ファイアーエムブレム封印の剣~古の野望~   作:仲村哲也

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私の作品の特徴・・・というか問題点なんですが、マンガでもないのにセリフが多すぎるんですよね(笑)


予兆はうやむやに

 諸侯会議にてロイがヘスマンの陰謀を万座に晒してからの一ヶ月が経とうとしていた。

 あれからロイはキャスなど自身の情報網を使ってヘスマンの動向を注視していた。しかし、不思議なほどヘスマンに動きはなく、傭兵の出入りはなくなり砦の増築の様子もない。そればかりが、民にかけていた税金を取り止めたり、城の資金を復興のために使ったりと領主として殊勝な行動が目立つようになり、一部諸侯からは「アラフェン候は心を入れ替えられた」と見直すような反応が増えた。

 

 一方で、オスティアではここ最近謎の事件が相次いでいる。それは領主にとっては起きれば起きるほど、むしろ都合の良いものであるが、それがむしろ混乱を招いていた。諸侯会議のためにオスティアを訪れていたロイは、リリーナからそれについての相談を受けた。

 

 

 

「山賊団が次々と消えている?それは別にいいことなんじゃないのかい?」

「うん。そうなんだけど、ちょっと不気味でね」

 

 そうため息をついて、リリーナはシャニーの件も含め、状況を説明した。

 

「山賊がいなくなるのは悪いことではないけど…シャニーを襲った、金色の目の剣士たちも不気味だな。アラフェン候のことだけでも大変なのに…はぁ」

 ロイが思わず本音を漏らすと、扉をノックする音が聞こえた。リリーナが入室を促すと、シードが一人の老将とともに部屋に入ってきた。

 

「マーカス。君も来ていたのか」

「ロイ様、お久しゅうございます。リリーナ様も」

「ご壮健で何よりです。マーカスさん」

 

 マーカスはリキア同盟のすべての騎士団の中で見ても、最古参と言っていいほど長きにわたり騎士として主家につかえ続ける。始まりはロイの祖父であるエルバートのころからだというのだから、彼はフェレの生き字引と言っていい。そんなマーカスも先の動乱にて衰えを感じ、フェレ騎士団の将軍職をアレンに譲り一線を一時退いた。それから間もなく、シードがラウス候となった折、壊滅状態だったラウス軍の立て直しのために、マーカスが駐留武官として派遣されたのである。以後、この一年、マーカスはシードの片腕としてその復興を支えていたのである。

 ロイとリリーナがマーカスとの旧交を温めている傍ら、シードはいたずらっぽくニヤニヤと笑う。

「なんだ、お前たちだけか。恋仲同士の二人の邪魔をしてしまったか?」

「え、な、よしてくれよシード。別にそういうわけじゃ」

 シードは顔を赤らめて反論するロイをあえて無視し、マーカスに言う。

「マーカス殿。しばし席をはずしたほうがよいのではないかな」

「そうですな。お二人だけの時をもうしばし・・・」

「ちょ、ちょっと、マーカスさんまで。やめてよ」

 シードのいたずらにリリーナも赤面しむくれる。それがシードには面白かった。だが、すぐに顔を引き締めた。

「実はな。最近ラウスで妙なことが起きてな。これを諸侯会議で協議したいと思って、先にリリーナの耳に入れようと思ってな」

「妙なこと?」

「ああ。ロイよ。ラウスの海岸から南に離れ小島があるのは知っているか」

「うん。ラウスに行ったときに見たことがある。確かそこは海賊が根城にしているという」

 動乱の際の記憶を掘り起し、ロイはそれを思い出す。

「そうだ。俺がラウス候についたときに一度叩き潰したんだが、またいつの間にか復活していてな。仕方ないからまた潰しに行ったんだ」

「君自ら?勇ましいね」

「その行動力、まるでお父様ね」

「勇将の娘にそういわれると照れるね。でだ、十日ほど前に島に行ったんだが・・・」

 一度ためらうように口をつぐんだシードだったが、すぐにまた話し始めた。

「砦の中は・・・地獄絵図だった」

「どういうこと?」

 リリーナの質問に、シードは気乗りしないようにつぶやいた。

「血だらけだったのさ。海賊が身に着けていたと思われる斧やバンダナが血だまりの中に浮かんでた。そんなんばっかりだったのさ」

 シードの話に、ロイとリリーナは顔を見合わせる。

「リリーナ、今の話・・・」

「ええ・・・。ラウスでもあったなんて」

「ラウスでもあった?どういうことだロイ」

「実は・・・」

 聞き返すシードにロイは説明する。オスティアでも同じようなことが起きていたことに、シードはただただ驚いた。

 

「どういうことだ。まあ、賊を駆逐してくれるのはありがたいが」

「いったい誰が何の目的でしているのか、見当がつかない。義勇軍の討伐にしては・・・やっていることはとても人間のそれとも思えないしね」

「それに・・・。こういう言い方はしたくないけど、被害にあっているのが山賊や海賊であるうちはいいけど、これが無関係の民衆や軍が巻き込まれることよ。いずれにしても、すぐに解決しなければならない問題よ。これは今回の諸侯会議で話し合う必要があるわ」

「まあ・・・そうだろうがな」

 そう意を決するリリーナだが、水を差すように、シードはぶぜんとした表情を浮かべる。ロイは真意を尋ねた。

「シード、何か不満でもあるのか」

「いやなに。ほかの諸侯がどう思うかだ。ヘスマンたちは別として、『賊が駆逐されている』という短絡的な評価で押し切られそうな気がしてな。これをあいつらが言ってくれれば楽なんだけどな」

「君はヘスマン殿たちが、この問題に関わっているとでも考えているのかい?」

「まあ、無理があるというのは分かってる。だが、謀反を画策が発覚してからのアイツらが静かすぎるんでね。・・・俺の考えすぎか。すまん、忘れてくれ」

 そう言ってシードは頭をかく。バツが悪くなったシードは、そのまま部屋を出て行った。

「あ、シード。待って」

 リリーナが呼び止めたのも聞かず、シードはそのまま足早に去っていった。

 

 

 そして諸侯会議の日。リリーナは早速この案件を取り上げてみるが、シードの予想通り、前向きにとらえる諸侯が相次いだ。

 

「方法はどうであれ、民に害をなす賊がなくなることはよいではありませんか」

「然様。特に気にするまでもありますまい」

「その一団には感謝せねばなりませんな。いっそのことリキアの賊をすべて駆逐してもらいたいものだ」

 楽観的な意見が大勢を占める中で、リリーナたちは自分たちの懸念を示す機会を失う。結局このことは大した進展もなく、静観することで一致した。その中で、ロイは気になることがあった。

 

 

 

「まあ、当然と言えば当然だが・・・。賊の存在は各諸侯にとっても頭の痛い問題だ。それを消してくれるんだから特に触れたくはないんだろ」

 会議の休憩の折、バルコニーにてシードとロイはさっきの議題を振り返っていた。

「しかし、これでこの一件は秘密裏にしか動けなくなったな。どうするんだ、ロイ」

「・・・・」

「?おい、ロイ」

「あ、すまない」

「なんか気になることでもあったのか?」

 いぶかしみながら尋ねるシードに、ロイは考え込んだままとつとつと話し始めた。

「各諸侯の表情・・・。気になったのが二人いる」

「二人?誰だ」

「一人はヘスマン殿。君の見立てでは、あの方が何らかのかかわりがあるとのことだ。そこでしばらく様子を見ていたが、僕にはむしろ戸惑っているようにも見えた」

「戸惑っている?」

「僕の想像だが・・・。おそらくヘスマン殿は関わっていない」

「そうか・・・。俺の考えすぎだったか」

 ロイの展望を聞いて、シードは苦笑いを浮かべる。だが、ロイの表情は変わらず曇ったままだ。

「ただそれ以上に気になったのが、トリア候だ」

「トリア?レノスがか?」

 ロイが気になったもう一人の人物。それは自分たちと同じく若い諸侯である、トリア侯爵レノスだった。

 レノスは、先の動乱でベルンに寝返ろうともくろんだ執事ワグナーに暗殺されたヘクトルの従兄弟オルンの嫡子である。ロイらとは二つ年上で、物静かな人物である。元来あまり会議で発言するようなことはないのだが、リリーナが案件を取り上げたときから、その挙動がロイには引っかかった。

「はた目から見ればいつもの通りだったが、僕には何かにおびえているかのようだった。もしかしたら、何か知っているのかもしれない」

「ならば、聞いてみるか。直に」

「ああ。もしかしたら、何か知っているのかもしれない」

 そうロイが決めたときだった。

 

「ロイ様、シード様。ここにおられましたか」

「どうしたんだマーカス」

 駆けつけてきたマーカスにロイが尋ねる。マーカスは思いもよらぬことを伝えてきた。

「トリア侯爵のレノス様が、急病により帰郷することになりました」

「何だって?」

「このところお身体がすぐれなかったようで・・・。先ほどの会議で調子を崩されたとか」

 マーカスの報告を聞いて、シードは首を傾げた。

「もともと奴はひ弱い・・・。こうなったところで別に不思議はないんだが・・・。ずいぶんと都合がいいな」

「都合がよいとは?」

「いや、マーカス。何でもない。わざわざすまなかったな」

 マーカスを労うと、ロイは目でシードに来るように言う。二人はおもむろに歩き始める。

「どう思う。これは偶然ではない・・・と?」

「少なくとも俺はそう考える。レノスは、何かを知っている」

「・・・リリーナには、どうする?」

「うむ。話せるなら話したほうがいいか・・・。あとで知らされるよりはいいだろう。お前の口から言ってやれ」

 

 

 

 このとき、二人はまだ知らない。いや、知る由もない。

 トリア侯爵が、リキア反乱のカギを握っていることに。

 

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