噂の"姫神部隊"(本編完結)   作:小此木

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明けましておめでとうございます。本年度も宜しくお願いします。
今回はまだ姫神部隊は出てきません。説明回っぽいです。


第20話 絶望、その先へ

 

 

寺岡が最前線の海域に到着する少し前。

 

 

 

「やっほ~い!!大っきい戦艦は走れるから好き~!!」

 

「こらこら、島風ちゃん。乗せてもらっているのだからあまりはしゃがない。」

 

「うえ~、龍田のケチ~。」

 

「はぁ、済みません。この娘走ることが大好きなもので...」

 

ここは操舵室。艦長である寺岡自らが舵を切り、その横へ何故か千代が佇んでいる。その操舵室に追先ほど風の如く駆け込んできた島風、そしてそれを追いかけてきた龍田。その様子を見ただけでも面倒を見ている龍田の苦労が垣間見える。そんな2隻以外の長門達は出撃ハッチの近くの部屋で何時でも出撃出来るよう武器の整備や自身の艤装の点検をしている。

 

「いやいや、気にしなさんな。子供は元気が一番じゃからな!!」

 

「そう言ってもらえると「やったー!!おじいちゃん話が分かるわね!!」って島風ちゃん!?勝手に走り回らないで!!」

 

以前は当たり前の様に海を航行していた大型戦艦だが、今ではその姿を見るのも少なくなってしまっている。深海棲艦の攻撃の的になる為と、それに対抗する艦娘を製造する為の資材として使われたからである。そんな中寺岡はこの戦艦を"個人"で所有し龍田達岡山鎮守府の艦娘を乗せて運んでいる。

 

「でも、どうやってこの戦艦を手に入れたのですか?」

 

「えぇっと、確か龍田さんじゃったか?」

 

「はい。先程も伺いましたが、この戦艦はどうやって手に入れたのですか?」

 

「それは、千代との出会いから話さなくてはならな「太郎!!横須賀から緊急連絡じゃ!!」ッ繋げ!!」

 

「こちら岡山鎮守府の寺岡!!今そちらに進行中じゃ!!」

 

『こちら前線基地の矢矧...あら?この声前に聞いたことが...』

 

「そんな事は後じゃ!!早よ連絡せぇ!!」

 

『は、はい!!現状深海棲艦軍の数が思いの他多く、苦戦中です!!撃沈艦はありませんが大破、中破艦が多数発生し修理を行っています!!そちらはいつ頃ここに到着出来ますか!!』

 

「くそぅ!!もう開戦しているのか!?山崎の予想では明日じゃったのに!!」

 

『で、ではここに到着するのはまだ先に...』

 

「そこの座標を直ぐに送ってくれ!!これより高速航行でそこに最速で到着させる!!」

 

『りょ、了解しました!!では直ぐに緊急回線を使って送ります!!では!!』

 

「あぁ、無理せんようにな"あの時のオペレーターさん"や。」

 

『ッまさか、あの時の艦長さん!?』

 

「あぁ、そうじゃよ。...千代!!これ以上トロトロしてられんぞ!!敵からの索敵を回避するためフィールドを貼れ!!着いて直ぐ戦闘になるかもしれん!!全員に戦闘準備させておけ!!」

 

「サーイエッサー!!索敵防止の為、潜行しクラインフィールドを展開!!念の為クラインフィールドには迷彩を施します!!そして、急速潜行を開始!!艦内の艦娘達へ戦闘準備の連絡を行います!!」

 

「えっ!?これ戦艦だよね?潜行?そ、それに、お婆ちゃん声変わった?」

 

「そ、そう言えば千代さん何か声が若返ったような...」

 

島風、龍田が疑問に感じたのも無理はない。先程まで老婆特有の少し低い声だったが、急に島風達の様に若く高い声に変貌したからである。

 

「おっと、この姿じゃ戦闘時に支障がでるかなっと。」

 

そう千代が言うと体の周りに緑色の半透明な六角形が出来、眩い光に包まれた。

 

「うわ!?」

 

「眩し!!」

 

「水上機母艦千代田!!これより戦闘区域の最前線へ全速力で向かうわ!!」

 

「って、えぇ!?あ、あなた千代田!?」

 

「こ、これはどう言う事ですか!?」

 

閃光の中から現れたのは水上機母艦千代田。だが、彼女に艤装は無く言葉遣いも彼女らが知っている"千代田"とは違っていた。

 

『艦内の岡山鎮守府第1、第2艦隊に緊急連絡!!艦内の岡山鎮守府第1、第2艦隊に緊急連絡!!これより戦闘海域へ急速航行を行い向かいます!!既に海域では戦闘が開始され、苦戦中!!直ちに戦闘準備をして下さい!!』

 

「おぅ!?直ちにって!?」

 

「言葉通りですよ。私ならクラインフィールドを展開すれば潜行も可能です。エネルギーのチャージに時間がかかりますが、フルブーストを掛け航行するんで直ぐ着いちゃいますから。」

 

「「フ、フルブースト!?そ、それに本当にあなた(貴女)千代田(さん)!?」」

 

「あら?メンタルモデルは艦娘の千代田を模して作ってますけど、何処かおかしなところがありましたか?う~む、ナノマテリアルが不調でしたでしょうか?」

 

「ふぇ、メ、メンタルモデル?」

 

「ナ、ナノマテリアルとは何ですか!?」

 

「あ、あれ?太郎さ...寺岡艦長?皆さんへ私の事、説明しましたか?」

 

「す、済まん。航行中に話そうと...」

 

「...では、話してないのですね。」

 

「お、おう...」

 

「エネルギーのチャージにまだ掛かりますから、その時間を私に乗っている艦娘へ私の説明へ裂きます。本当は戦闘前ではなく、事前に説明して頂きたかったのですが...」

 

千代田はそう言うと寺岡へジト目を向けた。

 

「む、むむ...」

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

ここは戦艦千代田の食堂。岡山の第1、第2艦隊と千代田、寺岡の乗組員全員が集まっている。

 

 

 

「では艦内の全員が集まったのでこれから簡単に私の説明をしたいと思います。」

 

「ん?他の乗組員はどうした?」

 

長門が今まで気になっていた事を千代田に聞いた。長門は千代田に乗り込む時、今回お世話になる乗組員へ挨拶をしようと艦内を回ったが誰ひとり乗組員に出くわさなかった事を疑問に思っていたのだ。

 

「いませんよ。この艦には私と艦長のみです。」

 

「そ、それはどういう事だ!?」

 

「それも踏まえ説明するので。」

 

「う、うむ。」

 

「では、私の体"戦艦"と"メンタルモデル(人型)"は、私の本体"ユニオンコア"...っと分かりやすく言えば、意識を持つAIが"ナノマテリアル"という素材をコントロールすることで構成しています。外見こそ旧式の戦艦ですけど、その機能・兵装はモデルとなった艦艇を遥かに超えた性能を持っていると自負しています。そして、この艦全体が私で、私の意思一つで航行、戦闘が出来ます。ですが、私自身も自分達が何物であるのか明確に理解出来ていません。先程言った"メンタルモデル"は自己の存在の探求、外界との接触し情報収集の為、構成しています。あと、"メンタルモデル"は艦から離れて行動したり、同時に複数形成したり出来ますよ。」

 

「え~っと、済まない。千代田さんちょっといいか?」

 

「何ですか長門さん?」

 

「千代田の事は大体分かった。質問が3つあるんだがいいか?」

 

「何でしょうか?」

 

「まず1つ目、貴女は"戦艦"か"艦娘"か...それとも深海棲艦なのか?」

 

「分かりません。先程も言ったと思いますが、この人型は"自身と外界を知る為"に構成しています。私自身未だ自分のことを分かっていません。1つ言える事は戦艦や艦娘、深海棲艦とは全く別のモノと云う事でしょう。」

 

「ふむ、私達や深海棲艦ではないのか...では、次の質問だ。貴女は何処から来た?」

 

「...艦長?」

 

「あぁ、話してやれ。」

 

「私はこの地球とは違う地球から来ました。所謂パラレルワールドですね。私の世界で戦闘中自軍と敵軍の超重力砲が衝突し大きな被害が出ていました。それを自軍の旗艦超戦艦ヤマトがそれを打ち消すため、次元空間曲率変位(ミラーリング)システムによって別次元へ飛ばし、その時出来た歪に私は吸い込まれてしまってここにたどり着いた「待て待て!!私たちにも分かるようもう少し分かりやすくしてくれないか!?」」

 

「...では、分かりやすく言いますと、大きな力と力のぶつかり合いで周りに甚大な被害が出ました。その被害は広がる一方だったので、その力ごと別の所に飛ばしてしまおうとそのシステムを使い別のところに飛ばしたまでは良かったんですが、運悪く私はそれに巻き込まれこの世界に来てしまい海で漂流している所を彼、寺岡艦長に助けられたのです。」

 

「べ、別世界の地球から...」

 

この話は聞いていた全艦娘達に衝撃を与えた。"得体の知れないモノに乗って大丈夫か""本当は彼女も深海棲艦で私達を騙しているのではないか"と様々な憶測が飛び交いだした。

 

「皆一旦静まれ!!」

 

それを長門が激を飛ばし静めた。長門は見た。憶測が飛び交っている時千代田が少し寂しそうな顔をしていたのを。そして、たまらずその場を静めたのであった。

 

「千代田さん済まない。私の部下達が心無い事を言ってしまった。」

 

「気にしないで。私でもさっきの説明聞いたらそうなっちゃうわよ。それともう一つ気になる事というのは何かしら?」

 

「重ね重ね済まない。...最後に何故老婆の姿で寺岡艦長と暮らしていたのですか?」

 

「人間観察...いえ、単に彼に一目惚れをして一緒にいたいと思ったからです。老婆の姿でいたのは、若い姿だと艦長が私を襲った犯罪者に見られないようにする為です。」

 

千代田の頬は少し赤面し、恥ずかしそうにそう答えた。隣では寺岡がこれまた赤面しバツの悪そうな顔をしていた。

 

「そ、そうでしたか...」

 

「っと、チャージが完了したようです!!艦長!!」

 

「うむ、フルブースト!!小童共を全力でサポートするぞ!!」

 

「了解!!」

 

そして、水上機母艦千代田はその海域から猛スピードで戦場へ駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クラインフィールド展開!!ッ!?艦長!!戦況は思っていた以上に不利です!!」

 

「クソッ!!直ちに超重力砲の準備!!準備が出来次第、浮上し敵船団のど真ん中を狙え!!」

 

「了解!!」

 

「岡山の小娘共!!浮上したら戦場のど真ん中だ!!一瞬敵は我々の出現で動きが止まるだろう。そこを叩け!!奇襲が出来るのはこれ1度のみだ!!よいな!!」

 

「「「はい!!」」」

 

そして、突如海中から出現した千代田の先端から船艙までが大きく開き青い閃光の超重力砲を深海棲艦団へ放ち、そして、千代田から寺岡艦長の声がマイク越しにその海域全体へ流された。

 

『またせたのぅ!!小童共!!』

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

呆然としていた深海棲艦達が次々と空へ無残な姿で放り投げられていく。そして、それを行っていた者は目当ての場所を見つけるとその場所へ敵を吹き飛ばしながら駆けていった。

 

「貴女が戦艦大和か。岡山鎮守府第1艦隊旗艦"長門"助太刀に来た!!」

 

「はい。私が大和です。助太刀感謝します。」

 

「貴様がビッグ7と名高い長門か。私は2番艦の武蔵だ。よろしく頼む。」

 

「フフフ、敵戦艦との殴り合いなら任せておけ!!」

 

敵を放り投げていた艦娘"戦艦長門"。無事大和達と合流に成功。

 

 

 

 

 

「さぁ、早くゴミ共を片付けて憎っくき"あの男"を血祭りにしに岡山へ戻りましょう。」

 

龍田は目の前の敵を自身の槍で切り、14cm単装砲で撃沈させている。そんな中、敵のオイルが顔に少し付いた時龍田は自身の目的を口にした。

 

「い、一人前のレディなら味方の不謹慎な言葉も注意...ひっ!?」

 

「あら、暁ちゃん砲撃の手が止まっているわよ。」

 

その残虐な顔(暁視点)を見てしまった暁は涙目になってしまい、

 

「サ、サァ早ク戦闘ヲ終ワラセテ、岡山ヘ帰リマショウ。」

 

無機質な声でそう同意するしかなかった。

 

「хорошо(ハラショー)、旗艦の龍田からドス黒い力を感じる...」

 

「あ、暁!?しっかりして!!」

 

龍田を先頭にし、船団を組んで敵を殲滅している暁、響、雷。龍田の言動はともかく確実に敵を減らしている。

 

 

 

 

 

「赤城さん大佐が言っていました。」

 

「ん?加賀さんどうしました?」

 

「この作戦で多くの戦果を挙げたものに、間宮さん特性プリン1年間食べ放題券と1日限定のボーキ食べ放題コースが振舞われるそうです。」

 

「...マジで?」

 

「ええ、大マジです。」

 

「ひゃっほう!!私の時代がやってきた!!全雷電改の妖精さん行きますよ!!」

 

岡山鎮守府の食欲の塊"赤い彗星"こと赤城は物凄い速さで弓を射り、戦場を駆けていく。近くにいる敵は甲板で切り裂き、離れた敵は赤く塗った艦載機で落としている。流石赤い彗星の異名を持つ航空母艦である。

 

「山崎大佐、これもこの戦いを勝利するためです。ボーキの貯蔵は充分ですか...」

 

その圧倒的な力を見せる赤城を焚きつけた張本人、加賀は大佐の今後を憂いて遠くを見ながら少し反省していた。

 

「大佐、私は赤城さんに焚きつける事を強いられていたんです!!」

 

山崎大佐の尊い犠牲は無駄にはならない!!...はず。

 

 

 

 

 

『久しぶりじゃな、"副長"。』

 

「えぇ、ご無沙汰してます。寺岡艦長もお元気そうで何よりです。」

 

『遅くなって悪かったのぅ。岡山の戦力を連れてきた。それと、儂の千代田も参戦する。少しは戦況が変わるじゃろう。』

 

「はい、ですが未だ奴ら『艦長宜しいですか!!』」

 

『何だ千代!!』

 

『次弾の超重力砲のチャージにはまだ掛かります!!ミサイルと主砲、艦載機で周りにいる敵の一掃を行い、敵戦力を減らします!!』

 

『分かった!!副ちょ...今は元帥か、お主も分かっていると思うが奴ら"姫"や"鬼"といった主戦力を未だ出していない。』

 

「艦長も気が付きましたか。」

 

『あぁ。やっこさん中々の頭脳派だな。』

 

「えぇ。」

 

 

 

旧戦艦の千代田と岡山の艦娘達が参戦しみるみる内に劣勢だった戦争が優勢に傾きだした。依然、中破、大破する艦はあるが開戦当初の様に戦意を喪失する者は減っている。千代田の超重力砲、ミサイル、主砲、艦載機。岡山鎮守府の姫神部隊に迫る強さの艦娘。前線基地からの援護ミサイル。どれを取っても形勢逆転をするには十分な要素であった。

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

「ふむ、データに無い戦艦に自身の性能以上の動きをする艦娘か...」

 

「ドウサレマス?」

 

「ん?関係ないね。ミサイルやビーム兵器は僕が居た世界にも実装されていたから驚く程の事でもないし。」

 

「デハ。」

 

「あぁ、第2派投入と行きますか。」

 

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