―6:00―
鳥達の囀りが朝を告げる頃
「...うぅ~ん。もう、朝か...」
一人の男が動き出した。
(今日は、俺が当番か...朝食はご飯と味噌汁、白菜の漬物と沢庵...あと焼き魚にしようかな。昼は簡単にカレーで晩飯は炒飯で楽するか。)
動き出した男はこの鎮守府の提督、三宅武明。そして、武明の今考えている事は
(やべっ!味噌汁の具、冷蔵庫に有ったっけ?一応菜園で採って来るか...)
今日の味噌汁の具の事だった。
「...そろそろ、起きますか...ありゃ?両腕が思うように動かねぇ...」
武明は自分がどんな状況になっているか確認するため、自身が寝ている布団の左右を見渡した。―余談だが、武明の寝室...部屋は6畳の畳張りで、その上に布団を敷いて寝ている―すると、
「...むにゃむにゃ...父さん大好き...」
「...今度ハ実子ヲ...」
右には木曾、左にヲ級が武明の布団に入り込み腕に抱きついていた。片方は大好きな義父を思い、もう片方は自身の欲望を寝言で口走っている。武明は「はぁ~」とため息を付き、二人(隻)を起こさないようゆっくり布団から脱出した。
「何時もの事とは言え、いつの間にあいつら入り込んで来てるんだ?」
最近朝起きるとヲ級と木曾が添い寝している事が多い。無論二人(隻)がこの鎮守府にいる時に限定されているのだが...木曾がこの鎮守府に来てからヲ級と木曾は一緒に寝ている。これは最初、木曾が一人(隻)で寝るのが寂しいと言い出しヲ級が一緒に寝だしたのが切っ掛けだった。それを期に必要以上に周りを怖がっていた木曾の為、偶に武明も一緒に川の字で寝ることもあった。そして現在、木曾は立ち直り以前のように武明に甘える事は少なくなったのだが、いつの間にかヲ級と一緒に武明の布団に潜り込む事が増えてきている。ヲ級とは...まぁ、夫婦なのでそういう事もあるのだが、最近娘の過度なスキンシップに武明は少し悩んでいる。
「まぁ、いいか。さて、菜園に行って収穫するかな。」
大きく背伸びをした後武明は味噌汁の具材を収穫する為、自身の菜園へゆっくりとした足取りで歩いて行った。
「おっ!茄子が実ってる!!今日は、茄子に人参、大根溶き卵...出汁は太郎爺さんに貰った鮎でいいか...」
「よう!武坊じゃねぇか!!朝から何時もの水やりか?」
突然武明に話しかけたのは顎に白い髭を蓄えた初老の男。肩にボックスを掛け、長い棒の様な物を担いでいる。
「太郎爺さんおはよう!!今日も釣りか?」
初老の男は先程武明が話していた太郎なる人物である。
「今日もって、儂の仕事は魚を釣ることだぜ!!酪農は趣味だと言っただろう!本業は日本中を又に掛ける川専門の釣り師じゃ!!」
と肩に掛けたボックスと"釣竿"を武明に自慢げに見せた。
「わりぃ、わりぃ!!今日は爺さんに貰った鮎で味噌汁の出汁を取ろうと思っててな!!」
「そりゃあいい!!うめぇ味噌汁が出来るぜ!!今度感想聞かせろよ!!」
「おぅ!そっちも大漁旗振って帰って来いよ!!」
「あたぼうよ!!」
―7:30―
朝食とは今日一日の活力と寝ている体を起こす燃料である。瀬戸内鎮守府の今朝の献立は、白米、味噌汁、焼き鮭、沢庵である。
「よし!全員起きたな!!皆手を合わせて...」
「「「「「頂きます!!(なのです!!)」」」」」」
「今日も父さんの朝食は美味しいね!!特にこの味噌汁!何時もと何か味が違って美味しい!!」
そう輝く笑顔を振りまく木曾「ギロ!!」...もとい女神「当たり前です!」...木曾様。余談だが武明、ヲ級が食事当番の場合必ず満面の笑みの木曾様が見られる「なら、毎日御二人に作って頂きたいです!!」...そうだ。
「おいおい、何時もは美味しくはのか?それと、今日の味噌汁の出汁に太郎爺さんに貰った鮎を使ってるから味がいつもより違うんだがな...」
「そ、そんな事は無いぜ!!父さんの料理が不味い時なんて全く無かった!!貰った鮎も父さんが下処理が上手かったから鮎もこんなに出汁を出したんだよ!!」
「おいおい、それは褒めすぎだそ...」
口ではそう謙遜する武明も口元は少し緩み、満更でもない様子だ。
「お~、今日も仲睦まじい親子の朝だな。」
「少しは静かに朝食を食べれないのですか?」
「今日も木曾様は輝いておられます!!」
「オ米ガ少シ硬イ気ガスル...」
「ちょ、ヲ級今日厳しい!!」
「Yah-man、やはり朝食はライスと味噌スープ!元日本人の俺の心に沁みる。」
「なのです!!」
「済みません。何時も私達の分まで作っていただいて...」
木曾様は両親と楽しく朝食を食べ、その傍らで木曾様を眺めながら白米をガッツく大鳳。やれやれと朝食を食べる天龍、霧島。米の炊き方に少し意見するヲ級。前世を懐かしむジャンゴウ。元気よく朝食を取る電。そして、少し申し訳なく食べている夕張と武蔵。今日も瀬戸内鎮守府は賑やかで楽しい朝食を皆で食べている。
「皆さん五月蝿いですよ!さぁ、提督私のお茶碗に白米を盛ってください!!」
そう言って、長い黒髪の女性は武明におかわりを要求する。
「ん?食べるの早いな。いいぜ待ってろ!ほいよ。」
「ありがとうございます!ではっ!!」
お茶碗と云うよりも"どんぶり"のような器で凄まじい速さで食事をする女性。
「あれ?鎮守府(うち)にあんな茶碗あったけ?」
「いいえ、これは私が持参してきたものです。ほらここに"赤城"と名前があるでしょう。」
「おぉ、そうだな。...赤城...って、テメェは"赤い彗星"赤城!!」
武明の叫びで漸く他の物が赤城の存在に気が付いた。
「バレてしまったら仕方ないです。皆さんおはようございます!!美味しい朝食には必ず現れるご飯(ボーキ)の申し子赤城です。さぁ、私に構わず朝食の続きにしましょう!!」
さも当然の様にこの鎮守府に潜り込んだのは、"岡山の赤い彗星"事、岡山鎮守府の赤城。宇野や自身の所属していない岡山鎮守府、瀬戸内鎮守府のご飯時に突如現れ勝手にご飯(ボーキ等)を食い荒らし彗星の如く去っていく超問題艦。それがこの赤城だ。
「テメェ!他人ん家のメシ食ってんじゃねぇ!!」
「済みません。美味しい匂いが漂ってきたので。」
と謝罪しながら食べる箸を止めない赤城。
「ってかもう食うな!!自分んトコのを食いやがれ!!」
「私達の鎮守府の朝食は8時30分から。でも、お腹が減っていた私にはこの待ち時間は耐えられない拷問。なので、7時30分から朝食になるこの鎮守府でそれまでの繋ぎを食べているのです。そう、私は次の8時30分...1時間内でどれだけ食べれるか強いられているんだ!!」
顔の周りに集中線が付きそうな勢いで武明を見る赤城。だが、
「喧しいわ!!んでもって、そんな事知るかボケぇ!!」
そう武明は赤城に怒鳴りつけ、持っていたしゃもじを赤城目掛けぶん投げた。そしてそのしゃもじは赤城の額に吸い込まれるようにヒットした。
「痛ぅ!!...不本意ですが今日はここで諦めて宇野の食堂へ撤退しましょう。」
そう言うや否や赤城は信じられない速さで次の目的鎮守府へ逃げていった。
「二度と来んな!!」
今日も瀬戸内鎮守府の朝は賑やかで平和だ。...一部を除いて。
―9:00―
「じゃ、これとこれはそっちの処理済みの書類に纏めておいてくれ。」
「分カッタ。ソッチノ書類ニハ目ヲ通シタカ?」
「いや、まだだ。今中身を確認する。」
所変わってここは司令室。机の上に大量に置かれている書類を処理していく武明とヲ級。早めに処理しないといけない書類は事前にヲ級が取り纏め見やすくしている。そんな小さな心配りのお陰か夕方頃には大抵書類の山は何時もなくなっている。
「ソウ言エバ、ソロソロ大鳳ニ訓練ヲ受カサセルノ?」
「あぁ、そろそろいいだろう。横須賀の堅物達が度肝を抜くような強化をしてやる!!」
「イイノ?」
「ん?何が?」
「"敵"ニナルカモ知レナイ彼女ヲ強化シテ。」
「大丈夫、大丈夫。まぁ、敵になっても俺達の前に立ちはだかるなら潰すだけだからな。」
「アラ?潰シチャウノ?木曾ノイイオ友達ニナリソウナノニ?」
「...友達以前にストーカーになりかけてるぞアイツ。潰すのは場合によってだ。本音を言うと...できれば敵対して欲しくないな。」
「フフフ、ソウ言ウト思ッテタワ。アナタハ優シイヒトデスモノネ。」
「ちぇ、知っててその話振ったのかよ。」
「イイエ、何トナクソウ考エテルダロウト思ッタダケ。コレデアナタノ考エガハッキリ分カッタワ。」
「はぁ~、ヲ級には適わないな。これからも不甲斐ない俺を宜しくな母さん。」
「フフフ、コチラコソオ父サン。」
今日もラブラブな夫婦である。・・・リア充爆発しろ!!
―12:00―
昼食。今日は武明特性のカレーである。食堂に集まった全員の前にカレーが置かれている。
「カレーッえ!カレェッエー!!父さん特性のカッレッエー!!」
今までになくハイテンションの木曾。
「あぁ、もう死んでも...轟沈してもいいです。」
鼻血を流しながら悶える大鳳。
「おぉ、久しぶりの武明のカレーか。今後の出撃は大勝利間違いなしだな!!」
何故か大喜びな天龍。
「本当に久しぶりだな。これを食べたら百艦力だな。」
腕を組み天龍の言葉に頷くジャンゴウ。
「司令官のカレーには未知の抗力があります。今日こそは暴いてみせます!!」
メガネを右手で得意げに上げ口上する霧島。
「提督のご飯は何時も美味しいので大好きなのです!!」
スプーンを高らかに掲げ喜ぶ電。
「皆喜ンデクレテ、私モ嬉シイ。手伝ッタ甲斐ガアルワ。ココニイル皆ハ私ノ子供同然...子供達ガ元気ニ育ッテクレテ母トシテ感慨深イワ。」
感情的になり少しホロリとしてしまったヲ級。そして、
「「「「「頂きます!!(なのです!!)」」」」」」
それぞれ手にしたスプーンでカレーを口に運び、
「「「「「美味しい!!(なのです!!)」」」」」」
次々とスプーンから口へカレーが投入される。次第にカレーを食べた全員の目から口から...
「「「「「うーまーいーぞー!!」」」」」」
光が...ビームが放たれた。その後、艦娘達の性能が数日間上がったのは多分気のせいである。
―14:00―
「ん、んん~ん。」
鼻歌を歌いながら自身が育てている野菜に水をやる武明。書類処理が一息着いた時、休憩がてら野菜の水やりに出ていた。
「お~、武ちゃんじゃが!今日も性が出るのぅ~!!」
そんな武明に声を掛けたのは腰が少し曲がった婆さん。
「よう!千代婆!!今日も散歩か?」
「そうじゃ!まだまだ若いもんに負けてはられんからの!!」
嬉しそうに話す千代と呼ばれた老婆は嬉しそうに武明と世間話をしだした。
「そうそう、この胡瓜もう食べごろじゃけぇ千代婆持って帰りねぇ!!」
「何時も悪いな~、今度儂も南瓜が出来たら持ってくるわ!!」
「そりゃ楽しみにしとくわ!!」
「アナタ!!千代さんとのお話もいいですが、そろそろお仕事を再開して下さい!!」
二人の話に割って入ったのはヲ級だった。
「あら?もうそんな時間?」
ヲ級に注意を受けた武明は自身が付けている腕時計で今の時間を確認し「嘘ぉ!もう午後3時過ぎているじゃねえか!!」と言うやいなや急いで鎮守府の司令室へ走って行った。
「済みません。夫が...」
「いやいや、気にしなさんな。にしても貴女みたいな別嬪さんが武坊の嫁さんだなんて...儂の孫なんかはまだ彼女すらおらんと云うのに...」
「あ、あはははは。そ、それでは仕事中なのでこれで...」
「おぉ、悪い悪い。武ちゃんに宜しゅう言っといてな!あと胡瓜の事も!!」
「分かりました。それでは失礼します。」
「悪い。話してたらあっという間に時間が過ぎてた。」
「千代サンダカラ仕方ナイワ。」
「あと、少し話づらかっただろう?」
「イイワ。気ニシナイデ。話方ノ練習ニモナルシ!」
「済まんな。」
そう簡単に話した二人...一人と1隻は書類の山を片付ける為、自信達の机(戦場)へ向かって行った。
―20:00―
夕食は炒飯を皆で食べ今は武明以外全員風呂...入渠している(当然ジャンゴウは別に設けてある入渠場を使っている)。そして、一人残った武明は
「さ~て、皿洗いも終わったし、明日の炊飯予定も出来た。そろそろ俺も風呂に入るかな~」
一通りの片付けと明日の朝食の用意を済ませていた。時折女性陣の入渠場から声が聞こえたが皿洗い中だった為、水の音でよく聞こえなかったが...まぁ、彼には関係ない事だ。皆が寝巻きに着替え部屋に戻った事を確認し、武明は少し遅い風呂に入ることにした。
「あ゛ぁ゛~、今日も無事終わったな。...最近横須賀の連中何か騒いでるな~。大規模な作戦が展開されるのか?」
「サァ、私ニハ分カラナイワ。」
「ヲ級には分からないのか、じゃあちょっと探りを入れてみるか...って、ヲ級!?」
「ドウカシタノ?」
「何で一緒に入ってんだよ!?さっき部屋に戻ってたの確認したのに!!」
「...タマニハ、イイデショウ?」
「はぁ~、久しぶりに二人っきりだからな。色々愚痴でも聞いてもらうかな。」
「イイデスヨ。二人目ハ男ノ子ガイイワネ。」
「俺の話聞いてたか?」
「フフフ、聞イテタワ。代ワリニ私ノ愚痴モ聞イテクレルワヨネ。」
「へいへい、了解です。」
今日も瀬戸内鎮守府は平和であった。
瀬戸内鎮守府某所
―7:15―
「今日は提督が朝食を作るらしいよ。」
「電隊長も昨日大喜びだったからね!」
「「「「「イー!!!」」」」」
「何で私の先輩がイ級なのよ。」
「仕方ないじゃない。私達後からこの鎮守府に拾われたんだから。」
「美味しいご飯が食べれれば何でもいい。」
空母棲姫、カ級、イ級達、そして、戦艦棲姫と飛行場姫、港湾棲姫が続く。ここでは深海棲艦達が楽しく話をしている。
「お~い!朝食が出来たぜ!!メシにするぜ!!」
「「「「は~い!!(イー!!)」」」」
―11:30―
「おいおい、今日は提督特性カレーだってよ!!」
「ま、幻の全性能を跳ね上げる提督カレーですって!?」
「あぁ~、あれは凄かったわ。唯の牽制だった砲撃で敵の装甲を貫いちゃったもん。」
「す、すげ~。」
南方棲鬼、泊地棲鬼、タ級の話に電艦隊の新人(隻)リ級が反応した。
「さぁ!!今日は自信作だからたあ~んと食べてくれ!!」
「「「やったー!!(イー!!)」」」
そして、電艦隊全員の目から口から光が漏れ出し
「「「うーまーいーぞー!!(イー!!)」」」
ある者は頬を少し染めその味に酔いしれ、ある者は手に持っているスプーンが止まらなくなっていた。
『お代わり!!』
その後、普通の深海棲艦だったものエリートだったもの含め全員Flagshipになったのは...きっと気のせい。
―20:00―
「はぁ~、生き返る~。」
「あれ?私達って生き返ったら艦娘になるの?」
「知らないわよ。でも、私達敵だった深海棲艦にこんな入渠施設まで創ってくれるここの提督には感謝しないとね~。」
戦艦棲姫の言葉にツッコむ南方棲鬼。今日の電艦隊に出撃はなく1日ゆっくりできて皆嬉しそうである。今日も瀬戸内鎮守府電艦隊の戦艦は充実した日々を送っている。