西暦2006年。東京都立呪術高等専門学校。
俺と傑は夜蛾先生(見た目ヤクザの次期学長)にありがたーいお話をしてもらっていた。何でも重大な依頼だとか。
「五条、夏油。お前たち二人には正直荷が重いと思うが……天元様のご指名だ」
出た。天元様。興味無いから全然知らねーけど。
「依頼は二つ。星漿体……天元様との適合者。その少女の護衛と抹消だ」
「ガキンチョの護衛と抹消? 冗談じゃないね」
お優しい傑一人に行かせろよ。弱者生存が好きみたいだし、か弱い女の子守るためなら喜んで働くだろ。つーか抹消って何だよ。それって虚しくね? 何のためにやんだよ。
「悟。天元様は不死であるが不老じゃないんだ。やがて一定の時期に肉体が高次元の存在に至る。それは避けないといけない。故に五百年に一度、星漿体……適合者と同化し肉体の情報を書き換える。そうすれば術式効果も振り出しに戻る。天元様が天元様でなくなる事態は防げるという訳だね」
「なるほど。進化してスカルグレイモンになったら厄介。天元様には大人しくコロモンのままでいてもらおうってやつか」
つっても人間一人犠牲にするってことだろ? 気分悪ぃな。その適合者ってのは何に狙われてんだか。どうせどっかの呪詛師だろうが。
「少女の命を狙っている輩は二つ。天元様の暴走による現呪術界の転覆を目論む"呪詛師集団Q"、そして天元様を崇拝する非術師の宗教団体"盤星教時の器の会"だ」
ガキンチョ、呪詛師からも非術師からも嫌われてんの? かわいそー。しょうがないから守ってやるかね。どうせ辛気臭いツラしてんだろ?
「同化は2日後の満月。それまで少女を護衛し、天元様の元へ送り届けるのだ。失敗すればその影響は一般社会にも及ぶ。心してかかれ!!」
「誰に言ってんの? 俺と傑って"最強"だから。ま、のんびり待っててよ夜蛾先生。いや、次期学長サマ?」
「悟。まだ確定じゃない情報を無闇に話すのはやめた方がいい。もしこれで話が流れたら夜蛾先生も気まずいだろう」
「お前ら……本当に頼むぞ」
俺たちにかかればお茶の子さいさいってやつよ。んじゃ、早速ガキンチョのツラ拝みに行きますか。
「ああ、二人とも待て。追加で天元様のお言葉だ。『星漿体の護衛の際に一人追加でこちらの人員を寄こすから同行させてくれ。特に干渉はさせない。加えて自分の身は守れるから気遣いも不要』とのことだ」
「は? 別に良いけど……あんま知らねーけど天元様って一人で篭ってるんじゃねーの? そんなのが居るならそいつにガキンチョ護衛させたら良いじゃん。どんな奴なの」
つーか同行だけってことは……あ、もしかして俺らより頼りないってパターン? なっさけねぇなぁ。
「詳細は明かされていない。男性。加えて存在感が希薄だそうだ。識別のために目印を持たせてくださっているらしい。五条、お前の目なら一発でわかるそうだ。そして同行はお前たちが高専の結界を離れた瞬間から
同士討ちはするなってことね。良いよ。どうせ俺と傑が居れば任務達成はできる。邪魔しないならやりやすくて良い。むしろ俺たちの大活躍を目に焼き付けといてもらおうぜ。同行する奴によ。
なぁ、傑?
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早速ガキンチョのお守りに向かったところで、すぐに"わかった"。
本当に高専の結界を出た瞬間からソレはついてきている。きっかり一定の間隔って訳じゃない。こっちが加速したら慌ててついてくる。滅茶苦茶素人っぽい動きなのに、存在感が希薄過ぎて俺じゃねーとすぐに見失うだろうな。スネークの体に素人が乗り移ってんのか?
「どうした? 悟」
「いや? 同行の男って奴はしっかりついてきてるぜ。気配はほぼナシ。呪力は完全にゼロのカメレオン野郎。俺じゃないとわかんねーだろうな。天元様の"目印"ってやつ? そいつはくっきり見えるけど、体格なんかはわかんねー」
「呪力と気配を? 天元様の結界術か? そうか……これは本格的に監視と見て良さそうだな。悟、日頃の行いが悪いんじゃないか?」
「ハ、言ってろ。安心しろよ傑。奴さんお前のケツも狙ってるぜ? 気を付けときな」
「悟……邪な言い方は辞めないか。私も存在は知らなかったが、同行される方は天元様のお膝元に居ることを許されているんだ。天元様のように長く生きていらっしゃるかもしれない。目上の方に失礼な態度を取るんじゃない」
別に聞こえねーよ。つーか聞こえても問題無いし。コソコソついてくるようなビビりが俺たちに何か言えんのかよ。
「そもそも俺、付き纏ってくるような奴嫌いなんだよね。今回は顔も見せねーしもっと嫌いだ。そういうの、ガキの頃からやられてるからもう飽きてんだよ」
「そういう問題じゃない。心構えの問題なんだ。誰も見ていない場所でこそ、人の本質は現れるものさ」
「だーかーらー。正論は嫌いだっての。傑、そんなことより他に言いたいことあるだろ? 夜蛾先生の話の時にウズウズしてたろ。言えよ」
「……はぁ。もし適合者の少女が同化を望まなかった場合の話だ」
「そりゃ、同化は無し!」
そーゆー"生まれた時から定められた使命"ってやつ? 反吐が出るね。最強の俺たちゃ弱い人間を守るために生まれてきましたってか? あーやだやだ。
「珍しく意見が合うじゃないか、悟。だが良いのか? 同化を阻むということは任務は失敗。加えて天元様を敵に回すことになるかも知れない」
「構わねーよ。分かってんだろ? 傑。俺とお前で勝てない奴なんていない。もちろんついてきてるアイツも含めてまとめて相手してやんよ。戦えるのかは知らねーけど。それでガキンチョのワガママ聞いてやって俺たちは高専支配して自由にやる。それでオッケー」
「支配はダメだ。だが……そうだな。私たちは最強だ。しかし天元様は私たちの考えを見通しているのかもしれないな……」
「上等。俺たちの活躍っぷりでまずはカメレオン野郎をビビらせてやろうぜ。んでガキンチョ連れて天元様のとこに乗り込んで宣戦布告よ」
お、そろそろガキンチョのホテルだ。良いとこ借りてんじゃん。
「傑、迎えは任せた。ケータイ繋げとけよ」
「ああ、では後ほど落ち合おう」
+++++
そこから俺たちはガキンチョ改め天内理子と合流。Qの戦闘員(ザコ)とか野良の呪詛師(ザコ)とかを蹴散らしながらも天内の付き人、黒井の拉致を許してしまう。
「黒井さんの交換場所は沖縄、か。高専からますます離れることになる」
「決まりだな。天内は高専に置いて行く。同化まで天元様が守ってくれんだろ。後は俺たちが盤星教ぶっ潰せばハイ終わり」
「嫌だ! 私も行く。だって、だって……まだお別れも言ってない!!」
あーあ。苦手なんだよねそういう御涙頂戴。でもま、良いよ。やられっぱなしは性に合わねー。
「良いぜ。もう嫌だって言っても引きずってでも連れてってやる。途中で引き返すなんて絶対にできねーからな。覚悟しとけよ」
「……わかった。それでいい」
ま、どこだろうと護衛の難易度は変わらない。そうだろ? 傑。
「さ、理子ちゃん。黒井さんを迎えに行こう」
「うん!」
「おーおー美しいこって」
レディの扱いは傑に任せるに限るね。んじゃ、行きますか沖縄。
「つーかやっぱり"見てるだけ"なんだな、カメレオン野郎」
+++++
「こっわ」
え? こっち見てる? 五条くん目良すぎない? 俺、呪力無いからステルス状態って天元さん言ってたのに。六眼って性能やばいな。
「盗聴魔法はバレてない、よな。距離取った方が良いかな。でもこれ以上離れると流石に対応しきれないかも。夏油くんの呪霊見えないから咄嗟の動きの予想つきにくいし……どうしようかな」
五条くんと夏油くんが滅茶苦茶凄いから何とかなってるけど、普通に危ない場面は沢山あった。というか皆身体能力高過ぎじゃないか? 何かあったらバレないくらいに手伝おうかなーとか思ってた自分が恥ずかしい。
「
考えてみれば視界の端にずっと目立つ物が映っているなんて気になってしょうがないだろう。でもコレは持ってないといけない。消滅は嫌だ。
「かと言って護衛の邪魔になるのもダメだよな……やり方変えるべきかな」
「うーん。どっちもデメリットがデカいな。前者はMP消費が多すぎて不測の事態に対応できないかも。ずっと飛行魔法使ってるし。後者は六眼が非実体化を見抜く可能性があるんだよなぁ。呪力を捉えるだけって話だったけど……どう考えてもそれ以外も見えてそうだし」
隠蔽魔法だと効果が切れる度に六眼に呪具の呪力が映るから、肝心なタイミングで邪魔になりそう。それならいっそずっと視界に映してた方が良いかな。アンデッド召喚は下手したら五条くんがぶっ飛んでくる可能性もあるし。アンデッドの見た目完全にヤバい側だからなぁ。
「五条くんには申し訳ないけどこのままでいくかな。任務終わったら平謝りしよう。いや、謝る機会あるかな……天元さんと敵対する気満々だし」
二人の気持ちはよくわかる。観察しているだけでも天内理子という人間は普通の少女で。いきなりその子を犠牲に世界を救おう、なんて言われて割り切れる方が少数派だろう。俺だって消滅回避の方法が天元さんに依存してなければもっと積極的に手を貸したいくらいだ。
「消滅ってどうなるんだろう。死ぬのかな。それとも元の世界に逆戻りかな。どっちも嫌だなぁ……それなら五条くん達に支配してもらった方が良さそう」
良くないことにはならないだろう。何故なら二人とも良い子たちだから。盗み聞きした会話からは、彼らのまっすぐな優しさと強さが伝わってくる。発言はともかく、行動は"弱者のために迷いなく行動する正義"そのものだ。だからこそコソコソとしている自分が少しだけ嫌になる。
「いやいや、仕事を遂行するのも大事だ。そもそも俺を寄越したのだって天内さんが心配だからですよね? 天元さん。絶対に手を貸すな、とまでは言われてないし。もしかしたら派閥があって大っぴらに手を貸せないとかあるかもしれないじゃないか」
なるべくポジティブにいこう。大抵のことは高専の二人が何とかしてくれるだろう。依頼が終わった後のことも今は考えなくて良い。どうしたら成功するか、その一点を考えるべきだ。その上で懸念となるのは黒井さんを気絶させた男のこと。
「他の人たちみたいな摩訶不思議な術を使うって感じじゃなかった。身体能力全振り。極力姿を見せないで、ここぞの瞬間に爆発的に動く。ギルド戦でもああいうタイプが一番怖いんだよなぁ」
戦局をひっくり返す逆転の一手とは予想外の方向から来るものだ。派手に動いている者よりも、その裏でこっそりと動いている者の方が怖い。あの不気味な存在に高専の二人が気付いていないことがもどかしかった。
「依頼達成が優先されるべき。建前かもしれないけど、二人に接触はNG。大っぴらに手を貸すことはできない。となると……閃いた」
虚空に手をかざせば、骨の腕が何処かからアイテムを取り出す。インベントリの仕様もゲーム時代とほぼ同じ。中に仕舞えば天元さんも感知できなかった。
「呪具無しで外に出たら"いずれ"消滅するなら、ちょっとくらいなら大丈夫ってこと。名付けて……ドラえもん大作戦だ」
……大丈夫だよね? 即消滅とかしないよね?
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「あーうぜえ! 何なんだアイツは」
「どうした悟。機内では騒いではいけない。天内さんも起きてしまう」
うるせー。のじゃのじゃは爆睡中だ。良いご身分だぜ。つーか、これが騒がずにいられるかよ。カメレオン野郎、煽ってんのか?
「チカチカチカチカうぜーんだよ。四次元ポケットでも持ってんのか? 奴の目印が見えたり消えたりしてんだ。気が散ってしょうがねーよ」
「チカチカ……? 何かのメッセージじゃないか? ここに至るまではそんな行動はしてなかったんだろう」
「メッセージぃ? 『俺はいつでもお前のことを見てるぞ』ってかぁ? キモッ。ストーカーかよ」
「真面目に考えるんだ。まず同行されている方は味方だ。その上で、天元様から私たちに干渉しないことを言い含められている。にも関わらずこんな露骨な行動に出る理由は何だ?」
「……こっそり伝えたいことがあるってことか。うわ、チカチカ早まった。アイツ絶対盗聴してるだろ。ますますストーカーじゃねぇか」
「悟。それが任務なんだ。しょうがないだろう」
チカチカのスピード、落ちたな。ショックでも受けたか? キモッ。メンタル女子中学生かよ。でもマジで命令違反ギリギリな行動ってことならしょうがねぇな。真面目に考えてやるか。
「あー……"俺みたいな透明人間に気をつけろ"か? 実際カメレオン野郎とその他呪詛師が本気で他党組んで来たらめんどくせーし。負けねーけど」
「任意で透明状態のオンオフが出来るタイプに気をつけろ、という意味もありそうだね。実際に悟の気を散らすことに成功している。拮抗した状況では一瞬の隙が命取りだ」
「拮抗しねぇけどな。お、チカチカ止めやがった。オーケー、気を付けるよ」
俺はまだ信用してねぇけどな。傑は良い子ちゃんだからすぐ味方とか言うが、姿も見せねぇ奴を信用するほど俺は人間できてないから。つーか向こうも盗聴やってやがるし。ここらで線引きしとくか。
「なぁ、傑。飛行機ってこえーよな」
「なんだ急に。撃墜の心配かい? らしくないな。私の虹龍も飛ばしてはいるが、そもそも離陸さえしてしまえば大抵の呪詛師が手を出せない安全領域という話だろう」
「ま、そうだな。乗客は全員確認したし、最高時速は600キロ以上で途中乗車は不可能。んじゃあ問題だ。カメレオン野郎は飛行機には乗ってねぇが、相変わらずピッタリついてきてやがる。これがどういうことかわかるか?」
「……任務に忠実ということなんだろう」
「誤魔化すなよ。天元様は天内を全力で守る気が無い」
「悟」
「天内は寝てる。そりゃ俺とお前は最強だけどな。六眼から逃れられる隠密性能に生身でマッハ0.5以上出して平気な身体、あるいはそれを可能にする高性能な呪具持ちがいる。こんなもん、ただの監視に使うなんて勿体無いと思わねーか?」
「……不測の事態に備えているだけで基本的に私たちに任せているんだ。現に悟と私で理子ちゃんの護衛はできている」
「天内はな。無理すんな。お前の方が仲良かったろ」
「……黒井さんは必ず取り戻す。理子ちゃんの大事な家族だからね。悟、喧嘩なら任務の後にいくらでも買ってやる。もういいだろう」
「別に売ってねーよ。さっきも言った通りミスってほどじゃねぇ。盤星教ボコって取り返しゃ良い。それよりもムカつくことはな、天元様はお前みたいに良い子ちゃんじゃねーってことをお前がわかってないことだ」
視野狭くなってんぞ。お前は良い子ちゃんだが、ちゃんと清濁飲み込めるヤツだろう。味方だって思ってた奴が敵になるなんてザラだ。この腐った世界じゃな。
「守りたいんだろ。日常ってやつを。気張れよ」
「……気を付けよう」
頼むぜ。俺と肩並べんのはお前しかいねーんだ。傑。
++++
『『めんそーれ!!!』』
遠見の魔法に映るは、沖縄の海ではしゃぐ五条くんと天内さん。傍にはポカンとした表情の黒井さんと微笑んでいる夏油くん。
「いや、飛行機でのシリアスどこ行ったの?」
五条くんが凄んだ時、『すごい迫力だ……これが殺気!!』とか思っちゃってた俺の迫真顔返してよ。顔面骨だけどさ。確かに俺も思ったよ? 天元さんラスボスフラグとかさ。結構疑心暗鬼だよ? 今の俺。
「……二人は凄いよ。そんなに歳変わらないのに、女の子のために命張ってるし。余裕で人質取り返しちゃったし……」
俺はどうしたら良いんだろう。もっと天元さんに事情を聞いておけば良かった。他に方法は無いのかとか。本当に同化に納得しているのかとか。
「軽く考えてたなぁ……俺の馬鹿野郎。そうだよな。俺だって死にたくないんだ。14歳の女の子なんだぞ」
そう考えると急に怖くなってきた。俺は天元さんと縛りを結んでいる。理由と経緯はわからないけど、14歳の女の子を犠牲にする決断ができる人とだ。
一つ、薨星宮で知り得た情報は他言無用
一つ、天元に関する情報は許しが無い限り他言無用
一つ、一般人に対する攻撃的行為および魔法の開示の禁止
「……最後のやつ、マズイかもな。『呪術は秘匿されるべき。君の力も一般人からしたら同じようなものだ』なんて。もっともらしいけど俺の行動めっちゃ制限されるなコレ」
縛りに対する認識が浅いのもマズイ。破ったらどうなるのかは教えてもらってる。でも俺は破った人間を見たわけじゃないし、試すわけにもいかない。
「うわ、縛りについて知ったのも薨星宮じゃん……ってことは五条くんたちに聞くわけにもいかない。あれ? そもそもこの世界に魔法が無いって知ったのも薨星宮だ。なら一般人じゃない五条くんたちにも魔法の開示はしちゃいけないかも……え? インベントリのアレ危なかった?」
この世界に来て一番ゾッとした。盗聴の様子から俺が呪力ではない全く別の力を行使しているとは思われてなかった。だからこそ今俺は何事も無くここにいる。
「……でももしそこで怪しまれてたら? 縛りペナルティ発動だった?」
恐ろしい。その策謀にまんまとハマってしまった自分の愚かさが憎たらしい。
「クソ、何としてでも天内さんを守らなきゃ。天元さんはきっと依頼達成しないと交渉の場にも立たせてくれないぞ……! ごめん、五条くんと夏油くん。君たちだけが頼りだ……!」
骸骨の手で祈ることしかできなかった。夜、五条悟が不眠不休で術式を発動し続けている様子を見て心が擦り減っていく。
頼む。どうか杞憂であってくれ。天元が天内のことをどうでも良いと思っているなんて。頼むから。この子たちの献身を、努力を無駄にさせないでくれ。
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呪術高専 敷地前
五条、夏油、天内、黒井が高専の結界内に入った瞬間、四人に対する遠見の術が突然無効になった。慌てて最後の瞬間に見えた場所に突撃するも、誰もいない。結界に拒絶されている。
「どういうことだ!! 四人と同じ道を通ってるはずなのに!! 結界に入れないぞ!!」
もう少しだと言うのに。ここに来て四人が手の届かないところに行ってしまった。先行しておけば良かったか? 焦る。思い出す。天元の言葉。
『私の結界はね。隠すことに特化しているんだ。容易に見つけることはできないよ。出る時は簡単だけどね』
「クゥ、クソがあああああああああああああああ!!」