TS超絶美少女呪術師が五条悟を倒そうとする話 作:ちぇんそー娘
主人公は五条悟に勝てない以外スペックは結構高いです。
次の日から俺はとにかく走り続けた。
家の敷地内をとにかく走り続ける。倒れそうになる身体を呪力で無理やり動かし、呪力が切れそうになれば五条悟の顔を思い浮かべて無理やり走る。
「恋鈴お嬢様……どうして貴方はそんなに……」
「はぁ……ひゅぅ……それは、ね……俺は……可愛いから可愛いので……」
「いえ私はどうしていつもは聡明なのに容姿の話になると知性が失われるのですかと聞こうとしてました」
道の途中でぶっ倒れた俺を回収してくれた使用人の千春は、なんかめちゃくちゃ失礼なことを言っていた気がするけれど酸欠の脳はいまいち情報を処理しきれなかった。
さて、前回俺が五条悟に負けた理由は極めて単純だ。
俺の術式、『
非常に強力な術式で、明治に産まれた先代はこの術式で家を大きくしたとか。
しかしこんなに強い術式でも五条悟に勝てない理由は、ただ一つ。
無下限、突破できねぇ。
この術式は、単体で無下限呪術を突破する性能を持ち合わせていないのだ。
五条悟の無下限呪術は、なんやかんやで攻撃が永遠に五条悟に届かなくなってしまう。それを突破できる攻撃、加えてふわふわ飛んだり遠距離から引き離し攻撃で引き撃ちしてくるあいつに接近戦を強いる戦略が必要になる。
しかし、攻撃の方はどうにもならないとして、接近戦の方については算段がある。
「呪力で強化した体で……飛んだり跳ねたりすれば、飛べても関係、ない!」
「お嬢様ってやっぱ馬鹿ですよね」
千春はもうオブラートの欠けらも無いことを言ってくるが、ここで大事なのは俺は『美少女』だということだ。
これは何も本当に自意識過剰ではなく、俺の体は驚く程に完璧なのだ。
鍛えれば鍛えるほど、綺麗に筋肉がつくし体力も上がる。手足の長さも素晴らしく、それでいて美しさを損なわない。
肉体のスペックで言えば、俺は7歳ながら20歳の千春と腕相撲しても余裕で勝てるくらいには優れた力を発揮している。
親戚のおじさん達からも「恋鈴ちゃんってそろそろ中学生だっけ? え、7歳?」とか言われるくらいには体ができあがりつつあった。
結局呪術廻戦で一番重要なのはカラテ。
カラテが強ければどうとでもなる。鏡に映る自分の肉体美に思わず惚れてしまいそうになりながら、俺はそう思った。
「よし、千春。もう一回五条悟に会ってくる」
「やめてください。お嬢様がまた顔の形変わるまで殴られたら今度こそご当主様がショック死します」
「もう挑戦状出しちゃったんだけど」
「絶対却下されますよ」
「ようブス、来てやったぜ」
「え」
突然現れた五条悟に、千春はショックで泡を吹いて倒れてしまった。
実は手紙出したの、もう数日前のことなんだよね。絶対止められるから黙ってたけど。
と言うか、ノリノリで会いに来るあたりさすが最強と言うべきメンタルしてるな。
俺だったら前にボコボコにした女の子ともう一度会うなんて気まずくてできないよ。
「あんだけボコボコにされたのにまた挑んでくるなんて、お前もしかしてアレなのか? マゾってやつ?」
「俺は正直どちらかと言うとマゾなんだけど、どっちの方が美少女っぽいと思う?」
「質問に怪文書で返すのやめてくれねぇか? ……ま、さっさとやろうぜ」
「あぁ……今度こそその綺麗な顔を泥と鮮血塗れにしてやるよォーッ!!」
「で、今度は足の骨折られてこうなったと」
「腕の骨も折られちゃったんだよね。千春、あーんして」
「正直反省して犬食いくらいして欲しいんですけど、当主の娘にそんなことさせたら立場上問題があるのでしてあげますね。はいあーん」
千春にアーンして貰ってお粥を食べながら、俺は今回の戦いの反省をする。
身体能力と呪力の扱いに関してレベルアップさせるという判断は間違いではなかった。圧倒的肉体美とスペックを誇る俺の素早さに、五条悟は目を剥いて驚いていたし、無下限による引き寄せも座標を上手く合わせられていなかった。
そう、スピードに関しては俺は五条悟を翻弄してみせたのだ。
そしてその速度を活かしてヒットアンドアウェイでジワジワとやつの顔が焦り、歪み、苦しんでいくのを眺めてやろうと思ったのだが……。
「無下限を超える方法がないの、忘れてた……!」
「もう馬鹿としか言いようがないですね。と言うか馬鹿にも失礼ですよ」
千春がもうただの罵倒でしかないことを言ってくるけれど、こればっかりは全く以ってその通りなので何も言い返せない。
そう、俺は鍛えられた自分の体を見てそのあまりの美しさに、今の俺ならなんだってできると思った。思ってしまったのだ。
結果、まだ無下限の突破方法を習得していないのに五条悟に挑んでしまったのだ。
「くそっ、まさか俺の美しさがこんな悲劇を引き寄せるなんて」
「その思考回路で育ったことが最大の悲劇じゃないですか?」
「ああ……美しさは時として罪になり得る」
「多分お嬢様ってゴキブリ並にどんなところでも生きていける生き物ですよね」
「褒めてるんだよね?」
「貶してます」
千春は辛辣なこと言いながらも、骨折のせいで発熱が収まらない俺の頭に冷えたタオルを乗せてくれる。
彼女くらいいつでもなんでもズバズバ言ってくれる人が近くにいたらいいのだけれど、俺って自分の美しさに浸ると本当に他のことが認識できなくなっちゃうんだよね。
いつも遠慮なくものを言うように見える千春も、使用人という立場からか基本的には思ったことはグッと胸の内にしまってくれるし。そもそも非術師である彼女は俺の本気のランニングについて来れないので、あくまで倒れた俺の回収係なのだ。
つまり、今の俺に必要なのはいつでもどこでも俺を鋭い言葉で罵倒してくれる、いい感じの
しかしそんな都合の良い存在、そうそうそこら辺に転がっていることなんて……。
「いや、いる!」
「何がですか? ゴキブリですか?」
「ナチュラルに女性を下に見ていて普通に遠慮なく殴る蹴るをしてくる男が、いる!」
「存在してはいけない生き物じゃないですか」
確かに俺もそう思うし、会いたいとは思わないが五条悟に勝つためならどんなものだって利用すると決めたのだ。
それに、五条悟以外パッとしない五条家よりも、あの家の方がより実践的な呪術の訓練だって行える。
「千春、お父様に伝えてきて……。俺、お見合いがしたいって!」
「五条悟様とのお見合いみたいなもので喧嘩ふっかけたお嬢様の言葉が通ると思ってるんですか?」
「そこは千春が、どうにかして!」
「……お嬢様が、家が決めた道以外が見たいと言うならば。私は喜んで手を貸しますが。あ、これオフレコでお願いします」
ぶっちゃけ、千春はこの家の使用人であるがその忠誠は家ではなく俺に捧げられている。
なんでかは知らないけれど、多分俺が美少女だからかな? とにかく、本気で頼めば千春は多少のことは融通してくれる。ナス苦手だから料理に入れないでとか言っても入れてくるから、彼女の機嫌次第だけど。
「安楽家との縁談となれば、断る家なんてそうそうないと思いますが……どこの誰とですか? もちろん、恋の話となれば私は絶対に止めませんが」
「ぜんい」
「やめた方がいいと思いますよ」
まだ三文字しか話してないのに、千春は秒で掌を回転させやがった。
たしかに、俺だって自分の知ってる女の子が彼と縁談するとか言い出したら何がなんでも止めてやるけれど、今の俺にはあのドブカスな言葉の刃が必要なのだ。
俺の美しさに気圧されずにカスみたいな口をきけて、かつ呪術師として俺の訓練についていける男。
「禪院家の次期当主……と、噂されている殿方。その方と是非交友を深めたいなぁと思うんだけど、どう?」
「絶対やめた方がいいです」
うん。俺もそう思うよ。
千春
恋鈴の付き人。恋鈴のことはしょうもない性格してると思ってる。呪力に関する才能が一切ないので呪具の眼鏡をかけている。