TS超絶美少女呪術師が五条悟を倒そうとする話   作:ちぇんそー娘

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14.美少女の呪い

 

 

 

 

 被害者の遺体の異様な変形っぷりを見て、俺は確信していた。

 

 この死体は間違いなく術式『無為転変』によるものだ。

 偶然にしては出来過ぎている。だが、運命すらも俺のことを愛していると言わんばかりに、必要なパーツが揃った。

 

 無為転変を所有する呪霊に、呪霊操術を所有する人間。

 夏油に協力を仰いで呪霊を捕まえ、無為転変で俺の脳の形を『覚ノ改』に合わせて貰えれば、俺の寿命問題が解決する。

 

 問題はこの犯人が真人の先代にあたる人の呪霊だったとすれば、階級は特級になるだろう。

 

 俺の立場は表向きには3級。実際は特別1級の直哉と同格くらいには考えて良いだろうが、特級の相手と言うのはさすがに何が起きるのか分からない。

 

 さらに言えば、もしも本当に無為転変を相手が持っているなら、魂を捉えた攻撃以外は無効化。つまりこちらの攻撃は一切通じないはずだ。

 

 反転術式のアウトプットと言う、呪霊に対する必殺の攻撃があるとはいえ肉弾戦メインの俺には厳しい相手。

 

 

 だがコイツを捕まえなきゃ俺は25歳で死ぬ。

 しかも他人の呪いの声に脳と心を蝕まれ、狂い果てて死んでいく。

 

 ……そんな可愛さの欠けらも無い最期は絶対ごめんだ。

 

 あと、ここでもし夏油が無為転変持ちの呪霊に殺されたりでもしたら、将来的に五条悟に外付けの判断回路を組み込んでくれる人間が居なくなってしまう。

 どの道今回の事件は放っておけないし、俺がいない時に何があってもいいように夏油にはもう少し強くなってもらいたい。

 

 そもそも夏油だって俺の事興味津々のはずだしね。まず間違いなく、この街に滞在中は向こうから……。

 

 

「すまない。午前中は学校があるから、呪術に関する話は午後からでいいかな?」

 

 

 とか思ってたら、そんな正論をぶつけられてしまい、俺は一人街を練り歩いて呪霊の気配を探っていた。

 

 よくよく考えたら、そりゃあ10歳の少年は平日の昼間は学校に通っているに決まっている。

 呪術師の、特に御三家の家系の奴らなんて裏であれこれやってるのか学校に通ってるという方が少なく、俺もその一人だ。

 

 ぶっちゃけ前世ではほとんど通えなかったから、学校とかは通ってみたい気持ちもあったりしたけれど、呪術師としての鍛錬と学業の両立はあまりに厳しい。まぁ俺は千春というめちゃくちゃ優秀な家庭教師がいたから良いのだけど。千春ってば、たまになんかすごい難しそうな数式解いてたりするし。

 

 ……いや、この場合は生まれてからずっと見えていたものの正体を知ったのに、次の日その調査よりも学校を優先する夏油がおかしくないか? 別に小学校なんてもうすぐ春休みだし、休んでいいだろうに。

 

 

 そんなわけで、夏油が学校から帰ってくるまでは街でブラブラ呪霊探し。

 しかし俺のような可愛い美少女はどこにいても目立ってしまう。加えて、平日の昼間から小学生の女児がほっつき歩いていると、ありがた迷惑なことに警察が呼ばれてしまうのでコソコソと人目を避けてである。

 

 ……避けて、ね。

 下手に目立って警察とか呼ばれると面倒だし、ちゃんと避けて避けて。

 

 窓の皆さんとか、千春に迷惑をかけるのもいけないししっかりと目立たず……。

 

 

 

 

 

 

「ねぇあの子……中学生? めちゃくちゃ美人じゃない?」

「モデルさんか何か? もしかして何かの撮影?」

「ちょっと幼いけど高校生とかじゃねーの? やば、顔ちっさ」

 

 

 

 いやー!!!! 

 気持ちいぃー!!! 

 

 夏油で学んだけれど、呪術界がおかしいだけでやっぱ俺の美貌は一般人から見たら10人中10人が振り返るんだよね。街をねりねりと練り歩くだけでもうみんな俺の方を見てヒソヒソと褒め言葉を漏らしている。

 

『顔小さすぎてムカつくわ死ね』

『ぶち犯してぇ』

『足の長さ自慢してね? 腹立つ』

『暇そうでいいな、頭も軽そうだし顔がいい女ってホント癪に障る』

 

 いつもなら顔を顰めたくなる負の感情の心の声も、俺の美貌への嫉妬や羨望、下心から来る気持ちだと思えば何とか受け入れられるし、むしろ気持ちいいくらいだ。何せ俺は美少女なのだから嫉妬されて当然。それくらいの声、全然気にならない。

 

 非術師の皆さんありがとう。君達が俺を可愛いと思ってくれる限り、俄然守る気が湧いてくる。俺を可愛いと思ってくれる人間を傷つけるやつはたとえ誰であろうと許さねぇ。

 

「そこの君、ちょっといいかな?」

「はい、美少女です」

 

 そんな超絶美少女に声をかけてくる勇気ある男性が現れる。

 もしかしてナンパか? 一体俺ほどの美少女に声をかけてくるなんて、どれだけ勇気のあるナンパなのだろうか。

 

 

「君、幾つかな? 学校はどうしたのかな?」

「…………ッス」

「その髪、染めたりしてる? 学校は? ご両親は?」

 

 現れたのは、市民の安全の為に身を粉にする国家権力の方々であった。

 

 冷静に考えたら、優秀な日本の警察は平日昼間にブラブラ出歩いてる、真っ白なんて派手な髪色の小中学生位の女の子を見つけたら、美少女云々以前に不良だって思うよねそりゃ。

 

 ここで逃げるのは簡単だが、これからもこの街で呪霊捜索をする手前、あまりことを荒立てたくは無いし、これが千春にバレたら怒られるのは目に見えている。

 

 ……いや、怒ってくれるならそれもいいかもしれない。

 いい加減愛想でも尽かされたら、それはちょっと、かなり辛い。

 

 なのでとにかく穏便に済ませたいのだが、警察に詰め寄られるなんて前世でも今世でも初めての経験で、どうすればいいのか分からない。

 

 

「幸子〜! 幸子! いたいた。もう、私から離れちゃダメっていったじゃん!」

 

 

 どうしたものかと頭を悩ませていた俺の腕が、突然誰かに引っ張られる。

 

 明るい色に染められた髪の毛と、短いスカート。

 ある意味でただ美少女なだけの俺よりもずっと目立つ風貌の、俺には劣るけれどかなり美人で派手な女性が、いきなり俺の腕を引っ掴んできたのだ。

 

「え、誰……俺幸子じゃ……」

「めんどいのはいやでしょ? 話合わせて」

 

 小さな声でそう耳打ちすると、派手な女性は警察相手にペラペラと姉だの病院だの迷子だの、それっぽい言葉を並べ立てていく。

 初めは警察も疑いの目を向けていたが、少し話せば女性に押される形で諦めるように身を引いていった。すごいな、これがコミュ力ってやつなんだろうか。

 

「えっと、ありがとうございます」

「最近治安悪いから、この辺りは警察多くてうろつくのは警戒しないと。ちょっと向こうでお話しない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、なんで助けてくれたんですか?」

「だってキミ超可愛いじゃん! アタシ、可愛いモノとかカッコイイモノがこの世で何よりも大好きなの!」

「──────わかる」

 

 人目につかない裏路地で、俺は女性と心を通わせていた。

 俺の可愛さを理解している人間に悪いやつなんて直哉くらいしか居ない。そしてアイツはあらゆる状況において例外処理していいタイプの生き物だ。

 

 わざわざ警察から助けてくれるなんてリスク冒してる時点で、良い人なのはわかるしね。俺の術式もこの人の心の声は全く読めないあたり、悪意や敵意を抱いて俺を騙そうとしているわけでもなさそうだ。

 

「アタシは真凜(まりん)って言うの。職業はまぁ……秘密ってことで。そっちは?」

「恋鈴です。職業は……まぁ探偵で」

「探偵!? やばコナンくんじゃん! ていうか恋鈴って名前いいね、可愛い!」

 

 呪術師という職業の人間は、負の感情を扱う手前なんと言うか、根暗が多い。なので真凜みたいなグイグイくる派手な人間は滅多に居ない。

 

「探偵ってことはやっぱアレ? 噂の変死事件の謎を調査とか!?」

「そんな感じですね」

「へぇ〜。小学生探偵って本当にいるんだ。なんだか可愛いなぁ〜」

 

 子供の冗談だと思って乗ってくれているのか、それとも本気で信じているのか。

 箸がころがっただけでも楽しそうなくらいのテンションの高さを見るとどっちでも有り得そうだ。

 

「……恋鈴ちゃんが事件解決したりしたら、アタシもテレビ出れたりすんのかな?」

 

 さすがに探偵は冗談のつもりで言ったのに、この人本気で信じてないか? 

 深入りしてこないだけでもありがたいのに、こんな都合が良い万物万象に優しそうなギャルが、2000年代から存在していいのだろうか。

 

「よしよし。決めた。アタシ、恋鈴ちゃんのこと気に入ったし助けてあげる!」

「いや、そんないいですよ。助けてもらっただけでもありがたいのに」

「いいのいいの。恋鈴ちゃん可愛いでしょ? さっきも言ったけど、アタシは可愛いモノとカッコイイモノが好きなの」

 

 優しくして貰えるのはありがたいのだが、何か代わりになるようなモノもなければ特技もない。本当に今出せる対価なんてめちゃくちゃ良い俺の面を見せてあげることしか出来ないのだが……。

 

「心配しないでって。これでもアタシ、この街のことはすっごい詳しいし、実はあの変死事件についても知ってることがあってね……」

「え、ホントですか!? 出来るならそれについて詳しく……」

 

 変死事件という単語につい食い付いた俺の手を、真凜は優しく握りしめてくる。

 

「人間がいっちばん怖い他人って、どんな人だと思う?」

「急に何の話ですか?」

「アタシが可愛いモノとカッコイイモノが好きな理由と……変死事件の秘密かな?」

 

 真凜の掌が、俺の掌と重ねれられる。

 その瞬間、悍ましい量の呪力の流れが何処からか迸った。

 

 真凜は間違いなく非術師だ。

 そもそも俺に悪意を向けているのならば術式のせいですぐにわかるし、彼女には大した呪力もない。

 

 つまり、真凜以外の誰かが俺を攻撃してきている。

 反射的に真凜を守るように周囲に警戒をしようとした俺に彼女は。

 

 

 

「──────無為転変」

 

 

 

 その術式の名を、口にした。

 

 

 

 

 

 

 

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