TS超絶美少女呪術師が五条悟を倒そうとする話   作:ちぇんそー娘

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日刊1位ありがとうございます。
そんなわけで書き溜めが尽きたのでここからはまったり書いていくと共に、元々呪霊直哉戦前後の時に書いてた話なので当時と設定的に変わってそうな部分があったらちまちま書き換えていくのでちょっとだけ待っててね。







13.呪いの中へ

 

 

 

 

 

「お嬢様、そちらの殿方は?」

「夏油傑くん。山で怪我してたから助けた」

「捨ててきてください」

「せめて家に帰してください……」

 

 夏油を連れて滞在先のホテルに戻ると当然というかなんというか、千春はもう見るまでもなく怒っている。

 

「お嬢様。一応言っておきますが貴方は……いえ、なんでもありません。過ぎたまねですね」

 

 以前までならくどくど俺の欠点を並べてきて怒っていたであろうところだが、最近千春はそういうことをしなくなってきた。

 

 無言で彼女の横をすり抜けて、俺は自分に宛てがわれた部屋に夏油を連れ込んで、とりあえず彼を自分のベッドに座るように促す。

 

「あちらの女性は……顔立ちもどこか似てるし君のお姉さんかい?」

「……いや、お手伝いさんみたいなものだ」

「お手伝いさんと二人で、ホテルに滞在。私と同い年くらいに見えるが君は……いや、まずは助けて貰ったことへの礼が先か。改めて助けてくれてありがとう。私は夏油傑。夏の油と書いてゲトウだ」

 

 一般家庭の出と原作では語られていたが、とてもそうは思えないくらい丁寧で礼儀正しい。この歳くらいの小学生って、もっと無邪気なクソガキなんじゃないのか? 

 

 俺の周りの同世代なんて、名家の坊ちゃんのくせにドブカスとノンデリしか居ないんだけど。やっぱ呪術師の家系ってろくでなししか居ないのかなぁ。

 

「それで、君は一体何者なんだい? 私の足の負傷も触れただけで治してしまったし、どうやら『彼ら』も見えている。君の言う呪術師とは、一体何なんだい?」

「そこはまぁ、お互いの認識を擦り合わせながらの方が早いだろ。とりあえずそっちは何を知ってる?」

 

 彼の話によれば、生まれつき呪霊を見ることが出来ていた彼はこっそりと呪霊から周りの人間を守っていて、今日のように山奥に隠れ潜み獣のように人里に降りてきては人を襲う呪霊の討伐の為に山に入ることもあったらしい。

 

 一般家庭から術師が生まれることはたまにあるとはいえ、なんというアグレッシブさ。連れている呪霊も2級相当になりそうなものも見えたし、独学にしては呪力操作もかなり上手い。さすがは未来の特級と言ったところか。

 

 とりあえず俺は呪術界のクソっぷりは伝えないようにしつつ、呪力や呪霊といった基礎的な概念の話を彼にしてみることにした。

 いきなり言われたら突拍子のない話だと思われるような内容も、夏油は自分で体験している分、あっさりと理解してみせた。

 

「つまり、呪霊の発生の抑制と一般人を守る為に、君達のような呪術師という職を生業にする人物がいるということ、か」

「そうそう。下手に呪霊の存在を公表すれば、一般人の呪霊への畏れがさらに強大な呪霊を生んでしまう」

「私には、その術師の才能があると?」

 

 そう口にする夏油の様子は、なんだか嬉しそうでもあった。

 生まれつき変なものが見えて、誰にもそれを理解して貰えず今日までずっとひとりで呪霊と戦っていたのだ。

 

 自分が一人ではないとわかったその喜びは、生まれつき自分が術師であると自覚できていた俺達では想像がつかないものなのだろう。

 

「しかし君の話だと呪霊に対する術師の数は常に不足していることになるはずだ。では、私を助けたのはスカウト……ということになるのかい?」

「いや、俺はあくまでちょっと名が知れてはいるけれどその家系の一人でしかない。たまたま仕事中見つけただけで……」

「けれど、君は私の名前を知っていたじゃないか」

 

 あー、そういやね。

 初対面なのについ嬉しくなって口にしちゃったけど、冷静に考えたらおかしいもんね。

 

「君が呪霊を取り込んで操れるように『術式』については説明したでしょ? 俺の術式は、そっちの考えていることをある程度読み取ることが出来る。だから名前もわかったんだよ」

「……なるほど。術式というものは私が思っているより多種多様なのか」

 

 誤魔化せた? 誤魔化せたっぽいな? 

 ここまで夏油が信じてくれているとはいえ、彼とはできるだけ友好的な関係を築きたいから、変に疑われるのは避けたいんだよね。

 

 何せ、俺がこの先も生きていくためには彼の協力が必要不可欠。高専入学まで待つ必要があると思っていたが、まさかこんなところで会えるなんて。

 

 彼が見つかっているのならば、後は真人の先代にあたる呪霊さえ見つけてしまえば俺の寿命問題に一つの解決の糸口が見つかる。

 

 内心一人で俺がはしゃいでいると、夏油の視線がさっきからチラチラと俺の顔と床を交互に見ていて、何やら落ち着かない様子なことに気がついた。

 

 

「どうかした? トイレなら部屋を出て右に曲がって……」

「いや、そうでは無いんだ。ただ……安楽さんはとても美人だから、目のやり場に困るというか……」

「……………………へ? ちょっと、どういうこと?」

 

 

 夏油の口から出てきた予想外の言葉に、俺は思わず聞き返してしまった。

 

 

「あくまで客観的な評価だけれど、安楽さんは同年代の女子とは比較にならないし、テレビに出るようなトップスターと比べてもすごく美人だと……」

「そう、だよな。そうなんだよ! 俺はめちゃくちゃ可愛いんだよ!!! そういえばそうなんだけどね!? わかってたんだけど!」

 

 夏油の困惑という感情を通して、彼の言葉に嘘がないことを感じ取る。

 

 俺の周りの男子は五条の坊ちゃんと禪院のドブカスだし、大人の術師たちも俺の事を『女』か『孕袋』程度にしか見てなくて、自分で自分に言ってないとたまに忘れそうな時があったけど。

 

 そう! 

 俺は美少女なんだよ! 

 夏油って才能あるし、どうせ五条とか直哉とかと同じ反応なんだろうなぁみたいに諦めてたけど、もしかしてさっきから俺に見惚れてちらちら見てたってこと!? 

 

 それって典型的な美少女との対面時の反応じゃん。

 もうこの反応を見れただけでも、この街に来てよかったと思える。もしかして非術師はみんなこんな反応してくれるのかな? なら俺もう呪術師やめようかな。

 

「ありがとう夏油……俺はその言葉に救われたよ……お前は人を救える人間だ」

「個人的な感覚だけれど、君ほどの女性の美しさを認めないのは、それこそ照れ隠しで強い言葉を使っているだけ、性根がねじ曲がってるかのどちらかだろう」

「後者だろうね、うん……それはそれとしてもっかい俺の事可愛いって言ってくれない? 好きとかでもいいよ?」

「すまない。好みじゃないんだ」

 

 

 …………ん? 

 

 

「え、なんて?」

「君はすごく美人だと思うし、恩人でもあるけれど、それはそれとして容姿は好みでは無い」

「ははは、ご冗談を。こんなに可愛い俺が好みじゃない? もう好みの段階から変えていいんだぜ?」

「遠慮しておくよ」

「………………ギーッ!」

「うわっ」

「お嬢様!?」

 

 あまりのショックに俺は奇声を上げながらその場に倒れてしまう。

 一拍遅れて部屋に入ってきた千春は、極めて慣れた手つきで俺に鏡を見せてくる。あら可愛い。

 

「なんですかこれ、呪術的な何かですか?」

「お嬢様は自分に惚れない同年代の異性を認識すると、大嫌いな殿方達を思い出して咄嗟に自己防衛の為に無心で叫び続けるんです」

「そ、そうなんですか……。呪術師というのはやはり大変な職業なんですね」

 

 どうやら夏油も、俺の美しさのおかげで呪術師という職業の大変さを知ることが出来たようだった。

 

 しかし、こいつもやはり特級側の人間。

 俺が可愛いとわかっていながら一目惚れしないなんて、東堂の言う通り女の好みの回答が面白いやつは強いのかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「送ってくれてありがとう……と言いたいけど、帰りは君一人になるのかい? 一体くらい呪霊を君の護衛に回した方が……」

「そこは心配するな。俺はこう見えて今の夏油よりは強い」

 

 そういう彼女の言葉は嘘には聞こえなかった。

 しかし、そうは言っても彼女は見た目はどこにでもいる……と言うにはあまりに整いすぎた美しい容姿をしているが、少なくとも女の子にしか見えない。

 

「とりあえずあと一週間くらいこっちに滞在することにしたから、まだ聞きたいこととかあったら明日から……」

「……すまない。最後にこれだけ聞かせてくれないか? 君はなぜ呪術師をしているんだい?」

「えー、人を救ったり、強い俺って可愛いじゃん?」

 

 ふとこぼれてしまった私の言葉に、初めて会った同じ世界が見える人は、驚く程に俗物的な理由を口にした。

 

「いやまぁ? 俺ってめちゃくちゃ可愛いじゃん」

「そこは前提なんだね……」

「事実だし。元々俺はそういう家に生まれたから、ってのもあるんだけど……」

 

 少し不安があった。

 私は、呪霊を祓う事を良い事だと内心思っていた。それをすることで誰かが救われると、私のやったことは誰かに認めらるような事だと。そう思いたかった。

 

「何か意味ある事を成せた自分は可愛いと思える。そうやってさ、自分が生きることを自分で肯定する為に、俺は術師やってる、のかもしれない」

 

 善性ではあるが、正義とは言えない動機。

 非人間的なまでに美しいのに、どこまでも人間臭い。生まれて初めて出会った、不思議な女の子。

 

 

 そんな子が、生きることを肯定する為に戦っている。

 私のように自分ができる範囲のことでしかやってこなかった人間にも、呪霊が恐ろしい存在だということくらいはわかっている。

 

 怪我をしていた私を助けてくれて、こんな俗物的で無邪気な、容姿以外はどこにでも居そうな女の子が、戦っている。

 

 彼女の代わりに私が。

 彼女のように私が。

 

 誰かを助けることはきっと、私自身を肯定することが出来る。

 

 

「君は、良い人だね。安楽さん」

「え? 顔が良い?」

「……あぁ。そう言ったんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし私はすぐに知ることとなる。

 彼女は、私なんかよりもずっと呪いに浸かりきっている人間だということに。

 

 

 

「そうだ。お近付きの印にこれをやる」

「これは……ミニチュアの葦船?」

「小学生がよくパッと葦船出てくるな……。とりあえずこれは呪具って言って、呪力が込められていて特別な能力のある道具の事だ。まぁ俺からのプレゼントだ。名前は『彼岸の葦』」

 

 プレゼント。

 その単語に何となく嬉しくなって、私がその呪具に触れる手には力が篭もる。

 

 

「───ッ!?」

 

 

 それによって、内部に澱んでいる呪力に気づいてしまった私はその呪具を反射的に投げ捨ててしまう。

 

「……ごめん、そんな嫌だった?」

「あ、いや、すまない。しかしその呪具とやら、なんというか……」

 

 

 

「ああ。中に一級呪霊3体、準一級呪霊11体、二級呪霊6体を捕らえてある」

 

 

 呪霊は恐ろしい存在。特に一級ともなれば何人もの人間を呪い殺すような災害であり、対処出来る人員すら限られている。

 

 それを教えてくれたのは、彼女だったはずなのに。

 

「領域使えるやつの思考読みたくて集めてたんだけど、よくよく考えたら夏油が持ってた方が術式的に意味あるもんな。味はまずいだろうけど、弱ってるから簡単に取り込めるだろうし好きにしてくれ。その場で取り込めない呪霊を後で取り込むのにも使えるだろ?」

 

 まるで小銭でも貸すかのような気楽さで、彼女は私にそれを渡してきた。

 これの危険さを理解していない、というわけでは無いしこれを捕らえるのに彼女がかけた労力も想像が付く。

 

「これを、何故私に?」

「その方が、たくさんの人が救われると思うからな。───俺も含めて」

 

 

 夜の闇の中でも、自ら輝くかのようにその存在を主張する白の髪。

 

 彼女は一体何者で、彼女が住む世界は一体──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏油と出会った次の日、俺の下には一通の手紙とそれに伴う情報が届けられた。

 

 人間の変死と、それに伴う呪霊の調査。

 ちょうどこの街で見つかったとある変死体。

 

 

 死因──────頭部変形による脳圧上昇、呼吸麻痺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








夏油傑
たった一人の親友に会う前の姿。
御三家の坊ちゃん達と比べるとはるかに人が出来ている為勘違いしてしまうことがあるが、普通におかしい側の未来の特級術師。安楽のことは、どう思えばいいのか困っている。


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