TS超絶美少女呪術師が五条悟を倒そうとする話   作:ちぇんそー娘

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6.六眼

 

 

 

「あかん、出来へん出来へん。こんなのやるだけ無駄無駄」

「お前ー! ふざけんなお前! お前ー!」

 

 三回くらいやってみて出来なかったところで、直哉は諦めて帰ろうとしていた。

 

「ええもん見せるって言っただろ!」

「俺が素振りしてるところだけでも十分ええもんやろ。女はそうやって男の行為一つ一つに花持たせておけばええねん」

「俺に負けたくせに」

「まぐれで一発入れただけが何言うとるねん。ザコが口開くなや」

 

 こんな生き物が生まれてしまう禪院家の環境が悪いのか、それとも小学校低学年でこの人格になるカスの存在そのものが悪いのか。とにかく禪院直哉は擁護のしようがないカスである。

 

 だが、やはり天才側の人間であるのは認めざるを得ない。

 何を以てそう言えるかは自分でも分からないのだが、直感的に直哉の今のたった三発の動きは、俺が今日まで二週間ずっと壁にパンチし続けて得られた成果よりも、格段に『黒閃』に近かった。

 

「カスに才能持たせるとこんな風になるんだなぁ」

「礼の一つも言えんのかドブカスがァ……」

 

 コイツを利用すれば、呪力の核心への距離は一歩縮まる。

 しかしこの古き悪しき男尊女卑とシンプルな性格の悪さを兼ね備える男を利用するなんてのは、あまりに骨が折れる。

 

 一体どうしたものか……。

 

 

「よっ、恋鈴。なんか面白そうなことしてんじゃん」

 

 

 そこにいつの間にか五条悟も加わってくる。コイツも利用出来ればこの上なく便利ではあるが、そもそも俺の目標がコイツを倒すことである以上、利用するのは本末転倒…………ん? 

 

「なんで居んの?」

「お前の父ちゃんがデジタルモンスター買ってくれるって言うから。知ってるかデジタルモンスター。たまごっちみたいなのがバトルできるんだぜ? ただでさえ面白いたまごっちがバトルできるのはもう無敵だろ。これ絶対流行るぜ」

 

 お父様〜! 

 うちは分家筋なので、本家に気にいられようとするのは間違いじゃないんだけどさぁ! 

 

 俺がコイツとめちゃくちゃ相性悪いのは知ってるよね!? 

 というか五条悟の方もデジモン程度でホイホイ動かされるな。将来単独で世界滅ぼせそうになるような男が、デジモン一つで動かされるのはこの世界の未来を憂いたくなる。

 

「悟くんやん。こんなカビ臭くて芋臭い女の家に何か用でもあるんか?」

「お前は……あぁ。禪院のとこのか。一応俺、次期当主様だからな。面倒でも下々の顔を偶には立ててやらないといけないわけ」

「デジモンでつられただけだろ」

「あぁ、あれ面白そうやよね。やっぱモンスターは戦わせてなんぼやわ。ちまちま育てて愛でるだけなんて女々しいマネして何が楽しいねん。ガキ育てる予行練習なら見上げたもんやけど」

「お前わかってんじゃん。やっぱバトルだよな」

 

 意外と直哉デジモンに食いつくな。

 そういやコイツの術式アニメだし、うちでもなんかアニメ見てたしもしかしてアニメ好きなのかな。

 

「で、何しに来たんだよお前」

「暇つぶしに決まってんだろ。俺に二回もボコられてまだ心が折れずに頑張ってて偉いな〜ってよ」

「なんや恋鈴ちゃん、悟くんにシメられたん? だっさ」

「わざわざちょっかいかけに来るとか暇なの?」

「いやだって、どんなに頑張っても恋鈴じゃ絶対俺に勝てないのに、打倒俺とか言って頑張ってるらしいから。おもしれぇじゃん」

 

 言い方にはトゲしかないが、五条悟の言うことは的を射ている。

 普通に考えて俺は五条悟には勝てない。それは六眼を持つ彼の方が俺よりもよくわかっている。

 

 コイツが言う面白いとは、アリの巣に水責めをして無力に死んでいくアリを眺めるような、そういう圧倒的なまでの力の差と残虐性を孕んだモノだ。

 

「別に俺はお前に勝ちたいんじゃねぇからいいんだよ」

 

 けれど俺の目的はそもそも、コイツより強くなることでは無いのだ。

 五条悟をぶっ倒して、俺をブスと言ったことを謝らせる。この超絶美少女である俺にブスなんて言葉を使ったことを取り消させたいという、己の信念に基づいた行動だ。故に俺はガキの安い挑発になんて乗らないのだ。

 

「なんでもいいけど、あんまり無理なことしねぇ方がいいぜ? ただでさえブスなのが眉間にシワ寄せてたらもっとひでぇことになる」

「ブスじゃないが!!?? 俺がブスだったら森羅万象天上天下この世の全てが醜悪ということになるに決まってんだろふざけんな殺すぞ!」

「沸点ひっく。キンキンうるさいしヘリウムかなんかなんこの女」

「どうせ無駄だろうけど、満足するまでやってみろよ。じゃあな〜」

 

 ヘラヘラと笑いながら、五条悟は術式を利用した瞬間移動でその場から姿を消してしまう。

 

 本当に俺を煽りに来ただけだったのかよアイツ。

 

 残されたのは、さすがに呆気に取られて借りてきた猫みたいになっている直哉と、怒りをぶつける先がいなくなって震えている俺。

 

「……お前、ほんまに悟くんに勝てると思ってるん?」

「あ?」

「悪いけど諦めた方がええで。男の俺が無理なもん、女ができるわけないやろ」

「知るかボケ。俺にとって、俺が可愛いことは全てなんだよ」

 

 俺は生まれた時から可愛かった。

 可愛いからお父様は俺を可愛いと言ってくれたし、俺が可愛いから多少ひねくれたことを言っても千春は許してくれた。

 

 可愛いということは俺にとって絶対的な自信であり、指標であり、俺の本質そのもの。それを否定してきた相手が誰か、なんてのは関係ない。

 

 それを否定されたら、どんな相手であろうともぶちのめさなければならないもの。相手が五条悟だからとかは関係無い。

 

 その点で言えば直哉はお利口さんなんだよな。俺の顔が良いのはちゃんとわかってるし認めてるし。

 

 

「───何ナメた事言ってんねん、お前」

「え?」

 

 

 内心で俺が直哉の良い所を認めていたのに、当の本人は何故か血管を浮き上がらせるほどにキレていた。

 敵意をビンビンに向けてきているので分かるが、演技でもなんでもなく心の底からブチギレている。

 

「悟くんに、アッチ側に立つんは俺や。はっきり言ってやるけど、女が男より強くなれるわけないやろ」

「お前の男尊女卑思考はどうでもいいんだよ。俺は俺が可愛いという事実をアイツに認めさせる為に伸びきった鼻をへし折ってやりてぇだけなんだわ」

「悟くんがいる領域について、なーんもわかっとらん。凡人が幾ら努力したって、そんなナメた態度で辿り着ける世界ちゃうねん。それならまだ女磨いて悟くんが惚れる可能性にかける方が芽があるで」

 

 互いに言いたいことを言って、俺達は互いのことを少し理解した。

 

 負の感情から滲み出す力で、お互いの意志を否定し合うこと。それが呪い合いだ。

 結局の所、俺も直哉も別の人間であり、そして価値観があまりに違いすぎる。お互いを理解できないし、理解しようとも思えない。

 

 

 一つ言えるのは、なんやかんやいいながら目の前のコイツは強い。

 

 なら、せいぜいいい経験値になってくれるだろう。

 

 

「言っておくけど、加減しねぇからな? ただでさえ天と地程の差がある顔面格差がさらに拡がっても責任取らねぇぞ?」

「そんな心配しなくてええねん。そっちこそ、やり合う前に帰っていっちゃん写りええ写真探さなくてええんか?」

 

 直哉の体が加速を始め、俺の脳に叩きつけられる思考の情報量が急増する。

 組手や模擬戦と呼ぶには、あまりに殺意(のろい)の込められた戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悟様……あの二人が今からまさに殺し合いを始めるように私には思えるのですが」

「多分殺し合うぞアイツら。恋鈴はブスって言うと無条件でキレるし、直哉はアイツのこと気に入らないだろうし」

「止めてきてくださいって言ったんですが!? あぁどうしましょう、お嬢様の身に何かあったら……たとえお嬢様が無事でも禪院家の次期当主に何かあったら……悟様、止めてきて! 今すぐ止めて来て!」

 

 直哉と恋鈴が今にも殺し合いを始めそうな姿を、少し遠くから隠れて眺めていた千春は悟に掴みかかる。

 

「えー、お前が行けよ千春……アイツの世話係だろ?」

「呪術の使えない私が行ってもミンチだから頼んだんですよ。ほら、デジタルモンスター買ってあげますから」

「何が悲しくて一人で3つ持たなくちゃならねぇんだよ。2つありゃ対戦できるだろ」

「一人で2つ持つのも大概悲しいですよ」

 

 五条悟は規格外の存在だ。

 生まれた瞬間に、大物呪詛師が自分達の時代は終わったと悟り自首したとか、五条悟が生まれた瞬間に日本中の呪霊が恐怖し隠れ反応が一時的に消えたとか、そんな噂が真実味を帯びて流されるような存在。

 

「38人」

「なんの人数ですか?」

「俺に気に入られようと近づいてきた女の数。家に無理やり言われてとか、自分からとか色々あるけどすげぇよな。こんなガキに50くらいのおばさんが本気で娶られようと近づいて来たこともあった」

 

 五条悟は規格外の存在だ。

 彼の生誕によって、五条家は御三家の中でも大きな発言権を手に入れるようになった。何人もの呪詛師が、彼を邪魔に思う人間に依頼されて殺そうとしては返り討ちになった。

 何人もの呪術師が、五条悟の恩恵に与ろうと自分の持てるもの───例えば女を使って彼との関係をより強固にしようとした。

 

 六眼と無下限呪術を併せ持つ現代最強の呪術師。

 生まれた時から最強であり、この世界で最も肥えた『目』を持つ男。

 

 無限という壁を持つ、生まれついての絶対的な孤高の王者。

 

 

「恋鈴くらいだな。俺に楯突いてきて、一度差を理解させてやってもまた突っかかってきたのは」

 

 

 彼にとって大人とは、自分を殺そうとするか、擦り寄ってくるプライドのないくせに粋がることは得意な弱者の事だった。

 彼にとって女とは、自分を利用する為に己の全てを利用するか、或いは誰かに利用されている憐れな生き物の事だった。

 

 

 だからこそ、安楽恋鈴と言う女は彼の興味を引いた。

 才覚に優れていて、センスもある。だがそれだけ。そんなもの五条悟の前には何人もいたし、その全員が彼には届かなかった。

 

 彼女が他と違ったのは、何一つとして諦めていないこと。

 二度倒されてもまだ諦めずにこちらを追ってきている。天と地ほどの差を理解しながら、それを埋めるために愚直に土を積み上げる。

 

 鼻で笑われるような小さな積み重ね。だが、確実に彼女は前会った時よりも近づいてきている。悟の瞳は、彼女の成長を見抜いていた。

 

 この短い期間でまだ自分ですら身につけていない反転術式を修得し、見違える程に接近戦の実力を上げている。

 

「あと隣の禪院の奴。アイツも前会った時とは呪力の練り方から別物だ。いやぁ、おもしれぇな。アイツら本気で俺に追いつくつもりなのかな?」

「どうなるかは置いておいて、少なくとも本人達はそのつもりだと思いますよ」

「そりゃあ本当に──────楽しみだ」

 

 

 誰一人として並び立つもののいない、たった一人の玉座。

 そこに並ぼうなんて誰も考えないそこを、無謀にも挑み続ける者達の姿が、幼い最強の瞳にどのように映ったのか。

 

 

 

(悟様が他人に興味を持つのは良い事だけど、恋鈴はこのままだと周りに変な男ばっか集まりそうだから早めに口調だけでもちゃんとさせないと刺されそうだなぁ)

 

 

 愉しそうに恋鈴と直哉の訓練風景を眺める悟を見て、少し安堵しながらも自分の主の将来は大変そうだなぁ、と千春は他人事のように考えていた。

 

 

 

 

 

 







五条悟
たった一人の親友に出会う前の姿。
孤独というものすらも知らない孤高の王者。恋鈴のことは珍しいたまごっちくらいに思ってる。


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