噂の"姫神部隊"(本編完結)   作:小此木

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第5話 すれ違い海

 

「おぉ!?これか!?」

 

今は夕暮れどき。そして、ここは瓦礫の山...もとい、瀬戸内鎮守府(仮)である。提督の三宅武明は先程の女性"ヲ級"を発見した場所にいた。

 

「へぇ~、本当に青い目玉の帽子だ。それにこのステッキは仕込杖にピッタリだ。...無断で改造したら怒られるよな...」

 

無事ヲ級の言っていた帽子とステッキを発見していた。

 

「後は、マントだが...《ドゴーン》っち、うっせー!!他所でやれ!!どこのどいつだ!!ここにはけが人の俺と"おきゅう"さんがいんだぞ!!」

 

 

 

◇◆

 

 

 

『緊急招集!緊急招集!!鳴門近海で深海棲艦ル級2隻、ワ級6隻を確認!!直ちに第六駆逐艦隊並びに天龍、龍田は即出撃せよ!!』

 

岡山の港にはけたたましいサイレンの音と避難の指示が放送で飛び交っていた。

 

「おい!雷、他の連中は!?」

 

そのサイレンの音をバックミュージックに黒いセーラー服を着た紫色の短髪女性と、

 

「他の奴は既にドックに着いてると思う。」

 

白いセーラー服を着た茶色い髪の少女が並んで走っていた。

 

「クソッ!!電の提督は見つからず、更に敵の襲撃ってか!?シャレにならねぇぜ!!」

 

「えっ!?電、提督いないの!?」

 

「あぁ。絶賛行方不明中だ。派遣されてきた先方に連絡を取ってみたが、招集時間に間に合うよう既に出ていた。『あの男が時間内に来ないのはおかしい。』と言ってたから何かあったんだろとは思うけどな。」

 

「そ、そう。無事だといいねその人。」

 

「無事に決まってらぁ!!電を泣かせたんだ。無事この鎮守府に着て、この俺の鉄拳を喰らう義務があるからな!!」

 

「...流石私達のお姉ちゃん。」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「んん、何も。」

 

 

 

 

 

 

「天龍ちゃん、雷ちゃん遅かったわね~。」

 

「わりぃ、龍田ちょっとな。」

 

ようやく出撃ドックに入ってきた天龍と雷に声を掛けたのは天龍によく似た服装で、肩まで伸びた紫の髪の天龍の姉妹艦"龍田"だった。

 

「あっ、お姉ちゃん、どうだった?」

 

「よう電!!事務の人に聞いてみたが、ここには来ていないみたいだ。」

 

ドックの中には既に龍田、暁、響、電の順に出撃用のカタパルトに立っており、後から来た天龍、雷が出撃準備を急いで行っている。

 

「...そう、ですか...そ、それなら!!」

 

「...陸軍の方にも聞いたよ。実家の方にも聞いてみたが、朝早く出て行ったきり連絡取れないってさ。それにケータイ家に忘れていってやがる。今時ケータイ忘れるとかアホかあいつは!!」

 

「...提督さんに何かあったのでしょうか?」

 

「分からねぇ...だが、軍の奴らも実家の方も奴の事は心配無用だとさ。」

 

「えっ!?ど、どうしてですか!?」

 

「軍の奴らは『アイツがそう簡単に死ぬようなタマか!そんなことがあったら、先に俺らが死んでる!!』だからだそうだ。まぁ、元々前線で戦ってた男だ。ちょっとやそっとの事じゃ死なねぇだろうよ。家の親父さんからは『孫の顔を見せるまで死ぬことは許さん!!』って言ってたぜ。」

 

「そ、そうなのですか?」

 

「は~い、お喋りはそこまで~。出撃するわよ~。」

 

「おぅ!わりぃ、わりぃ!!...んじゃま、第三艦隊これより抜錨するぜ!!」

 

「「「「「おぉ~(なのです!)」」」」」

 

 

 

◇◆

 

 

 

「ワ級2隻撃沈確認!!龍田こちらの状況は!?」

 

「う~ん、状況は良くないわね~。暁ちゃんと響ちゃんが大破寸前。私と天龍ちゃんは小破だけど、電ちゃんと雷ちゃんが中破。これ以上は厳しいわね~。」

 

「ちぃ!ワ級は後3隻いるし、ル級を1隻は撃沈させたががもう1隻がFlagshipだったとは!!一度撤退して体制を立て直すか!?」

 

「う~ん、それがいい「ま、まだ大丈夫なのです!!い、今こそ電の本気を見せるのです!!」電ちゃん!?」

 

「待て電!無闇に動くな!!」

 

「12.7cm連装砲の餌食になるのです!!...えっ!?」

 

電が砲撃を放とうとした瞬間、ル級が急速接近し16inch三連装砲を電に向けていた。

 

「ッ!!電ぁ!!」

「電ちゃん!!」

「ば、馬鹿!!」

「「電!!」」

 

天龍、龍田、雷、響、暁が叫ぶ。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

しかし、非常にも砲撃は電に吸い込まれるように迫っていく。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

天龍が自身を盾にしようと駆ける。が、

 

「ちくしょおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

今いる位置からでは間に合わない。

 

『・・・終ワリダ。』

 

そしてル級は勝利を確信しニヤリと不敵に笑った直後!

 

「近所迷惑なんだよ!てめぇら!!」

 

聞きなれない声がそう言うと《ドン》と一つの火柱がル級と電の間に現れた。

 

「こっちにはなぁ、怪我した"おきゅう"さんが休んでんだよ!!ドカンドカン五月蝿くてゆっくり休んでもらえないだろうが!!」

 

「誰だ!!」

 

天龍の言葉で、その場にいた深海棲艦と艦娘の全員がその声が聞こえた方を向いた。そして、そこには...

 

「ん?俺?俺は...「「「「「空母ヲ級!?(なのです!?)」」」」」話は最後まで聞けよ...」

 

特徴のある青い目の帽子に妙な形のステッキを持った者...ヲ級?が立っていた。

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

~数分前~

 

「クソッ!こっちは怪我している俺と、おきゅうさんが休んでいるんだぞ!!もっと他の場所でやれっての!!」

 

三宅はこの鎮守府(仮)の近海で行われている戦闘に対して誰も居ない所でそう文句を言っていた。

 

(いや、まてよ...おきゅうさんはここで満身創痍の状態で休んでいたらしい。それに、あの怪力を考えると...何か戦闘で敗れ休むためにここに来たのかもしれない。だったら、この辺りでドンパチやってる奴らの中におきゅうさんの仲間か、おきゅうさんを倒した相手がいるはず。)

 

一つの可能性を考えた三宅はすぐさま行動に移った。

 

「おきゅうさんには悪いけど、この帽子とステッキを借りよう。この特徴的な物を見た知り合いなら、すぐ気づいて彼女の助けになってくれるだろう。」

 

そしてステッキを持ち、帽子を被ろうとして、

 

「あれ?うまく被れない...この布が邪魔してるな~。おきゅうさんには悪いけど取るか。まぁ、傷はもう治っているしな。」

 

驚くことに、さっきまでボコボコにされていた三宅の体の傷は全て綺麗さっぱり消えていた。

 

「うし!じゃ、いっちょ行きますか!!」

 

数十メートルを軽く飛び越え三宅は音のする方へ跳んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ~、やってるやってる。」

 

三宅は驚くことに海面に立ち、数キロ先で深海棲艦と艦娘が激突している様を呑気に眺めていた。

 

「ふぅ、砲撃音が海面から聴こえてくるからまさかと思ったけど、この術式が使えてよかったぜ。あっちの女の子?達は押されているけど、陣形を組んで上手く戦闘をしているな~。美○女戦士○ーラームーンかっての。それに引き換え、あっちは唯の力押しじゃん。う~ん、見るからに力押しの方達がおきゅうさんに似てるな...っと、あの娘出すぎだ!流石に女の子が死ぬ姿は見たくないからな...助けて、両方に騒音の講義をしてやろう!」

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

そして、今。

 

「あ~っと、ちょっといいですか?この帽子とステッキに見覚えがあるんですね?」

 

三宅は出来るだけ柔らかく話しかけた。

 

「当たり前だ!!お前にいったいどれだけの艦娘がやられていったと思っている!?」

 

答えたのは天龍。

 

「でも、おかしいわね~。アナタの声、男性ですよ~。」

 

次に話しかけたのは龍田で柔らかい話し方だが、眼差しは鋭いままである。

 

「そりゃそうだ。俺は男だからな。」

 

「「「「「男!?(なのですか!?)」」」」」

 

セーラー服を着た艦娘達はその言葉で驚愕する。

 

「まぁ、それは置いといて。俺の要件はたった一つ。ここでドンパチやられると五月蝿いんだよ。双方この海域から出てってくれないか?」

 

「ちぃ!誰が深海棲艦の言うことなんか!!」

 

「あっそう。んじゃ、そっちは?」

 

三宅はピクリとも動かないル級に声をかけた。

 

「...オ前ナゼ私ノ邪魔ヲシタ?」

 

「なんだって!?じゃ、じゃあさっきの火柱はこのヲ級が!?」

 

ル級の言った言葉に天龍は驚愕の言葉を漏らした。

 

「・・・気分。」

 

「フザケルナ!!オ前ハコチラ側デハナイノカ!?」

 

「んなこと俺には分からん。だが、ただ一つ言えるのは、『五月蝿いから帰れ』ってことだけだ。」

 

「ソウカ...デハココデオ前モ沈ンデイロ!!」

 

ル級はそう言うと即座に16inch三連装砲を三宅に向け放った。

 

「はぁ~、血の気が多いこって(はぁ~、これじゃあ、おきゅうさんの事を言っても助けてくれるか分からんな)。オラァ!!」

 

三宅が右の拳を振り抜いた瞬間、ボーリングの弾程の炎が出現しル級が放った全ての弾丸を飲み込んでいった。

 

「ソ、ソンナ...」

 

「う、嘘だろ...」

 

ル級、天龍の二人から驚愕の声が漏れた。

 

「さて、信じてくれるか分からないが...テメェら全員で掛かって来ても俺には届かんぞ三下ども!!」

 

一瞬殺気を込め三宅は言う。そして、その場にいた全員の目には三宅の後ろに大きな顎(あぎと)を開けた髑髏の幻を見た。

 

「ク、クソッ私デハオ前ニ全ク届カン!!...分カッタ。ダガ、邪魔シタ件忘レンゾ!!」

 

そして、その殺気で自身との力の差を知ったル級は残っていたワ級3隻を連れて沖に消えていった。

 

「で、あんたらはどうする?」

 

「くっ!!殺せ!!」

 

「はぁ!?何で?」

 

「いや、お前らは俺たちを目の敵にしているじゃないか!?」

 

「おっと、言い忘れていたが、この帽子とステッキは俺のじゃなくて知り合いのなんだ。だから"俺には"そんな事は関係ないし、あんたらに危害を加えようとも思わない。」

 

「...それは~、信用してもいいのですか~?」

 

「信じてもらうしかないな。まっ、そっちがこちらを攻撃してきたら分からんがな。」

 

「わ、私は信じます!!」

 

「「「「「電(ちゃん)」」」」

 

「さ、先程は助けて頂いてありがとうございました!!」

 

「いや、大きな怪我がなくて良かったよ。」

 

「...分かった。今日は引くよ。」

 

「それはあり「但し!」...ん?」

 

「こいつを助けてくれた礼だ。勘違いするなよ!!」

 

「ああ、いいとも。」

 

そして、艦娘達も自分たちが来た鎮守府へ帰っていった。

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