噂の"姫神部隊"(本編完結)   作:小此木

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第4話 初めての人(ヒト)

◇◆

 

 

 

~数日前瀬戸内鳴門海域~

 

「ちぃ、何処に消えた!?」

 

「落ち着け飛龍!あの状態だ。もう私達が手を下さなくても勝手に沈む!」

 

「そ、そうだね。瑞鶴。Flagshipの奴だったから心配でさ。」

 

 

 

「...クソッ、コ、コノママデハ...ア、アソコナラ休メル」

 

瀬戸内海が見えるとある場所に一つの影がゆらゆらと歩いていた。

 

「...コ、ココナラ他ノ者モ寄リ付カナイダロウ。」

 

その影は人一人やっと入れる場所を見つけ、その場に仰向けで倒れるように眠った。奇しくもその場所は、ある青年が向かう場所であった。

 

 

 

◇◆

 

 

 

~岡山鎮守府~

 

「す、すみません。私と一緒にここに配属になる新人の提督さんを知りませんか?」

 

「いや、知らないが。おかしいな、君達に与えられた部屋にもう着いていておかしくないが...」

 

「い、いえ。...ありがとうございました。」

 

少女は一人、自分のパートナーになるはずだった人物を探している。

 

「はぁ~、私提督さんに嫌われちゃったのかな...」

 

「よお、"電"じゃねえか!お前今日からここの東の塔配属じゃなかったか?」

 

「あ、天龍お姉ちゃん!!」

 

一人歩いていたところに話しかけたのは、軽巡洋艦の"天龍"。彼女らはこの鎮守府に配属される前、同じ養成施設で訓練を受け姉妹のように接してきた仲である。

 

「おぅ!それでお前、秘書艦として支える提督にはもう挨拶はしたのか?...ん?どうした、そんな暗い顔して。」

 

「う゛う゛ぅ、提督さん来ないのです。配属予定の時間を4時間も過ぎたのに、全然来ないのです!!」

 

「な、なんだと!!俺の妹分を...レディを待たせ、挙げ句の果て泣かせるとは!!フッフフフ、俺の怖さを知らないようだな!!」

 

「て、天龍お姉ちゃん?」

 

「大丈夫だ。そんな甲斐性なしの提督、俺がギタギタのケチョンケチョンにしてやる!!」

 

「お、お姉ちゃん?」

 

「それで、その提督の顔と名前分かるか?一緒に探してやる。」

 

「えっ、いいの!?」

 

「当たり前だ。妹が困っているんだ。助けるのは普通だろ?」

 

「あ、ありがとうお姉ちゃん!!」

 

電は持っていたクリアファイルから一枚の紙を取り出し、

 

「この人がここに配属になる新人の提督さんなのです。」

 

「へ~、こいつが。(俺の妹を泣かせた男。しっかりこの目に焼き付けたぜ!!)」

 

電が一瞬外を向いた時、天龍は獲物を見つけた獣の様な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

 

「いや~、本当生きててくれて良かった。おっと、自己紹介が遅れたね。俺...僕はここ瀬戸内倉、ゴホン、鎮守府に今日から付くことになった"三宅武明(みやけたけあき)"だ。元陸軍伍長で、今日からここの提督になる。よろしく。」

 

青年は先ほどここに寝かせた灰色の髪で肌の白い女性に柔らかい言葉で自己紹介をした。

 

「...テ、テイトク...ッ!!」

 

「おや、喋れる様になっ...ッ!!」

 

三宅武明と名乗った青年の目の前を《ザクゥ》と音を立て何かが通り過ぎた。

 

「そう、だよね。さっきまで酷いことをされてたんだから...」

 

女性の手には、近くに落ちていたノコギリの刃ように折れた鋼材が握られていた。

 

「キ、貴様ラハ...敵!!」

 

女性はそう言うと思いっきり青年を目掛け鋼材を振り下ろした。

 

「ッ!!」

 

「ナ、ナゼ!!」

 

女性は驚いた。普段なら躱されるか、反撃され自身が傷つく事がもっぱらだったのに、目の前の青年は全く動こうとせず、

 

「いいよ。気が済むまで俺を殴ってくれ。それで、少し気が紛らうのなら...」

 

敢えて受け帽子は鋼材の形に削られ、頭から真っ赤な血を流していた。

 

「クッ!!耳ヲ貸スナ!!私ヲ油断サセル口実ダ!...何処カニオ前ノ仲間ガ潜ンデイルノダロウ!!」

 

「いや、俺一人だ。ここには俺と君以外誰もいない。」

 

「マタ嘘ヲ言ッテ!!喰ラエ!!」

 

 

 

ドゴ、ボゴ、ガンと立て続けに女性は青年に鋼材を叩きつけ、青年の帽子は脱げ体中切り傷や痣で痛々しい姿になっていた。その場に第三者がいれば見るに堪えず何処かに逃げていってしまっただろう。

 

「ぐぁっ!!(や、やべぇ、この姉ちゃんトンでもなく強ぇ。あの鋼鉄を軽々振り回す腕力。男に襲われたと思ったが、また別のなにかだな。)」

 

女性の意外な腕力を垣間見た青年はちょっとした推理をしたが、とうとう青年はうつ伏せに倒れてしまった。

 

「ハッ、ハッ、ハッ」

 

女性は立っていて、青年が倒れると云うついさっきとは真逆の状態になってしまっていた。

 

「...ナゼ...ナゼ...」

 

「グッ」

 

「ナゼ避ケナイ!!ナゼ反撃シナイ!!ナゼ痛メ付ケテイル私ヲ憎マナイ!!ナゼ!ナゼッ!!」

 

「ガハッ...そ、そりゃ、そんなに泣いてる女性には手は出せねぇよ...」

 

「ナ、泣イテイル?私ガ?」

 

青年に言われ自身の目元に触れると、

 

「アッ!!」

 

何かの液体が溢れており、頬を伝ってポトポトと地面に落ちていた。

 

「...な、何があ、あったかは知らねぇけど...す、少しは落ち着いた...か?」

 

「・・・」

 

女性はコクリと首を少し縦に動かした。

 

「...よかっ...た。」

 

それをみた青年はゆっくりと意識を手放した。

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

私ハ人間共ニ深海棲艦ト呼バレテイル。人間共ハ私達ヲ見ツケルトスグニ攻撃ヲ仕掛ケテクル。鬱陶シイ。ダカラ奴ラヲ攻撃スル。人間共ノ攻撃ハソレ程警戒スル事ハ無ガ、最近私達ニ似タ奴ヲ仲間ニシ私達ヲ破壊スル術ヲ持チダシタ。ソレモ鬱陶シイカラ攻撃スル。ソレニ奴ラハ私達ヲ憎シミヲ込メタ目デ見テクルカラ...嫌イダ。

 

「すまん!もっと早く俺がここに配属になれば!!」

 

ン?声ガ聞コエル。

 

「...ヲ(誰?)...」

 

「い、生きてたー!!よ、良かったー!!!」

 

「・・ヲ(何ダ)!?」

 

「ん?言葉が喋れないのか?」

 

「ヲ(何)!!」

 

「そ、そうだよな。酷い事されてショックで言葉が話せなくなったんだな。よし、君の面倒は俺が責任を持って行う!これでも軍人だ。君を守ることぐらいなら出来る。」

 

「ヲ(声ガ)!!」

 

ヨウヤク、声ガ出セルマデ頭ガ覚醒シタ私ハ男ニ酷イ仕打チヲシテシマッタ。目ノ前デ私ガボロボロニシタ男ハタダ私ニサレルガママダッタ。ダガ、攻撃ヲシテイル私ヲ優シイ暖カイ目デ見テクレルタ。遠イ昔、味ワッタコトノアルアノ目デ...

 

この女性は深海棲艦"正規空母ヲ級"と帝国軍から呼ばれている存在である。彼女は数日前、岡山の鎮守府にいる艦娘達に敗れ、この倉庫に逃げ込んで来ていた。

 

 

 

 

 

「・・・見たところ天井すらない。」

 

フフフ、テンプレのセリフを俺が言うと思ったか!!...言いたくてもこの倉庫天井が無い所が多いっつうの!!

 

「起キタカ?」

 

ん?女性の声?・・・あぁ、さっきの人か。

 

「ッ!「大丈夫カ?」大丈夫。大丈夫。(ててて、っとあれ?俺の頭に布が巻かれてる?)」

 

青年は自身の頭に巻かれている物を不思議そうに触っている。

 

「...ゴメン、ナサイ。ソレシカ手当スルモノガナカッタカラ。」

 

「いや、手当してくれてありがとう。ようやく正気に戻ったんだな。」

 

「...元ヨリ正気ダ。」

 

「まぁ、そんな事は置いといて、アンタ...君の名前は?」

 

「明確ナ名ナドナイ。...周リカラ"ヲ級"ト呼バレテイル。」

 

「補給?変な名前だな。」

 

「違ウ!"ヲ級"だ!!」

 

「も、申し訳ない!!女性の名前を間違えるとは..."おきゅう"さん!!」

 

「ッ!!ハ、ハイ!!」

 

急に青年から名前を呼ばれた女性"ヲ級"はびっくりし、反射的に気を付けの状態になってしまっていた。

 

「貴女の名前を間違えた罰です!俺を殴ってください!!」

 

「エ"ェ!!ッテ、アナタモウ私ガ殴ッテ重症デスヨ...」

 

「あっ...そこは気にせず...」

 

「私ハアナタヲ傷ツケタ。モウアナタヲ傷ツケタクナイ。」

 

「...分かりました。あと、もう動いても大丈夫なんですか?」

 

「エエ、チョットシタ事ナラ問題ナイ。ソウ言エバ、私ガ休ンデイタ場所ニ青イ目玉ノアル帽子ト、灰色ノマント、ステッキノヨウナ杖ハ置イテナカッタ?」

 

「...やっぱり休んでいたんですね。」

 

「ン?ソウダガ?ドウシタンダ?」

 

「いや、貴女みたいな魅力的な女性がこんな瓦礫の中で倒れていたんで、てっきり強姦にあって殺されていたのかと...」

 

「ワ、私ガ...魅力的...」

 

「ん?そうですよ。...あっと、帽子とマントとステッキでしたね。今すぐ探してきます。」

 

そう言うと青年は彼女が倒れていた場所に向かって駆けて行った。

 

「...私ガ魅力的...」

 

...頬を少し赤く染めたヲ級に気づくことなく。

 

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