「・・・全然釣れね~。」
「あっ!また当たりなのです!!」
「電先輩すごいです!!」
「あ、大鳳さん引いているのです!!」
「えぇ!?またですか!!この私に当たりがこうも続くとは...」
「フフフ、このジャマイ子に掛かればこんなものよ!!」
「何故俺には当たりが来ない!?」
瀬戸内海のとある無人島に彼らは来ていた。全員釣竿を持っており、先程言っていた様に息抜き兼食料確保の為釣りをしている。今の状況は武明0匹、電10匹、大鳳3匹、ジャマイ子3匹。ご覧の通り武明の惨敗である。
~3時間前~
眼前に広がる青い海。数年前までは漁師が船を出し、長い時では数年は漁に出て帰ってこなかった。しかし、深海棲艦達が突如現れ今では大海原へ向かう艦影は少なく、それも深海棲艦を討伐或いは調査するものばかりになっている。
「お~い、今日は釣り行くぞ!釣り!!」
...なっているのだが、彼らにはあまり関係のない事のようである。
「提督、それは私達新人(艦)虐めですか?...そうなんですか?絶対そうでしょう!!」
大鳳が声を荒げるのも無理はない。この前から始まった演習と言う名のスパルタ特訓は、『島に行くぞ』と声を掛けられたら"その島に行くまでどれだけ被弾が少なく着けるか"と急に言われたと思ったら"あのヲ級"の死の爆撃で追いかけられジャマイ子共々命からがら島に着いたのだ。無論、着いたら大破寸前。なのに武明は『じゃ、今からお前ら攻撃するから。避けろよ、んで被弾したら終了。』と言うと、持っていた鋼材を砕き指弾で打ち出し始めたのだ。ワザと当たった時には笑顔の天龍様直々のシゴキ(その時の天龍の気分で掃除から新技の実験等行われる)が強制させられるので必死で2隻とも避けた。
「"姫神部隊の強さの秘密"と世間では注目されていますが、常識を居したスパルタで培われたものだったのですか...」
そんな毎日を過ごしてきた大鳳は、今度はどんなスパルタになるのかと云う不安から声を荒らげ、そしてジャマイ子は虚ろな目で何かを悟ったように呟いていた。
「おいおい、二人ともどうした?今回は息抜きだ。息抜き。電も一緒に連れて行くから。まぁ、釣りも食料確保が目的だからあまりいい息抜きじゃないかもな...」
「提督の鬼~!!」
「蒼井ちゃんの指示にきちんと従っておけば良かった...」
今日も2隻の嘆きが瀬戸内の海に響いた。
◇◆
「おい、武明。ちょっといいか?」
その日、武明はいつもの演習(大鳳とジャマイ子にとっては地獄のシゴキ)が終わり執務室に向かっていたとこを天龍に呼び止められた。
「ん?いいが、何か用か?」
「用も何も奴らを鍛えるのはいいが、やりすぎだ!!前俺達がやった時の倍はこなしているぞ!!奴らを潰す気か!!」
「...そろそろ、話した方がいいな。」
「...どう言う事だ。」
「これは全員に伝えないといけない。"甲板"へ大鳳、ジャマイ子以外全員を集めろ。」
「ッ!?...分かった。直ちに招集をかける。そんなにヤバイ状況か?」
「あぁ、横須賀が動き出した。ヲ級に裏も取らせたから確実だ。」
「...了解。」
―瀬戸内鎮守府某所"甲板"―
「集まったようだな。」
武明はいつもの少し軽い口調ではなく、重く低い声で皆が集まった事を確認した。
「これから話す事は決定事項だ。拒否したい者、参加したくない者がいればこの場から出て行ってくれて構わない。」
そう武明は言ったがこの場を離れる者は誰ひとりいなかった。
「済まん。そしてありがとう。」
「総隊長の意見に反対する奴はここにはいないよ!!あんたには感謝してもしきれねぇ奴ばっか集まってんだからな!!」
1隻の深海棲艦、電艦隊の南方棲鬼がそう笑いながら言い、その言葉に提督の武明以外全員が頷く。この場所には大鳳とジャマイ子を除く姫神部隊の面々と電を隊長とするイ級達電艦隊が集まっていた。そして、武明は電艦隊の面々から提督の他に、総隊長、ボスなんて呼ばれている。
「では、今回の作戦を説明する前に大鳳、ジャマイ子の演習を通常の倍以上にした訳を話そう。」
「漸く理由が聞けるのか。」
「そう言えば司令官さん何故お二人にあんなキツイ演習を?」
「それは今回横須賀が全日本に出している"全艦娘緊急招集令"に由来する。」
「Yah-man、あの訳の分からない招集か。俺達は受けないんだろ。」
「いや、受けようと思う。」
「「「えぇ!?」」」
その言葉に全員が驚愕した。いつも上のどんな招集や命令も蹴っていた男が受けるとは思わなかったのだ。
「今、太平洋に深海棲艦達が集まっている。確認されている数は百や二百じゃなく...5万!!」
「ご、5万!?」
誰の声だったのか分からなかったが、調査し知っていたヲ級以外全員の言葉を代弁したものだった。それ程まで武明が言った数が信じられなかったのだ。
「今回の招集はソレを踏まえたモノだ。艦数は不明だが国外...ドイツからビスマルク、Z1(レーベレヒト・マース)、Z3(マックス・シュルツ)。陸軍からあきつ丸、まるゆの出撃が決定した。そして、大鳳も一週間後に帰還命令が下りている。...これほどの規模の招集だ。流石に無視は出来ん。付け焼刃だが、大鳳と念の為にジャマイ子にはこの戦で撃沈させない為キツめのメニューをこなしてもらったわけだ。」
この武明の言葉で全員がこれまでの演習のキツさに納得した。
「そして、正式にうちの艦隊に配属するジャマイは勿論、大鳳にもこの"三宅輪宝"を渡そうと思う。ヲ級の調査で妙な電波が太平洋のある海域から出ていることが分かった。この事から、深海棲艦達は自分の意思では無く"誰かに操られている"可能性が高い。今は深海棲艦のみに作用しているが、今後その電波が強力になるかは分からない。その為、俺達のトレードマークである"お袋特性"三宅輪宝の簡易防御壁なら大抵の洗脳電波は通用しないからだ。それで、ヲ級からこれを深海棲艦のル級達に渡して欲しい。あいつらが操られるのは俺も嫌だからな。それに、お前からなら普通に受け取るだろう。」
「ワカッタ。渡シテオク。」
「改めて今回の作戦を伝える!!大鳳が招集された次の日に先行部隊で天龍、木曾、霧島は出撃。」
「オウ!!」
「父さん任せろ!!」
「この霧島に任せて!!」
<イージスです!!>
「次に電を指揮官としジャンゴウとジャマイ子、修復資材や弾薬を乗せて"こいつ"で出撃。なので電艦隊は全員出撃!存分に暴れてくれ!!」
「任せてなのです!!」
「Yah-man!俺の新技を披露してやる!!」
『電艦隊!!やるぞー!オー!!』『イ級特戦隊!!ファイッオー!!』
「そして、俺は杞憂だとは思うがもしもの時の為"こいつ"の第一ドックで全体の指揮をしながら"アレ"が使える様にスタンバっておく。それと、俺はこれからオヤジとお袋に"こいつ"ごと出撃する事を伝えて来る!」
そして、武明は全員の顔を見渡し激を飛ばす。
「出来るだけ雑魚は無視しろ!!戦意の無い者や傷つき戦わなくなった者は保護し"こいつ"のドックに転送しくれ。必要なのは"敵を減らす事"だ!!仲間になりたい奴はドンドン引き込んで戦力にしろ!!狙うは大将唯一人!!いいな!!」
『ええ(オウ)!!』
◇◆
「テイトク、ニホンキンカイニイタワタシタチノナカマハダイダイアツマッタワ。」
「ククク、準備は出来た。では、これから横須賀へ攻め込むか!!」
男は闇の中で楽しそうにそう言葉にした。
「リョウカイ。コレヨリヨコスカヘシンゲキヲカイシシマス。」
「横須賀の元帥共め!!目にもの見せてやる!!」
この数日後太平洋で艦娘と深海棲艦の戦闘...戦争が勃発する。
「お~いオヤジ、ちょっと話が...」
「テメェは来るな!!娘と孫だけこっちに寄越せ!!」
『待て!!よく状況を考え...』
「つべこべ言うな!...急用だ切るぞ!!」
『私の話しはまだ』
「...どうした?」
「ちょっと話がな。お袋は?」
「...武器の整備中だ。」
「ふ~ん。ならオヤジから伝えてくれ。」
「分かった。で、何だ?」
「鎮守府の"アレ"動かすぞ。」
「ム、そんな状況なのか?」
「あぁ、一刻を争う。」
「分かった。後、お前の姉と甥っ子がこっちに来る。」
「えぇ!?こんな状況なのに!!」
「そう言うな。まぁ、初めて合うんだから仕方ないか...」
「この作戦が終わったら帰ってきてゆっくり合うよ。」
「...戦場で合うかもな...」
「ん?オヤジ何か言ったか?」
「いや、何でもない。気を付けろよ。」
「あぁ!!行ってくる!!」
「...大きくなりやがって...」