若人から青春を奪ってはいけない(迫真)   作:サイドベント

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狡猾な襲撃者

 

 

思った通り五条悟の動きが鈍い。この二日間不眠で術式回し続けたか。呪術界の特異点ともあろう男がお優しいこって。

 

 

「はぁ、はぁ……着いた」

 

「高専の結界内だ。お疲れ様、理子ちゃん」

 

「やーっと着いたか。カメレオン野郎もどっか行っちまったな」

 

「いや、元々高専結界を出るまでは悟にも存在を気取られなかったんだ。任務は薨星宮本殿までだし、まだ見てるんじゃないかな」

 

「そーかな。そーかも」

 

 

ヤツだけを見ろ。呪力ゼロで手ぶらの俺を気取るほどの勘の鋭さだ。刹那の隙を突け。呼吸、瞬き、脈拍。全てを見逃すな。

 

 

「うん。悟、本当にお疲れさま」

 

 

 

 

 

まだ

 

 

 

 

 

「おう。ガキンチョのお守りなんて二度とゴメンだね」

 

 

 

 

 

まだ

 

 

 

 

 

「だーれがガキンチョか! でも……本当にありがとう」

 

 

 

 

 

まだ

 

 

 

 

 

「お前のワガママくらい何てことねーよ……ふぅ」

 

 

 

 

 

今!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーカ。こちとら気配も呪力も無い奴に四六時中見られてんだよ。いい加減慣れた。吹っ飛べ」

 

 

あー、クソ。バレてたか。うわ喰われた。呪霊操術のガキ、呪霊何匹飼ってんだよ。つーか臭えし肉が厚い。めんどくせえな。

 

ムカつくから呪霊の腹を派手にぶち破ってやった。そしたら星漿体はいねーしやる気満々で無傷の五条悟がいるときた。真正面からやりたくねぇな……できればさっきので仕留めたかったんだが……ナマったかな。

 

 

「天内の懸賞金は取り下げられたぞマヌケ」

 

「俺が取り下げたんだよ」

 

 

イキんなよ五条悟。やせ我慢がわかるぜ。刀ぶっ刺せなかったのは残念だが、それだけだ。状況は何も変わらない。削りは順調。身を隠し、蝿頭を放つ。後は仕上げだけ。

 

 

「天内!!」

 

 

最後までガキの心配か? 今度はブラフじゃねぇ。やっと見せた本物の隙。右手の呪具が五条悟の術式をブチ破る。

 

 

特級呪具 天逆鉾(あまのさかほこ)

 

 

その効果、発動中の術式強制解除。それは五条悟の無下限術式とて例外じゃない。ブッ刺した喉笛から右脇腹まで無理矢理に引き千切る。右大腿部に三度追撃。苦し紛れの術式躱して……トドメは脳天に一刺し。

 

 

「……フゥー。アタマ刺しても術式発動ナシ。少し、勘が戻ったかな」

 

 

さて、獲りに行くかね。3000万の首。

 

 

 

 

 

 

  ++++

 

 

 

エレベーターを使わずに縦穴を真っ直ぐに降りる。軽く着地。全速力で走る。かと言って足音を立てるようなヘマはしない。ガキ共の痕跡を頼りに本殿へと辿り着く。

 

お、いたいた。あぶねーな。もう目の前じゃねーか。

 

 

「帰ろう、理子ちゃん」

 

 

引き金に指をかける。ガキは非術師。反転術式持ちもいない。だが念のため脳を撃ち抜いて確殺する。

 

タン、と軽い音。音速の弾丸は寸分の違いも無く標的の頭に吸い込まれて行く。弾かれる。は? 透明人間かよ。誰だお前。

 

 

「……夏油傑さん。そのまま彼女を連れて行ってください」

 

「え……きゃっ」

 

「理子ちゃん!! 行くよ!! 殿、任せます!!」

 

 

うーわ最悪だ。俺の五感でも捉えられない隠密ができる新手。こんなもんに背中向けながら戦ってられっかよ。割に合わん。帰ろ。

 

 

「伏黒甚爾さん。俺は天元様の遣いです。ちょっと話をしませんか」

 

「嫌だね」

 

 

収納用呪霊から蝿頭を多数放出、その陰に隠れて全速力で離脱する。天元の結界は出るのは簡単だ。俺の脚なら逃げ切れる。

 

 

「ッ!? オラァ!!」

 

 

なんだ? いつの間にか俺は太い蔓に縛られていた。即引き千切ったが。気付けば縛られている。術の発動タイミングがわからねぇ。しつけぇぞ。

 

 

「こんなもん何回やったところで……あ?」

 

 

今度はいつの間にか椅子に座らされていた。洋館の中? 領域展開か? 奴が掌印を結ぶ素振りは無かった。そもそも蔓の時点で"時間をすっ飛ばした"みてーに途中経過が全くわからねぇ。

 

 

「何回でもやりましょう。今度は溶岩の中にでも落としましょうか? どうでしょう、伏黒甚爾さん。話をしませんか?」

 

「……やめだ。降参する。高専のガキ共はブラフ。お前が護衛の本命だったって訳だ」

 

 

最悪だ。こんなイレギュラー聞いてねぇぞ。俺の目でよーく見てもわからねぇ。呪霊じゃない。呪術師……でもないな。何をされたかサッパリだ。そもそも何だあの体。やっぱり骨じゃねーか。どうやって動いてんだ? 天元ってのは本物の化け物飼ってんのか?

 

 

「落ち着きましたか? では、取引しましょう。悪い話じゃないと思いますよ」

 

 

 

 

 

 

 

  ++++

 

 

 

 

 

 

『孔時雨。さっきの女、まだ生きてるか? お、ラッキー。殺すなよ? 生かしたまま指定の場所に解放しろ。ちゃんと写真撮れよ』

 

『伏黒、勘弁しろよ。こっちはこの女に顔見られてんだぞ? 依頼は達成したのか?」

 

『整形でもしとけ。いいから殺すな。じゃあな』

 

 

 

 

 

 

  ++++

 

 

 

 

「ほら。あの女は無事だ。んじゃ俺をさっさと帰してくれよ」

 

「良いですよ。あ、そうだ」

 

 

骨の男からデカい袋が投げられる。受け取れば、若い人間の女の感触。

 

 

「こいつは……へえ。俺ぁ恩義なんて感じないタイプだぜ? 良いのか?」

 

 

今更"どうやったんだ?"なんて聞きはしない。目の前のコイツは常識が通用しないタイプだ。ありがたくいただいておこう。

 

 

「良いですよ。むしろあなたみたいなのに付き纏われたら彼女らが普通の生活を送れないでしょう。しっかり宣伝してくださいね。『天内理子は伏黒甚爾によって殺された』ってね。それを受け取ったら二度と姿を現さないでください」

 

「へいへい」

 

 

スタンダード過ぎる警告。素人だな。だがコイツみてーな化け物にやられると効果覿面。大人しく換金してさっさと姿眩ますのが吉か。

 

 

「そんじゃーな。バケモン」

 

 

 

 

 

  ++++

 

 

 

盤星教本部

 

 

 

天内理子の死体を渡して検分も終わった。改めてすげーな。俺でも死体にしか見えん。こんなもん、どうやって作ったんだ?

 

 

「ま、どうでもいいか。考えてみりゃ今回は一人も殺さねーで3000万円。イイねぇ」

 

 

終わってみればオイシイ仕事だったって訳だ。いや、天元様の遣い様様だな。さーて高ぇ肉でも食いに……あ?

 

 

「何でてめーが……反転術式か!!」

 

「正っ解っ!!」

 

 

白髪、六眼の呪術師がそこにいた。無下限術式に加えて反転術式。これじゃせっかく削った分も元通りになってんな? こんなもん相手にしてられっかよ。

 

 

結果。俺はいくつかの呪具と収納用呪霊を犠牲にその場を脱出することができた。骸骨の男と五条悟に狙われる人生になった訳だ。いやはや、スリリングだぜ。

 

 

 

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