Advanced Witcher   作:黒須 一騎

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男爵と娘と許嫁と

 

 

 

スウェッド村で大量のチーズも積み込み、二台の荷車は満載であり、それを引く馬にも負担がかかり移動速度が落ちたことを除けば、エード・グリンヴェールまでの帰途は順調だった。

 

大雅は、メイヤー家でゆったりとした日々を過ごしていたかと言うと、そんなことも無く、情報収集に明け暮れていた。

 

この国自体は現在表向き上、ケイドウェン自治領とは成っているが、事実上レダニアに侵略吸収された経緯から、レダニアへの反発というより、早々に国を明け渡した王族への恨みが強い。

 

メイヤー男爵家は、レダニアによる占領の折、早々に帰順したため一部で衛士や兵士が離反、多くの者が国を離れるか職を辞した。

 

また、大雅はこの世界の成り立ちについても調べる必要があった。

大まかな事はサブリナ女史から伝えられたが、非常に大まかなもので、特に非人間族との対立については詳細が判っていない。

現在の非人間族と対立関係だけでなく、時として大国との共闘やお互いを利用し合っているフシさえあった。

 

過去を知るには、長く生きてきた者と話すのが最も手っ取り早い、そんなわけで今日もアリツィアの元を訪ねていた。

もちろん、ケチャップやら出来立てのチーズを携えてだ。

 

「本来この世界にはドワーフやノームがこの地の支配者だった。

 ノームは500年前に絶滅したと伝えられるが、実際にはハーフリングに血と性質を伝えたにすぎん。

 そして2300年前、新たなる種族エルフが3隻の白き空飛ぶ船で、この地に降り立ったとされている。

 まあ、詳細についてはわしも詳しくはしらん。

 機会があればエルフの賢者にでも尋ねて見るがよかろう。

 彼らはこの地に根を下ろし各地に集落や街を作り始めたという。

 現在のエルフの遺跡等がそれじゃ。

 彼らは独特の文明と文化で一時期はこの世界を支配していた。

 しかし、1500年前、天体の合という事象が起こった。

 これにより怪物と共に魔法がもたらされた。

 先住族とエルフの関係は、決して良好な物ではなかったとされるが、これ以降は共に怪物たちと戦ったと言われておる」

 

「天体の合というのは?

 具体的にどういう現象なんだ?」

 

「元はこの地に降りた、エルフたちの星を超えた連絡や、物流の方法であったと聞く。

 彼らはこの技術をけっして多種族には伝えなかった。

 しかし、わしはこの技術こそが、天体の合を引き起こした原因ではないかと思っている。

 もし、異空間を繋いたとして物の理(ことわり)が同じとは言えまい?

 この世界に天体の合により異なる世界から大量の物、魔力、そして人や怪物たちが流れ込んでもおかしくはない」

 

「惑星が接近した場合、質量が大きく違わない限り、両方とも唯では済まないはずだが?」

 

「もちろんじゃ。

 今でもその傷跡が各地に残っておるしな。

 じゃが1500年前もの出来事じゃ。

 当時の物は石や碑文でしか僅かに残っておらん上に、エルフ独特の韻を含んだ言い回しや、比喩が多くてな、現在ではエルフ自身も理解できる者は少ない。

 いずれにせよ、天体の合という言葉が、そのままと取れる事は無い」

 

「人間もその時に?」

「そう言われておる。

 最初は少なかった人間は、徐々に数を増やし、500年ほど前からは無視できない数となった。

 他の種族を非人間族として押し出し始めた。

 非人間族自体も、人間とは交わろうとする者が少なかったうえ、考え方自体も異なる。

 対立が生まれるのは、至極当然の事じっゃたろうて。

 徐々に人間は非人間族を僻地へと追いやり、大地に蔓延っていった。

 もちろん混血が無かったわけでもない。

 一部ではエルフやドワーフの一族とも血縁を結ぶ政治的な物だけでなく、人間とエルフ、人間とドワーフなども混血しているじゃろう。

 街を歩けばハーフエルフなど沢山居るしの。

 お前さんから見て、この世界はどうじゃ?」

 

「どうと言われてもな。

 まあ、人間なら俺たちの種族でいう、コーカソイドかそれに近い種族しかいないのは、不自然だな。

 俺の所には大きく分けて、コーカソイドに加え、黒い肌を持つネグロイドや、黄色い肌を持つモンゴロイドの3つが居る」

「混血は出来るのかえ?」

 

「もちろんだ。俺自身がコーカソイドとモンゴロイドの混血だしな」

「ほう、だからわしらと顔つきが違うのじゃな」

 

「肌の色だけじゃないさ、最も古い種族とされるネグロイドから、コーカソイドとモンゴロイドが別れた。

 文明程度も異なれば、社会の形態も全く異なる」

 

「なぜそんな事が判るのじゃ?」

「科学が進んでいると話したと思うが、それの応用で遺伝子と言う物を調べる方法がある」

 

「遺伝子?」

「親から子に引き継がれる体を形作る情報だ。

 これを調べる事で、どの種族の血を引いているのか、何千世代離れようが系統が判るんだ。

 身近なところでは、親子かどうかの判定にも使われる。

 数万年前の物でも、化石化していない限りは調べられる」

 

「ほう、凄いもんじゃのう。

 で、3つの部族で戦ったり混血していると?」

「そんな簡単な物じゃない、同じ種族でも国が違えば争いを行うし、戦争も起こる。

 戦いの理由はもっと複雑だよ」

 

何日もアリツィアの元に通い、彼女が知りうる限りのこの世界の成り立ちや、現在の力関係を含めた状況を教えてもらった。

もちろん会談のデータは全て、本国日本に送られ詳細な分析が行われる。

 

「エルフが支配種族になれなかったのは?」

 

「いろんな事が言われておるが、古の技術が失われたことが大きいじゃろうな。

 古くは偉大な技術をもっていたとされるが、そのほとんどが失われておる。

 エルフはこの星で生きていく為、文明を捨てたというより維持できなかったのじゃろうな。

 世代を重ねるごとに衰退していった。

 唯一残っておるのが魔法の呪文じゃ、その殆どか古エルフ語で綴られておる。

 今では魔術師さえ、本当の意味するところは伝えられておらん。

 人間はまた、当時の支配者階級のエルフに、反旗を振りかざし数の暴力でこれを潰していった。

 それが人間とエルフの、決定的な分裂のきっかけじゃ」

 

「魔術師の使う魔法と、ウイッチャーの使う魔法は同じものだと聞いたが?」

「基本的な物は同じじゃが、彼らの魔法は戦闘に特化した物と言う事じゃ。

 ゆえに呪文も違えば、発動の仕方も異なる。

 魔術師はウィッチヤーの上位互換かの。

 ただ、戦闘でも魔法に特化するのか、剣などの武器を併用するのかの違いじゃ。

 実際、怪物退治を生業とする魔術師も居ると聞くし、ドルイドなぞ魔術だけではなく呪術と融合した物じゃ」

 

「魔術と呪術・・違うのか?」

「根っこは変わりない。

 違うのは考え方じゃよ。

 お前さんの言葉を借りれば、魔術師は科学的な探究者で、呪術師は自然や概念的な物に回答を求めたものに過ぎん。

 多少毛並みは違うがの」

 

「近代の状況を教えてくれ」

「そうじゃな、400年ほど前に人間の優勢が決定的となってからは、各地にウルフやドワーフから奪った土地に国を築いていった。

 そして国同士で戦い始めたのじゃ。

 その中でも南方のニルフガード帝国は突出した強さを誇り、南方を平定した。

 そして十数年前、その手はここ北方諸国へと伸びた。

 アメール山脈を越え、ニルフガード帝国はシントラを手に入れた。

 北方諸国の列強のひとつであったテメリアは、元はシントラの土地であったプロキオン、ブルッゲ、ソドン、マハカムを統合し何とか撃退に成功した。

 この四つの国は、戦争の疲弊から立ち直れずテメリアに事実上吸収されてしまった。

 これが第一次北方戦争じゃ。

 そして数年前、再びニルフガードは侵攻を始めた。

 第二次北方戦争の始まりじゃ。

 この時エルフが帝国に味方したりエイダーンが、土地をニルフガードに売り飛ばすなど、いろいろあったが、女魔術師会がリリアの王女と懇意だったため、ヤルーガ川まで押し戻した所で休戦協定が結ばれた。

 さすがに女魔術師の広域攻撃には、無傷ではおらんでの」

 

アリツィアは大雅にもハーブティーを奨めながら、自らも喉を湿した。

大雅も飲みなれたら、豆の炒ったものと自然のハーブを加えて作られたこのお茶を、美味しいと感じ始めていた。

 

「エルフの一族で現在も残っているのはスコイア・テルじゃな。

 この戦争の時期に作られたエルフの軍属、ウリヘッド旅団が元じゃ。

 そして、3年前テメリアとエイダーンのゴタゴタや、女魔術師会とのイザコザの隙をつく様にニルフガードは再侵攻を始めた。

 これが現在も続いている第三次北方戦争じゃ。

 これでテメリア、エイダーンは実質上併合された。

 そして、この国ケイドウェンがレダニアに奇襲され併合された。

 レダニア王は気違いじゃが、戦い方については天才的じゃ。

 まあ、女魔術師会との決定的な決別することになったのも、この時じゃな」

 

「なんでそんなことに?

 女魔術師は相談役など、密接な関係だったのでは?」

 

「第三次の北方戦争の前まではそうじゃった。

 深い知恵と、知識を持ち、外交術に長ける者は、王の相談役として迎え入れられ、政治的重職に就く事も多い。

 しかし、それを取りまとめていたフィリパにより、組織は私物化され衰退していった。

 魔術師同士は、独自のネットワークを持つ故、国際関係を裏で操っていると勘ぐられることも多いし、実質トップであるフィリパがそれをしていたのじゃ。

 わしもそれで嫌気がさし、こうして隠匿生活をしておる」

 

「質問を変えよう。

 ウイッチャーの数はどのぐらいだ?

 推定でもいい」

 

「北方諸国では30も残っておらんじゃろ。

 最初は怪物退治のエキスパートとして育成されたのじゃ。

 じゃが生きていくうえで食わねばならんし、武器も消耗する。

 だから報酬を受ける事が前提の、怪物退治の専門がウイッチャーなのじゃ。

 最初は流派なぞ無かったが、いつのまにか5つの流派に分かれた。

 魔法に特化した流派や、剣術に特化した流派などじゃ。

 しかし第二次北方戦争の折、大きな盗賊集団のサラマンダーという組織が、次々と各流派の拠点を奇襲、多くのウッィチャーが殺されたという。

 育成現場でもあった拠点を潰された者たちは、全国に散々となり、サラマンダーを追いかけ、結局これを潰した。

 これには狼流派のウィッチャーが、大きく関与したという」

 

「女魔術師もそうなのか」

「いや、ちゃんと学校があった。

 アレトゥーザにな。

 組織的に運用されていて弟子を送り込むのじゃ。

 完全に独立した組織で、どの国にも誰にも迎合する事は無い。

 しかしテメリアがニルフガードに侵攻された時、北西にあるサネッド島も侵略を受けた。

 いまでは瓦礫しか残されておらん」

 

「では現在の育成は?」

「学校が出来る前の、師弟教育に戻ったと聞いておる。

 まあ、母体であった女魔術師会が解散したのも大きかったじゃろうて」

 

「次は何処へ行くつもりじゃ?」

「まずはケイア・モルヘンに行ってみるつもりだ。

 ヴェセミルとやらなら、知っているかも知れないからな。

 その次は西だな、紹介してもらった女魔術師の、マルガリータを探してみるつもりだ」

 

「そうか、寂しくなるの」

「だが、メイヤー男爵が戻って来るまでは居るつもりだ」

 

 

大雅がメイヤー家に戻ると、ロッテンが待っていると執事が伝えた。

 

「ロッテン入るぞ」

大雅は男爵の執務室のドアを叩いて入っていく。

 

「おかえりタイガ。収穫はあった?」

「まあ、そこそだな、ところで何か用か?」

「ええ、ならず者たちの判決が出たの。

 それと悪徳商人からお金も戻ってきたのよ」

「ならず者?」

 

「ほら、初めてアリツィアの所へ行ったときに絡まれたじゃない。忘れた?」

「そういや、そんなことがあったな。正直忘れてたよ」

 

「ならず者たちは、あの後余罪が出るわ出るわで、縛り首」

「全員が?」

 

「ええ、全員よ。

 あと、借りてた宝石返すわ、おかげで助かった」

「それは構わん、きついのなら、暫く貸したままでも良かったのだが」

 

「けじめは大切よ。

 それに運んできた蜂蜜に良い値がついたの、去年の倍近くになったわ。

 チーズもほぼ買い手がついたし、今年は黒字が大きいわよ」

「そうか、それは良かった」

 

「ええ、亡くした御者も、息子が代わってくれたし、あとは父と衛士が帰ってくれば、タイガはお役御免ね」

「たいして力になれなかったが」

 

「とんでもない!

 悪徳商人の件は、危うく4万クラウンも奪われるのを防いでくれたし、領地じゃ盗賊や怪物の駆逐、それどころか事業の開発までしてくれたじゃない」

「たまたまだ、それにケチッャプは俺が食いたかったからな」

 

「ねえ、タイガ。

 ここに骨をうずめる気はない?」

「無理だ、俺は兵士として命令でここに来たからな」

「仕事が終わったらよ、待ってちゃダメ?」

「なんかロアナもおんなじ事言ってたな。

 かならず一度帰って来いって」

 

「あの子もやっぱり・・・・・」

 

「やっぱり?」

「い、いえ。

 何でもないわ、そういえば父から手紙が届いたの。

 来週にはこっちへ戻れるって。

 それとケイア・モルヘンの噂が書かれていたわ」

 

「ケイア・モルヘンの? 何が書かれていた?」

「なんでも数年前にケイア・モルヘンに襲撃があって、辛くもこれを撃退。

 その後にあったスケリッジで、大きな戦いが有りこれを壊滅させたそうよ。

 この時には地元のスケリッジ人だけでなく、かなり大きなニルフガードの軍が投入されたって」

 

「相手は?」

「ワイルドハントだったって言う噂だらしいわ。

 スケリッジ人やニルフガードの兵士も、そう言っているって」

 

それから1週間、大雅はロッテンの警護を行いながら今後の計画を練った。

 

 

「貴殿がタイガ・ハイドか、娘が、いや当家が大変世話になった」

大雅はメイヤー家当主であるアベルト・メイヤーと会っていた。

やっと1カ月にわたるポンター流域への兵站が終わり、エード・グリンヴェールに戻ってきたのだ。

本来領地はアレンウォード村やスウッェド村など国北部の数村なのだが、エード・グリンヴェールの執政官の一人でもあり、居をエード・グリンヴェールに構えていた。

 

「いや、助けられたのは運が良かっただけです。

 それより兵站は無事に?」

「ああ、ポンター北にある集積所には無事物資が届けられた。

 貴殿が娘を助けてくれたおかげでな」

「あの周辺の情報を教えて頂ければ助かる」

 

「ニルフガートとの戦いは、現在ポンター川を挟んで睨み合いが続いている。

 テメリア方面は、ニルフガードがレダニアとの国境線拡大に伴い硬直状態だ。

 なにせテメリアというのは、湿地が多くそれ以外は山だ。

 物資や武器の輸送にさえ、簡単には行えない。

 補給線が伸び、手薄になった所を、レダニアに突かれるという事が繰り返されている」

 

「となるとレダニアからテメリアに入る事は難しいと?」

 

「そう言わざる負えんな。

 この国の南西にあるバングリーンから、テメリアとの国境にあるフロットサムの大森林を抜ける方が良いかもしれん。

 ただし、怪物共と元脱走兵の盗賊の巣窟だ。

 一筋縄では行くまい」

「ポンター川を越えてエイダーンに入る方法は?」

 

「出国は出来ても、エイダーンへの入国はまず無理と見ていい。

 難民でさえ通させない状態だ。

 たとえ警備の隙をつくことも難しいだろう、なにせ多くの場所が渓谷と呼んでも良い。

 船や泳いで渡るにしても、そう言った所は両軍がにらみ合っている場所だしな」

「ニルフガードは今でもエムヒルが皇帝を?」

 

「ああ、なんでも唯一の血統である娘、シリラ王女を亡くしてからは攻勢も薄くなってきた。

 まあ、それはレダニアでさえそうだがな。

 兵士にはクラウンの贋金も支払われる始末だ、国庫金などとっくに空だろう」

「ではレダニアからスケリッジへは?」

 

「海賊や嵐に襲われなければ、行くことは難しくない。

 たどり着ければだが、なにせスケリッジの阿呆どもは見境なく襲う。

 まあ、ワイルドハントとの戦い以降、海賊行為は少なくなって、現在は商運に力を入れているようだがな。

 王が代替わりした事も大きいのだろう」

 

「そういえばケイア・モルヘンでの戦いとスケリッジの戦いも、ワイルドハントが?」

「ケイア・モルヘンの戦いは、ケイア・モルヘンから帝国に要請が有ったらしいが、皇帝も蹴ったらしいという噂だ。

 たしかに一地方、しかも侵略しようとしている国の個人的居城だ。

 手を出す方がおかしい。

 しかも戦争をしている敵国内だ。

 たとえ重鎮の進言が有ったとしても、何のメリットも無い戦いに兵は出さんさ。

 しかしスケリッジは違う。

 スケリッジの海上戦力は、決してニルフガードに劣るものではない上、あの海域を熟知している。

 もともと海洋国家であるスケリッジ、と海上で戦えばニルフガードとて只では済まない。

 私は陰での密約が出来たのではと踏んでいる」

 

「どの様な?」

「これはあくまでも憶測だが。

 不可侵条約までは行かないだろうが、お互いの領分を侵さない代わりに、レダニアへの軍事行動には目を瞑るという所だろうな。

 減少するレダニアとの交易は、シントラ経由での交易を保障したのだろう。

 実際スケリッジは部族間のイザコザは、日常茶飯事だが新しい女王は内政に力を入れているという。

 その為か部族間の争いは、めっきり少なくなり、国民が女王を押す声も大きい。

 栄光より実利を獲ったのだよ」

 

「なるほど、だとするとこの国からレダニア経由でスケリッジへ入り、そこからシントラに入った方が現実的か」

 

「時間はかかるが最も安全な方法だろう。

 レダニアに行くのなら通行証が必須だ。

 特にノヴィグラドに入るには通行証無しでは入れん」

 

「ノヴィグラドに入らなければ通行証は不要では?」

「スケリッジへの船はノヴィグラドからしか出ておらん。

 しかも不定期便だ。陸路をシントラに抜けられれば、可能かも知れんがな」

 

「その前にケイア・モルヘンだな、何か知っている事は?」

「戦いの後は住む者も居ないという事だ。

 何人か行商人が行ったが、人影すら見つからず誰も見えなかったらしい」

 

「ここの女魔法使いの話では、ヴェセミルという老ウイッチャーが居るとの話だったが?」

「ケイア・モルヘンは、元々ウッィチャーの一つの流派の居城に過ぎない。

 居たとしても簡単には見つからないだろう。それ以上の詳しい事は誰も知らんようだ」

 

「他の狼流派のウィッチャーか、女魔術師については?」

 

「ウイッチャーについては話を聞くが、依頼者は流派を確認する事はまずない。

 要は誰でもいいから早く解決してほしい、それだけだからだ。

 ウイッチャーの話は散発的に噂を聞くが、解決した問題を吹聴して歩く者も少ない。

 だから探す方法は、掲示板の利用が手っ取り早いかもしれないな、まあ文面はかなり捻らないと警戒されるだろうが。

 そして魔女だが、此処では旧首都のアルド・カレイに行ったとしても、身を隠して生活していて探すのは難しいだろう。

 ここのアリツィアでさえ、表向きは治療師として名を通しているから、女魔術師として知っている者は少ない。

 ましてレダニアでは、永遠の炎協会やその下部組織のウッィチャーハンターが幅を効かせている。

 かなりの数が逃げ出しているらしいし、また居たとしても、隠れ住んでいるから見つける事は困難だろう。」

 

「レダニアに向かう意味は無いと?」

「そうでもない。

 魔女たちが逃げ出す前はノヴィグラドの連中や、ラドヴィッド王との間でひと悶着有ったらしい。

 事実、現在は一時期ノヴィグラドに滞在していたラドヴィッド王も、首都のトレトゴールに戻っている。

 ノヴィグラドは貴族のラ・ヴァレッテ男爵が統治しているのだが、実際は4人の者たちによって実質統治されていた。

 ドワーフのクリーヴァー、物乞いの王フランシス・ペドラム、ディクストラ、ホアソン・ジュニアだ。

 このうちディクストラは死に、ホアソン・ジュニアは落ちぶれて、残っているのはクリーヴァーとフランシス・べドラムだけだ。

 表の世界をクリーヴァーが裏の世界をべドラムが牛耳っている。

 べドラムに会えれば何か情報が得られるかもしれないが、べドラムは地下に引きこもったままだという。

 まあ、4人のうち2人もああなれば警戒心が強くなるのは当たり前だ」

 

「有用な情報は助かる」

「なに、娘を助けてくれたお礼だ、護衛として付けていた衛士はかなりの腕だったが、やられるとはな・・・。わしが帰るまでの間、娘を守ってくれて礼を言う」

 

「なに、お互い様だ。

 こちらだって眠る所と、食いっぱぐれに成らずに済んだんだ」

 

「それでだが・・・・実は娘にはまだ話していないが、あれの婚約者がポンターで亡くなった。

 見張り櫓の建設を指揮している所へ、バリスタが撃ち込まれたらしく、ほぼ即死だったという事だ」

 

「それは・・・お悔やみ申し上げる」

「母を10歳の時流行り病で亡くし、あの子には親しくする者も少ない。

 我儘を言うのは心苦しいが、娘のロッテンが落ち着くまで暫し居てやってくれまいか」

 

「即答は出来かねる。

 自分の事はどんな人間か聞いていると思っていたが」

「詳細な手紙が届いたよ。

 異世界の人間だともな。

 顔を見るまでは信じられなかったが、それも納得が行った」

 

「自分も国の指示で動いている以上、やらねばならない仕事がある。

 与えられた時間は2年。この世界を知るにはあまりにも短い」

「国交の相手国を調べる事前調査だったか」

 

「そうだ。

 その為にも一つ所に腰を落ち着けるには難しい。

 今日問い合わせては見るが、期待はしないで欲しい」

 

『お父様、お茶をお持ちしました』

ドア越しに声がかけられる。

ロッテンがお茶を持って入ってきた、きれいなブルーのドレスだ。

 

「ロッテン、そこに座りなさい。

 お前に伝えなければならないことが有る」

「あら、タイガさんが居るのにですか?」

 

「ウィンザーが亡くなった」

「あら、それはそれは。

 お悔やみに伺った方が良いかしら」

 

「ロッテン、許嫁だぞお前の」

「ええ、もちろん知ってますよ。

 何度かお会いしたことも有りますし、お父様と向こうで決めたお話でしたわよね。

 まあ、悲哀が湧いてくるほどの間柄ではございませんし、まあ、お気の毒とは思いますけど」

 

「なにも感じないのか?」

「ええ、一緒になってから恋愛感情が芽生えるのだ、と仰ったのは、お父様ではなくて?

 私は家を守るための血として、重要な事は判りますが、そのためには個人の感情なんかは二の次、そう理解していますわ。

 私が不幸な目に遭うのも、遭わないのもお父様次第、その時には散々に恨み言を、毎日言って差し上げますわ」

 

「タイガ殿・・・どう思われる? この娘」

「どうって・・巻き込まんで下さい。

 良く言えば達観した考え方と言うか・・」

 

「はっきり言って良いのよタイガ」

「はっきりって・・・まあ、家の事も考えての諦めでしょうか」

 

「好きな男でも居るのかロッテン?」

「居なかったわ、今までは。

 誰か適当な男をお父様にあてがって貰って、子を産み家を存続させていく。

 そんな生き方しか道が無かったのよね」

 

「今までは?!」

「ええ、私は好きな男(ひと)が居るの。

 一緒になれるのなら家なんて要らない。

 でもそれも我儘だって知ってる。

 お父様の裁量に従うつもりよ。

 まあ、毎日の恨み言は、死ぬまで聞き続けていただく事にはなりますが」

 

大雅は何か強い危機を感じた。

この話の流れは不味い。

実に不味い、嫌な予感しかしない。

 

「すまないが後は親子の間だけの話だ。

 ナジャムが拗ねると面倒だから、ちょっと行ってくる」

無理やり強引にその場を辞すると、馬房へと向かった。

 

このままあの場に居れば、何らかに巻き込まれる可能性が高い。

しかも碌でもない話だ、それは大雅の任務にとって障害となる可能性が大きい。

 

部屋に戻り、データを転送するため半固定インベントリを起動すると、ちょっとしてから返答が帰ってきた。

メイヤー家との良好な関係を、壊さない配慮をせよとのお達し。

 

「いったいどうすんだよ、こんなん。丸投げかよ」

 

また、メイヤー家の地下室の一部を、少し前から半固定インベントリとして使わせてもらっているが、そこに大量の器材が送り付けられてきた。

太陽光のパネル、新型の個体電池を含む電力コントローラー1式、大量の配線資材とLEDの照明機器。

 

中には豪華なシャンデリアまで入っている、最新の音声コントロール式だ。

ローカル言語で使えるのかと思いきや、初期設定を行なえば何語でもOKらしい。

さすが日本製だ。

 

「ちょっと待てやコラ。

 これ俺が敷設するのかよ。

 俺は電気屋じゃねーぞ、施設課呼べや!」

ご丁寧に梯子になる脚立、工具、消費材料までもが一式入っていた。

 

事前にロッテンから男爵に話が有ったのか、照明と配線の敷設については快諾が得られた。

娘のたっての希望に応えない父親は少ない。

新型の高耐久太陽電池パネルは、南側の屋根に設置した。

衛星にも使用されている物で、割れたりしなければ20年以上は持つらしい。

 

電化された現代の家庭には全く足りない容量だが、LEDの照明だけなら十二分な容量だ。

大雅は3日間の奮闘と出来栄えに満足していた。

現代の建屋の様に屋根裏や壁の間に隙間は無いため、露出配線となるがそこはケーブルカバーで対処する。

 

 

「来週には発とうと思っています」

大雅はそう男爵に告げた。

男爵からは警護の報酬の他、結構な額の礼金を受け取った。

 

旅立ちの日は、梅雨の様な雨が降っていた。

すでに季節は6月なので寒くは無いが、気は滅入る。

 

男爵とロッテンが見送るエード・グリンヴェールを後にして、一路ウェンリッヒ川を遡る道へとナジャムを向けた。

 

2日ほど行った所で、唐突にメダルが震え始めた。

 

「魔力に反応するのだったか」

 

AKMSに初弾を装填し、周囲を伺いながらもナジャムをゆっくりと歩かせる。

丁度ウェンリッヒ川の浅瀬を横切る場所で、メダルは大きく断続的に振動を始める。

いったいどんなロジックで動いているか判らないが、これだけでも解析できれば向こうの世界ではいろんなブレイクスルーが起こるだろう。

 

「近いな・・・」

大雅は周囲を調べてみると、高さ2mほどの上部に穴が開いた石碑を見つけた。

どうやらこれにメダルは反応しているようだ。

 

「これが力の場と言う奴か?

 しかし、どうすりゃいいんだか」

 

ナジャムを少し離れた場所に停め、河原から離れた林の中にある石柱の前に立った。

石碑の上部の穴にはなにか光の様な物が光っている、じっと見ていると吸い込まれるような錯覚に陥りそうだ。

微かに空振と言うのだろうか、音と振動が一緒になったようなものを感じた。

 

それは、大雅が石柱に何か書かれていないかを見るために、しゃがんだときに起こった。

体の中に何か入り込んで来るような、じん・・と痺れるような感覚に襲われた、しかし、不快な物では無く、天気のいい日に瞼を閉じたときの様な温かさを持って居る。

 

「言葉には言い表せられない感覚だな・・・・」

 

どのぐらいの時間そうしていたのかは判らないが、おそらく数秒か数十秒だろう。

不安げな面持ちでこちらを見ているナジャムと目が合った。

 

「問題ない、ナジャム」

大雅がそう言い左手を上げて制した、再びナジャムは若草を食み始める。

 

「アリツィアは魔力が強くなると言っていたな」

近くを見ると、古いたき火の跡が見られる。

 

「試してみるか・・・」

大雅はあたりを見回し人が居ない事を確認し、火葬の時と同じ印を手で組み意識を集中した。

 

バシュッ!

 

たき火跡の燃えカスに緑色の炎が走り、すぐに赤い炎となって燃え出した。

 

「ありゃ、できちまったよ、マジか。

 帰国できても、公共交通機関には乗れなくなりそうだな」

 

アリツィアから聞いた、ウイッチャーの印はイグニと言う物だけだったらしい。

女魔術師が印を使っても、使わなくとも炎の魔術より弱い物しか発現できなく、すぐさま興味を失ってしまったとのこと。

 

アリツィアに言われ、何度か行ったが緑色の炎に関しては、彼女も頭を傾げるばかりだった。

効果範囲は僅かに3メートルほどで、アリツィアの言うウイッチャーの平均的な数値だが、魔法使いの立場としては、甚だ貧弱で弱い魔法との事だ。

 

たしかに、剣で戦っているような至近距離ならば、意表を突いた攻撃は有効かもしれないが、CQCを使いこなす大雅にとっては、相手を絡めて殺傷した方が余程早く安全と言える。

 

「まあ、防ぎようがない軽い攻撃としては、使いどころによっては有効か・・・」

相手が燃えやすい物を着ている場合は有効かもしれない。

しかし、火薬を常に身に着けている大雅にとって「使って大丈夫か?」と考えさせる節も有った。

 

「あと、キャンプでは楽かもな」

煮炊きの場合、小型コンロを使うため、たき火は単に暖を取る為と灯りの手段であり、それも寝袋を被ってしまえば必要ない。

どちらかと言うと、赤く燃える火が精神的に与える安心感の方が大きかった。

 

野犬や狼など、多少獣避けに貢献はするかもしれないが、火よりもフラッシュライトの明かりの方を恐れる事を、大雅はここに来て知った。

 

つまり大雅にとって魔法は、半固定インベントリを利用するための基礎スキルだけで十分事足りる物であり、さして習得する必要性の無い物だ。

 

 

山岳部の夜は早い。

時計ではまだ午後5時なのだが、すでに陽は山の稜線に落ち、地球とは異なる巨大な月が上り始めている。

道の横に適当な広場を見つけ、キャンプを張る。

 

「月と星だけは、向こうの世界より遥かにきれいだな」

 

それからケイア・モルヘンに着くまでは全く何も無い日が続いた。

結構な頭数の鹿やウサギ、時には熊も見かけたが、怪物も姿を見せず、大雅はゆっくりと旅を楽しんだ。

川沿いに青色山脈へとゆったりと登っていく道から見下ろすのは格別の景色だ。

グラスに標高データを呼び出してみると、基準地点つまりアレンウォード村をゼロとした所から800m登っている事を示していた。

 

「あの地域の一般的標高から考えると、海抜1000mと言った所か、さすがに少し冷えて来たな」

標高が1000m上がるごとに気温は6度下がる。

大雅はパックからアウターシェルを取り出すと、一度タクティカルベストを外しその下に着た。

 

山間部にしては川幅の広い場所を渡ると、道が二手に分かれている。

左はけもの道の様な1mも幅が無い道で、左側の山頂へと続いているようだ。

右の道は幅も2m以上有り緩やかに上りとなっている。

 

「まあ、こっちがメインルートだろうな」

少し行くと唐突に大きな古城の尖塔が見えてくる。

大きな塔が二つ、それに続く高い城壁、痛みが激しく、下手をすると遺跡か、打ち捨てられた古城のようだ。

 

「距離から言っても此処がケイア・モルヘンか? 結構荒れているな」

道なりに行くと、しっかりとした木の防柵戸で塞がれた門が見えてきた、簡単には開きそうもない。

 

「ま、当然だろうな、周囲の城壁を調べてみるか」

 

ナジャムを近くの標識に繋ぎ、ドローンを取り出す。

城壁が2か所ほど破壊されている場所を見つけたが、一方は100m以上の崖の方でありアプローチが困難そうだ。

 

もう一方は、城壁沿いに少し登ればなんとか入れそうだ。

ついでに城壁内部を見たが、人影は一切ない。

数匹の野兎と鹿に似た動物だけだ、人が生活しているような煙も無く、窓は殆ど木戸が掛かって塞がっている。

 

ドローンを回収し、防柵戸の右側を登っていく、まずは防柵戸を開けられなければ、破壊するしか手が無くなる。

 

「よっこいせっと・・・」

大雅は瓦礫の隙間を通る様に潜り抜け、城壁の内部に入る事に成功した。

見ると結構な数の遺体が有る。

幾つかの鎧の中を見たが、ほぼ白骨化しており、此処の住人なのか、攻め入った者の遺体なのかは判別がつかない。

 

「もしかして、こいつらがワイルドハントなのか?」

近くには結構な錆の浮いた剣がいくつも落ちており、赤さびからして鉄製に近い物であるようだ。

 

内部の中庭の様な場所は複雑な構造だが、仕切っている石柵は腰の高さほども無い。

防柵戸を上げ下げする機構を考えると、門塔の両側のどちらかに防柵戸を上げ下げする機構が有るはずだ。

大雅は左側の城壁に上る階段を見つけ上がっていった。

 

城壁の上は幅2mほどで歩くのには問題がない、門塔に近づくとレバーの様な物が下がった状態になっている。

試しにレバーを上にあげてみた。

 

ガコンと音がして防柵戸が少し上がったが、土埃が多少出た程度で防柵戸は上がらなかった。

しかなく城壁を降り、門塔へと向かう。

途中には、元は簡易な馬房の様な物と水飲み樋、そして乾燥はしているが結構な量の燕麦と干し草が置いてあった。

 

門塔の内部は暗かったが、複雑な滑車やロープの組み合わせで軽く動くような構造とみられるが、何本かロープが切れており、それが原因で防柵戸は上がらなかったようだ。

 

大雅は、僅かに斜めになっている防柵戸の下がっている方の下を持ちあげてみると、何とか上げられそうだ。

ゴトゴトと埃をかぶりながら力任せに上げていくと、何とか上まで上がった。

 

「待たせたな、ナジャム」

ナジャムを標識から外し、曳いて門塔へと入った。

 

馬房だったものは、庇が完全に壊されており、雨を凌ぐ事は出来ないが、幸い水飲み樋にはチョロチョロと綺麗な水が流れて満たされている。

 

飼葉桶を引きずって、それにたっぷりの燕麦を入れ水を上からかける。

燕麦の実をいくつか確認したが、黴ても腐っても居ない、水で多少ふやかせば十分に飼料になりそうだ。

 

門塔はフルオープンだが、このままだと野性動物や怪物の侵入も考えられる。

今日はここ泊まりなのは確定なので、その前に門の機能を直しておかねばなるまいが、その前に安全を確認する事が先決だ。

尖塔のある方へ向かうと、大きな木製の扉が見えてきた。

確認すると、どうやら鍵がかかっているらしい。

 

「ですよねぇ~」

破壊する事は簡単だが、万一住人が居た場合、気まずい事になる。

 

「誰か居るかぁ! 来客だ! ドアを開けてくれぇ!」

叫んでみても何のレスポンスも、動く気配もない。

 

「誰も居ないのかぁ! ドア破るぞぉ!」

数分待ってても状況は変わらない。

 

大きなドアの横に回ると普通のドアが有ったが、ここも鍵がかかっている。

大雅は背中からショットガンを取ると、1発だけ弾を取り除き代わりにドアブリーチ用の弾を装填する。

この弾は金属粉末を圧縮し成形したスラグ弾で、ドアの金属部分に撃つと初回の衝突衝撃で弾体が粉末状に砕け散ることから、安全に錠だけを破壊し、二次被害をもたらさずに済む。

 

ドンッ!

 

木部が脆くなっていたのか錠前の部分ごとごっそりと吹き飛び、ドアは自然と奥へと開いた。

ジャコッと次弾を装填し、注意深く内部へと入る。

 

多少暗いが見えないほどではない、幾つかの窓には歪ながらもガラスの様な物がはめ込まれ、其処から明かりが差し込んでいる。

 

「誰かいないのかぁ!」

叫んでみても全く反応がない。

物音もしない。

 

中はちょっとしたホール並みに広く、至る所に棚やチェストが置かれている。

また、蒸留器とみられる物や実験器具の様な物が乱雑に置かれていた。

奥へ進んでみても、ここ数年人が入った形跡は見られない事は、床の埃やテーブルの上の埃が物が建っていた。

 

「無人か?」

 

その後、1時間以上調べたが、奥には二つの塔に上る階段ホールが有るだけで、めぼしい物はなかった。

メインドアは簡単なピッキングツールで簡単に開くほど簡素な物で、大雅の世界ではとても鍵としては機能しないような代物だ。

メインドアの鍵を開け、ナジャムの所へと戻る。

 

「腹は一杯か?」

ブルッと答えるナジャムを連れ、奥のもう少しまともな馬房へと連れていく。

床にはまだ綺麗な干し藁がしいてある場所だ。

 

ナジャムも落ち着いたのか、馬具とパックを外してやると、ごろりと横になった。

 

「ゆっくり休め」

 

バック背負い、一度城の内部へと戻り、埃だらけの椅子を近くにあったボロ切れで、綺麗にしてから荷物を置いた。

 

「まあ、野外よりマシっていうとこか」

 

ナジャムの所へ戻ると、横になってナジャムは軽い鼾をかいている、クウ~、クウ~と体の大きさの割には可愛い鼾、いや寝息と言った方がいいのだろう。

 

馬具からロープを外し、防柵戸のある門塔へと戻り、外れた滑車とロープを直した。

レバーは単に防柵戸をロックするだけの機能で、防柵戸を上げ下げするにはロープを引いて行うらしい。

防柵戸は滑車とロープで重りと懸垂するように作られており、軽い力で上げ下げできる。

 

大雅は防柵戸を直すと、念のため城壁に上りロックしてから城の中へと戻った。

 

一つの大きなテーブルには、得体の知れない生物の遺骸が置いてあり、ほぼミイラ化している。

城内に遺体は無く、争った状態を見られない事から、戦いはほぼ外で行われたのだろう。

背中に多数のトゲを持つ四足動物の白骨、多数の禍々しい形の鎧の白骨、あまり気持ちのいいものではない。

 

塔に上るホールの手前には、結構な広さのキッチンがあったが、食料とみられる物は無く、石の様に固くなったパンが、いくつか残されていた。

 

暖炉に薪を置き火を点ける、こういう時魔法は本当に便利だ。

数年放置された薪は、簡単に火が付き赤々と燃えだす。

 

部屋が温まるほどの火力は望めないが、輻射熱で床が温まれば十分に暖は取れる。

夜になれば10℃を切るだろうし、ホラーハウスの様な場所で、火も無いのは心理的にきつい。

 

棚の木箱を漁ると、大量の蝋燭を見つけたので、いくつか燭台を持ち集め、結構な数の場所に設置した。

 

今日はすでに夕方となっており、ここの詳細な探索は明日にして簡単な食事で済ませた。

明日は探索ついでに天測装置を設置する、時間がかなり正確になるはずだ。

簡易GPS機能を作動させるには、あと一点の設置が必要だが、それまでは我慢するしかない。

簡易なため、5km程度の誤差が出るが無いよりは良い。

 

翌朝、大雅はナジャムに燕麦と水を与え、城内の本格的な探索に入る。

部屋はいくつかあるが、鍵が掛けられた小部屋には、簡素な木のベットとチェストがいくつか、そして多量の本棚があり、その内容から、ウィッチャーの誰かが、長期に渡り住んでいたと見られた。

 

暖炉の上に置いてある小さな肖像画は、素人が書いたのだろうか、それなりに人相が判る程度の物が飾られている。

老人と少女の様だが、手に取って裏返してみると"ヴェセミルおじさんへ シリラ"と記されている。

 

ではこの老人がヴェセミルなのだろうか、シリラと言うのは姪か血縁が無いか、どっちだ。

しかしウィッチャーの不妊を考えると、将来ウィッチャーとなるべく連れてこられた少女が、お手伝いとして住み込んでいたのかもしれない。

 

大雅はチェストも漁ってみたが、着替えや皮ベルトなどの装備品で、めぼしい物は見当たらない。

唯一、大ぶりな宝石が入った革袋が収穫だ。

日記や記録などは見当たらず、書架の探索に入る。

 

「えーっと・・・"水生付近の怪物"・・・・"怪物に対する魔法と対策"・・・"エキムマーラの生態と駆除"・・・・"魔法の戦術的応用"・・・・グールとアルグールについて」

どれも此処の住人や記録に関する物は見つからなかった。

これらも全て、インベントで送った。

こちらの資料は貴重だからだ。

 

二つある塔に上ってみると、どちらも居室となっていてベットやチェスト、テーブルや風呂代わりの桶が置いてあった、よく見るなと思った蒸留器の様な物は、どうやらお湯を沸かす湯沸かし器の様な物らしい、何処から水を調達するのかは不明だが。

 

いずれの部屋も、ここ数年使用した形跡がなく、埃が薄っすらと積もっていた。

パルコーには、開け放たれたままなので、出てみると絶景ともいえる景色が大雅を迎えた。

 

「碌に手掛かりは無しか・・・・」

大雅は明日には出ようかと、ふと最初に破ったドアの外に行くと、比較的新しい大量の焚き木を燃やした跡を見つけた。

 

ここに焚き木を積んで燃やす行為は、あまり意味がない、明かりにしても位置的に意味が無いし、小屋の様な建物で無い事も、燃え残りから判る。

少し戻ると、比較的新しい墓石が立っていた。

 

「えっと・・・"1272年 偉大なるウイッチャー、ヴェセミルここに眠る"・・・・死んでんじゃねーかよ・・・はあぁー・・・」

大雅は妙な脱力感を感じながら、決して大きくない墓石を眺めた。

墓石にはそれ以外の言葉もなにも、記されていなかった。

 

「廃墟確定だな、こりゃ」

近くに大きな百合の様な花が咲いていたので、1輪を手向けた。

 

 

翌朝、前足で地面を擦り角砂糖を催促するナジャムに、馬具と装備を積みケイア・モルヘンを後にした。

戻る途中で、川を手前に右側へ折れ、廃墟の様な尖塔に立ち寄り、天測装置をアンカーで固定する。

ここなら人に見つかる事も考えにくい。

 

青色山脈のすそ野にあるケイア・モルヘンから下りてくると途端に増えるのが野犬だ。

彼らは5頭から20頭ほどの群れで生活している。

馬に向かってくる1匹をAKMSで倒すと、残りは怯え一気に距離が離れる。

暫くは付かず離れずで後を追ってくるが、ある程度移動すると他の群れの縄張りに入るのか、くるりと踵を帰すのが定番だ。

 

頭も良く狡猾さを持っ野犬の方が、食べるためだけに襲う狼よりタチが悪い。

とにかくしつこいのだ。

 

こんな所でキャンプなんかは、とてもできない。

時間は既に夕方だが、ナジャムに少し頑張ってもらい、平地に近い所まで降りてキャンプを張る。

 

そこへ3人ほどの馬に乗った、薄汚れた男たちが寄ってきた。

声もかけず寄って来た男たちに、いつでも反応できるよう注意した。

 

「一緒にキャンプを張らせてもらっても良いか」

「構わん」

 

男たちは大雅が熾した火に当たり、酒盛りを始める。

大雅は我関せずと、一人分の夕食の準備を始めた。

 

「おう、にいちゃん。

 見ねえ顔だな何処へ行くんだ?」

「エード・グリンヴェールだ」

 

「ほう、商人には見えねえし、何もんだ?」

「旅をしている。ある人物を探してな。アンタらは?」

「俺たちか? 俺たちも旅人だよ」

 

「ほう、その軽装で青色山脈のふもとに行くとは思えんな。

 この先には廃墟が有るだけだ。

 この火を見つけた地回りの盗賊っていう所か」

「おう、わかってんなら命までは取らねえ、有り金全部出しな」

 

パンッ!

 

大雅はすぐにハンドガンを抜き至近距離で頭を撃つ。

この様な手合いには会話は不毛だ。

盗賊は座ったまま、後ろに倒れるように絶命した。

残りの二人も剣を抜きながら立ち上がるが、至近距離で外すことは無い。

 

「殺伐とした世界だな、・・・ったく」

 

死んだ盗賊の死体を引きずり、腰の革袋の金貨を奪った。

3頭の馬は街で売れば、そこそこの値が付くだろう。

死体は野犬が綺麗に処理してくれる筈だ、腐り始めれば何処から現れるのか判らないが、グールが片付けてくれるだろう。

後に残るのは身元の判らない骨だけだ、それも綺麗にではなく、あちこち骨が散乱していく。

 

「来るときはなにも無かったが、帰りはモテモテだな」

 

翌日、遠くに麦の畑が見えてくる、ここはエード・グリンヴェールから30キロほど離れた集落で民家は6軒ほどだ。

集落の中に入っていくと、何やら数人の村人が話をしていた。

 

「だから、昨日山へ行く道に火が見えたんだってば、きっと盗賊が誰かを襲ったんだ」

「おめえ、マヌケか?

 あの先にはケイア・モルヘンがあったが今は廃墟だ。

 ここ二年だれも行っていない、それともウイッチャーが戻って来たってのか?」

 

「あそこは元々ウイッチャーの居城だ。

 この集落から麦を渡す代わりに、村を守ってもらう、子供達には手を出さない約束が100年以上守られてるんだ。

 それが最近の盗賊騒ぎが有ったから、ウイッチャーが戻って来たって言うのか?

 そんな都合のいい事あるもんか!」

 

「話しに割り込んで悪いが、その盗賊は3人組の男か?」

大雅は馬に乗ったまま村人に話しかけた。

 

「・・・・あんた・・・・ウイッチャーかね・・・おお、戻って来たんか!」

「まあ、ケイア・モルヘンのヴェセミルを訪ねて来たんだが、誰も居なくてな。

 帰り道で出会って盗賊を倒した。

 後ろの馬はそいつらのだ」

 

「た、倒したって? 本当か!」

「本当じゃなきゃ、何故馬が三頭も居るか」

 

「おい、この馬、先月盗まれたウィードのとこの馬だよ!」

「なに、本当にそうか。

 よく見りゃメダルも下げてるし剣?

 も二本だしな・・・って剣か?」

 

「この村から奪われた馬なら、この村に返すのが順当だろう」

そういって大雅は曳いていた盗賊の馬の手綱を村人に渡した。

 

「2頭は確かにこの村の物だがあと一頭は違う。

 買い取らせてもらっても良いか・・・まあ、すぐに金は用意は難しいが・・・」

「用意できる程度で良い。

 その代わり空いている部屋か、雨露をしのげる小屋を貸してほしい。

 あと馬に燕麦と水をやってくれればそれでいい」

 

「な、なら家に来てくれ。

 大したことは出来んが去年子供が出て行っちまってな、部屋が余ってる。

 麦粥でいいなら食い物も有る」

「わかった、世話になる。

 俺は大雅。大雅拝戸という」

「おお、大したもんも無いが寄ってくれ、タイガさん」

 

大雅はナジャムから馬具と装備を下し、集落の村人に世話になる事にした。

 

大雅は余分に持ってきていた、ベーコンの塊を出す。

「ケイア・モルヘンにと思って持ってきたが、無駄になった。

 よかったら使ってくれ。

 残りはいらない自由にすると良い」

 

「おおっ!コイツはすげぇっ! 真面な肉は、2年ぶりだな。

 なあ、他の家にも分けても良いか」

「ああ、好きにすると良い」

 

「ありがてぇ! ここ2年碌に肉なんて食ってねえんだ。みんな喜ぶぞ」

「2年? 以前はどうしてたんだ?」

 

「ああ、二年前まではヴェセミルって言う老ウイッチャーか、エスケルっていうウイッチャーが、鹿肉やら熊肉を売りに来てたんだ。

 代わりに小麦や酒で払ったりしてな。

 それが2年前の騒ぎで誰も居なくなってから、肉には有り付けなくなってた。

 偶に老いたウサギぐらいは罠にかかったがな」

「そこにいたウイッチャーは何処へ?」

 

「さあ、ここには立ち寄ったけど、何処へ行くとも言っとらんかったな。

 ただ疲れた顔をしとったよ。

 ヴェセミルさんは元気そうだったかね?」

「ヴェセミルの墓を見つけた。

 もう誰もケイア・モルヘンには居ない。

 これからは肉は、自分たちで調達するしかないだろうな」

 

「そうだったのか、寂しくなるな。

 ところでお代わりはどうかね、久しぶりの肉が入った麦粥だ」

「いや、もう結構だ、十分に頂いた」

「じゃあ、酒は?」

 

「飲めない訳じゃないが、酒はあまり好きではないんだ」

「珍しいな、ウイッチャーが酒を飲まないなんて。

 初めて聞いた。

 あんた狼流派じゃないのか?」

「ああ違う。

 俺は・・・虎流派とでも言おうか。

 まあ、盗賊退治や怪物退治、時には護衛の仕事なんかもしている」

 

「初めて聞くな・・・・メダル見せてくれ」

大雅は見やすいように、胸元のメダルを外して見せた。

 

ウイッチャーが躊躇なくメダルを外すのを見て最初は驚いていたが、手に取って村人は良く観だす。

「確かにこれは狼とも違う。

 猫にも似ているがこんなデケェ牙はねえ。

 見たことも無い動物だが強そうだ」

「虎という大型のネコ科の肉食獣だ。

 体重は300キロを超え一跳びで10mを飛びかかる」

「おっそろしい猛獣だな。熊より強いんか?」

「さあ、わからん。

 俺の所には居たが、ここらには聞かないな」

 

「ウイッチャーさん、良ければ相談に乗ってもらえないかねぇ」

今まで黙っていた村人の妻が口を開いた。

 

「おい、ウイッチャーは報酬無しで働かない。

 動いてくれてたのは狼流派だけだ。

 金なんて無いのにどうする」

「んなこと言ったて、アンタ、どうするのさ。

 あのまんまじゃ気持ち悪くて、畑にも行けやしないよ?」

 

「良ければ話を聞こう」

「ああ、実は先々月から北の畑の近くに洞穴があるんだが。

 そこから奇妙な鳴き声が聞こえるんだ。

 最近じゃ朝に動物の骨が近くに落ちて居たりしてな。

 気味が悪くてな」

 

「どんな鳴き声だ」

「クギャーとかケカカカッとか、とにかく気味の悪い鳴き声だ。

 最近じゃ近くの野良犬も姿が減った。

 それは助かるんだが、そのうち集落を襲わないか不安なんだよ」

 

「わかった、明日案内してくれないか。調べてみよう」

 

翌朝、世話になった村人含め、数人の村人が案内をしてくれた。

北に800mほど畑の中を行くと、小さな岩山があり、その根元にぽっかりと3m程の口を開けた洞窟があった。

 

「ここか。なるほど奇妙な音が聞こえるな」

洞窟の入り口からは、下に5m程も有り、とても怪物が上るどころか人でも登れそうにない。

 

「埋めちまった方がいいかね?」

「いや、埋めるとかえってまずいだろう。

 今は登って来れないが、土を入れたら掘り返され、登られる恐れがある」

 

大雅はドローンを出すと穴の中に入らせた。

 

「おお、それは何なんだ?!」

「離れたところを見るための・・・虫みたいなものだ。

 これが見たものを俺に見えるんだ」

 

ドローンを進め、穴の中を暗視モードで進めていくと、数匹の二足歩行の生物が見えた。

 

「これは・・・・ネッカーか、むっ、これ以上は無理か」

地下の影響で電波が弱くなり、200m程進んだところで警告が出始めた。

しかたなく、ドローンを戻した。

 

「中にはネッカーと呼ばれる怪物が数匹見られた。

 奥は深くて判らんがこいつらは土を掘り、何処へ出て来るかわからん。

 この近隣でネッカーを見たという者は?」

 

「この集落には居ないが、木こりやってる爺さんが、あの山の向こうで見たと言っていた!」

「何時の頃だ?」

「先月だよ。幸い離れてたんで逃げたらしいが」

 

「そんなに強い怪物では無いが、餌があればかなり早く繁殖する。

 早目の駆除がいいだろうな。

 出なきゃこの穴を丈夫な木組みの柵で塞げば、暫くは何とかなるかもしれん」

 

村人たちは頭を寄せ合って相談し始めた。

 

「わかった、金は集落でなんとかしよう。

 仕事受けてくれんかね」

「わかった、ネッカーの駆除だけでいいか、そのままにすると、再び別の怪物が巣くう可能性も残るが、爆破するのには金がかかるぞ」

 

大雅は少なくとも1kgのC4が最大10個は必要だなと試算した。

旨く落盤させる箇所が見つかればもっと少なくて済む。

 

「50クラウン以内なら、払おう。かき集めてもそれが限界だ」

「判った請け負おう」

 

大雅は、穴から少し離れたところに丈夫な杭を打たせると、それにロープを繋いでラぺリングで降りて行った。

 

土の香りと岩の湿った匂いが鼻を衝く、元々嗅覚が鋭い大雅は、有機系の匂いには敏感である。

人が感じない女性特有の生理の匂いなども、すれ違った程度で感じてしまうのだ。

だから血の匂いなども敏感である。

流れて来る空気にも一般畜獣とは異なる匂いと、肉のタンパク質が劣化した廃臭が感じられた。

 

タクティカルグラスを暗視モードにして、AKMSにサプレッサーを取り付ける。

多少の起伏はあれど歩くのには問題はない、100mほど行くと怪物たちの会話?する声が聞こえてくる。

 

大雅はバックパックからVZG-25焼夷弾を取り出し、何時でも撃てるよう装填した。

この焼夷弾は通常の瞬発信管を持つ焼夷弾で着弾すると3か所ほどの穴から大きな火炎を出す。

もちろん炎は只の炎ではなく、燃焼剤を含む物で、これが噴射炎となり不規則な回転を伴いあたりを火の海にするという非常に凶悪な代物だ。

通常の榴弾を使用しないのは、落盤が怖いからである。

 

少し行くとネッカーがウロウロと6匹ほどうごめいている。

大雅は40m程の距離からAKMSを構えた、この銃にとっては至近距離だ。

 

カカンッ!

カンッ!

カカカッ!

大雅はセレクターをフルオートに切り替え、指切りと言う撃ち方で次々と撃ち殺していく。

あたりにうっすらと硝煙の匂いが漂い出す。

 

さらに奥に行くと、巣が有りそこに卵の様な物がいくつか転がっていた。

後で潰す必要がある。

 

さらに奥に行くと、いくつかの小部屋が有り、多数の動物の骨や食い散らかした皮の残骸が山積みになっている。

覚悟していた排泄物の匂いはそんなにしないが、それでも独特の生臭さを持つ匂いは堪えた。

 

「さっさと出たいぜ」

入口から250mほど奥へ進むと、上に向かって細くなっていく穴が見える。

大雅はそこに遠隔操作信管と4kgのC4を仕掛け戻った。

 

途中落盤が誘えそうな岩の亀裂にも500gのC4を4か所ほど仕掛けていく、これで持ってきたC4は使い果たした。

 

巣から卵を一つ取り、ネットに入れ腰に下げる、残りはAKMSの弾を撃ちこみ破壊する。

上に出てから割ってみるのだ。

そして小ぶりなネッカーの死体のを持って出口へと向かった。

 

降りて来た時のロープを使い、上るとそこにはほぼ集落全員ではないかと思うほど人が集まっていた。

子供達や女たちは、大雅がぶら下げて来たネッカーに恐れている。

 

「中は250mほどの洞窟になっていて、ネッカーという怪物の巣があった。

 全部殺したが、あの方向にもう一つの出入り口がある。

 これから爆破するから、全員穴から少なくとも30m以上は慣れろ」

 

「そのネッカーはどうするつもりだ?」

「解剖する。

 生態が知りたいんでな、あとついでにこの卵も持っててくれ」

 

村人はいやいやながらもネッカーと卵を受け取り、退避していった。

電波が届かない事を考慮して、かなりアンテナを伸ばして、設置してきたが作動するか多少不安は残る。

 

「ちゃんと動いてくれよ、それっ」

コントローラーのボタンを押すと、岩山の後ろにある山が膨らんだと思うと、いきなり下へとすり鉢状に落ち込んでいく。

同時にドオォォォンと言う音が聞こえ、洞穴から大量の土煙、岩の破片などが大量に吹き出し、あたりにパラパラとってきた。

 

「ありゃ、ちょっと多かったかな」

 

何人かの村人が腰を抜かしパニックになっていた。

 

「これで洞窟は完全に塞がった。

 もうネッカーが巣くう事も無いだろう。

 うっかり者が落ちないよう、穴は何かで塞いだ方が良いだろうな」

 

「助かったよウイッチャー。

 このままだったら集落にも被害が出てたかもしれん。

 これは約束の礼金だ」

そういって男は50クラウンを差し出した。

 

「確かに」

それから大雅は、穴の傍でネッカーと卵を捌いて記録に取る。

卵は孵る直前だったのか小型のネッカーが出てきた。

ネッカーの死体は動物の構造と似ているが、いくつか機能が判らない器官が体内にある。

それも開いてタクティカルグラスに付随したカメラで捌きながら撮影していく。

 

開きの様になったネッカーと卵を穴に投げ捨て、石鹸で手を洗い出て行く準備を始めた。

 

「いろいろと世話なった」

集落の代表とみられる男が大雅に声をかけてきた。

 

「なに、気にするな。

 それよりケイア・モルヘンを訪れるウイッチャーがもし来たら、俺が会いたいと伝えてほしい」

「わかった、ウイッチャーが来ることが有ったら確かに伝えよう。

 連絡方法はどうするね」

「アレンウォードかエード・グリンヴェールの掲示板に、大雅拝戸宛てで連絡方法を出すように伝えてくれ」

「判った達者でな」

 

「んんっ、道間違えたか?」

この世界の道は町を繋ぐ主要道を除けば、殆ど獣道と言って良い。

主要道と言っても、酷い物は幅が1.5mほどの道もざらだ。

しかもその獣道は人が作ったものなのか、本当のけもの道なのか判別は難しいのが常だ。

 

馬上のままタクティカルグラスに広域しか無い地図を表示させる。

「えーーっと・・・ここがケイア・モルヘンで、集落がここら辺・・・」

GPSと詳細な地図が如何に有り難いか切実に感じるのはこういう時だ。

 

「陽があっちだから・・・磁北は・・・うへ・・・思いっきり逸れてんじゃん。まいったねこりゃ」

辺りは見渡す限り林と低木の原野だ。

 

しかも霧雨の様な天気で雲も低くドローンを高空に上げての確認も取れない。

 

「まあ、こういう時は動かないのが鉄則と」

大雅は近くにあった、大木が生えた丘に向かった。

 

大木の根元にはいくつかの小さな石碑の様な物が建っている。

蝋燭の燃えカス跡が有る事から、近くを人が通る事は間違いがない。

大雅はガスっている景色が晴れるまで待つことにした。

報告など纏める事も多い、こういう時間こそ有意義に使う癖がついていた。

 

差し込む太陽の陽を感じ、ふと眼を上げると目前には雄大な景色が広がっている。

1kmほど先に池と小さな集落が見えた。

 

「とりあえず行ってみるか」

 

大雅はナジャムに乗ると、足を傷めないような道を選びながら集落へと向かった。

 

100mほどに近づくと雰囲気に違和感を感じた。

あまりにも静かすぎるのである。

大雅はドローンを取り出すと、集落へと飛ばした。

 

集落の主な所には、全く人の気配どころか、生活自体の気配が感じられない。

洗濯物、火をたいた跡、そんなものが全く見られないのだ。

「廃棄集落か? まあ、とりあえず行ってみるか」

 

集落に近づくと朽ち果てかけた標識を見つけた。

「ヴァリ・・・あとは読めないか」

 

ナジャムに乗ったまま集落の中央部へと進む。

ナジャムから降り、建屋に近づいて見るとドアは朽ちかけ、屋根も半分以上無くなっている。

完全な廃屋だ、窓から覗くと中には雑草や苔が生えていた。

廃棄されてから数年以上経っていると見てよかった。

 

ナジャムは腹が空いたのか、周囲に生えているカラスムギを食べ始めた。

大雅は他の家屋を見たが、どれも同じように廃屋だった。

 

時間もそろそろ夕方だ、これから移動するのは得策ではない。

比較的大きく屋根が有る廃屋を選び、そこへキャンプを張る事にした。

床は半分ほどが土に戻っており、辛うじてシェルターテントを張ることが出来る。

焚き木には全く困らない、そこら中に廃屋の木材が有り困らないかららだ。

 

今日は時間が有る事も有り、久々にアルファ米を粥に焚いてみた。

味付けはベーコンを切った物と、フリーズドライの野菜だ。

しかし、アルファ米を入れる際、手が滑りかなり多めのアルファ米を鍋に入れてしまった。

大分容器に戻せたが、水を吸ってしまった米は戻せない。

優に2人分はありそうだ。

 

「ま、明日の朝、温めなおして朝食にするか」

気にせず水とベーコンを追加してぶち込んだ。

 

「ふう。残りは朝飯だな」

味は適当に胡椒と塩のシンプルな物だが結構いけた、コメはどんな物とも相性がいい。

後でもう一度蓋をして熱を入れておけば腐ることも無いだろう。

 

消費したC4の補給を樹脂ケースをインベントリ代わりにして取り寄せ、銃の整備を始める。

 

 

突然、ドアを叩く押しがした。

大雅は咄嗟にハンドガンを抜き、ドアの横に張り付く。

 

「誰かいるのか?」

「いるぞ、何の用だ」

「実は道に迷ってしまった。

 助けてくれないか」

「こんなところに迷い人だと?

 いいだろう、両手を肩まで上げ入って来い」

 

ドアをガタガタと言わせて商人風の男が入ってくる。

「助かったよ、もう2日も迷ってたんだ」

 

「商人か?」

「ああ、こっちの方にロックベインの集落が有るって聞いてな。

 ・・・なあ、もう手を下していいか?」

 

「妙な真似はするなよ」

「する気もねえよ、なにせ、ずっと迷ってた。

 食い物も底を尽きるし、やっとたどり着いた集落は廃村と来た日にゃ泣けてくるよ、で、旨そうな匂いだな。

 良ければ分けてくれないか、丸二日なにも食ってないんだ! な?金は払う!」

 

「いいだろう、その前に腰の剣を、そっちの壁に立てかけろ」

「ああっ! 助かるよ!」

 

男はあっさりと腰の剣を外し、壁に立てかけリュックを下し始めた。

 

「ほら、座れ、今温めなおしてやる」

大雅はクッカーに火を入れるとベーコン粥を温めなおした。

 

「すまないが食器は無い、鍋から直接食ってくれ」

そういって、スプーンを渡す。

 

「助かる! あああうめぇ! あちっ! ・・めめえっ!」

「気持ちは判るが食うか喚くかどっちかに、「げほっ! ごほっ!」 まあ、そうなるな」

 

それからは、物も言わずただひたすらにベーコン粥を掻き込む男を眺めながら、大雅は銃の整備を終えた。

 

「ほら、お茶だ、熱いから気を付けろ」

「はああああ・・・うまかった。

 初めて食ったけど・・これなに?」

「粥だ。米を多めの水で炊いたものだ、味付けはベーコンと塩、胡椒が少々」

「米って・・・あのニルフガード帝国のか? あんたニルフガードから来たのかい?」

 

「いや、そこよりもっと遠い所からだ、遥かにな。

 それより商人が迷うとは珍しいな」

「ああ、実はまだ行商は始めたばかりでな。

 今回初めてこの地方の商権を買い取ったんだ。

 ロックベイン他6集落のだ。

 ケイアモルヘンも含まれているっていうから、結構商売が見込めるって話でな、ちと高かったが。

 来てみたら道が判りにくくってさ」

 

「ほう。それは騙された可能性が高いな」

「えっ、なんで?」

「ケイア・モルヘンは2年前から廃墟だ。

 もう誰も住んでいない。

 それにロックベインを昨日発ってきたが寒村だぞ。

 他の村は知らんが」

「なんだって!!」

 

「商権を買い取った村の名は?」

「ケイア・モルヘン、ロックベイン、ヴァリスト、ゲンバック、ラーライル・・・・」

 

「他は知らんが、ヴァリストならここかも知れんぞ、ほら」

そう行って大雅は焚き木にしようとしていた標識を見せた。

 

「ヴァリ・・・・ヴァリスト・・・なんてこったい」

「いくら払ったか知れんが、事前に良く調査するのは商売の基本だろう」

 

「持ってた家まで売った金だったのに・・・・」

「まあ、念のため他の集落も回って見るのも手だが、期待はできなそうだな、気の毒だが」

 

「はあぁぁぁ・・・やられたよ。

 俺は商売辞めて、田舎で悠々自適に過ごすからっていう男から買ったんだ。

 身なりも良かったから信用してたのに」

「もうその男とは会えないだろうな、商権自体も本物なのか?」

 

「それは間違いないよ、ちゃんと行商協会で立ち合いのもと名義を替えたんだから」

「そうか、じゃあ。

 詐欺と言うよりお前の方の商才負けだな。

 実情をよく確認しないまま買ったんだから」

 

「まったく、その通りだよ」

「どんな商品を扱うつもりだった?」

 

「塩、胡椒、後は砂糖菓子なんかだ、いつかは荷馬車を動かす商売をしたかったよ」

「一ついい事を教えてやろう、エード・グリンヴェールの街にメイヤー男爵家というのがある。 そこの娘のロッテン・メイヤーに、商品を融通してもらえるように頼むと良い。

 今手紙を書いてやる」

 

「だ・・男爵! 大丈夫なのか?」

「ああ、ちょっと前までそこの護衛任務をしていた。

 俺からの手紙だと渡せば、対応してくれるはずだ」

大雅は、グラスでテキストを作成すると、ハンディプリンターで印刷をした。

もちろん樹脂ケースに入れたまま印刷をかけたから怪しまれることは無い。

サインだけは自筆で行うが、ボールペンのインクを見ればわかるはずだ。

 

内容はこの男が誠実なら、ケチッャプをはじめとした商権に合致する商品を、適正価格で融通してやって欲しい事を記した。

 

「ほら、これを持っていけ。

 ただし行商に行く前には必ず集落の実情と商売規模、売る商品をきちんと聞き回ってからだ。

 何が人々に必要なのかちゃんと自分の頭で考えろ。

 あと、ちゃんと適正価格で売れ。

 特に生活必需品の塩なんかはボッタクリは禁止だ。

 あとひとつ、この手紙は絶対に封を開けずにロッテンに渡せ。

 大雅から渡されとな」

 

「い・・いいのかい?」

 

「ああ、まじめに商売しようとするならな。

 商売に重要なのは信用だ。

 他の誰が何と言おうと妄信せず、ちゃんと自分の目と肌で確認し感じ取れ、そして絶対必要な物は安く、サボったりせず、安定して供給するんだ。

 それが信用に繋がる。

 あとはお前次第だ」

 

「こんなにしてくれて・・タイガあんたいい人だな・・・ぐすっ。

 おれ、結婚して男の子が生まれたら、タイガってつけるよ。

 アンタの事教えてくれないか」

 

「俺の名なんか付けたら碌な目に遭わんぞ。

 まあいい、俺は大雅、大雅拝戸だ。出身はアースという所だ」

「アースのタイガか、伝説の神獣タイガーみたいで良いなだ。

 苗字も有るんだな、もしかして貴族だったとか?」

 

「俺の所では誰しも苗字を持って居る、気にするな。

 それとアースという地名は世界でも数人しか知らん。

 だれも場所を見つける事がかなわないほど遠い所だ」

「わかった。

 おれはレナード。

 レナード・チャンクだ。

 もとは下級貴族だったらしいがな」

 

「タイガさんの仕事は?」

「まあ、ウイッチャーの真似事みたいなものだ。

 怪物退治、護衛色々とな」

 

その時、外でゴトリと押しがした。

 

「しっ!」

大雅はレナードに静かにするようにジェスチャーすると、動かないようにと伝え、屋根が破れたところから梁を登り外を確認した。

 

「ちっ熊か」

生憎、AKMSもショットガンも整備の為弾が抜いてある。

今使えるのはハンドガンと左腰にあるマシンガンだけだ。

 

ドアを破られ入り込まれたらこちらが不利だ。

「レナード! 部屋の隅に下がれ!」

 

大雅は梁から降りると腰からハンドガンを抜きドア越しに熊に向かって撃った。

 

パンパン!

 

しかし巨大な体格の割には動きが素早いのか、熊は激高し、ドアを手で破った。

 

「くそっ! ジャムった!」

 

咄嗟に出たのは発火の魔法だ、我ながら驚いたがもう破れかぶれだ。

熊の体毛には脂肪腺から油が分泌されている、熊は突然体から緑色の炎を上げパニックに陥る。

つまり良く燃えるということだ。

 

ハンドガンを捨て、左腰のFMG-9を取り出し、一瞬でマシンガン状態に変形させた。

この銃は9ミリパラ弾を使用するフォールディングマシンガンと呼ばれるもので、折りたたんだ状態から0.35秒で初弾が装填されると同時に展開、即座に射撃が可能となる。

 

折りたたんだ状態では幅26センチ程度で、上部のキャリングハンドルを除いた高さは9センチほどだ。

パンツのヒップポケットにも十分入る大きさなのに、展開時は50センチを超える銃床付きのサブマシンガン形状となる。

内部機構はグロック17を踏襲しているため、セミ\フルの切り替え可能な上、重量は500gと下手なハンドガンより軽い。

31発の実包をフルに装填しても870gと非常に軽量で、銃身は6.5インチで初速は380m/sを超える。

 

これを至近距離で首や胴体に食らったら、大型の熊と言えどただでは済まない。

 

パパパパパパパパンッ!

 

逃げようとする熊は、よろめきながら大量の血を流していた。

それでもヨタヨタと尻を向ける熊の尻に打ち込んでいく、熊は大きく血を吐くと動かなくなった。

 

「ふう・・・やっべー まさかジャムるとはな」

まだ燻る熊の死亡を確認して、FMG-9を折りたたんだ。

 

ハンドガンを拾い上げてみると、梁を降りるときにエジェクターポートに入り込んだのか、藁屑がイジェクターポートに噛みこんでいた。

このため排莢が正常にされず引っかかっている。

マガジンを抜き、スライドを引いて排莢してホルスターに戻す。

 

ふとレナードを見ると、目をまん丸にして驚いている。

「もう大丈夫だ」

 

「す・・・すごい・・・これがアンタの戦い方か?」

「ああ。この銃と言うのを使うのが俺のスタイルだ」

「魔法もつかったよね! 俺見てた! 熊が一瞬で燃え上がったもの!」

「ああ、銃がちょっとばかりトラブってな。咄嗟だったが」

 

「それに、突然手に武器が出て来た!!」

「まあ、フォールディングマシンガンだからな。そう見えるだろう」

「それも魔法か!!」

「まあ・・・似たようなものだな・・ここじゃ」

 

「俺、子供の頃、吟遊詩人に憧れて弟子入りしたことも有るんだ! 歌にしていいか!!」

「おいおい、それは勘弁・・・・まあ、見たままだったら構わんがな」

大雅はコイツが広めてくれれば、他のウイッチャーや女魔法使いとの接触も上がるのではと考えた。

 

「他にどんな怪物を倒したんだ?! 教えてくれ! 頼む!」

「わかった・・わかったから落ち着け」

 

それから、ドラウナーや巨大なアラキス、グリフィンを倒した話を夜遅くまでした。

 

 

朝飯はレナードのリクエストで、再びアルファ米のベーコン粥となったことは言うまでもない。

 

「さて、この熊をどうするかだな・・・・」

「せめて皮は欲しいな。一緒に解体しないか」

「そうは言ってもレナード、400キロは有るぞ、皮を剥いで解体するにも半日はかかる。

 燃やしてしまおう」

「ああもったいない、それなら昨日ロックベインから来たんだろう?

 俺が応援呼んで来るよ」

 

「まあ、好きにすると良いさ。

 俺は特になにも要らないしな」

「いいのか? 本当に?」

 

「ああ、かまわん。

 ロックベインの連中と分けると良い、そういえば暫く肉を食って無いらしいからな。

 良い手土産になるだろう」

「本当の本当でいいのか? 毛皮、肝、肉、かなりの金額になるんだぞ!」

 

「毛皮はちょっと燃えてるがな」

「なに、毛皮は必要ない防寒機能は少ないし毛が固いからな。

 貴重なのは丈夫な皮だよ。

 鞣せば丈夫な皮革になるんだ」

 

「それより、全部任せても良いか、そろそろ出たいんだが」

大雅はレナードが熊に夢中なうちに、ドローンを上げ方向を確認していた。

 

興奮するレナードをつれ、ロックベインの集落に続く道まで戻る。

 

「ここを青色山脈の方に道なりに行けば2時間ほどで着くはずだ。

 俺は逆だからここでお別れだ」

「ああ、この礼はきっとする。

 俺は絶対に忘れない!」

 

「ではな」

大雅は振り向かず、左の手のひらを肩のあたりに上げ別れを告げた。

 

そして、注意深くエード・グリンヴェールへの道を辿った。

「これが原因か、迷ったのは」

 

道には道標の様な石が置かれている事が有る。

分かれ道で置かれている事が多いが、右にあったはずの分かれ道の石が左だ。

帰り道なら右側に無ければおかしい、分かれ道を1本早く左折したことが原因だった。

 

昨日、燃やし損ねた標識を土に差し込み、簡易な道しるべとした。

 

 

 

 

 

 

 

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