「...Yah-manとは、言ったものの敵に囲まれ、絶体絶命だな。」
よくある話だ。正義の味方はピンチの所に颯爽と現れ、助け名も名乗らずに去っていく。だが、俺はただ飛ばされ敵の注意をこちらに向けさせただけ。
...駄目じゃん今の俺!?
着いて早々、先輩達に何らかの方法で意識を刈り取られ、気付いた時には砲台の中。何も分からず飛ばされ、そこにはピンチの艦娘達が途方に暮れていた。
これだけお膳立てされて、"何も出来ない"じゃあ俺がここ(戦場)にいる意味が無いぜ!!
~飛行艇 ???甲板~
「た~まや~、なのです!!」
「やった!電ドンピシャだよ!!」
「これで、あの娘達の目の前の危機は回避出来たのです!!」
「でも、ジャンゴウ君大丈夫かな?」
「フッフフ、もーまんたいなのです!!ジャンゴウくんも私達瀬戸内鎮守府の仲間。あれぐらいの敵に殺られるように提督さん達と鍛えてはいないのです!!」
「それもそうね。じゃ、電そろそろ出撃の準備始めようか?」
「はい、なのです!!」
◇◆
...だが、俺には『転生特典』じゃない新たな"俺の力"がある!!
「Hay!!皆、耳を塞いで伏せてくれ!!」
「え?那珂ちゃんまだ戦えるよ!!」
「いいから早く!!」
「は、はい!?」
「すうぅぅぅ...」
そして、俺はある技を繰り出す為に空気を思いっきり吸い込み、
(サウンドバズーカ!!!!)「アァッ!!!!」
吠えた。
その声は空気を振動させ、周りに広がり那珂達を囲んでいた敵を1隻残らず吹き飛ばした。
「ちょ、ちょっと那珂ちゃん達まで危なかったじゃない!!」
「Yah-manだから、伏せろと言っただろう。」
クソッ、艤装のスピーカーを使っても吹き飛ばしただけか。理想は小破ぐらいして欲しかったが、まだまだ届かないか。でも、まぁ、及第点だな。これは俺が努力して身につけた技だ。神様から授かった..."他人から貰った力"じゃなく、"俺が努力して手に入れた力"。この戦いでもっともっと発展させてやる!!
~前線基地(飛行艇が現れる前)~
「状況を確認!!」
「はい!!先ずはここですが、第1、第2ドックが大破!依然操られている艦娘達によって基地内は混乱しています!!」
「第1、2ドックへの通路を閉鎖!!攻撃してきた艦娘達には催涙弾を使用しろ!!」
「了解!!Aブロック、Bブロックの隔壁閉鎖!!」
「次ぃ!!」
「はい!!各鎮守府ですが、なんとか均衡を守っている状態...いえ!!岡山鎮守府、敵を鎮圧したそうです!!」
「何!?どうやって!?」
「確認します!!...はい、はい。そ、それは本当ですか!?」
「矢矧どうした!?」
「山崎大佐に確認を取ったところ、"姫神部隊の激怒したル級が1隻で鎮圧"したそうです!!」
「な!?」
「え!?そ、それは事実ですか!?」
「今度は何だ!!」
「各鎮守府が次々と敵を鎮圧して行っています。佐世保では夕張と武者姿の武蔵が、呉では浦風と伊58が、舞鶴では伊168と伊19が鎮圧したそうです!!」
「せ、戦艦は分かるが潜水艦が何故!?」
「はい、え、えぇ!?舞鶴の伊168と伊19は自身を高速回転させ海水の竜巻を作り出し、それに魚雷や手裏剣、剣等を泳がせ敵に突貫し鎮圧したそうです!!偶に『シュツルム・ウント・ドランク』や『超級・覇王・電影弾』と言う意味不明な掛け声が聞こえたそうです!!呉の浦風と伊58ですが、浦風は『機神拳』なる拳法を使い伊58は新たに搭載した砲台から『ハイドロカノン』なる水流で蹴散らしたもよう!!佐世保の夕張と武蔵ですが、夕張は35.6cm連装砲を二つに分けた物を両手に持ち高速で撃ち出し、武蔵は...な、なんとかの斬馬刀を模した"斬艦刀"なるもので敵の艤装を一刀両断したそうです!!そ、それも、斬艦刀は日本刀の様な形状からククリ刀まで様々な物に変化したとの事!!」
「何だその刀は!!それに何故軽巡洋艦の夕張にそんな芸当が出来るのだ!?」
「わ、分かりません!!ですが、全艦統一して言えることがあります!!」
「ま、まさか...」
「はい。"全艦、姫神部隊の白い舵のマークをどこかしら見える場所に付けていた"そうです!!」
~飛行艇 ???第1ドック~
「悪いな夕張。本当は戦いたくはなかっただろう。」
『いえ、今回の戦いは"何者かに操られている者を正気に戻す"だけですから大丈夫です。それに、助けられた私達が皆さんの役に立てるなら喜んで引き受けますよ。』
「悪い。」
ドックの中で佐世保に着艦している夕張と話をしているのは、姫神部隊の提督三宅武明。驚く事に岡山以外の鎮守府では、攻めて来た深海棲艦達を轟沈させず出来るだけ艤装のみを破壊しこれ以上攻撃出来ない様にしただけだ。そして、各鎮守府を援護し敵を鎮圧しているのは彼ら姫神部隊に助けられた艦娘達であった。
『それより、武明さん。相手もそろそろ痺れを切らして出てくるかもしれません。気を付けてください。』
「あぁ。分かっている。こっからが本番だからな。」
~前線基地(現在)~
「な、何だ"アレ"は...」
索敵機に付けられていたビデオカメラから前線基地へとその映像はリアルタイムで映し出されている。そして、その映像に平田はそう言うしか出来なかった。
「お、恐らく、空を飛ぶ戦艦...だと思われます。」
「そ、そうか...」
それは空を飛び、威風堂々と戦場を見下していた。
「し、しかし、味方でしょうか?考えたくはありませんが、敵だった場合我々に残された道は..."死"のみに絞られてしまいます。」
「こちらから通信が出来るのだろう『あ~、マイクテス、マイクテス。こちら瀬戸内鎮守府の提督三宅だ!!』ッ!?な、何!!姫神部隊の!?」
『あ~、マイクテス、マイクテス。こちら瀬戸内鎮守府の提督三宅だ!!聞こえとるか~?』
「聞こえている!!各鎮守府で敵を鎮圧しているのは君の部隊か!?」
『まぁ、そんな所か...おぉっと、その通りであります!!』
「今更敬語使わなくてもいい!!それと、戦闘区域に浮いているのは君達の戦艦か?」
『あぁ、そうだ。一応名前は"白鯨"ってんだ。ま、見たまんまだがな。あと、白鯨の中から直接その基地に回線繋げているから傍受の心配も少ないぜ。』
「そうか...それで、用があってこちらと回線を繋いでいるのだろう?」
『流石、元帥。察しがいいな。...ここから俺達瀬戸内の艦隊が起こす事を容認、又は無視...いや、率直に言おう。手出しをしないでくれ。』
「それは何故?」
『理由は三つ。一つ、足でまといだから。二つ、アンタらの考えている"戦闘"とは違った戦いを行うから。三つ、これが大半の理由だが..."敵はまだ主力を出していない"からだ。』
「な、なんだと!?前二つは理解できるが、最後は何だ!!」
『言葉通り。奴らはまだ戦力を隠している...と俺は踏んでいる。説明する。まず、ここに戦力を集中させ各鎮守府の守りが弱くなった所を強襲。これは、完全に俺達"瀬戸内鎮守府の艦隊を分断させる"のが目的だ。』
「な、何故君達を分断させるのだ?」
『話は簡単。やっこさんも馬鹿じゃない。各鎮守府の事は何らかの手段で探っているだろう。じゃないと、この強襲は行わない。そして、俺達の事を周りの奴らは"一騎当千"って噂しているだろう?そんな奴らを馬鹿正直に集まっている所に攻めていくかよ!!』
「そ、それはそうだな。では、何故"まだ戦力がある"と考えられる?」
『それは、俺達を倒す事の出来る"モノ"がないと仕掛けて来ないからだ。"深海棲艦"が束になっても勝てなかった相手だぜ?何らかの"勝機"或いは"取って置きのモノ"がなければ仕掛けて来ないさ。』
「なる程...分かった。好きにしてくれ。但し、こちらから資材や燃料のバックアップはさせてくれ。武運を祈るぞ。」
『了~解!!』
~飛行艇 白鯨第1ドック~
「ジャマイ子、了解が取れた。奴らの度肝を抜いてやれ!ショータイムの時間だ!!」
『分かったわ!!港湾先輩、準備オッケイです!付いて来てくださいね!!』
『ハッ、誰に言ってんだ!!私を見くびるんじゃないよ!!タ級もレ級も準備はいいかい?』
『姉さん何時でも行けます!!』『何時でもいいよ~』
『良し、始めるぞ!!』
◇◆
『ズドン』と戦場に爆音が響きだした。
「き、木曾様これは...」
「おぉ?おっぱじめたか!!」
その爆音は範囲を広げて行く。
「金剛お姉様これは!?」
「き、霧島これは何デス!?」
「フフフ、反撃開始の合図ですよ。」
満身創痍だった艦娘や敵に囲まれていた艦娘達にも等しく聞こえて来た。
「て、天龍様よ。こ、この通信は...」
「ククク、いいじゃねえか!それに、これで操られてた奴は正気に戻るしな!!」
「おぅ!?それ本当!?」
それは"戦場では普通行われない"。
「Yah-manジャマイ子の奴張り切ってんな!!俺も負けてられん!!...内部で反響を繰り返し、増幅...よし、落ちてこい!!」
「そ、そんな!!こ、これは那珂ちゃんが!!」
「これが俺の『サンダーノイズ』だ!!」
戦場で、
『私の』
全通信回線をジャックし、
『歌を』
敵も味方も関係なく、
『聴けーーーーー!!』
"歌"を聴かせるなど。
『Light My Fire!!』
~???~
「クソッ!!どうなっている!!何故各鎮守府の防衛に向かったはずの"姫神部隊の第1艦隊"がここにいるんだ!!」
「ワカリマセン。ボウジュシタツウシンニヨレバ、カクチンジュフノボウエイニマワッテイタト...」
「もういい!!第3、第4派を直ちに出撃!!"アレ"も用意して数で"時間を稼げ"!!」
「リョウカイシマシタ。」
◇◆
「電"アレ“をやる!?」
「ん?ほっぽちゃん"アレ"って?」
「決まっている!"承認"だ!!」
「えぇ!?あの承認を!?」
『...お~い、二人共何やってんだ?それと、電の部隊はまだ出撃しないのか~?』
「もぅ!!提督さんはノリが悪いのです!!」
「そうだよ!!こういう時は有無を言わず『承認』って叫んでくれなきゃ!!」
『うぇ、何故か俺が悪い事に...』
「いいから、ほら、承認!!」
「そうそう、承認なのです!!」
『じ、じゃあ、オホン。しょぉぉぉぉぉぉ認んんんん!!!』
「プログラムドラァァァーイブ!!」
『パリン』と云う音と共に何かのスイッチが入った。
「よっしゃーなのです!!」
その掛け声と共に電と電艦隊のイ級達が光に包まれ、
「電、頑張って!!」
「フッフフ、電艦隊抜錨なのです!!」
光の中から現れたのは少し成長した電と頭の艤装に壱~伍の漢数字が描かれた"駆逐棲姫"が立っていた。
『な、なんじゃそりゃ!!お前らそんな事出来たのか!?』
「ふふふのふ~、愛さんに何とか背が伸びないか相談したら『練度も溜まっているから近代化改修出来るわよ』ってイ級さん達も一緒にやってくれたのです!!」
『お、お袋~』
「ちなみに私も!!」
そう言ったのは北方棲姫...ではなく、中間棲姫。
『ほっぽ、お前まで...』
「これで私達も」
「お姉さんの仲間入りなのです!!」
『おいおい...』
「気を取り直して、抜錨なのです!!」
「イ級...改め駆逐特戦隊行きますよ!!」『おぉ~!!』
「電艦隊抜錨だ!!」『了解!!』
~前線基地~
「こ、この歌は何なんだ!?」
「瀬戸内の飛行戦艦、白鯨から発信されています!!受信を拒否する事は今のところ不可能で、恐らく敵にも同じものが発信されていると思われます!!...元帥、この歌を聞いていると力が湧いてくるような気が...」
「私も同じ意見だ。しかし、これはな、に...ッ!?」
平田元帥は自身の目に映った光景に目を疑った。
「お、おい矢矧。私の目はとうとうおかしくなったのか...」
「い、いえ。恐らく私も同じものを見たはずです...」
彼女らは敵地のど真ん中に降り立っ...投下された。彼女らの周りは"敵"のみ。文字通り四面楚歌である。
「「な、何故電(?)が駆逐棲姫や南方棲戦姫達と敵のど真ん中へ!?」」
そこへ降り立ったのは電を隊長とした駆逐棲姫、南方棲戦姫、飛行場姫、戦艦棲姫、離島棲鬼、空母棲姫、空母水鬼。そして、電が深海棲艦の名高る面々に指示し周りの深海棲艦達を圧倒的な力で蹴散らして行っている。
「こ、これが"姫神部隊"...」
「どうした矢矧?」
「げ、元帥には報告していませんでしたね。"姫神部隊"とは本来彼女、電を隊長とした深海棲艦の部隊の事を指していました。」
「な、何故だ。」
「まず、日本古来の伝承では「鬼」という漢字を書いて『かみ』と読む事がよくあります。例を挙げますと、『禍鬼(まがかみ)』『荒ぶる鬼(かみ)』ですね。日本神話の考え方では『鬼=荒ぶる神』という考え方が存在しています。そして、これを踏まえて、岡山鎮守府の山崎大佐は『棲姫や棲鬼を率いている電の艦隊』を『姫鬼部隊(ひめがみぶたい)』と名付け、語呂がいい『姫神部隊(きしんぶたい)』と変化したのです。」
「そんな事が...」
「そして、今偵察機から映し出されている部隊こそが元来"姫神部隊"と呼ばれる瀬戸内独自の特攻部隊なのです。」
~???~
「な、何故奴らの深海棲艦は僕に従わないんだ!?」
「ソレハワカラナイ。セトウチノヤツラハワレワレノナカデモイシツナヤツガアツマッタモノダカラカモシレナイ。」
「クソッ!!とっとと"コイツ"も最前線に向かわせろ!!」
「ワカッタ。」
次回予告「第24話 レッドデビルの正体!?」
多分。恐らく。