噂の"姫神部隊"(本編完結)   作:小此木

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~鎮守府潜入編(前編)~
第1話 ○○、噂の鎮守府へ潜入す


ここは横須賀鎮守府。

 

「では、君は件の鎮守府に期間限定の配属になる。...くれぐれも、我々の目的は悟られぬようにな。いいかね。」

 

「...了解しました。」

 

 

 

◆◇

 

 

 

深海棲艦。突然深海から現れた正体不明の敵艦隊。海に沈んだ艦の怨念や戦争に対する憎しみから生まれたとも言われているが、その実態は謎に包まれえいる。なかでも強力な艦は人型...女性の姿をしており、言葉を話すものがいることも確認されている。この深海棲艦が現れてから、現在日本近海は彼女らに制海権を握られている。

 

そして、その深海棲艦の対応策として『艦娘』が製造され数々の戦いの末、少しずつだが鎮守府海域付近では昔のように平和な日常を過ごすことが出来るようになってきた。

 

 

 

◆◇

 

 

 

その鎮守府の『艦娘』には様々な"噂"が囁かれている。

 

曰く、駆逐艦で有名な電が、他の鎮守府との演習で戦艦の金剛に"真正面"から挑み無傷で勝利した。

曰く、軽巡洋艦の天龍が泊地棲姫率いるタ級20隻の敵艦隊に単身で突貫し、大破寸前の状態で勝利した。

曰く、敵である深海棲艦を手懐け前線に投入している。

さらに、海上で暴れまわる男性型の『鑑息(かんむす)?』なるものが出た。等どれもこれも眉唾物の噂だが、全ての噂に通じて言える事。それは...

 

 

「私達...いいえ、私は知りたい!噂の『一騎当千の艦娘部隊』の強さの秘密を!」

 

 

彼女が言葉に出した『一騎当千』である。この鎮守府の艦隊が参戦した戦場では敗北は無く、どんな状況でもひっくり返す少数精鋭の部隊だと言われている。どの艦娘も自身のスペックを大きく上回る性能を発揮し、鬼神の如く敵を蹴散らす『一騎当千』の艦娘達。それを周りの者は『姫神部隊(きしんぶたい)』と呼んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが、姫神部隊の居る鎮守府...」

 

私は今日、この時をどれ程待ち望んだだろう。憧れていた場所が私の目の前にある。この建物は少数精鋭の特殊部隊『姫神部隊』のある瀬戸鎮守府。かの有名な村上水軍が猛威を振るっていた海が目の前に広がっている。

 

「此処にあの"阿修羅姫"が居られるのですね!」

 

小さな悪魔『電』、羅刹『天龍』、盤上の匠『霧島』、この鎮守府の艦娘は全員コードネームを持っている。...と云うより他の艦娘と区別、識別するために横須賀鎮守府の元帥達によって付けられたのだが...様々な偉業を何遂げた彼女らの中で、私が最も憧れる艦娘は...

 

「阿修羅姫と名高い、木曾様!異論は認めない。」

 

今から3ヶ月程前、私が所属する艦隊はジャム島への遠征任務に就いていた。その日は運悪くジャム島の周りにいた深海棲艦の艦隊と鉢合わせになり戦闘になった。敵戦力は戦艦のタ級2隻、戦艦ル級4隻、駆逐艦のイ級10隻合計18隻、私達は金剛1隻、私、それに第六駆逐艦隊の暁・響・雷・電の計6隻。艦の数、艦の性能どちらを取って見ても勝ち目がなく即撤退したのだが、追いつかれ轟沈寸前まで追い詰められてしまった。私達は『もうダメだ』と思ったその時、

 

「おい!まだ一人も轟沈してねぇよな!」

 

何の前触れもなくトレードマークのマントを靡かせ彼女は現れた。

 

「...あ、貴女は・・・」

 

私はそれ以外言葉を発せなかった。

 

「おいおい、全員轟沈寸前じゃねぇか!そこを動くんじゃねぇぞ!!...お前らに最っ高の勝利を与えてやる!!」

 

右目に眼帯を付けた彼女は、ニヤリと笑いそう言い放つ。彼女の笑顔は獰猛で敵を睨みつける様は獣が獲物を見つけたかのように見えた。私達のピンチに駆けつけてくれた彼女は重雷装巡洋艦"木曾改二"。トレードマークの黒マントには"白色の船の舵"が描かれていた。後から知ったことだが、彼女ら姫神部隊は他人から見える所に船の"舵"を模した物を付けたり刺繍しているそうだ。そこからは彼女の一方的な戦いだった。敵タ級、ル級の砲撃を掻い潜り、手にした軍刀で駆逐艦のイ級を一刀両断。ル級の砲口が私達を狙らったら自身の25mm三連装機銃で先に敵を轟沈させ、迫り来る砲撃もそれで撃ち落としていた。どれだけの精度を駆使すれば向かってくる弾を撃ち落とせるやら。私たちには到底出来無い芸当だった。

それから彼女の仲間の天龍と霧島も加わり、あっという間に敵を蹴散らし私達は文字通り九死に一生を得たのである。

 

 

 

 

 

「...あの時はお礼も言えなかったけど、お会いできたら直ぐあの時のお礼を言いましょう。それに今日から出会える機会は多くなります。同じ艦隊になるかもしれません。」

 

ふふふ、今から色々と楽しみになってしまいます。

 

「おっと、色々考えていたら鎮守府に着いてしまいました。」

 

 

瀬戸内海を目の前に置き、その鎮守府は横須賀鎮守府の様に大きくどっしりとはしておらず、自然と共に自然に溶け込むように建っていた。高さも三階建ての家と変わらない大きさで、正面はレンガで積まれ、他は木造で造られていた。壁は朱色に塗られており、少し黒みがかっていて一度焦がしていることが分かった。壁板を焦がす事で火の手が上がったとき燃えにくくしているのだ。それと、壁板に塗られている朱はおそらく弁柄(べんがら)だろう。私はここまで惹きつけられる『赤』を初めて見た。

 

「ん、んん~。」

 

今日から配属になる瀬戸内鎮守府に見とれていると、どこからか男性の鼻歌が聞こえてきた。

 

「こんな所で鼻歌とは...鼻歌はこの鎮守府内から聞こえてきていますから、この鎮守府の関係者でしょうか?姿が見えない"彼"にでもここの案内を頼んでみましょう。」

 

私はそう独り言を言い鼻歌が聞こえる庭だろう場所を目指し近づいていく。

 

「ふ、ふふ~ん!」

 

「すみません。ちょっといいですか?」

 

「ん?あっ、こんにちは!ここに何か御用ですか?」

 

そこにいたのは麦わら帽子を被り茶色のツナギを着てホースで植物に水を与えていた青年だった。青年は身長170ぐらいで、無駄なく引き締まった体は真っ黒に焼けていた。

 

「ええ、ちょっと用がありまして、ここの鎮守府の司令室に案内して欲しいのです。よろしいですか用務員のお兄さん?」

 

「ようむ?司令室に行きたいと?」

 

「はい。宜しいですか?」

 

「いいですよ。では、付いてきてくださいね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが司令室だよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

この用務員さんの案内で司令室までたどり着きました。後は提督かここの艦娘が帰ってくるまでここで待っていましょう。

 

「では、ここで少し待たせてもらいます。用務員さんは仕事に戻っていただいて結構ですので。」

 

「えっと、待つって誰を待つんですか?」

 

そう言えば彼にはまだ話していませんでしたね。

 

「ここの提督か艦娘達です。帰ってくるまででいいので...ってそこは提督が座る席ですよ!?」

 

驚いたことに、ここまで案内してくれた青年が"提督が座る椅子"へさも当然のように座っていた。

 

「提督なら俺だけど?」

 

「えっ!?」

 

「は?」

 

「用務員の方では!?」

 

「いや、ここの提督だが...あぁ、この格好だったから分からないな。」

 

...絶句です。今まで用務員の方だと思っていた青年がまさかここの提督だったとは!?

 

「も、申し訳ありません。今までの非礼お詫び申しあげます。」

 

私は深々と頭を下げた。

 

「いやいや、気にしてないから!!き、君が横須賀のジジイ共...オホン!元帥らが言っていた娘か?」

 

「はい!今日からしばらくここに配属になります。たい...「提督イマ帰ッタ。アレ?ソノ娘、新人?」...へ?」

 

私が自己紹介をしようとしたら誰かがこの司令室に入ってきた。その人物を確認しようと扉を向くと...え?

 

「ああ、おかえ「深海棲艦!?提督私の後ろに隠れてください!!」...り?」

 

くっ、こんな所にまで敵空母の"ヲ級"が進撃してくるとは!!天下の姫神部隊鎮守府だと言っても、艦娘がおらず提督一人で無防備になっている所を狙われては...

 

「ヲ母さーん!待って~、なのです!」

 

「電、廊下ハ走ラナイ!何時モ言ッテイルデショウ。」

 

「ご、ごめんなさいなのです!」

 

私が提督を庇っていると、後から電が走って来た。私が知っている電とほぼ変わらないが、セーラー服の首元にある錨の刺繍が"白い舵"になっていた。・・・まさかこの方は、小さな悪魔『電』様!!

 

「ッ!!小さな悪魔と噂されている『姫神部隊の電』様だと確認します!!」

 

「は、はいなのです!!」

 

「私が提督をお守りしますから、目の前のヲ級を葬って下さい!!」

 

「え、え!?えぇ!!」

 

混乱されるのも無理はない。突然の奇襲。だが、金剛に無傷で勝利出来る電様ならこの程度の敵造作もないはず!!

 

「さぁ!早く!!」

 

「・・・提督?私ノ説明シタ?」

 

「いや、さっき来たばかりで何も。」

 

さっきから動こうとしないヲ級。今がチャンスです!!

 

「提督...貴方と機動部隊に勝利を!!第一次攻撃隊、発し「まてぇい!!」んきゃ!!」

 

あ、頭に重い衝撃が!!後ろからの攻撃!?後ろには提督しかいないのに。

 

そう思い、頭を抑え後ろを振り向くと、

 

「は~、先に言っとくべきだったな。」

 

私の頭を右手でチョップした提督がいました。

 

「て、提督!敵空母の前で何を...」

 

「ヲ級は敵じゃない。俺の秘書艦だ。」

 

「ひ、秘書艦!?」

 

「フフフ、私ト初メテ会ッタ艦娘ハ、皆オ前ノ様ナ反応ヲスル。紹介ガ遅レタナ。ヨウコソ瀬戸内鎮守府ヘ。私ハ提督ノ秘書艦ヲヤッテイル深海棲艦ノ"空母ヲ級"ダ。」

 

「あ、貴女は知っていましたけど、私は電なのです!!」

 

「自己紹介が遅れたな。ここの鎮守府の提督を任せれている"三宅武明(みやけたけあき)"だ。」

 

...ヲ級が秘書艦!?そ、そう言えば『敵である深海棲艦を手懐け前線に投入している。』という噂も耳にしている。だ、だが信じがたいが事実だ。目の前のヲ級はこちらに敵意も見せず、言葉でのコミュニケーションをとってきている。それに、あの電様も攻撃せずに普通にしているから...多分大丈夫だろう。

 

「ぶ、無礼の数々お許し下さい!!私は横須賀鎮守府から来ました"大鳳"です。期間は限定されていますが、何卒宜しくお願いします!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

今日私は一応無事に瀬戸内鎮守府に潜入...もとい着艦出来た。私自身この任務が無事に終わるのか分からなくなってきた。

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