族が寄ってこようと、高尾には、護衛の守り人一人と笑いあう黒子の方が幸福に見えた。
だが一方で、黒子は間違いなく高尾と同族であった。
それを思い知ったのは、初めて社交界に出た翌日のこと。
女王に呼び出された先に、黒子が居たからだ。
この国は女が支配する国。
国の頂点に立つのは女性であると決まっている。
男が上に立つと、血筋争いが絶えないが、女ならば誰の子であれ女王の子であることは証明がたやすい。
精神や、政治的な取引、権謀も女性の方が優れているのではないかと、そういう主張に加え、信仰もそれにそぐうものばかり。
ただ女性は身体的に弱い。そのため、社交界に出るまでは貴族の家に預け、その家の子として育ち、時が来たら自らが王位継承権を持つと知らせる――そんな、王女を守る制度がある。
今の女王は御年六十。三人の娘を設けたが、その長女は身分違いの恋の末恋人と姿を晦ませ、次女は一女を、三女は一男一女をもうけて身罷った。
「高尾和成。黒子テツナ。お前たちは私の孫じゃ」
自分が高尾の家のものではないことは、薄々気づいていた。黒子もそうだったのだろう。あるいは予想していたのかもしれない。自分たちが王位を継ぐ者だと、二人とも抵抗なく受け入れた。
「私が死ぬまでに決めなさい、どちらが次の王になるのか」
二人で、頷いた。自信があった。北部では、どうだったのか知らない。ただ、南部の領主たちは高尾の方が支持を集められるということを知っていた。高尾はそのやり方を学んでいた。体で。
少女たちは社交界に出る前、十をいくらか過ぎてから、女学校に行く。
社会に出る前に全寮制の学校に行き、貴賤の別なく学問を学び、その結果を社交の場で生かし、執政を行うのだ。
学校では様々なことを学んだ。房術香術、歴史に占星、数学に精神心理学。地理と外交、言葉遣いとマナー、仕草と目線の動き。男が聞いたら引くだろう。
そこで高尾は優等生だった。数ある家庭の中でも、学校に入る前から経験を積んだ娘は高尾以外いなかった。誰も声には出さなかったが、本人にはなんとなくわかった。そこで高尾は、自らの境遇が他とは違うと薄々悟った。
高尾が八つか九つかそこらのことだったと思う。
南部の領主たちの、内輪のパーティに初めて出席したのは。
綺麗な鮮やかなワンピースにはしゃぎ、大振りの花のコサージュを髪につけて、高尾はご機嫌だった。
北部の貴族たちとは違い、南部の領主は成金の大金持ちが多かった。その分、道徳だの誇りだの血筋だのでは纏め上げることはできなかった。
歴史をたどると、そもそもが違う国だったのだ。北部の貴族と南部の領主の差は、財力や意識のみにまとめきれない、様々な面に表れていた。
内輪のパーティの主催の目的は、幼い高尾のお披露目だった。
だから綺麗にしていきなさいね、高尾の母は言って、そして柔らかな布ばかりの服を彼女に着せた。金属の金具も宝石の一つもついていないそれは、幼い少女に似合いの服だった。
辛いかもしれないが、慣れるといいものよ。母は一人言のように言った。
体を暴かれながら、高尾は知った。金属も宝石もない服は高尾の体を傷つけぬため。慣れろというのはこの行為が、いつまでも続くから。
南部の領主たちの結束を固めるものは、一人の女を共有している一体感なのだと、高尾は本能的に悟った。
女王の支配する空間から退出した後、黒子は高尾に、少し話しませんか、と誘った。
「いーの?あたしなんかと話して。護衛の人とか……」
「いいんです。二人で話したいことがあるから」
二人は、女王の広間のそばにある庭園へ入った。庭師がいたが、散策する彼女たちの姿を見て、遠慮したように身を引いた。
「綺麗な庭……」
散策しながら吐息をつく黒子に、高尾は話を切り出した。
「それで、話って何?」
「高尾君は、王様になりたいですか?」
単刀直入な言葉に、高尾は正直に頷いた。
「まあ、人並みに」
「人並み程度の願望なら、それをあきらめて下さい。私に、王の座を譲って下さい」
強い言葉に、高尾は苦笑した。
「お前、あたしの言葉が何であっても同じこと言っただろ」
「譲歩の案が見受けられそうなら、互いに話し合うつもりでした。でも、人並みなどと言われたので、つい。申し訳ありません」
「謝罪はいいよ。あたしは王に執着はない。ただ、向いてるとは思ってる。黒子より」
飄々と言ってのける黒子に、高尾は暗に、あんたに王は向いていないと告げた。
「お前が王になりたいのはさ、好きな人と恋仲になりたいからだろ」
「悪いですか」
王になった女は、好きな男性との間に好きなだけ子をなすことが出来る。だが重婚も恋愛結婚も女王にのみ認められた特権だ。女王になれなかった少女は、そのまま預けられた家の娘として、あるいは嫁ぎ、あるいは政治に顔を出して一生を全うする。
「あんたが好きなのは、あの護衛だろ」
「ええ。火神君です」
火神――どんな家の筋だったろうか、と考える。黒子家の家筋の、護衛。ああそうか、歳が近い少年が他にいなかったのだろう。黒子がそのまま王にならなければ、黒子と火神は従兄妹同士になる。一代前に、黒子家と火神家の婚姻があったはずだ。黒子テツナが火神に嫁ぐには、近すぎる。
「……そりゃ、王になりたいわけだ」
「あなたは、この答えで納得するんですね」
「自分が経験したことのない物を、勝手に評価する気はないよ。でもね、ハイソウデスカって王座を譲る気にはなれないのも確か。アンタだって、火神と結婚させてあげるから王になるのは諦めて、って言われたらどうするの?」
高尾が王座を目指す理由なんて、この水色の少女には想像も出来ないだろうけれど。
「……話は平行線のようですね。とりあえずは互いの健闘を祈る、ということでしょうか」
「まあ、そんなところじゃない」
そのまま庭園の外に出て、付き人を待った。
まず始めに、火神が来た。黒子を抱き上げて自らが乗ってきた馬に乗せた。その後に高尾の家の者もやってきた。大仰な馬車に複数人の侍従。その中に、高尾のものはない。
返ったら父がいた。血のつながりがあるのかは知らない。ただ、王位継承権を予測して、王の財産と高尾にかけた養育費についてほのめかされた。
「和成が女王に呼び出されるとはな。独り立ちしたあかつきには、高尾とこの土地にきちんと報いるように」
「わかっています。高尾家には育てていただいたご恩がありますもの」
「流石。聡明な娘を持って、父は鼻が高い」
養父の言葉に、高尾はにっこりと笑った。
あー気持ち悪い。
もしも高尾が王になれたら、黒子は火神と結婚するよう言おう。
どうせ黒子テツナが王家筋の娘だという話はすぐ広まる。護衛騎士と添わせたところで、黒子家の反発はあるかもしれないが、それまでに自分が黒子の男たちを掌握すればいい。黒子の実兄の赤司も協力してくれるだろう、何度か話したがあの男は妹の幸せを願う様子だし。
南部の領主には、北部の娘を嫁がせよう。貴族の娘は誇りが高い。きちんと教育を受けた娘ならば南部の悪い所を中から正してくれるだろう。
交通網を整備しよう。北部と南部の経済格差をすこしでもなくして。
そんなことを夢想するようになった。