カイリューといっしょ! 作:カイリューはいいぞ
「ごきげんよう!ヨホホホホ!まさか1日に2回も人に会えるだなんて思いませんでした!」
「みろ!喋ってるぞ!骸骨が!アフロで喋ってる!」
「…………っ!!!」
ブルックさんの演奏を聞き終わった直後、乗り込んできたのは若い男女数人……麦わら帽子を被った男の人に、黒いスーツを着た金髪の男の人、そしてオレンジの髪のプロポーションがいい美人さんだった。ブルックさんのインパクトが大きすぎたのか私は彼らの視界には入っていないらしい。近くの樽に腰掛けて話が終わるのを待つことにしよう。
美人さんを褒めるブルックさん……だけどパンツ見せてくださいは流石にひどい気がする。ポケモンスクールに通ってる子たちレベルか。ほら、怒られちゃった。黒いスーツの人に質問攻めされるブルックさん、そりゃ気になるだろうけど……あ、麦わらの人がなんかあるみたい。
「そんなことよりお前!俺の仲間になれ!」
「ええ、いいですよ」
「うおおおおおおおおいっ!!!」
「あ、おめでとうございます」
凄いな麦わらの人。ブルックさんの見た目を気にせずに仲間になれと来たもんだ。他二人の突っ込みがさえわたっている。とにもかくにも仲間が増えることは素晴らしいのでボソッと祝福を述べたらそれでようやく私の存在に気づいた麦わらの人以外の彼らはギギギという感じで首を動かし、私と目が合った。
「こども~~~~!?」
「あ、はい。子供です。ユウリっていいます、初めまして?」
なんというか、騒がしくて楽しい人たちだなっていう印象。樽の上でひらひらと手を振る私を見たオレンジの女の人はいきなり焦った顔になってつかつかとこちらに歩いてくる。私が首を傾げていると、グッと顔を掴まれて、覗き込まれた。
「あなた!大丈夫!?どうしてこんなところにいるの!?あのガイコツに変な事されなかったでしょうね!?パンツは見せちゃだめよ!?」
「えーっと、ブルックさんには特に何もされてないですし、むしろ楽しませてもらいました。今は旅の途中で、ゴーストシップには宝物が付きものだから寄っただけです。あとパンツは見せてません」
「流石の私でも子供のパンツなんて見せてもらおうとは思いませんよ!?」
「さっきナミさんには見せろっつってただろクソガイコツ。おろすぞ!」
「近くに船はなかったし……もしかしたらこの子、置いて行かれたのかも」
「あの~~?私は一人旅の途中ですし船は持ってません。それよりもブルックさん放っておいていいのですか?」
どうやらナミというらしいオレンジの髪の女の人は、こんな辺鄙な場所で一応人間だけど見た目完全にホラーなブルックさんと一緒にいたせいであらぬ誤解を招いてしまったらしい。そっか~海賊所帯だと感覚麻痺してるのかもしれないけど、こんな危ない海を子供一人で旅してるだなんて普通の人にとってはおかしい事なんだよね、きっと。
とりあえず誤解の部分は否定させてもらってから、麦わらさんとブルックさんが肩を組んで下にあるらしい海賊船に降りようとしてるのを指さすと、ナミさんはがっくりと肩を落として頭を抱えた。なるほど~なんだか力関係が見えてきたぞ。あの麦わらの人が中心で、周りを振り回してる感じだ。だけど周りの人はそれが当然で、それを承知で着いていってる感じかなあ。
「まったくルフィときたら……サンジ君、帰るわよ!」
「了解ナミさん!」
「あ、さようなら~。ブルックさんの事よろしくお願いしますね~」
「アンタも来るの!」
えええ~~~!?どうやらブルックさんを連れて帰ることを嫌々承諾して、二人もナミさんとサンジさんというらしい二人もそろって下の船に帰るようだ。なので私もそろそろ出発しようと思って別れの挨拶を告げると、いきなりナミさんに小脇に抱えられて私も船に飛び降りることになってしまった。余りの早業に文句を言う暇すらもなく、私は彼女に抱かれてフリーフォールを味わうのだった。
「ヨホホホホ!私この度この船でご厄介になることになりました!死んで骨だけ!ブルックです!どうぞよろしく!」
「ふざけんななんだこいつは!あとそのチビはもっとなんだ!?」
「あ、はい。私ユウリって言います。ちょっと探し物をしてて旅をしてるんですが、さっきこの人に抱えられて降りてきました。よくわかんないですけど初めまして」
「ガイコツだーーー!!!」
船首はライオン、ふかふかの芝生、綺麗に手入れされた船……年季の入ったモビー・ディック号とはまた違う新しい船だ。そして、旗を見ればわかる、海賊船。こんな僻地にいるからにはやっぱりと思っていたけど、普通にほっとけないからと子供を自分の船に連れてくる海賊が白ひげさん以外にもいたなんて。また騙されてるのかもしれないけども。
そして、ブルックさんには皆さんやっぱり総すかん、すごい鼻の長い人とかは十字架持って震えてるし。それよりも私の目を引いたのは、もこもこで、帽子を被っていて、角が生えてて、手足に蹄があるにもかかわらず、2足歩行している不思議な生き物が、当然のように人の言葉をしゃべって鼻の人と抱き合っていたことだ。新種のポケモンかな?うーん、オタチとかと同じ感じかなあ?でも人の言葉喋ってるし……はっ!違う!ポケモンじゃない!ごそごそボールを探してる場合じゃないのだ!コミュニケーション!
「えっと、初めまして。ユウリっていいます。貴方……人間?」
「あ、俺はトニートニー・チョッパー。人間じゃないぞ、トナカイだ。ヒトヒトの実を食べたんだ!」
「トナカイ!そうなんだ。へー、悪魔の実って不思議だね~。ねね、握手してもらってもいい?」
「おう!いいぞ」
なるほど、トナカイのチョッパーさん。芝生に膝をついて彼に話しかけた私に、いやな顔一つすることなくきちんとお話してくれて、握手もしてくれる。硬い蹄の感触だけど、なんだか感動した。私の後ろではブルックさんを仲間にするしないの論争が起こってるけど、これはどうしたらいいのだろう?
「ユウリはなんでゴーストシップの上にいたんだ?」
「宝物があるかなって思って、寄ってみたの。まさか海賊船に連れてかれるのは予想外だったけど」
「悪いんだけど、子供一人残して帰るのは論外よ。アンタが強かろうがどうやって一人で旅できるかは関係ないわ。というか何歳?」
「9歳です」
「猶更ほっとけないわよ」
「優しい人なんですね」
「ああ!ナミは怒るとこえーけど、普段は優しいぞ!」
ああ、一言余計な気がする。ほらやっぱり、怒られた。確かにチョッパーさんが言う通りに怒ると怖いかもね。正直、白ひげさんや赤髪さんの覇王色を見た後だと怖がる気にはなれないけど、私に抱き着いて震えるチョッパーさんの背中をよしよしとしていると、ブルックさんのことには一応決着がついたのか、夕食を食べてからという話になった。ディナーにしましょう!と仕切るブルックさんにお前が決めるなと総突っ込みが入る。これやってけるのかなあ……。
「ん、お前行かないのか?」
「むしろ私行っていいんですか?」
「子供が遠慮するんじゃねえよ、食いてぇなら食わせてやる。メシに関してハブにするなんざ俺が許さねえ。来な」
「えっと……ご馳走になります」
私はどうしたらいいのだろうか、とおろおろしてると、サンジさんが移動しない私を見てこないのかと聞いてきた。航海中の食料の貴重さは知ってるつもりだったので行っていいのかと尋ねると、来ていいとの返事。ぞろぞろと船内に移動する皆さんに続いて、私も遠慮がちに船内に入らせてもらう。
ポケモンたちはモンスターボールに入れておけば食事の必要はない、んだけど外の様子は伝わってしまうのでちょっと申し訳ないことになっちゃうな。早いとこ抜けてみんなを出せる環境に行かなきゃ。マルコさんや白ひげさんから緊急時以外は出来るだけポケモンを見せないように言い含められてるし、ポケモンたちもそれに納得してるけど……やっぱり、彼らと一緒にご飯が食べたいし。
夕飯は物凄く美味しかった。すごい、白ひげさんの所の料理に並ぶ、ともすれば上回っているかもしれないぐらいにサンジさんの料理はおいしかった。思わずおかわりしちゃってあとで恥ずかしくなるくらい。ブルックさんなんか顔面の骨を料理で全部汚してまで食べてるくらいにはがっついていたし。夕飯の後で始まったのはブルックさんの身の上話。
ヨミヨミの実を食べたブルックさんはある日仲間と共にこの魔の三角地帯に入ったのだけど、同業者の海賊に負けてしまって一味は壊滅、ブルックさんは悪魔の実の力で黄泉の国から帰ってきたのはいいものの、体を探すのに時間がかかってしまい体に戻った時には白骨化していて、それで今のブルックさんが誕生したらしい。なるほど~。
アンタ鏡見たことあるの?とナミさんが手鏡を見せるのだけれど、ブルックさんはそれを異様に嫌がった。その理由は……ブルックさんはどうやら鏡に映らないらしい。吸血鬼かと怯える皆に一度落ち着いたブルックさんが語ったのは、悪魔の実とはまた別の話だった。数年前に、誰かしらに自らの影を奪われ、日の光を浴びれなくなったという話だけど、それがいったい誰なのかをついぞ明かすことはなかった。ルフィさんが手伝うと息巻いてる。だけどブルックさんは人に会えたこと、つまり私たちに会えたことを感謝し、仲間入りを断った。
そして大体話し終わったタイミングで振動と一緒に、何というか微妙なデザインをした一目で幽霊と分かる何かが部屋の中に入ってきた。部屋の中にいる皆はそれにぎょっとしてプチパニック状態だけど、ブルックさんだけは心当たりがあるらしく、ガタッと立ち上がる
「しまった!まさかこの船が監視下にあっただなんて!貴方たち、海で流し樽を拾いませんでしたか!?それは罠なんです!」
「え、ええ!拾ったわ!」
「やはり!」
そう言ってブルックさんは扉を開けて外に出ていく。私たちも彼の後に続くと、そこには予想外の光景が広がっていた。目の前にあるのは、まるで巨大な口のような何か。ブルックさんが言うにはこれは門らしい。さっきゴーストと一緒に襲ってきた振動はこれとのこと。流石は偉大なる航路……何があるか分からないね。マルコさんの教えを大事にしなきゃ。無茶しない、考える、冷静に!よし!覚えてる!
「船の後方を見てください!貴方たちは狙われていた……!この海をさまようゴーストアイランド……!『スリラーバーク』に!」
「なんでここに島があるんだよ!?」
「さまよう島……!?でも記録指針には何も反応してないわ!」
「さもあらんですよ!この島は西の海から流れてきたのです!磁場を発していない!だが……なんという幸運でしょう!」
後方を振り返ると、そこにはおどろおどろしい感じの台地が広がっていた。ところどころにある墓石、壊れかけの古城、チャペル……確かにゴーストアイランドというのも分かる話じゃないかな。そしてブルックさんはタンッと軽い音を立てて今立ってる場所から船首までをジャンプした。ああ!身が無くて骨だけだから軽いんだ!
「いいですか!貴方方は必ず後ろの門を破ってココから脱出してください!決して錨を下ろすことの無いよう!ルフィさん!影を取り戻してくれるといってくれたこと、本当にうれしかった!皆さんも!温かい食事、感謝します!では、これにて失礼!縁があれば、どこかの海で!」
「あ!おい!お前能力者だろ!?海になんか飛び込んだら……!」
「ヨホホホホ!」
うわっ!?走って海の上を移動してる?そうか、短距離だったらそういうことができる人もいるのか……この世界は広いなあ、面白い!笑い声をあげてスリラーバークに行ってしまったブルックさんを見送って私もあの島に入ってみようと考えた。だって、新種のゴーストポケモンとかがいそうな雰囲気だし!お化け屋敷だのなんだのは正直全く怖くないのだ。
「とにかくあの門壊して外に出るわよ!いいわねみんな!」
「ん?なんか言ったか?」
「行く気満々だぁ~~~!!!」
にんまりとした顔でこちらを振り返ったルフィさんに、一味の皆さんの突っ込みが突き刺さる。やっぱり、この人が船長さんというわけか。まあ、この船が出ていくのかどうかは自由だし、危うきには近寄らずという言葉もある通りに逃げるのが正解だろう。私は入るけど。どうしよっかな、ミロカロスに乗せてもらって海を突っ切るのがいいかな。カイリューは目立つしなあ。
「アンタ……笑ってるけどまさか入る気じゃないでしょうね?」
「入りますよ?冒険心がうずきます」
「この子大人しいだけのルフィだわ!だめよ!危ないんだから!遊びじゃないのよ!?」
「偉大なる航路にいる時点で遊びで冒険なんかしませんよ?」
「覚悟が据わってる分、タチが悪いわね……」
よーし、入るぞーと思ってるとナミさんに抱き着かれて止められた。おおふ、振りほどくわけにはいかない、いい人だし。うーん、どうしようかな、と私は彼女のぬいぐるみのような扱いに苦笑するのだった。
骸骨紳士のせいでいまいちインパクトが薄くてルフィさんの興味を引けなかったユウリさん。ポケモン出してたら違ったかもしれないですね。あとチョッパーに興味津々。
そして冒険という言葉に弱いユウリさん、しょうがないですね、ずっと地方を一人旅して冒険してましたからね。よし次回でスリラーバークにゴー!
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