カイリューといっしょ! 作:カイリューはいいぞ
目が覚めたら、目の前に黄色い何かがあった。目を凝らしてよく見て見ると、それにはつぶらな瞳があって、ちょこんとした角があって、ずんぐりむっくりしてて、とってもチャーミングな顔をしていた。そして、大きな体には全く以て足りてないほど小さな翼、太い尻尾。簡単に表すと、ドラゴン……ドラゴン!?
「りゅ~~~?」
「え、待って可愛い……じゃなくて!?あれ!?」
こっちを見る私の視線に気づいたのか大きな体を揺らしてのっしのっしと歩いてきたドラゴン、その口から出てきたとは思えないほどの可愛らしい鳴き声にボソッと声が出てしまう。そして、その声にまず驚いた。私の声、こんなに高かったっけ?私の手、こんなに小さかったっけ?寝る前に、こんな服、着てた?あれ?あれれ?
ちょっと待って、と目の前に迫るドラゴンをほっぽりだして私は思考の海に沈む、思いだせ、私は寝る前何を……え、私ってなに?何も思い出せない?名前も?自分の性別も?親しい人は?親は……まるで切り取られてしまったみたいに何も思い出せなかった。私は……誰だ?なんなんだ……?
「りゅ~~」
「カイ、リュー」
「りゅっ!」
分からないことだらけだけど、目の前のドラゴンの名前は分かった。カイリュー、ドラゴンポケモンで……私が一番好きだったポケモン。そう、思いだした。ポケットモンスターというゲームがあって、その中のキャラクターの一つが目の前にいる。何でこれだけ覚えてるんだろう?自分のことは何も分からないのに。
名前を呼ばれたのが嬉しかったのか、カイリューは大きく私の言葉に返事を返すと、両手を広げて私を抱きっと抱きしめる。不思議と全く、怖くはなかった。もちもちとしてるのに、硬くて、柔らかくて……力強かった。私なんて簡単に鯖折りしてしまえるだろうに、繊細にコントロールされた手加減は安心感を覚えこそすれ、全くと言っていいほど怖くはなかった。
私を気のすむまで抱っこしたカイリューは、満足したのかすっと離れて、私の目の前にどしんとすわった。両足を投げ出すような形で座ったカイリューは、何が楽しいのかにこにことした人懐っこそうな笑顔で私を見つめている。私は逆に立ち上がる。大体目線は座ったカイリューの口元くらい、身長で言えば140㎝くらい?何となく、興味を惹かれてカイリューの口元に手を伸ばすと彼?彼女?は私の手に口元を自ら近づけてくれた。2,3回揉むように撫でると嬉しそうに喉を鳴らしている。
今度は逆にカイリューが手を伸ばして、私の頭をぽふぽふと叩いて撫でだした。そこでようやく、私は自分が帽子を被ってることに気づいて、それを慌てて手に取る。緑色のベレー帽で頭頂部のあたりに丸い飾りがあるものだ。それを認識してようやく自分の服装について頭がいった。シャツにスカート、上着にダボついたセーター……腰にはベルトがあって、そこには6つの小さな赤と白で塗り分けされたボールのようなものがくっついている。
「モンスターボールだ……バッグも」
「りゅ~」
「これ、貴方のボールなの?」
「りゅぅ」
カイリューの爪の付いた手が、一番目についてるボールを指さした。何となく使い方を知ってる気がしたので、ボールを手に取って、スイッチを押すとボールが大きくなった。そしてそれをカイリューに向けると赤い光線が発射されて、カイリューに当たり、吸いこむようにボールの中にカイリューを収めてしまった。
初めてつかうはずなのに、初めて見るハズなのに……なぜ使い方を知ってるのかが分からない。もう一度、同じボールを放るとぱかっとモンスターボールが開いて、光と共にカイリューが出てくる。何となく、状況がつかめてきた。私は……いや、この体の持ち主はポケモントレーナーで、カイリューと腰についてるボールたちは持ち主のポケモン。私は、体の持ち主の記憶がすっ飛んでできた人格、もしくはよくわからない何かがこの体を乗っ取った結果とかそんなところだろう。
つまるところ、何もわからず、何をすればいいのかもわからない。仮にこれが何かの夢の可能性もある、だけど現実感だけは本物だ。とりあえず、周りを見渡す。森の中、なのだろうか。ただ、ヤシの木が生い茂って、地面がさらさらしている砂っぽいところを見ると、もしかしたら海が近いのかもしれない。微かに香る潮の香りを頼りに、少し歩いてみることにした。
「ついてくるの?」
「りゅっ!」
当然でしょ、と腰に手を当てたカイリューは、多分私のものらしいバッグを拾いあげてパンパンと砂埃を払い、私に差し出してくれる。私はその大きなバッグを背負って、歩き出した。のっしのっしと音を立ててカイリューが後ろをついてくる。そういえば連れ歩きなんてシステムが昔のポケモンにはあったなあ、こんな感じなんだっけ?と曖昧な記憶を思い出していく。
考えれば考えるほど、出てくるのはポケモンの知識ばかり。ポケットを漁ればスマートフォンのような透明な板状の機械があった。それを弄ってみると、どうやらポケモン図鑑と携帯電話を合わせたような機械らしい、試しに目の前のカイリューに焦点を合わせてみると、図鑑の説明と、カイリューの情報が出てきた。ちょっぴり驚いたのは
「貴方、女の子だったんだ」
「りゅっ」
そうだよ、と返事をしてくれるカイリュー、どうやら彼女は徹頭徹尾私に危害を加えるつもりはないらしい。出てくる情報は簡素で、性別、レベル、コンディション、覚えてる技、以上だ。朧げな記憶の中にある攻撃、防御、素早さといった数値みたいなものはない。そりゃそうだ、ゲームの中ではステータスはあるにしろ、現実になったら数値なんか出せるはずないし。
目の前のカイリューはメスで、コンディションは良好……覚えてる技は……4つじゃない?ここもゲームとは違うんだ。ずらーっと並ぶ技の多さに眩暈がした。あ、カメラあるじゃん、内カメラ。ポケモン図鑑を操作して写真を撮るモードにし、内カメラで自分の顔を見ることにする。これは……
「女の子……そうだよね、スカートはいてるし。違和感ないし……それにこの顔、ユウリ……でいいのかな?」
「りゅりゅりゅっ!」
だいせいかい!という感じでカイリューは腕をぶんぶんと振る。自分の顔に見覚えがある、それはあぁ私の顔はこんなんだったな、ということではなく……ゲームのキャラとして覚えがあったからだ。ポケットモンスターソード・シールドの主人公、その女の子に酷似していた。画面の中で、困ったように眉を下げているぱっちりとした目の女の子……ついでに顔も整ってると来た。
これ、とにかく人里を探したほうがよさそう。ポケモン図鑑に搭載されたマップはポケモン世界では見たこともないものだし、さっきからポケモンが見当たらない。代わりに見るのは、見覚えのないポケモンじゃない生き物たち。どうにもちぐはぐだ。ポケモンの知識はあるけど、自分のことは分からない、なんでここに居るのかも、どうして私なのかも。
「この先に、町があるんだ。とりあえずそこに行って情報収集すればいいよね」
「りゅーっ!」
はーいっ!と暢気な感じに手をあげたカイリューにちょっと癒された私は、物凄く歩きやすい不思議なスニーカーの力も借りて砂浜と森の中間のような道なき道を進んでいく。その途中でぐーっと私のお腹が鳴った。そういえば、何にも食べてなかったなあ、そして喉も乾いてきた。自覚すればするほど、なんだかきつく思えてくる。
何かないかな、とバッグを広げると想像以上にものがたくさん入っていた。というかどうやって詰め込んでいるどころか質量保存の法則を無視しているようにしか思えない。そして、どこに何があるのかが手に取るようにわかる。キャンプセットに山ほどの着替え、それを無視して美味しい水と、桃のような形をしているモモンの実を手に取った。柔らかくて、私でも食べられそう。しゃくり、と音を立ててモモンの実をかじると、とても甘くてびっくりした。
カイリューがそれをじーっと見ているので、しまった、可哀想なことをしてしまったと反省。急いでバッグを漁って、イガイガしたトマトのようなマトマの実を手に取る。何となく彼女の好みの味を知っている、確か辛い物が好きだったはずだ。マトマの実を差し出すと、彼女は首を下げてあーん、と口を開ける。甘えて来てくれるのにちょっと嬉しさを感じて口の中にマトマの実を置くと、ぼふんと音をさせて口を閉じてもきゅもきゅと嬉しそうにマトマの実を食べてしまった。
ちょっとだけお腹が膨れてやる気が出てきた私はぐいっと美味しい水を飲んで、ポケモン図鑑の地図に従い歩き続けることしばし……ポケモンに全く遭遇しない。もしかしてここ、ポケモンがいない島?そんなことある?カイリューが、腰にあるモンスターボールが存在する時点でポケットモンスターの世界で、知らない地方にいるものだと思い込んでたんだけど……違うのかな?それじゃあ、この図鑑の地図はあってるの?
「町だっ!!」
「りゅっ!」
不安に駆られた私を勇気づけるように地図通りの場所に町はあった。だけど、なんかイメージと違う。古いんだ、電気が通ってないし、街の上には鳥ポケモンも飛んでない。何となく、いやな感じがする。ポケモンが見当たらない以上、カイリューは物凄く目立つ、仮にもしポケモンがいない世界だったら、彼女は他の人間にどう映るのだろうか。ちょっと不安だけど、ボールに入ってもらって私だけ街の中に入るのがいいかも。
「カイリュー、戻ってくれる?」
「りゅ」
モンスターボールを見せると、カイリューは拒否することもなく素直にボールの中に収まった。町の入り口に近づくと、活気がある商店街のような道にまず繋がっていて、そこには山積みにされた見たこともない魚や、巨大な骨付き肉、野菜……お皿に服などありとあらゆるものが陳列され、活気づいていた。
「なんだろう、これ……?」
「なんだ嬢ちゃん、見ねえ顔だな。そのジョリーロジャーを知らねえのか?」
「はい。実はここに来たのは初めてで……よろしければ教えてもらえませんか?」
「白ひげのジョリーロジャーを知らねえとはとんだ世間知らずがいたもんだ。それは海の皇帝、四皇「白ひげ海賊団」の縄張りの証さ。白ひげさんが守ってくれるから、他の海賊たちはこの島に手出ししてこねえってわけだ」
「そうなんですね……ありがとうございました」
知らない情報のオンパレードだ。街のあちこちに掲げられてる海賊旗、ジョリーロジャーと呼ばれるそれにかかれているのは三日月型の白いひげを生やした髑髏で、その海賊団の傘下にあるのがこの島なのだという。海賊の傘下……?とてもそうは見えない。こんな活気づいていて、笑顔と笑い声で満ちているこの街が海賊の支配下にあるなんて、しかもそれを隠さずにいる。
そして、気づいたんだけど皆、大きい。私が小さいにしろ、カイリューと同じくらいの背丈の人やどう考えても3メートル以上はある背丈の人すらいる。そして、ポケモンは見当たらない。街の中に入れば必ず連れ歩いている人はいるだろうと思っていたけど、どうやら本格的に分からない世界に迷い込んでしまったようだ。
質屋を知りませんか?と私に親切にしてくれたお店の人に聞くと、あっちだぜ、と教えてくれる。金が入ったら買ってってくれよ、と言われてその勢いに負けて頷いてしまった。笑顔が暑苦しいけど眩しいお店のおじさんに見送られて私は教えてもらった通りの道をたどって、質屋に向かう。途中で向けられる視線は好意的なもので、よそ者に慣れている街なのかな、と思った。
質屋、と英語のような、そうでないような不思議な文字で書かれているのに読めることに首を傾げながら大きなドアを何とか開けて中に入ると、背筋がしゃんとしたおばあさんがカウンターで紙幣を数えていた。私はぺこりと頭を下げてから背負っていたバッグを前にかけてその中から一つの道具を取り出す。きんのたま、ずっしりと重い純金でできた丸い球だ。
「あの、これを買い取ってほしいんですけど……」
「どれ、見せてみなさい……お嬢さん、これどこで手に入れたの?」
「えっと、旅に出る前にお父さんがお金に困ったら売りなさいっていくつかくれて……」
「なるほどね……ここまで純度の高い金は久しぶりに見たよ。この大きさと重さなら……100万ベリーってところだね。どうする?」
「じゃあ、それで」
円じゃなくてベリーときたか、きっとこの街?国?もしくは世界共通の通貨なのだろう。私は秤とか原始的なもので金の重さを比べて値段を出してくれたおばあさんにお礼を言いつつ、嘘をついたことに苦い気持ちになる。足元みられてても、ここのお金はないと困る。幸いきんのたまやそういった換金できそうなアイテムはバッグの中にうずたかく詰まっている。一つくらいは勉強代としておこう。
私はおばあさんにお礼を言って、お金を受け取った。そんなことをしていると、にわかに店の外が騒がしいことに気づく。どたんばたん!と大きな音を立ててドアが開いた。
「海賊が襲ってきたぞ!逃げろばあさん!」
「……え?」
さっき聞いたことと違うんですけど
ポケモンとワンピースをどうしてもクロスさせたかった。それだけ。
主人公
ユウリ ♀
転生主人公、ポケットモンスターをゲームとして楽しんでいた。外見は剣盾のユウリちゃん。どっかの創造神なポケモンがくしゃみした瞬間に転生の輪より弾けだされた存在。その実今までプレイした主人公たちの記憶やバトルの経験を悪魔合体させてごちゃまぜにしてユウリの体に詰め込んだおかげで自分に関することが全部吹っ飛んでしまった。
カイリュー ♀
ファイアレッドの時からの手持ち、剣盾に至るまでずっと色々経由して手持ちの中にいた最古参。作者の一番好きなポケモン。可愛い、天使、以上。ファイアレッドからの幾千ものポケモンバトルの経験が詰まっているので鬼のように強い。ONE PIECE世界に順応する程度には強い
とりあえず1週間、毎日1話投稿を目指して頑張ります。観想や評価を下さると励みになりますのでよろしくお願いします。