ファイアーエムブレム封印の剣~古の野望~   作:仲村哲也

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ついに根源へ

 内乱終結。その最後のカギとなるアラフェン。その国境の森に、フェレ・ラウス連合軍を軸とするリキア同盟軍は陣を敷いた。その日の夜。一番大きな天幕に主だった面々が集まって作戦会議を開いていた。作戦会議とは言っても、結論はひとつ。「いかに早く『ケリ』をつけるか」に尽きる。これはどんな手を使うかの話し合いだった。

 というのも、隣国のエトルリア王国にてこの内乱を感付いている節があるという情報が、陣を敷いてほどなくしてもたらされたのである。かのベルン動乱でクーデターが起きるなど大きく混乱したとはいえ、現状もっとも余禄を残しているエトルリア。終戦後保護からは外れたものの、内情の不安定さを悟られて介入されると厄介なことになる。オスティアでは「公務につきアラフェンにて外遊中」という体を繕っているが限度はある。

 

「・・・いよいよ事態は切迫してきたな」

 テーブルに広げられたアラフェン地域の地図を前にして、腕組みして目を閉じていたロイが、天幕の重苦しい空気の中で口を開いた。

 

「地の利はむこう。こっちには時間がない。かといって正面突破で戦火は大きくしたくない・・・八方塞がりも、ここまで塞がるとやってられんな」

 

 現状に対するシードのぼやきが、同盟軍を取り巻く空気の重さを代弁している。

「『できれば民を巻き込まない』もうそれもやむ終えなくなってきているのか・・・やはりあの時もっと追求すべきだったのか」

 諸侯会議の席上でヘスマンを青ざめさせた、決定的証拠の暴露。あの時踏み込んだ追求をしておけば、戦火そのものを防げたのかもしれない。ロイは自責の念にかられた。

「ロイが思い詰めることはないわ。それはむしろ盟主である私の責任よ。それに今は後悔している時間もないわ。始まってしまったのなら、終わらせなきゃ駄目よ」

「そうだな。すまない、リリーナ」

 

 

 その時だった。

 

 

「敵襲っ!敵襲だぁ!!」

 

 天幕にいた全員が一斉に外に出ると、黄昏を背に騎士の一個小隊が迫ってくる。土埃を上げながら。アラフェン軍であることは明白だった。

 

「全軍戦闘体制っ!!迎え撃つぞ!」

 ロイは全軍に向かって指示を飛ばした。だがその心中は穏やかでなかった。

 

(森とはいえ外での防衛戦か・・・苦しいな)

 

 現在の同盟軍の主力は、フェレとラウスの両騎士団の中核であるソシアルナイト・パラディンは、機動力はあっても防御力には不安を残し、迎撃戦では不利となる。加えて援護する弓兵部隊などの後方支援も万全とはいいがたく、リリーナの魔法による破壊力に頼っていたのが現状だ。だが、今はどう悔いても仕方のないところではある。意を決し、ロイたちは敵の奇襲を耐えていった。

 

「そうらっ!!」

 前線に立って大剣を振り回すディーク。大陸中に名をはせた勇者の存在はやはり大きい。加えてシード、オージェらも腕を振るい勢力を次第に盛り返していった。夜襲を仕掛けたアラフェン軍は次第に押し返され、アレンら騎馬部隊が反撃に転じて戦況を盛り返していた。

 

 そんなときだった。

 

 

「ん、なんだあいつ」

 チャドの視線の先には、目深くローブをかぶった者が突っ立っていた。戦場には不釣り合いな様子にチャドはいぶかしんだが、すぐさまそれが異常な者であることが明るみになる。それらは突然発火したかと思うとみるみる身体が大きくなり、ついにはトカゲのような形になってその姿を現した。

 

「あ、あれは・・・まさか」

 

 そしてチャドの報告を受けるまでもなく、ロイたちもその姿を遠巻きに確かめた。いや、聞きなれた咆哮に反応し、それが目についたのである。

「そんな馬鹿な!なぜあんなものが」

「アラフェン侯爵は、いったいどうなってしまったの?」

 ロイとリリーナは、思いもよらぬ敵の増援に絶句する。シードは口を挟んだ。

「一応聞くが・・・、あれは『竜』ってやつか」

 無言でうなづくロイ。その顔には、冷や汗が一筋伝っていた。

 

 

 そしてリキア同盟軍の若い兵士たちは、見知らぬ怪物に恐怖し、瞬く間に伝染した臆病風によって総崩れとなり、逃亡兵が次々と出た。

「馬鹿者っ!!迂闊に背中を見せるなっ!!」

 前線でアレンが檄を飛ばした直後、竜たちの背後から豪雨のごとき矢が舞ってきた。背後に無警戒となっていた逃亡兵たちの背中、四肢、さらには後頭部を次々と射抜き、そこに追い討ちをかけるべくモルフたちの騎馬部隊が攻め込んできた。

 

「アレンっ!ここは退くぞ。これでは立て直しも効かん」

「くっ!やむを得んか・・・」

 親友ランスの進言に、アレンは苦々しさを押し殺して撤退を指示する。それに乗じてアラフェン軍本体はモルフ部隊に追従して『竜』とともに後を追った。迫りくる竜に兵士たちの動揺は頂点に達した。

 だがその中でリリーナは、その竜に違和感を感じていた。

(何かしらあの竜。すごい魔力を感じるけど、周りにある炎は・・・)

「どうしたんだリリーナ」

 撤退を指示しようとしたロイは、いぶかしむリリーナに気付き声をかけた。その瞬間、リリーナは自信の疑問を氷解させた。同時に、鬼気迫る表情でロイに行った。

「ロイっ!今すぐ全軍をここから撤退させて」

「わかった。それじゃあ準備を・・・」

「準備なんかしないで、すぐに逃げてっ!あの竜が・・・」

「落ち着くんだリリーナ。確かにあの竜は強力だ。だから対策を」

「そうじゃないの!あの竜は、あの不気味な兵士と同じモルフなの。それで、その完成度が低すぎるの。自分が宿している魔力に身体が耐えきれていないの!!下手をすれば途中で爆発して、このあたり一帯を吹き飛ばしてしまうわっ!!!」

「何だってっ!?」

「おいおいリリーナ、いくらなんでも考えすぎじゃねえのか」

 リリーナの見解にロイは驚き、シードは尋ねた。だがリリーナは確信を持って言い切る。

「わかりにくいかもしれないけど、魔力を宿すのは身体に毒を入れているのと同じなの。『器』、つまり身体に不釣り合いな魔力は、あたしたち魔導士ですらコントロールできなくなるわ。ましてや竜のような強力なものを生むにはそれ相応の魔力を使っているけど、人形にコントロールするという発想なんてない。器に入れっぱなしだと魔力の暴走は止まらなくなるの。今あの竜たちが身体に炎をまとっているように見えるけど、あれはひび割れた身体からあふれ出ている魔力なの」

「じゃあ、もし魔力が完全にあふれ出たら・・・」

「わたしの感覚だけど・・・火山の噴火に近いかも・・・そうなればこの陣どころか森一帯が消えかねないわ」

 

 リリーナの必死の説得を理解したロイは、怒号交じりに撤退を命じた。

「手に持てないものはおいていけっ!逃げることだけを考えるんだ!!!」

「隊長、リキア同盟軍が森からの脱出を図っております」

「いま向こうは浮き足立っておるぞ!追撃を急げ!」

 

 一方でアラフェン軍は、この行動を敵の混乱として追撃を指示。さらに竜たちも引き連れて森に向かって進軍を続けようとしたときだった。

 

「グ・・・ガ・・・ガァ」

 竜たちの動きが突然止まり、妙な唸り声を上げて前足から突っ伏す。全身から吹き出ていた炎に加えて、目や鼻、口から赤黒い煙を吹きだし始めた。そして、竜たちは紅い光に包まれ出した。

「な、なんだ。いったいどうし・・・」

 アラフェン軍の部隊長がそうつぶやいたとき、竜たちは一斉に破裂。まるでそこが火山の火口であるかのように、地面を揺らす轟音とともに、天を貫くような火柱が上った。

 

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