TS超絶美少女呪術師が五条悟を倒そうとする話 作:ちぇんそー娘
「そんなわけで、俺って25になる前に死ぬらしいんだよね」
「あっそ」
一応直哉に俺のあれこれを伝えてみたが、反応はそれだけ。
いや、さすがにもっと色々あるだろ。
「なんでそれ俺に言うん? 恋鈴ちゃんがはよ死のうがババアになって死のうが、俺にはどうでもええんやけど」
「直哉……お前ってホント、人の心のないドブカス野郎で安心したよ」
「俺が安心できる要素が一個もあらへんが? 殺して欲しいならここで殺したるわ。どうせ25になったら死ぬんなら今死んでも関係ないやろ」
あの日から、千春とは最低限の会話しかしていない。
いつも通りのやり取りをしようにも、どうにも噛み合わないギクシャクとしたやり取りになってしまっている。
多分それは、俺が以前のように千春を受け入れられなくなっているからだ。彼女を信じることが俺には出来なくなっている。彼女が俺に何かを隠していたという事実そのものが、俺にそういう恐怖を与えてきてしまっているんだ。
その点直哉はやっぱりなんでも話しやすい。
コイツ本当に一切遠慮とかしないし、悪意をわざわざ隠したりしないんだもん。
まさか、仮にも相手のことを自分のことよりも理解するまで殴りあったような縁の相手が、あと10年足らずで死ぬ命だと明かしたのに全然興味すら持たないとは思わなかった。
「恋鈴ちゃんがいつ死ぬかとか、ホンマにどうでもええねん。とりあえずすぐ死ぬことは無いんやろ? なら、俺が悟くん倒す為の踏み台として役目さえ果たしてくれればなんでもええわ」
「……術式が暴走すれば、多分俺はお前の心を全部読むことになるぞ」
「読まれて恥ずかしいこととか俺にはあらへんし。思ったこと口にする度胸もない女々しいやつと俺を一緒にすんなや」
勘違いなんて死んでもしないくらい口調がトゲトゲしい。
直哉と俺が一緒にいるのは、結局のところ利害の一致だ。お互いの訓練に最適な相手で、お互いの目標の為に一番使い易い道具で。
俺達はお互いのことが大切じゃない。
だからこそ、俺たちの関係は何かに縛られるようなものではなく、自由で居心地が良いものなのかもしれない。
「直哉。お前ってホント最低だよな。ありがとう」
「日本語の並べ方おかしいやろ」
いつの間にか、俺は10歳の誕生日を迎えようとしていた。
よくよく考えてみたら、10歳にも満たないで反転術式を獲得し、黒閃を経験している術師なんて貴重なんてレベルじゃないと思う。1級呪霊らしいのと戦闘したこともあったけれど、俺の術式は呪霊に対してめちゃくちゃ強いのもあって余裕だったし。
でも同期にあの五条悟がいて、ついでに一個下の直哉も反転術式以外は並んできている。聞いた話によれば、直哉は既に特別1級術師に任命されるらしい。
ちなみに俺は3級である。
会う度直哉にバカにされるからどうにかしたいところだけど、こればかりは家柄の問題と俺が『女』であることも絡んでくるのでどうにもならない。
千春とは、あの一件以降ずっと距離ができてしまっている。
お父様がますます家を空けることが多くなり、必然的に彼女と過ごす時間は増えたのに距離ばっかり空いていく。
そんな家にいるのが嫌で、俺はぼちぼちと任務を受けるようなった。
五条家の分家であるうちはれっきとした呪術師の家系であり、上から命令されたら逆らえない立場でもある。
とはいえ、『女』としての価値がある俺が前線に命令されて出させられるようなことは本来あまりないことなのだが……その理由とは、一言で言えば五条悟だ。
アイツが言い放った、当主の座を自分に勝った人間に譲るという宣言。
あの言葉から2ヶ月程度の間、大量の呪術師呪詛師がアイツに勝負を挑み、全員例外なく秒殺された。
かと言って全員諦めた訳ではなく、手を替え品を替え五条悟を倒すべく裏で策を練っている。
今、呪術界の全てが互いをライバルとしながら、五条悟を倒そうと画策しているのだ。
それに伴い術師のレベルが向上しているらしいのはいい事なのだが、問題は対五条悟の為に仕事をサボろうとする術師が現れ始めたことだ。
術師の本来の役割を忘れ、五条家の権力を得る為にそちらの方に集中してしまう。呪霊の報告や被害を隠蔽し仕事を減らしてまで五条悟対策を練る。
そんな術師が大量に見つかって、今でこそ改善体制にあるがそれによってコソコソと数を増してしまった呪霊の対処に各地の術師は休みなく働かされる羽目になっていた。
たった一人で呪術界全体に影響を与えるなんて。
改めてあの男がどこまで規格外かを思い知らされると共に、俺にまで被害が出てるのはさすがに舌打ちした。
しかも全国レベルで地方各地に飛ばされたりしてる。
さすがに小学生のガキにこんなことやらせるなよ。俺じゃなかったらブチギレてたぞ。俺でもブチギレてるけど。
「まってでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?」
「待たないよ。こちとら美人薄命で時間ないんだわ」
芋虫と千手観音を合わせたみたいな見た目の呪霊の下腹部に手刀を差し込み、核を潰す。
核を潰されればどんなに大きな呪霊であろうとも残穢を残して塵に帰る。処分の手間がないというのは、害獣駆除とかと比べたら随分と楽でいい。
呪霊というのは肉体が呪力で構成されている。
つまり、肉体そのものが負の感情と言ってもいい。そういう存在は俺の術式『覚ノ改』にはどう映るのか。
結論から言ってしまうと、この術式は呪霊を相手にすると常にほぼ全ての思考を読み取ることが出来る。
負の感情を読み取るという術式の特性上、負の感情そのものである呪霊は俺に一切隠し事はできないし、相手の行動はそれこそ1/24秒単位ですら把握できる。
物理攻撃を無効にするか、或いは超広範囲への概念的攻撃手段を持つような呪霊が相手でないのならば、俺は呪霊相手に負ける事がありえないということだ。
直哉?
アイツはまぁ……呪いみたいなもんじゃないの?
呪霊と直哉どっちが素直かで言うとギリギリ直哉の時もあるし。
人間とは違い呪力そのものと言ってもいい呪霊の思考パターン、つまり呪力の使い方は参考になるところもあるが、強さで言えばさすがに物足りない。
こんなところで時間を潰していたら間に合うものも間に合わなくなる……が、これ以上我が家の立場を悪くするのもさすがに問題がある。
仮にも許嫁である悟がなんかガツンとやってくれたりしたらいいけど、アイツは俺の事を面白がってるだけで、俺の言うことを聞いてくれるわけじゃないしなぁ。
「最近はこれの出番もねぇし、どうしたもんか」
手持ち無沙汰に、俺は懐に収めていた一つの呪具を取り出す。
一級呪具『彼岸の葦』。
呪力で構成された物質を質量と体積をある程度無視して収納出来る、収納呪霊みたいな性質を持った呪具。
呪術規定違法の取引をされていたところを、術式を使って俺が捕まえて報酬として譲り受けたこの呪具だが、良い使い道が思いつくのにそれを実践する機会に恵まれない。
「はぁ……やめやめ。帰ってシャワー浴びて保湿して寝よ」
本家から地方に派遣されて今日で1週間。
枕が変わると寝つきが悪くて最近寝不足気味だし、近隣の呪霊を殲滅したのは頭の中に響く声でわかる。
『コイツレジ打ちおせぇな』
『明日も仕事かよ』
『足広げすぎだろデブ』
『おなかすいた』
『ねむい』
『ぶっ殺す』
聞こえてくるのは人間が抱く罵詈雑言の数々であり、呪霊らしき声は一個もない。
報告にあった呪霊もしっかり討伐したし、あとは窓の皆さんに報告は任せて帰ろうとした時。
『っぅ……しまったな。これは、思ったよりキツイ』
聞いたことがない、けれど聞き覚えがある声。
確かでは無いが本能的に、その声の正体を俺は察知し、すぐにその呪力のする方へと走り出した。
最近、彼らの数は減るどころか増えるばかりだ。
今までは私が近くに行けばそれだけで逃げていたはずのヤツらも、人間に近づいて危害を加えるようになった。
だから今日は少し深入りし過ぎた。
追っている過程で崖に気付かず滑落。倒しはしたものの足をくじいてしまったようで身動きが取れなくなってしまった。
捕まえた彼らを使えば登ることは出来るが、この足では街に入ってから身動きが取れない。
街のど真ん中でボロボロになっているよりかは、『深夜に山に入って怪我をした子供』として救助される方が波風は立たないだろう。両親には心配をかけることになるが、仕方がない。
両親も友人も、誰も彼らの姿は見えていない。
好きでやっている事だ。理解されないことを嘆く訳では無い。
でも、もしも。
この世界で彼らが見えるのが私だけだとしたら──────。
「いたいた、夏油傑くん。足の怪我、大丈夫?」
彼女は、なんの前触れもなく現れた。
教えたはずのない名前も、足の怪我も把握していて。それでいて本当に突然現れた、どんなテレビタレントよりも整っていて人間離れした、それこそ天使の羽衣のような純白を纏った同い年くらいの少女。
恥ずかしい話だけれど、私にはその時彼女が天使に見えてしまった。
「……君は?」
「安楽恋鈴。世界で一番可愛い呪術師だよ」