TS超絶美少女呪術師が五条悟を倒そうとする話   作:ちぇんそー娘

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15.人の呪い

 

 

 

 

 

 人が他者に向ける畏れとは、様々なモノがある。

 

 怒り、恨み、不安。

 そして、嫉妬。自分と他者を較べて、相手が自分より優れている所を見つけるとどうにかしてそれを下げようとし、自分より劣っている点を見つければ優越に浸る。

 

 偏に人に向けられる畏れと言っても様々なモノがある。

 だから、呪いが廻るとしても同じ形で顕現することは無い。それでも変わらないことは──────その本質は結局呪いであるということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………アレ?」

 

 真凜の手を払い除けて、俺は急いで彼女と距離をとる。

 

 同時に、あと一瞬それが遅れていたら死んでいたことを感じ取って呼吸が荒くなる。本当にやばかった。完全に無警戒だったし、この()()()が間に合うかもギリギリのラインだった。

 

「いやいや。今の絶対キマってたでしょ。なんで()()()()で済んでるの?」

 

 ニヤつきながら真凜は俺の右手を指さす。

 

 小指がねじ曲がり、萎縮し感覚が途切れている。術式『無為転変』による影響だろう。反転術式でも治せるようなものでは無いので、仕方なく呪力を込めた手刀で切り落とす。

 

 あの野郎、俺の可愛らしいお手々を傷物にしやがって。絶対に許せねぇ、全身傷物にしてやる。

 

 いやそれよりも、今は真凜の正体だ。

 さっきまでは呪力のほとんどない人間だったはずなのに、今俺の前に立つ彼女は、何をどう見ても呪霊の反応だ。それに合わせて先程まで聞こえもしなかった心の声も聞こえるようになっている。

 

 まんまと騙された俺に対する嘲笑。

 確実に不意を突いたはずなのに殺しきれなかった疑問。

 そして、人類全てに対するこの呪霊が持つ『殺したい』という本能。

 

「お前、呪霊じゃないのか?」

「呪霊だよ、見ての通り。それとも恋鈴ちゃんって術師みたいだけど、呪霊と人間の区別もつかないほどに大した事ない?」

 

 挑発。

 心が読めてしまえば、一々相手の言葉に踊らされることもない。そして、質問を投げかけてその答えを隠そうとも、隠そうとした時点で『隠したい』という感情からその答えを俺は読み取る。

 

 

 術式はやはり『無為転変』。

 相手の魂に直接干渉する術式であり、どうやら真凜は真人と比べて自身の魂に関する練度が高いようだ。

 

 彼女は呪霊であるはずなのに、警察から俺を助けてくれた時には非術師にも視認出来ていた。

 

「自らの魂の形を、人間に偽装してた、か」

「まーそういうこと。正確には見た目だけだけどね。そうしてる間は術式も使えないけど、恋鈴ちゃんみたいな術師でもアタシのことをただの人間だと思っちゃうの。そうして油断したところを」

 

 タッチ、と彼女は文字通りの魔の手を翳す。

 術師の殺し方を心得ていて、今の会話の中にも術式の開示を織り交ぜている。

 

 真人は生まれたての呪霊だと言われていたが、彼女は恐らく違う。

 殺し慣れている。術師が行方不明になることは珍しくないが、既に結構な数の術師が彼女に殺されていると見て間違いないだろう。

 

「って、んー? 変だな。開示したのに出力が底上げされてる感じがしない。これって、手の内を晒すことがデメリットとして機能してないってことだよね。……恋鈴ちゃんの術式、テレパシーの類かな? ってなると、なんで一発目の無為転変をスカせたのか謎だけど」

 

 しかもコイツ、勘も良いと来た。

 生け捕りしたいけれど、下手に手を抜いたらどの道ここで殺される。

 

 そして、今の彼女の殺意……つまり俺を殺す為にとるであろう行動が幾つも脳に流れ込んでいるが、一つ不安要素がある。

 

 一番最初の攻撃。

 触れられた手に無為転変をされた時、悪意を一切感じとれなかった。

 

 現在の彼女は呪霊としての性質を表に出しているため、そもそも呪力で構成されている呪霊の思考は俺には筒抜けになる。

 しかし、魂を人間に偽装された場合俺は多分彼女の思考を読み取れなくなる。

 

 本能、悪意も敵意もない純粋な行動故なのか。

 彼女の行動には悪意が宿っているから行動を読めているのではなく、彼女が悪意そのもので構成された呪霊だからこそ術式の効果対象になっている。

 

 

 とにかく、今やるべきことは一つ。

 

 

 

「とりあえず何度も触って、すぐに可愛くしてあげればいっか」

「一回効かなかった時点で察せよ。可愛い俺をこれ以上可愛くする方法なんてねぇんだよ」

 

 

 目の前の敵を一度動けなくなるまでぶちのめすことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なるほど。やっぱりテレパシー系なんだろうけど、これは思ったより数段……厄介!)

 

 背部から生やした触腕を鞭剣のようにしならせ、周囲に死をばら撒く真凜に対して、そのうちの一本を蹴り飛ばして連鎖的に安全地帯を作り出した恋鈴の様子を見て、真凜の口元はニヤついていた。

 

 さすがに今のは攻撃を避けるなんてレベルじゃない。

 こちらの攻撃の軌道から何から何まで、全てわかってなければ出来ない芸当。

 

 読心の精度はかなり高い。

 だからこそ、最初の『無為転変』をギリギリで逃げたとはいえ指を二本破壊される程度には食らったことと、そもそもそうなるまで心を読まれていなかったかのような状態なのが疑問だ。

 

(呪霊相手にしか効果がないから、魂を人間に偽装していたアタシには利かなかった? なんにせよ、無条件で全ての心を読み取れるわけではなさそうだけど、全部読み取られる前提で動いた方が良さそうかも)

 

 真凜は一目で恋鈴の魂から、彼女の実力を見抜いていた。

 

 年齢はもうすぐ10歳。呪術師としても幼い年齢だが、それに対して戦闘経験はかなり豊富で呪力の扱い方も明らかに今まで出会った術師とは格が違う。

 

 術式『無為転変』の強みは大きく分けて三つ。

 一つは魂を変形させることによる防御不能、効果大の攻撃。ただしこれは原型の掌で触ることが条件。故に、行動が読まれている現在ではこの攻撃を当てることは難しい。だが逆に言えば、この攻撃を命中させさえすれば勝負は決する。

 

 二つは、自己変形の自由度。

 自己の変形に関してはリスクがなく、自由自在の変形による攻撃は予測不能──────だが、これも攻撃が読まれているとなれば効果が薄い。変形による予測不能の動きも、攻撃を考えている思考そのものを読まれてしまえば予測不能ではなくなってしまう。

 

 三つ目、魂の自己補完による無敵性。

 魂が肉体に先立つ、という術式の世界観によって魂が傷つかない限りは幾ら肉体を傷つけられようが、魂が無事であるという事実により肉体も自動で再生される。

 これに関しては恋鈴の術式が『心を読む』モノである以上、突破手段はないと真凜は考える。

 

 しかし、ここで違和感。

 

 恋鈴は読心でこの事実も知っている可能性が高いとなれば、これは知っているはず。

 

(なんで逃げずに向かってくるのかな? アタシを殺す算段が何かあるとか?)

 

 最初の一撃。

 本来ならあそこで魂の変形によって即死させるつもりだったのにそれが出来なかった。真凜は油断せず、肉体の形をまた変形させる。

 

「っ、お前」

「気づいちゃった? でも、気づかれても問題ない攻撃しか通じなさそうだもんね」

 

 術式の解釈はその本人の性質がにじみ出る。

 真凜の無為転変の解釈、術式精度は己の魂の操作の精密性、美しさに寄っていた。

 

 コンクリートの隙間を縫うように、色を合わせて見えない肉体の結界を周囲に作り出し、それを同時に膨張させる。

 槍のように突き出したそれは、狭い路地裏のあらゆる方向───ただし、上方を除く方向から襲い掛かる。

 

 

 知っていても回避、防御の間に合わない全方位からの攻撃。

 そして避けようとして残した逃げ道を使えば、そこに立ち塞がって直接体に触れる。

 

 

「さぁ、小手試しだよ。可愛く避けてみてね」

「……直哉じゃねぇけどさ。回りくどい方法ってだせぇと思うんだよ」

 

 直哉? 誰? 

 なんか名前から性格悪そうだけど。

 

 いや、それよりもなんで今そんな話を? 

 

 困惑する真凜を他所に、迫り来る攻撃を恋鈴は避けようともせず話を続ける。

 

「強いやつって結局真正面からぶん殴って強いのがベストだろ。そもそもそれを満たせなきゃ五条悟とかに絶対勝てないし」

「ほんとに何の話?」

「お前より俺が可愛いって話」

「そう。じゃあもっと可愛くしてあげる」

 

 大口を叩くだけの力量は果たしてあるのか。

 殺到する槍の捌き方を観察しようとする真凜に対して、恋鈴は本当に一歩も動かず、自らに迫る槍の一つに掌で触れる。

 

 

 

 

「──────術式反転『覚露(おぼろ)』」

 

 

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、真凜の肉体がフリーズした。

 

 何が起きたかも分からない。

 切り分けていた肉体を含めて、真凜が『真凜』だと捉えているモノの全ての動きが停止する。

 

 時間にして1秒にも満たない空白の時間。

 

 その僅かな時間で、恋鈴は槍の雨を掻い潜り真凜の本体の顔面に拳を叩き込んだ。

 

「ッ!?」

「まずは可愛い俺の小指の仇だ」

 

 魂を捉えた攻撃以外は通用しない真凜の肉体が、傷つき崩れ落ちる。

 

 反転術式。

 呪力と相反する正のエネルギーをぶつけることにより、呪力そのもので体を構築する呪霊の存在そのものを削り取る攻撃。

 

 攻撃そのものは魂を捉えていないために部位を再生することが出来るが、一撃で核を潰されればそれで終わり。加えて、正のエネルギーによって呪力を相殺され消費させられる。

 

「咄嗟に変形させて(タマ)潰されるのは避けたか」

「───そっちこそ、お腹痛くないの?」

「必要経費だ。可愛さを維持するためなら化粧品買ったり、食生活に気をつけたりすんだろ?」

「魂の美しさの維持に、そういうのは必要ないかな」

 

 恋鈴の脇腹から血が滴り落ちる。

 顔面を殴り抜いた時に、カウンターで脇腹を触られた。恋鈴は自身の精神を術式の対象範囲とすることで、『触れられた』と自分が考えた瞬間に呪力でその部位を削ぎ落としていた。

 

 無為転変による変形が、致命の部位まで伝播する前に切り落とす為の対抗策。

 

(やっぱりだ。ほかの行動は筒抜けなのに、『無為転変』の対象を俺にしようとした攻撃は、咄嗟のだと読み取れない。アイツ、変形に関しては本当に一切悪意を抱いてない!)

 

 だがこれは同時に、恋鈴は他の攻撃ならばまだしも、『無為転変』による魂の変形を目的とした攻撃を読み取れないことを意味していた。

 

 恋鈴の攻撃手段は近接のみ。

 しかし肉弾戦では相手の行動が読めなくなると言うことは、接近には多大なリスクが伴う。

 

「───俺の術式反転の効果だ。手で触れた相手を0().()7()()()()()()()()()

 

 それでも、術式の開示をしながら恋鈴は真凜との距離を詰める。

 

 確かに接近は恋鈴にとってリスクが高い。

 だがそうしなければ勝ち目がなく、それは真凜にも同じこと。

 

(順転が読心なのに、反転が行動の阻害? 意味わからないけど、近づかないことには始まらないか)

 

 無為転変による接触攻撃以外の攻撃は読まれてしまう。

 先程のフリーズ攻撃は切り離していた肉体も停止していたことから、無駄に切り離したり的を広げたら反転術式により致命傷を追うリスクの方が大きい。

 

 間合い、攻撃範囲。

 安全というメリットを捨てて、原型での格闘戦でなければ削り殺される。

 

「アタシは、可愛いモノが好き。何よりも可愛くなりたい。可愛いを、極めたい。誰よりも優れたモノになりたいってのは、───人間(オマエラ)の本質でしょ?」

「別に。俺今でも世界一可愛いだろ。認められない奴らがおかしいだけで」

「えぇ……。人間怖っ。……ま、そういうところも可愛いけどね」

 

 

 やはりやることは変わらない。

 目の前の敵を、まずは確実にぶちのめす。恋鈴と真凜、この二人はお互いにとっての天敵であり──────。

 

 

 

((コイツ、やっぱ顔がいいな。でも(アタシ)の方が可愛いでしょ))

 

 

 色んな意味で乗り越えなければならない、ライバルなのだ。

 

 

 

 

 









真凜の強さは渋谷事変真人>真凜>メカ丸戦真人くらいだと思います。
遍殺即霊体を除いた自己変形に関しては真凜の方が強い部分がありますが、他者の改造や改造人間を使った技の多くは真凜では再現できません。キモイので。


術式反転『覚露』
覚ノ改の術式反転。触れた相手の行動に条件を課して、失敗した場合0.7秒行動不能にする効果があるらしい。

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