カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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スリラーバークと私と狼

「さっきの大きな振動があの門が閉じたことだと考えれば私たちはあの口に食べられたことになるわね。霧で分かりづらいけど、門の延長に伸びてる壁……この島を囲ってるわ」

 

「聞いてみんな……実は私『島に入ってはいけない病』に感染してるみたいなの……!」

 

「おれも!おれもそれ!」

 

「へー、さすがは偉大なる航路。そんな病気があるんですね」

 

「んなわけねえだろ。純粋かお前」

 

「よし!じゃ船付けろ」

 

「『冒険準備万端病』かお前は!」

 

 ロビンさんというらしい黒髪のお姉さんが説明した通り、深い霧の中うまく観察してみると円周状の壁が島一帯を包囲してるのが分かった。一味の中では既に上陸する組としない組に分かれているみたいで、なぜか私はナミさんに掴まれて上陸しない組にカテゴライズされている。なんでさー、面白そうなのに。見た目チンチクリンかもしれないけど、ポケモンたちのおかげでそんじょそこらの海賊には負けないんだけど。確かにポケモンいなかったらダメか、はい。

 

 腕が太くって、パンツ一丁のフランキーさんという人は、船大工みたい。この船、サウザンドサニー号というらしいのだけど、それにはいくつか小型のメカを仕込んでるらしくて、折角だから上陸に使えとのことらしい。あのバカたちが安全を確認したらアンタも上陸していいから、それまでは一緒に留守番しましょ?というナミさんにまあ、それならと頷いた私もなぜか引き連れられて、サウザンドサニー号の下に降りていく。

 

「わー、これって……!」

 

「メ゛リ゛~~~~!!」

 

「またメリー号にあえた~~!!」

 

「おうよ!これが買い出し船!小型蒸気船『ミニメリー2号』だ!」

 

「わぁ……!すごい」

 

 蒸気の煙を吐き出しながら、私たちを乗せた羊のような船首を持つ小型ボートがサウザンドサニー号の側面から発進した。どうやら、彼らにとってその船首と名前には思い入れがあるようで、一緒に乗っている鼻の人、ウソップさんは感涙の涙を流していた。船から離れたから、他の人たちの声は聞こえないけど、きっと彼らも何かしらのノスタルジーに浸ってるのかな?

 

「えっ!?」

 

「ちょっ!?」

 

「あっ!?」

 

 ガコン!と音がして私たちが纏めて空中に投げ出される。発射点であるミニメリー号をみると、岸壁に乗り上げていた。なるほど、それで踏ん張れなかった私たちが投げ出されたわけですね……って!ええ!?ちょっと!落ちるんだけど!?ナミさんの悲鳴が木霊する中、私はまっすぐに下に向けて落下していく。途中でまずいっと思って腰のボールをまさぐろうとすると同じくヤバいと思ったらしいチョッパーさんがいきなり物凄く大きくなって私を抱きかかえたせいで手が滑り、ボールを掴めなかった。

 

 ガッシャンとと音を立てて落ちた私たち、下には……うわ、骸骨の山!?ブルックさんではないね……。チョッパーさんが下敷きになってくれたおかげで無事だった私は、すぐに起き上がって安否の確認を始めた。

 

「皆さん大丈夫ですか!?」

 

「あいたたた……ごめんなさい、舵を誤ったわ。6,7mは落ちたわね……」

 

「こんなところに堀があるのかよ……竹槍が敷き詰めてあったりしたらヤバかったな」

 

「とりあえず移動しよう。海岸より下はなんか怖いぞ俺。能力者だし」

 

「そうね……ってなんか聞こえない?」

 

 どうやらみんな無事らしい、さすがは海賊、頑丈だ。全会一致での移動が決まったので、どっちに行こうかと話していると……何かの唸り声が聞こえた。4人でシンクロして振り返ると、3つの首を持ったつぎはぎだらけの犬っぽい何かが唸りながらこちらに歩いてきた。おっと!?新種の何か!?ゴースト、ノーマルとかだったりしない!?ダグトリオ、ドードリオとかと同じ!?目を輝かせる私をよそに、3人の顔が青くなる。

 

「ケルベロスだ~~~!!」

 

「知ってる生き物なんですか?」

 

「知らないわよ!とにかく逃げるわ!」

 

「あ、何とかします」

 

 完全に逃げ腰モードになった3人に断って前に出る。うーん、図鑑は反応しないってことはポケモンじゃないのかぁ。今にも襲い掛かってきそうな仮称ゾンビケルベロスを前にして、ナミさんが血相を変えて私を連れ戻そうと駆け寄ってくる。とりあえず私はボールを一つ放って、出てきた子に指示を出した。

 

「ザシアン、いかくしちゃって」

 

「ル゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ンッッッ!!!!」

 

 光に包まれて出てきたザシアンが、気色の笑みでこちらに襲い掛かろうと足に力を込めたケルベロスの機先を制す形で滅茶苦茶ド迫力ないかくを披露する。鼓膜を揺らし、しゃれこうべを振動させるそのいかくを目にしたケルベロスはすぐさまひっくり返って腹を出して降伏のポーズ。私は顔を近づけてきたザシアンをわしゃわしゃと撫でる。ケルベロスくん、彼我の戦力差が分かっててえらい。

 

「へー、ちゃんと3つ頭が付いてるんだね。ん?君もしかして狐?」

 

「ゴォンッ!」

 

「グルッ」

 

「きゅーん……」

 

 完全に服従のポーズになったケルベロスに近づいてよく観察してみると、真ん中と左はちゃんと犬だったんだけど、右の頭はよく見ると狐だった。どうやら狐の頭は自分だけ違うことを気にしてたらしく、私がそれを指摘すると服従のポーズをとってることを忘れて怒り出した。ザシアンが喉を鳴らしただけで一瞬でゆるしてくださいと言わんばかりの顔になったけど。んー、よく見ると、というか見なくてもこれ死体だね。何者かが人為的につぎはぎして、生き返らせたとかそんな感じかな?生命活動をきちんと行なってるのは不思議だ。でもちょっと臭い。でもゴーストポケモン特有の魂のエネルギーみたいなものは感じない。この世界は不思議なことばっかりだなあ。

 

「3秒以内にいなくなったら何もしないであげる。さーん」

 

「キャンキャンコーン!」

 

「1秒もいらなかったね」

 

 ポケモンじゃないし、私の管轄外だけど……殺す必要性も傷つける理由も持ち合わせていなかったので、それなりに頭がいいらしいケルベロスに対してちょっと脅しをかけてみるとすぐさま脱兎のごとく、犬だけど……駆け出していなくなってしまった。何だー、根性なしめ。あ、それよりも

 

「そのポーズは何ですか?」

 

「おめーがいきなりよくわかんねえもん出すからだよ!」

 

「よくわからないとは失礼な!どこからどう見てもかっこいい狼でしょう!ザシアン、挨拶してあげて」

 

「ルォン」

 

「大丈夫だよナミ、ウソップ。敵じゃない。凄く落ち着いてて、頼りになる感じがする」

 

「アンタが一人で旅を出来ている理由って、その子?」

 

 振り向くと、一番下に大きくなったチョッパーさん、その上に肩車する感じでウソップさん、さらにその上に逃げるような感じでナミさんがトーテムポールのごとく屹立していた。もしかしてザシアンのいかくにびっくりしちゃったのかな?けんのおうの状態だったらもっとすごいことになるんだけど……。チョッパーさんはどうやらザシアンの言ってることが分かるみたいで、信用できると踏んでくれたみたい。トーテムポールが崩れ去ってナミさんがザシアンを指さして私に尋ねてくる。

 

「そういうことです。私は強くないですけど、私のお友達はとっても強いんですよ。彼らが居るから、私は一人で旅を出来るんです」

 

「彼ら……ってまだその子以外にもいるんだ」

 

「いますよ~。それよりも、移動しないでいいんですか?」

 

「そうね、そうしましょ。アンタのおかげで助かっちゃったわ、ありがとユウリ」

 

「どういたしまして、良かったねザシアン」

 

「グルッ」

 

 ケルベロスは追い払ったけど、依然私たちは堀に捕まったままだ。カイリューを出して一人ずつ船に運んでもらうという手もないわけじゃないけど、出来るだけ手は秘密にしておきたい。普通に堀を移動したほうがいいだろう。そんな感じでチョッパーさんが倒した棒の方角に暫く歩いていくと階段があった。ザシアンに乗った私が先行する形で階段を昇り切り、3人を呼び寄せる。

 

「どうやらこの先は森みたいです。サウザンドサニー号とは随分引き離されちゃいましたね。どうします?」

 

「あ~~~戻れねえなこれ!くっそ、どうすんだよ……」

 

「お困りのようですね……」

 

「ぎゃ~~~~~っ!?」

 

「どなた様ですか?」

 

 森の入り口あたりでやんややんややってた私たちの前に現れたのはこれまたつぎはぎだらけの青白い顔をした男の人だった。見聞色に何となく何かいるなーっていうのは感じてたんだけど、この人だったのか。何というか、生き物としての匂い?感覚?みたいなものが薄くて全然見聞色が役に立たないんだよね。

 

「私の名はヒルドン。どうやら不慮の事故でこちらに来られた様子……ここらの森は夜更けになるとこの世のものとは思えぬほど危険な森に変化しまし……。もしよろしければ私の馬車でドクトル・ホグバックさまのお屋敷にご案内いたしまし……」

 

「ドクトル・ホグバック!?」

 

 う、胡散臭いな~!何というか、都合が良すぎる。死体が動いていることといい、偉大なる航路では不思議なことばっかりだ。それに目の前の人もなんだか人間っぽい感じはしない。なんか無機質すぎてちょっと恐ろしいほどだ。ザシアンもそれを感じているようで、口の端から牙が見えている。首元を撫でて彼女を落ち着かせる。ドクトル・ホグバック……私は知らないんだけどドクトルってことはお医者様なんだよね?うーん、ザシアン連れてったらちょっとまずそうだこの場合……。

 

「あっ!ちょっとどこ行くのよ!?」

 

「お腹が減ったみたいなので何か狩って食べるみたいです。ほっといても大丈夫ですよ、匂いを辿って戻ってきます」

 

「そ、そう?ルフィに負けず劣らず自由ね……」

 

 その場から、ザシアンを逃がして周りを探ってもらうことにした。ザシアンは大型のオオカミだけど、この深い霧の中でザシアンを追うのは至難の業だし、ザシアン自体も鬼のように強い。少なくとも、このまま連れて行って身動きができない状態にされるよりかはこっちのほうがいいと思う。そもそも伝説のポケモンであるザシアンをどうにかできるくらい強いのならこんな回りくどい手で私たちに接触しないだろうし、何か無事でいてもらわなければならない理由があるんだろう。

 

 いつの間にかそこにあった馬車、繋いである馬には布が被せてあってよくわからない。というかそもそも流し樽で狙われてるのがどうとかって話じゃなかったっけ?まあ、ポケモンの巣穴に入らずんばポケモンをえずということもあるし、今はその罠に乗っかっていくことにしよう。最悪、カイリューとこっそりついてきてもらう感じのザシアンにお願いして全部ぶっ壊せばいいのだから。私はウキウキのチョッパーさんに続いて馬車に乗り込むのだった。

 

「まさかドクトル・ホグバックに会えるだなんて……!表舞台から姿を消した天才外科医がこんなところで隠遁生活を……」

 

「チョッパーさんはお医者様が好きなの?」

 

「当然だろ!俺は医者なんだぞ、有名な医学書に載ってる名前は覚えてるよ!」

 

「え!?チョッパーさん船医だったの!?すごいね~!」

 

「そ、そんな凄いなんて言われても嬉しくねーぞこのやろめ~~~」

 

「これ喜んでますよね?」

 

「チョッパーは褒められるとそうなるのよ」

 

 意外、チョッパーさんお医者様だった。この世界の医師免許ってどうなってるの?もしかしてないのかな?つまり実地経験を積んでお医者様になろうとする感じなのかな?そもそもトナカイが船医とか私じゃ考え付かな……いや、ラッキーにハピナス、タブンネとか医療に携わるポケモンがいないわけじゃないし、そういうこともあるの……か?

 

「ところで、外のアレソレはなんですか?」

 

「おや、何かお見えでしか?」

 

「え?ほらそこら辺でわちゃってるじゃないですか」

 

 私が外を指さすと、そこには人と動物を掛け合わせたかのようないろんな生き物が魑魅魍魎のごとく跋扈していた。いやー、ポケモンタワーを思い出すなあ。ゴーストタイプのポケモンがそこかしこから魂を抜きにやってくるんだよ。ちょうどこんな感じで―と私がのほほんとしていると、ナミさんたちは悲鳴を上げてヒルドンさんにもういいです帰りますと言って混乱した挙句、気を利かせたヒルドンさんが馬車を反転させて森の入り口まで戻してくれることになった。外に出たヒルドンさんを待つことしばし、一向に馬車が動かないのに気づいた私は馬車のカーテンを開けて外を見ると、馬車のガワだけ墓場に放置されていることに気づく。

 

「おいて行かれちゃいましたね~」

 

「な、なんでアンタはそんなに落ち着いてられるのよ!?怖くないの!?お化けよお化け」

 

「ゴーストが存在するってわかり切ってるのに怖がる理由なんてありませんよ。対処法ならいくらでも」

 

 私はカイリューのボールを手に取りながら、馬車から降りるのだった。なんか、ナミさんもウソップさんもチョッパーさんも頼りないなあ。ゴーストタイプにはゴーストタイプをぶつけるのがいいんだけど。ここは相棒に頑張ってもらおうかな。要はいかくすればいいんだ、ザシアンの時みたいに。何だったらフェアリー技とかもありだしね。シャンデラじゃ過激すぎるから、うまい事やってもらおう。




 ザシアン、ケルベロス相手に格の違いを見せつける。ザシアンがいれば大概のことは何とかなりますのでクッソ暢気なユウリさん、ゴーストポケモンのおかげで異様なホラー耐性を誇ってます。全く怖くない、当然のように魂を抜きに来る連中が跋扈する世界出身は違いますね。

 ではまた次回に。感想評価をよろしくお願いします
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