TS超絶美少女呪術師が五条悟を倒そうとする話   作:ちぇんそー娘

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4.vs投射呪法

 

 

 

 

 禪院家での修行は(主に俺のせいで)苛烈を極めた。

 

 持ち前の治癒力で怪我は数日で治るので、その度に直哉に挑んでボコボコにされながら、合間合間に他の術師の呪力の使い方を見る。

 

 

 当然だが、そこら辺の一般禪院戦闘員と甚壱さんのような高位の術師、確か『丙』と言うんだったか。その人達では呪力の流れからして使い方が違う。

 全身に呪力を常に流し、強力な矛と盾として体を強化する。更に全身で纏うことにより呪力のインパクト、攻撃の事前動作を悟らせないようにしている。

 

 俺の術式の前にはそういう小細工は意味を成さないが、それでもこの『全身で纏う』という発想を直接目にするのでは話が違う。

 

 特に、甚壱さん以外は俺が訓練を見ていると言うだけで本能的に俺に『敵意』を向けてきている。術式の開示は縛りにおいてもかなり強力な行為であり、手の内を晒すというのは術師にとっては本能的に避けたくなる行為。故に、そこに俺の術式が発動する。

 

 俺の術式は相手の心を読むモノ。

 そして『敵意』が発動条件である都合、どうしても読み取ってしまう感情もそう言ったトゲトゲしい感情になってしまうのだ。

 

 だがこれは今回においてはプラスに働く。

 俺への不快感、嫌悪、侮蔑。そう言った感情の中には俺に『知られたくない』と思うことが多い。そう言った思考にフォーカスを当てるのだ。

 

 内側に隠している罵倒の言葉の他に、訓練中なのだから当然自分たちの技術を外様の術師である俺に盗まれたくないと考えるだろう。

 

 そう言った思考を、容赦なく盗む。

 この使い方は禪院のように排他的な人間が多い環境でしか使えないが、非常に便利だ。頭の中に直接叩き込まれる、俺よりも長年生きてる人間の呪力操作の感覚。

 

 知られたくないと思えば思うほど、俺の術式は強くその感情を捉えて無理やり認識する。本当に厭らしく、性悪な術式だ。

 

 脳に伝わってくる呪力操作の感覚を反芻しながら、俺自身は手鏡に映る自分の顔を見て、なんとも言えない負の感情を募らせる。

 

 繰り返すが、呪術廻戦で強いやつは術式が強いヤツとゴリラだ。基本の呪力操作と身体能力。これを怠ったやつから死ぬし、怠ってなくても不意打ちの致命傷を喰らえば死ぬ。

 故に、反転術式による治癒が使えるようになれば非常に有利になれる。怪我をしても自分で治せれば訓練に使える時間も増えるしね。

 

 原作では反転術式はだいたい天性の才能、イメージという部分が大きく技術として確立していなかった。

 だが、イメージという点ならば俺の術式以上にその分野に秀でたモノはそうそうない。

 

 負の感情から練り出す呪力。

 負のエネルギーと負のエネルギーを掛け合わせて、正のエネルギーを生み出す。脳から直接生み出すと言うくらいしか触れられてなかったが、要はこれまでと同じく、結局イメージが大事ということだろう。

 

 必要なのは、呪力をかけあわせるというイメージ、正のエネルギーというイメージ、そしてそのエネルギーを傷の治療という行為に使用するイメージの3つ。

 

 掛け合わせる、という部分に関しては思考盗聴で獲得した呪力操作の感覚の中で、呪力の流れが()()()()()()二者の操作感覚を同時に脳内で発動させる。

 それから、正のエネルギーと修復に関してはこれはもう俺の美少女っぷりを活かすしかない。

 

 俺のような美少女の顔に傷があるなんて、それでも可愛いにしてもその期間が長いのは人類にとってあまりに大きな損失だろう。

 出来るだけ早く、出来るだけ傷を残さず、頭の中にある『完璧な美少女』である俺の姿を、今の傷だらけの俺の姿に上書きする。

 

 

 これを二週間くらい、直哉と殴り合ってる時と呪力操作をパクってる時以外常に続ける。

 

 

「アイツまた鏡をずっと眺めてるぜ……」

「とんでもないナルシストって噂本当だったんだな……」

「幾ら顔が良くても自意識のでかい女なんてこっちから願い下げだな」

「むしろ女なんて少しブスなくらいが自分の立場をわかってて可愛らしいもんだ」

 

 

 周りの声が聞こえてきても、一切構うことは無い。脳に響いてくる心の内に秘めた罵倒と比べれば、音なんて所詮は空気の振動だ。

 

 心を直接傷つける刃のような呪いと比べてしまえば、こんなもの屁でもない。

 

 殴られ、パクり、治癒する。この生活を二週間。時間にしてしまえば短いが、自分と向き合う時間が長かったせいで随分長く感じた。

 

 

 

「呪力同士を掛け合わせて、正のエネルギーにして、流す。なるほどね」

 

 

 鏡に映る、傷一つない自分の顔を見て俺は満足気に笑う。

 遂に反転術式を獲得した。これで更に俺は最強に一歩、近づい、た……んだけど……。

 

 

 ふと、鏡に映っている自分の顔が、整っていながらも酷いクマがあることに気がついた。

 そう言えば、ずっと呪力操作の訓練してたせいで最後に寝た時の記憶が無いや。多分何度か気絶するように寝てはいたんだろうけど。

 

 夜更かしは美容の天敵。

 とりあえず、一旦しっかり睡眠を取るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ加減付きまとう女は嫌われるって自覚せぇや。めちゃくちゃキモイねんお前」

 

 苛立ちを隠す様子のない直哉の声は、彼の心の声と全く同じことを言っている。良くも悪くも素直な人間で、俺としてはある意味接しやすくて助かるが、人間としては論外だろう。

 

 しかし実力に関してはやはり本物だ。

 

 投射呪法。

 分かりやすく言えば、自身と触れたモノに1秒間で24回の動きを強制する術式。過度に物理法則を無視した動きはできないが、可能な範疇ならば1秒間に24回という人間の反射速度的にかなりの難易度の動きを自らに自動付与し、際限なく加速し続けられる。

 

 逆に触れられたら相手は、触れられた瞬間からいきなり1秒間に24回の動きを強制させられる。

 

 1秒間を24個に分割した時、その1個辺りの時間は約0.04秒。咄嗟に0.04秒ごとに動きを分けて体を動かすなんてことは不可能であり、出来ない場合は1秒間体がフリーズする。

 

 つまり呪力操作を踏まえても超人的な加速と、触れた相手を事実上1秒停止させる術式。

 24回に分けた動きを自身は強制トレースしてしまう点と、加速に耐えられる思考能力と肉体が必要であるがそこを対処できる禪院直哉の才覚があれば、非常に恐ろしい術式となる。

 

「ずっと俺の兄さん方みたいなパッとせぇへん連中眺めてたみたいやけど、俺より格下眺めたって、俺を超えられるわけないやん」

 

 声がした方向を振り返っても、そこに直哉の姿はない。

 瞬間、1秒間意識が飛んだような感覚と共に右腕に激痛。蹴り飛ばされたのか、右手の指がへし折れて骨折は恐らく手首にも到達している。

 

「利き腕が潰されたか、そこま───」

「問題ないです! 続行してください!」

「へぇ、それじゃそろそろ唯一の取り柄(ガンメン)ぶっ壊して表歩けなくしたるわ!」

 

 模擬戦を止めようとする甚壱さんを静止して、俺は痛みを噛み殺しながらなんとか思考を回す。

 

 直哉は確かに速い。

 だが、これくらいの速度に対処出来なければ五条悟の『蒼』を併用した瞬間移動や、基礎的な呪力操作による近接戦闘にはついて来れない。そういう意味で、あくまでコイツは俺にとって練習台。つまり、勝てて当たり前の敵なのだ。

 

 けれどやっぱり、現状は向こうの方が相性的にも格上。

 どれだけ心を読んでも、肉体が向こうの速度についてこれていない。

 

 だから───肉体ではなく呪力で対処する。

 

 

「その呪力の練り方、まさか!」

「『落花の情』。分家とはいえ御三家やもんな。でもなァ!」

 

 

 御三家秘伝、落花の情。

 肉体を呪力の幕で覆い飛んできた攻撃に呪力で自動的に反撃する技。

 

 攻撃を必中させる領域展開に対して、その攻撃が自身に当たる直前で呪力で防御する為の技として編み出された。

 

「それって結局、弱者の技やねん。手札を増やすのは強者のやることやけど、弱者の技を常用すんのは自分が弱いですって言ってるみたいでクソダサいやん」

「禪院扇のこと?」

「なんで知ってるん? まぁそやけど」

 

 直哉の言う通り、この技は迎撃に重きを置いているため自発的に使える技ではない。

 そして、投射呪法はこの技の対策として1/24の動きに迎撃される前提の動きを組み込めばいいだけ。同じ御三家である以上使い方も対策も割れている。

 

 おまけに、今の俺は右腕が使用不能。

 その右側を狙うも、そう思わせて左を狙うも自由。選択権は向こうにある。

 

 

 ……そう、思ってるんだろう。

 

 

『いや、アレは……落花の情じゃない!?』

 

 俺の技を見破ろうとする行為が敵意と術式に判断されたのか、審判をしている甚壱さんの思考回路が流れてくる。

 

 彼の言う通り、この技は落花の情ではない。

 どちらかと言うと、これはその一段上のスキル。纏う呪力に自身の術式を織り交ぜて、体という小規模の結界を起点に作り出した領域。

 

 原作での渋谷事変において、特級呪霊たちが五条悟の無下限を破る為に使用した結界術の応用、領域展延に近いスキルだ。

 

 と言っても俺はまだ領域展開は出来ないし、あくまで精密な呪力操作によって体表に纏う呪力に術式効果を付与しているに過ぎない。

 

 だからこの落花の情は、俺の術式……即ち、相手の心を読むという特性を持っている。

 

『右から側頭部をぶっ叩く!』

 

 流れ込んでくる直哉の思考。

 しかし、俺が体を動かすよりも直哉の攻撃が撃ち込まれる方が速い。通常の落花の情では、それを前提とした直哉の動きには対処出来ない。

 

 

 だから、二段階の仕掛けで直哉を騙す。

 

「───反転術式!?」

「なっ」

 

 まず、右腕を反転術式で治す。これで防御にも反撃にも右腕が使える。

 体感速度が非常にゆっくりとした、瞬間の攻防。俺の防御か直哉の攻撃か、どっちが先に叩き込まれるかは俺たち次第。

 

 そんな一瞬の中で、時間の流れを無視した直哉の思考が、直接俺の脳内に叩き込まれる。

 

 

『この歳で反転術式って嘘やろ? やっぱりコイツも、()()()()なんか? 俺じゃなくて、コイツが───』

 

 一瞬、直哉の動きが止まったかのように見えて。

 だが、それは止まったように見えただけであり、もっと別の何かだった。

 

『いや、違う。コイツはおかしい。マゾやし女のくせに男の前に立とうとするし、得体が知れへん。それでも、アッチ側に立つんは……コイツを負かして、誰にも負けずに、甚爾君に追いつくんは……』

 

 

 

『俺や!!!』

「俺や!!!」

 

 

 

 清々しいくらいに、この男は相も変わらず思考と言動が一致している。まだこの世界では短い人生だが、ここまである意味で真っ直ぐだったやつなんていなかった。

 

 1/24秒の中で轟いたその声は、きっと耳ではなく魂で聞いた声だった。そしてその叫びと同時に直哉の動きが変わる。

 

 この土壇場で、術式を開花させたのか偶然か。

 

(この動き、24fpsじゃない!)

 

 直哉の24fpsの動きになれていた視界が、突然更に細かく区切られた動きに対処しきれずに目眩を起こす。

 更に加速する直哉の蹴りは、間違いなく俺の反応速度と落花の情によるカウンターに完璧に対処していた。

 

 そう、対処している。

 

 

 

 そういう直哉の思考が、俺の脳に流れ込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がっ───」

「なんだ……最後、何が起きた?」

 

 

 

 驚いてその場に呆然と立ち尽くす甚壱さんの声を聞いて、俺は自分が勝ったことをようやく実感できた。

 

「ぐっ、っぅ……」

 

 反動で()()()()()()()()()()()()右腕を急いで反転術式で治療する。いくら治せると言っても痛みは残る。あまり多用したくはない。

 

 最後のインパクトの直前、直哉は土壇場で術式の解釈を深めて動きを恐らく36fpsかそれ以上に再分割して、俺の防御と反撃をかいくぐろうとした。

 

 だが、その対処法は俺の編み出した『落花の覚』には意味が無いのだ。

 

 俺の術式効果を付与された落花の情は相手の接触ではなく、思考を感知して、俺の肉体を強制的に動かして相手に対処する。

 俺の思考よりも速く動こうが、呪力で無理やり肉体を動かしての反撃。しかも相手の思考を感知しての動きであるため、直前で動きを変えようとも変える直前、『こう変えよう』と意識した時点でそれを読み取って作動する。

 

 無理やり動かすことになるため、直哉の高速機動の蹴りを捌いて顔に一発ぶち込んだら腕がひしゃげたけど、その傷は反転術式でリカバー。

 

 

「甚壱さん、この勝負、俺の勝ちですよね……」

「あ、あぁ……。しかしお前、今のは……」

「色々教わった立場なんで、後で教えますよ」

 

 

 気絶した直哉を見下ろしながら、体の感覚を確かめる。

 不意打ち、初見殺し、騙し討ち。しかし確かに掴んだ『勝利』の感覚。繰り返す戦闘の中で高速機動の実感も覚えた。ついでに新技と反転術式もだ。

 

 脳で一度思考を挟むから俺の行動はワンテンポ遅くなる。その辺を、術式で得られる相手の情報を呪力に乗せて、直接に脳に回す。このイメージを反転術式を脳で回すイメージと被せて行えれば、落花の情を展開せずとも使えるようになる。

 

 

 俺はまだまだ強くなれる。

 どれだけ相手が策を練ろうとも、相手がそれを実行する前に潰せればいいのだ。

 

 どれだけ五条悟が無限に分割された遠い場所にいようとも、それなら俺は無限に試行を繰り返してアイツのいる地平に辿り着く。

 無限に広がる自分の可能性を考えて、俺は思わず美少女らしくない猟奇的な歪んだ笑みを浮かべてしまう。

 

 

 

 

 

 

『おかーさん、どこ行ったんだろう?』

 

 

 

 

「……ん?」

 

 突然脳に響く、酷く悲しそうな女の子の声に思わず顔を顰めた。

 ここは禪院家の敷地内。迷子の女の子なんているはずがないのに。

 

 では一体、今の声は何処から俺に届いたのか。

 そんな疑問を残して、俺の禪院家滞在期間は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 









落花の覚は術式で読み取った相手の動きに対するカウンターを自動で肉体に行わせる、術式と落花の情の併せ技です。
落花の情の呪力層を領域に見立てて、そこに術式を流し込んでいます。恋鈴は思考盗聴により何人かの呪力操作イメージを同時に走らせることができるので、それで結界術が得意な人間の呪力操作をパクってるんだと思います。
本人は展延の領域を纏うイメージを引っ張ってきてるが拡張術式って言うのが1番近いかも。




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