ファイアーエムブレム封印の剣~古の野望~   作:仲村哲也

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この平穏は嘘か誠か

 リキア地方全土を巻き込んだ反オスティア家一派による内乱は、首謀者であるアラフェン候ヘスマンの死によって一応の終息となった。

 アラフェン城制圧後から七日もしないうちに、オスティア城に生き残った諸侯がリリーナによって召集された。開催された諸侯会議において、まずリリーナは陳謝した。

 

「私の力がいたらないばかりに、余計な戦乱を招いてしまった・・・。盟主として、心よりお詫びします」

 

 集まった諸侯の前でそう述べて頭を下げたリリーナ。だが、意外にもそれを糾弾する声はなく、出てきたのは詫びの言葉。それもフェレやラウスと言った気心の知れた諸侯からではなかった。

 

「謝るのは我々のほうだ、リリーナ殿。貴殿ら若い力が新しいリキアを導いていこうというときに、ヘスマンたちの暴走におびえ、ただ日和見ることしかできなかった我らが恥ずかしい。それに、こうして早期に内乱を終結出来たのもあなたのおかげだ。もはやリキアは若い世代の物だ。思うようになされるがいい。我らはあなたについていこう」

 諸侯の一人がそう述べ、他も続いた。一人一人からの言葉に、リリーナは胸を熱くしていた。

 それを見守るロイも安どの表情を浮かべる。

「リリーナの行動力が認められた。僕たちも、彼女を支えられるように頑張らないとね」

 一方で、シードは冷ややかな目線を向けていた。

「ケッ。正直胸糞悪い。もっと前からリリーナを認めていれば、ヘスマンの奴らもそうは動けなかったはずなんだ。そのうちまた、面従腹背の奴らが出てくる」

「そうかもしれない。だが、だからこそ僕らが支えるんだ。リリーナを。そして、そういう姿勢が浮く雰囲気を生み出すんだ。それが、必ずリキアの再興につながる。僕はそう思っているよ」

「お前は本当に器が大きいな」

 言い切るロイに、シードはまいったとばかりに肩をすくめた。

 しかし、シードの危惧は外れてもおらず、実際にそれぞれの諸侯の胸の内は黒いものを潜めていた。だが、それはリリーナの次の言葉に、永遠に封じねばならなくなった。

 

 

「なお、今回の謀反の責により、アラフェン、カートレー、トスカナ三侯爵家一門の爵位、領地、私財全てを没収。各領地は近隣侯爵家の管理下に置き、残党は全員逮捕、掃討します」

 

 その言葉に、参加した全ての諸侯、ロイやシードですら驚き、ざわめいた。

 

「い、いささか厳しすぎはしないか、リリーナ殿。確かに罪の大きさははかり知れぬ。だが、知らぬ間に巻き込まれた縁者らまで罰するのは・・・」

「反乱に参加した者の中には、意図せずして与した者もおられよう。そのような者たちまで一律に裁くのは無情ではありませぬか」

 

 うろたえながら抗議する諸侯に対し、リリーナの解答は断固たるものだった。

 

「皆様の寛大さには感服いたします。しかし、それではダメなのです。私はこれまで、よほどであっても再び正しき道を歩んでくれると信じ、重い処罰を下しませんでした。しかし、それが甘えとなり、このリキアの諸侯たちの間には、国を統べるものとしてはぬるい空気が蔓延していました。平和を保つためには、統べる者が時として痛みを伴わねばならないと。そして決めました。この痛みを戒めとして胸に抱き、リキアをさらに発展させていかねばならないと」

 

 麗しい外見に似つかわしくない、亡父ヘクトルを彷彿とさせる迫力を伴ったリリーナの断罪に、各諸侯も腹を括らざるを得なかった。迂闊に面従腹背の姿勢をとれば「明日は我が身」となりかねないと悟ったからだ。なお、大規模な粛清をそのまま行うと、リキアの情勢の不安定さをさらすことに直結するために、表向きは「三侯爵の急逝、ならびに跡継ぎの不在及び幼少のため、近隣諸侯が後見として各領地を統治」という形がとられた。ともあれ、ヘスマンを中心とした反リリーナ一派によるリキア転覆を目論んだ内乱は幕を閉じた。リリーナはその後しばらく、領土問題や戦後処理の対応に明け暮れることになり、ロイとシードも、それぞれ統治を任されたアラフェン、カートレー、トスカナの徴税体制の整備、復興事業に心血を注ぐことになった。

 

「古の民」の謎を十分解明できないままに・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは一体何処なのか。暗闇ゆえに、声だけしかわからない。闇の中から声がする。

「リキアは『失敗した』ようだな。ラストールよ」

 声の主に対して、リキアの反乱を裏で操っていたラストールは、申し訳なさそうに答えた。

「はい。ある程度のエーギルを集めることはできましたが、思った以上に盟主の一派が強かった、というのが私の印象です。・・・・やはり、かの動乱を終結に導いた『英雄』の看板に、偽りはなかったという事です」

「・・・・まあよい。他に手はある。お前はかの地で根回しを続けてくれ」

「はっ。お任せあれ」

「我らを地の底に追いやった忌まわしき八神将・・・・。そしてその末裔たるエレブの愚民ども・・・。根絶やしにするその日まで。『古の民』の復讐は続くのだ。ククククク、フッ、ハハハハハハハ」

 

 

 闇の中に、不気味な笑いが木霊した。 




 ようやく、「第1部 完」というところです。

 次回から舞台はサカに移ります。

 結構散々な扱いを受けている(笑)、乳兄弟が主人公となりますし、烈火のキャラがぼつぼつ目立ち始めます。

 気長にお楽しみください。
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