噂の"姫神部隊"(本編完結)   作:小此木

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一部変更しました。


第8話 提督鎮守府へ着任す

 

 

 

 

「...やっぱり、親父なんか悪いもんでも食ったのか?」

 

「ソンナニ珍シイ事ナノカ?」

 

「あぁ。俺に何か物を渡すなんて初めての事だからな。それに、このバイク親父が昔乗ってて小さい頃俺が『格好良いから欲しい』って言ってたヤツだぜ。」

 

「ソウ。」

 

武明は自分の父から譲り受けたバイクを見て難しい顔をしていた。バイクはNinjaという車種を参考にし造ったらしい。側面を真っ赤な炎の模様を塗り、エンジンを両親の技術を使い製作。バイク自体の頑丈さは折り紙付きで武明が少し殴った程度ならなんともない。...参考に、長門やビッグ7のバケモノじみた怪力で殴ってようやく凹む頑丈さである。

 

「アト、三宅ノ母ニ貰ッタコノ真ッ黒ナセーラー服、前カラ着テイタカノ様ニ着ヤスイ。ドンナ繊維デ編マレテイルンダ?」

 

今ヲ級が着ている服はヲ級が言ったように武明の母が昔着ていた物である。真っ黒いセーラー服にこれまた真っ黒いミニスカート。セーラー服はジッパー式になっている。羽織っているレザージャケットは逆に全体が白い。レザージャケットとセーラー服の端には赤いラインの様に生地が縫われている。そこに、黒のニーソックスを履いている為一見喪服と間違えそうになる。あと余談だが、ヲ級の帽子はヘルメットとして使用し、今はバイクのハンドルに掛けられている。しかし、あの帽子が何故安定して掛けられるのかは謎である。

 

「さぁ?俺には分かんねぇ。...って済みません!」

 

「ン?ドウシタ?」

 

「女性の前では気を付けているんですが、口調が...「気ニスルナ。ソッチノ方ガ話シヤスイ。」え゛!?いいんですか!?」

 

「イイ。」

 

「じゃ、じゃあ普段の話し方で喋るから。」

 

「イイゾ。」

 

「あと、済みませんね。俺の野暮用に付き合わせちゃって...」

 

「ソレモ気ニスルナ。(ソレニ、コノ格好ナラ"ヲ級"ダトバレズニ敵戦力..."艦娘"ヲ調査出来ル。)」

 

二人がいるこの場所は海から岡山へ入港する玄関口。岡山鎮守府の駐車場である。

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

「今日も提督さん見つからないです。」

 

セーラー服を着た少女が岡山鎮守府内をトボトボと歩いている。

 

「ま、まぁ、気を落とすな!今日が駄目なら明日があるさ!!」

 

その少女の周りをアタフタ動きながら黒いセーラー服を着た女性が少女を気遣う。

 

「あ、明日...ぐすん...」

 

「い、電...(チクショウ!!俺の妹を悲しませやがって!!無事に着任出来ると思うなよ!!)。」

 

少女の名は電。昨日自身の提督と共に岡山鎮守府の東の塔に着任する予定であった駆逐艦の"艦娘"である。その少女と一緒に歩いているのは軽巡洋艦"天龍"。電の姉貴分で、電の提督になる青年を一緒に探していた。

 

『東の塔配属予定の電は、直ちに司令室に来なさい。繰り返します。東の塔配属予定の電は、直ちに司令室に来なさい。』

 

「ん?館内放送?お前、何か問題起こしたか?」

 

「何もしていないのです。」

 

「そりゃ、そうだな。昨日来たばっかだしな...提督探しは俺がやっとくから行ってきな。」

 

「うん!お願いお姉ちゃん!!」

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

「んで、お前からは謝罪は無しか?」

 

どうも武明です。今現在、岡山鎮守府の司令室にいます。おきゅうさんには司令室の前で待ってもらっているんだが、まだここでの話は長引きそうだ。

 

「さっきしただろう。」

 

「あぁ、したな。...そこの女秘書が。」

 

俺の目の前にはここ岡山鎮守府のトップ...山崎大佐が座っている。

 

「お前!大佐に失礼だろうが!」

 

「知るかボケ!」

 

何度も電話が掛かって来ていたので岡山鎮守府に寄ってみたら、急に司令室に呼び出された。それで司令室に寄ってみたら、昨日この岡山鎮守府"東の塔"へ配属なのに遅れるとは何事かと言われ、理不尽な言いように怒りを覚えながら俺のところに来た書類を突きつけてやった。その後、大佐の横にいる...長門?だっけ?...が謝罪をしてきた。が、

 

「おい!大佐かなんだか知らねぇが、テメェがトップなんだろ?トップが謝るのが筋ってもんじゃねぇか?それに偉そうに『時間に遅れるとはどう言う事だ』だと!!テメェらが送ってきた書類が間違ってたんじゃねぇか!あ"ぁ"!!」

 

このオッサン全然謝ろうとしねぇ。トップの者は様々な責任が付いて来て、簡単に頭を下げるような事が出来無いのは知ってる。が、軽く『悪かった』や『申し訳ない』と俺らだけの所で直ぐに謝罪すれば俺もここまで怒らねぇ。

 

「だから、それは私が謝っただろう!お前の部下になる者も呼んだ。それに遅れたことは不問になる!!こちらの手違いだったのだ。これで許してくれまいか?」

 

「だから、姉ちゃんよぉ~。俺はアンタじゃなくて、そこの糞野郎に誤って欲しいんだ!!」

 

「た、大佐に向かって糞野郎とは!!もぅ、我慢できん!!ビッグ7と呼ばれた私の実力、お前には勿体無いが見せてやる!!」

 

今にも殴りかかりそうな長門。

 

「はん!!受けて立とうじゃねぇか!!」

 

それを挑発し、カウンターを狙う武明。

 

「やめんか!!」

 

「た、大佐...」

 

その一触即発の状況を収めたのは山崎の一括であった。

 

「悪かった。今後はこのような事態は起こさぬよう気を付ける。」

 

「...あぁ、分かった。」

 

「おい!大佐が謝ってくださったのにその反応はなんだ!!」

 

長門の怒気を受けた武明は、

 

「...いつでも掛かってきな。だが、覚悟しろよ。手加減なんぞ今はできそうにない。」

 

それを軽くいなし、ドスの効いた声で言い返した。

 

「二人共そこまでだ!長門、君は少し席を外してくれたまえ。」

 

「は、はい...」

 

そう言って長門が司令室を出た後、

 

「し、しゅつ...失礼します!!」

 

入れ替わるように一人の少女が司令室に入ってきた。

 

「...おぉ!待っていたよ!!ささ、彼の横に立ってくれたまえ!!」

 

この殺伐とした空間を変えてくれそうな少女、電が入ってきたことに大佐は少し安堵しこの状況を打破しようと明るい声で招き入れた。

 

「あん?誰だ?(...あれ?この娘はこの前助けてやったヤツじゃねぇか?)」

 

先程の怒りも多少残っていた武明は冷たい態度で接し、

 

「ひぃ!!ご、ごめんなさい!!」

 

案の定怖がらせてしまった。

 

「...あぁ、悪かったな。怖がらせてちまって。大丈夫か嬢ちゃん。」

 

「ふぇ...」

 

武明は先程までとは打って変わって柔らかい言葉で少女に話しかけた。

 

「悪い怖がらちまったようだ。大丈夫か?」

 

「あっ、い、いえ!大丈夫なのです!!」

 

「さて、これから...「ちょっと待ってくれ!」ん?どうした三宅伍長?」

 

「いや、俺の部下になる奴がまだ来ていないんだが...」

 

「ん?目の前にいるじゃないか。」

 

「...何処に?」

 

「そこに「なのです!!」...ほらな。」

 

その場で両腕を腰に当てどや顔をしている少女を何度も見直し、

 

「ハ、ハハ。大佐も冗談が過ぎるな~...ホントウデスカ?」

 

半分現実逃避した様子の武明が山崎に確認を取る。

 

「無論だ。」

 

「い、電に何か問題でも!?」

 

電は自身が何か悪いとこがあるのかと心配になり武明を見上げている。

 

「い、いや、あの~言いにくいんだが...全く予想していなかった者が部下だったんで...」

 

「ん?部下の事はちゃんと書類が行っていたと思ったが、そちらも手違いが?」

 

「いや、名前は合ってる。"電"って名前だろ?」

 

「そうだ。暁型4番艦"駆逐艦電"。初めて提督に就任するものには大きな助けになってくれるよう様々な教育を行っている艦娘だ。他にも雷や暁も最初の頃は世話になる事になるだろう。」

 

「...はぁ。んで、この嬢ちゃんがその"艦娘"って奴か...予想してた奴とは真逆だな...」

 

「ま、まさかとは思うが君...艦娘も深海棲艦の事も知らないのか?」

 

「あぁ、全く。今初めて見たし知った。最初、俺の部下になるのだから名前的にギラギラした男で何でもかんでも突っかかってくる奴だと思ったが、"娘"ってあったから近寄り難い背の高い委員長タイプの女秘書だと考えてたぜ...」

 

「い、電とは真逆なのです...」

 

その言葉を聞いた電は肩をすくめた。

 

「まぁ、俺が勝手に想像だから気にすんな。嬢ちゃん達を知らなかったのは...俺はイランの最前線にいたんだが急に休戦になるわ、こっちに帰ってくれば家に呼び戻されるわで忙しくって最近のことは全然把握できなかったからだ。」

 

「はぁ~、それなら納得がいく。休戦になったのは奴ら深海棲艦が現れたからだ。奴らは全人類に攻撃をしてきている。故に対抗手段を打つべく各国は世界中に散らばっていた戦力を呼び戻しているのだ。陸・海・空全ての戦力を結集しなければ奴らには勝てない。この前もこの鎮守府に着任するはずだった空軍の50名を乗せた飛行機が敵深海棲艦に撃墜されている。」

 

「道理で向こうを出た人数より帰って来た人数が少なかった訳か...」

 

「そ、それで深海棲艦に対抗し私達"艦娘"が製造されたのです!!」

 

「そうか...その技術が"妖精さん"の...」

 

「はい!なのです!!」

 

「なるほど...大体は分かった。あ~あと、大佐さんよ。」

 

「なんだ?」

 

「俺はこの間違えて送られた書類の場所。...倉庫跡を拠点にしてやっていくつもりだ。」

 

「はぁ!?君はここに配属になるんだぞ!!」

 

その言葉に山崎は驚愕し激を飛ばす。

 

「...俺は俺のやりたいようにやる。陸軍の時もそうやってきた。」

 

「だが!!」

 

「あそこが気に入っちまってな。それに、知り合いの棟梁にも連絡して改修工事までの段取りは出来ているだよ。」

 

「伍長!!勝手な行動は慎みたまえ!!君には配給を出さんぞ!!」

 

「それも勝手にすればいい。...そう言う事だから、電ちゃん。」

 

「ふぇ!?」

 

急に話を振られた電は間抜けな声を挙げてしまった。

 

「俺はあっちの瓦礫の山...倉庫跡に鎮守府を造る。君は無理して来なくていい。じゃあな。」

 

「待ちたまえ!!」

 

そう言うと武明は山崎の言葉を無視し司令室を出ようと振り返る。

 

「わ、私も連れて行ってください!!電の..."私"の提督は貴男だけなんです!!」

 

が、電に服の端を持たれそう言われた。

 

「そうか、どうなっても知らないぞ。...大佐、この嬢ちゃんは俺が責任を持って面倒を見る。その代わりと言っちゃあ悪いが、あの倉庫を鎮守府として認めてくれ。後は、好きにすればいい。」

 

「クソッ!!勝手にしろ!!鎮守府としては認めてやろう!!但し、配給は無しだ!!」

 

「スマンな大佐。」

 

「とっとと出て行け!!」

 

山崎にそう言われ武明と電は司令室を後にした。

 

 

 

「...陸軍の書類道理だな。気に入らない者は上司でも突っかかり殴る事もあり、気に入った者は敵兵でも生かし自身の部隊に入れる。流石は陸軍のトラブルメーカーだな...」

 

その呟きは誰もいなくなった司令室ではハッキリ聞こえた。

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

「悪いな嬢ちゃん。こんな上司で。」

 

「...いえ、第一印象は良くはなかったです。けど...提督さんは私の事を気遣ってここに残るよう配慮してくたのです。それを見てこの人なら付いていけると感じたのです。提督さんの配慮を不意にしちゃいました。ごめんなさいなのです!」

 

「ハハハ、上司思いのいい部下だ。俺には勿体無いな。」

 

「ああ!お前には勿体無い!!」

 

不意に二人が歩いている後ろから女性の声が聞こえた。次の瞬間。

 

「何!?」

 

「ほぅ、後ろからの一撃を躱すとは...」

 

武明は今目の前に現れた女性に後ろから殴りかかられ、それを寸前で躱していた。

 

「天龍お姉ちゃん!?」

 

武明を殴りつけたのは軽巡洋艦天龍。電が司令室に呼ばれた時、電が心配で付いて来ていたのだ。

 

「電、俺は悲しいぞ。こんな糞野郎に付いていくなんて...」

 

「わ、私が初めて自分で決めた事なのです!!お、お姉ちゃんには関係ないのです!!」

 

「こ、これがお姉ちゃん離れか...嬉しい半面、お前を泣かせたこの糞野郎に付いて行くのは反対...「俺が泣かせた?」テメェは黙ってろ!!」

 

「俺が電を泣かせた?それは本当なのか?」

 

「ああ、本当だ!昨日ここに着任するはずだったお前を探し回りながら泣いていたよ!!」

 

「...そうだったのか...」

 

「だから、俺に黙って殴られろ!!」

 

隙を見せた武明に向けて天龍は右手の拳を右頬に叩きつけた。

 

「グッ!!」

 

「もう一ぱ...「ヤメロ、コレ以上三宅ヲ傷ツケルナ。」チィ!女連れかよ!!」

 

天龍がもう一度殴ろうと左腕を振り上げた時、銀髪の女性が天龍の左腕を掴み、止めてた。天龍の腕を止めたのは司令室の前で武明を待っていたヲ級だった。

 

「...クソッ!!興が覚めた。今日はこれぐらいで勘弁してやる!!また電を悲しませたら...わかっているよな!!」

 

それだけ言うと天龍はその場を後にし、何処かに行ってしまった。

 

「大丈夫カ?」

 

「あぁ、問題ない。悪かったじょ...電。」

 

「大丈夫気にしないで下さい!!提督さんに会えましたし、提督さんが優しい人だって分かりました!!」

 

少し暗い表情だった武明に電は笑顔でそう答えた。

 

「そうか。」

 

「そう言えば提督さんその人はだれなのです?」

 

「おっと、紹介が遅れたな。この人は最近助けた"おきゅうさん"だ。」

 

「は、初めまして電なのです!!」

 

「ア、 アァ。ヲ級ダ。」

 

「家で...鎮守府で電と一緒に暮らす人だ。」

 

「えぇ!!そうなのです!?」

 

「あぁ、そうだ。それでおきゅうさんには今後完成した鎮守府で秘書をしてもらう。」

 

「えぇ!!ひ、秘書...そ、それは私が...」

 

「最初、彼女には安全な鎮守府で待機してもらう。「私モオ前ト!!」尚!!電、君はその助手をしてもらう。」

 

「わ、私は"戦艦"なのです!!敵を倒す事は私達のお仕事なのです!!」

 

「二人共焦るな。まずは深海棲艦ってヤツをこの目で見てから今後"俺達"の立ち位置を決める。まずは鎮守府の建設だ!電、倉庫の位置はこの紙に書かれている。俺のバイクは二人乗りだから君は海上からそこの位置に来てくれ。」

 

「はい!なのです!!」

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

~鎮守府建設予定倉庫前~

 

「よう、坊主!久しぶりだな!!」

 

「おやっさんも元気そうで!!」

 

武明に向かって大笑いしている髭面の爺さん。

 

「やっと帰ってきたと思ったら、直ぐ現場か。まぁ、このご時世仕方ないがな...んで、このボロ小屋がお前の勤務先か?」

 

「あぁ、そうだ。おやっさん頼む!!これを頑丈なヤツに造り替えてくれ!!」

 

「任せろ!!俺を誰だと思ってやがる!!十五代目宮大工の『玄』だぜ!!この近くにいる俺の弟子たちも呼んだ!坊主の注文は全部受けてやる!!お前の馬鹿力も考慮して特殊な合金も使ってやる!!」

 

「あ゛!!そう言えば金はあまり無んだが...」

 

「大丈夫お前の出世払いだからな!!」

 

「嘘ぉ!!」

 

「嬢ちゃん二人も大船に乗った気で待っとけ!!」

 

「なのです!!」

 

「分カッタ!!」

 

「了承しないで!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数ヵ月後、新たな鎮守府が完成した。

 

「提督が着任するのです!!」

 

「着任オメデトウ。」

 

「う゛ぅ゛...」

 

...その光景は着任出来た事に感動のあまり泣き出した提督と、それを見守る艦娘という光景に一見見えるが、

 

「クソッ!!あのクソ大佐に配給だけは取り入るんだった!!」

 

5千万円の借金に配給無し、艦娘を運用するボーキサイト無し、だが元々有った瓦礫の鋼材と建造途中に出た資材はある奇妙な鎮守府が完成していた。

 

「俺の貯金ん―――――!!」

 

「クヨクヨスルナ。」

 

「なのです!!」

 

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