カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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ゾンビと私とドラゴン

 おそらく、何らかの罠によって墓場のど真ん中に置き去りにされたのであろう私たち。とりあえず外に出ないことには始まらないので私は馬車の扉を開けて外へ出る。ザシアンはどうやら他の場所を探索してくれるつもりらしく、姿が見えない。さて、何が出るかなあ。ちょっとだけ緊張した私は、あたりを見聞色で警戒……いるね、結構。土の中かな?

 

「なんでよりによって墓場の中なんだよ……」

 

「ゾンビとかで襲うつもりなんじゃないですか?ほら、あれとか」

 

「おいおい滅多なこと言うもんじゃないぜ?ゾンビだなんているわけ……」

 

「ちょ、ちょっと……何よアレ」

 

「うーん、腐った死体、リビングデッド、ゾンビのどれかじゃないですかね?」

 

「いやあああああああっ!!!!」

 

 ナミさんの絹を裂くような悲鳴と重なる様にウソップさんとチョッパーさんの悲鳴が上がって真ん中で囲まれてる私は結構うるさい。というかなんで3人とも私にすがって抱き着いているんだ。こんなチンチクリン相手に。地面がボコボコと蠢いて、埋まっていたらしい死体の手とかが出てくる。うわ、におい結構ひどい。鼻が曲がっちゃいそう。死体だね、どう考えても。でもそれで生きてるんだから不思議だな。

 

「とりあえず私足止めするんで逃げてもいいですよ?」

 

「アンタも逃げるのよ!ここで置いてったら私一生後悔しそう!」

 

「そうだぞ!俺だって海賊だ!子供一人に任せちゃあ男が廃る!」

 

 うーん、みんなすごく良い人。正直一人になった瞬間ザシアンを呼び戻してカイリューに乗って離脱という形で島から逃げようかな、と思ったけど予定変更。最後まで付き合うことにしようかな。ボコボコと音を立てて土の中から現れるゾンビ軍団、ポケモンだったら楽しいのになあ。これが人の死体とか……尊厳を何だと思ってるんだろう、これやった人は。地面に落とすようにボールを投げ、光と共にカイリューが現れる。

 

「ド、ド、ド、ドラゴン~~~!?」

 

「りゅっ!」

 

「すっげええええ!!!」

 

「行くよ、カイリュー!ぼうふう!」

 

「うわあああああっ!?」

 

 カイリューのぼうふうが吹き荒れて、土の中から出てきてこちらに向かってこようとするゾンビたちを残らず吹き飛ばす。ゾンビたちは悲鳴を上げ……悲鳴?しゃべれるの!?なんだ、話せるなら解決は楽じゃ……地面や墓石に頭をぶつけて悶絶してる。チョッパーさんとウソップさんはカイリューのフォルムに何かを感じているのか、恐怖を忘れて目を輝かせて叫んでいる。

 

「…………ああ!カイリュー、ほのおのパンチ!」

 

「うおおおおおっ!火だ!腐れやべー!」

 

「あぶねえなこのドラゴン!焼けたらどうすんだ!放火魔か!」

 

「この腐れ外道!」

 

「なんかめっちゃ怒ってるわよ!ってなんでそんなに笑ってられるのよ!」

 

「死体は荼毘にふすべし、と思いましたけど間違ってなかったんですね。弱点発見。カイリュー!ほのおのうず!」

 

「りゅ~~っ!りゅっ!」

 

「「「ぎょわあああああああっ!?」」」

 

 生身にはとりあえずほのお技を使えばいいのでは、という安直な考えのもと外すように指示をしたほのおのパンチは、見事にゾンビたちの弱点に当てはまってたらしくて滅茶苦茶悪口言ってくる割に右手に赤々と炎を灯すカイリューからは全員一塊になって脱兎のごとく逃げる。なるほど、燃えたらまずいのか。まあ、意志がきちんとあるようなので足止めでとどめておこう。カイリューの口から爆炎が吐き出され、ゾンビたちの周りに滞空するような渦を巻いて彼らを閉じ込める炎の檻を作り出す。

 

「とりあえず足止めです。どうします?歩いて森を抜けるか、あっちにある屋敷に行くか」

 

「屋敷だ!屋敷の方が近え!とにかく逃げろ!」

 

「そうだな!もうおれいっぱいいっぱいだ!」

 

「仕方がないわね!」

 

 私が森の中に戻るか、墓場の近くにある屋敷のどっちに行くかを尋ねると、ウソップさんが即決で屋敷を選択して走り出した。カイリューが私を抱え上げ、るまえにナミさんに抱えられた私はそのまま運ばれる荷物のようになる。これどっかでやったことあるような……カイリューはチョッパーさんを猫掴みしてどしどしと音を立てて私たちについてくる。

 

 走ることしばし、墓場から少し離れたところにある大きな洋館にたどり着いた。カイリューはそこでチョッパーさんを放し、私の後ろに立った。

 

 ごめんください。と声をかけると中に明かりがともって、トンネルのような道が開けた。そのタイミングで、カイリューが何かに気づいたように私を抱え上げ、一気に空へ飛び立った。

 

「ちょっと!カイリュー!」

 

「ユウリ!?」

 

「りゅうっ!」

 

 これだけは譲れない、といった感じのカイリューはそのまま高度を上げて、島の別の場所に向かって猛スピードで飛んでいく。一体彼女は何に気づいたのだろう?私の指示を聞かず、無視をするなんて……そうして降り立った島の端、岸壁の上にて私はカイリューに降ろされた。すぐに戻りたいところだけど、ちょっとこれは聞いとかないとまずいかも。

 

「カイリュー、どうしちゃったの?」

 

「りゅぅ、りゅっりゅ、りゅうう」

 

「あの屋敷の中に、なんかいろんな意味でヤバそうなのがいる?というか中から死臭が物凄くするから行かない方がいいと思った。なるほど、それナミさんたちヤバいよね?」

 

「りゅっ!?」

 

 あっ!?といった感じのカイリュー、私を引き離すことでいっぱいいっぱいだったのか。それってつまり、ここに住んでいる所謂支配者と呼ばれる人たちのヤバさを如実に表していた。だってさ、カイリューがとりあえずその場を離れたほうがいいっていう判断をしたんだよ?ポケモンの勘って馬鹿にできないからさ。とりあえずどうしよっかなー。

 

「カイリューは、屋敷に戻るの反対?」

 

「りゅっ」

 

 カイリュー、能天気に見えて実はかなり過保護だ。私を自分の子供か何かと勘違いしてるほどに。私が傷つけようとされれば本気で怒る。カイリューの翼なら一瞬で屋敷に戻ることはできるのだけれど、体勢を立て直してカイリューを納得させるほうが先かもしれない。トレーナーとポケモンは一蓮托生、どっちかが納得してないと途端に息が合わなくなってバトルどころじゃなくなるし……。

 

「とりあえず、ここで暫く休憩しよっか。張りつめてて疲れたし……あの屋敷がドクトル・ホグバックっていうチョッパーさんが尊敬するお医者様のものだったら多分、大丈夫じゃないかな」

 

「りゅ~」

 

 希望的観測だけど、カイリューの勘が外れてる可能性だってある。そもそもがこんな常識が当てはまらない島の話だ、ゾンビなんか見たことないカイリューの勘が狂っちゃってるかもしれない。そもそもあの時、見聞色に敵意は感じられなかった。お医者様の屋敷なら、死臭がしても不思議じゃないし。うーん、でもマルコさんや白ひげさんの油断をするなっていう教えもあるからな~。

 

「ルォン!」

 

「あっ!ザシアン戻って……え?」

 

「サーナッ!」

 

 とりあえず休憩ということで2時間ほど休んでいるとザシアンの声がしたので後ろを振り返ったら、何か人型のものに抱き着かれた。細くて白い体をしていて、緑色の手、胸には赤い突起、真っ赤な瞳に緑色の頭……!見間違えるはずもない、ほうようポケモン、サーナイト。サーナイトは分類の通り、私を強く強く抱擁している。まるで、やっと会えた大事な人かのように。もしかして……!抱き着かれながらバッグを漁り、一つのボールを取り出す。フレンドボール、それを見せるとサーナイトは一層強く私を抱きしめた。やっぱり、このサーナイトは「ユウリ」のサーナイトだ。

 

「ルォン」

 

「サナ……」

 

「いいよ、ありがとうザシアン。そっか、久しぶりなのかなサーナイト。どうしてこの島にいたの?」

 

 ずっと私を抱きしめるサーナイトを近くに寄ってきたザシアンが窘めるように鳴いて諫める。サーナイトは名残惜しそうに私から離れて、ふわ、とほほ笑んだ。やだかわいい。とりあえず何でこの島にいるのか分かんなかったので図鑑をかざしつつ尋ねてみる。やっぱり、おやは私か。それで性別は♀の特性はトレース。うん、「ユウリ」の記憶と一致する。

 

 サーナイトは私の疑問に答えるためか、サイコパワーで私の脳裏にビジョンを浮かべた。いつの間にかこの島にいたこと、ゾンビに襲われたけど撃退せずに逃げて、逃げ隠れながら今まで生きてきたこと。途中で情報を集めて、この島で行われていることを知ったこと。さまよってた矢先にザシアンを見つけて付いてきたこと。あとポフィン食べたい。なるほど。甘い味のポフィンをあーんしてあげながら、具体的に何が行われてるのか聞いてみる。

 

 は!?ゾンビの正体はつぎはぎして改造した死体に、人から引っぺがした影を押し込んで動かしたもの!?それをしてるのは、屋敷の奥にある建物にいる人間かどうかも分からないくらい大きなヤツで、部下が何人もいる。そういえばブルックさんは影を奪われたって言ってたね。それと、影を取られた人は殺さずに船に戻されるらしい。そしてそのままその船は追放されるのだとか……。ってことは!

 

「サウザンドサニー号に帰れば合流できる……!?」

 

 既に屋敷内に囚われたナミさんたちがどうなってるか分からないけど、乗ってきた船を再利用して島流しにしてしまうなら、一度あの門から出されちゃえばこの霧の中でスリラーバークを探すことは難しい!最悪影を取られた場合、もう一度取り返せるチャンスを作るためには拠点を失うわけにはいかない!戻って流される前にサウザンドサニー号を守らないと!

 

「カイリュー、サウザンドサニー号の位置は覚えてる?」

 

「りゅぅ」

 

「うん、じゃあそこまで行こう。サーナイトはどうしたい?」

 

「サナッ!」

 

 もう離れない、と私に再度抱き着いたサーナイトは私ごとサイコパワーで浮遊した。ついてきてくれるんだ、ありがとう。手持ちが増えたなあ、とりあえずはサウザンドサニー号に戻ってから考えよう。飛び立ったカイリューに先導される形でサーナイトは私とザシアンを持ち上げて付いていく。島は意外と狭くて、すぐにサウザンドサニー号を見つけることができた。あらら……もしかしてもう荒らされた感じかな?

 

「結婚だと~~~!ふざけんなぁ~~~~!!!」

 

「あ、サンジさんだ」

 

「うおっ!?ユウリちゃんか!?その……ドラゴンと狼と美女!?」

 

「美女だって、良かったねサーナイト」

 

「サナッ♪」

 

 サウザンドサニー号の縁で天に向かって叫んでいたサンジさんが飛んでくる私を見つけて驚いて飛びのき、サーナイトを見て目をハートにしている。美女と呼ばれたサーナイトはもじもじてれてれと恥ずかしそうだけど、褒められて嬉しそう。あっ!チョッパーさんとウソップさん居る!ルフィさんも、フランキーさんもロビンさんもゾロさんも!あっ……ルフィさん、サンジさんゾロさんの影がない……!

 

「すっげぇ~~~!なんだそれ!?お前なんなんだ!?」

 

「私のお友達、仲間だよ!それよりも、ナミさんは!?」

 

「あ、ああ、お前がいなくなってから色々あって……ナミは攫われちまって敵と結婚式させられそうになってんだ」

 

「…………なんで?」

 

「俺たちが聞きてえよ!」

 

 ルフィさんは初めて見るポケモンたちに目を輝かせて周りをぐるぐると周り、ロビンさんは興味深そうにザシアンを見ている。サンジさんはさっき結婚は許さんと吠えていたのにも関わらずサーナイトに夢中だ。仕方なしに私はウソップさんに私がいなくなってからのことを聞くとどうもやっぱりあの屋敷の中にいたドクトル・ホグバックという人がゾンビの製造元らしくて、王下七武海の一人であるらしい、ゲッコー・モリアという人が影を奪ってその中に入れてるんだとか。

 

 王下七武海ってたしか、海軍と協力関係にある特別な7人の海賊のことだったよね?マルコさんや白ひげさんに聞いた話だと格下扱いだったから強いのか弱いのか分からずじまいだったけど、ここでそれが出てくるのかぁ。それよりも、予想通りに影を奪われたみたいだし。途中で離脱しちゃった分私も頑張らなくちゃ。船長のルフィさんはやる気みたいなので

 

「ルフィさん、私も付いていっていい?ナミさん取り返さなくちゃ!」

 

「お?いいぞ!でもお前戦えんのか?」

 

「私は弱いけど、この子たちは強いから!」

 

「……そっか!よーし野郎ども!反撃の準備をしろ!スリラーバーク!ぶっ飛ばしてやるぞ~~~~!!!!」

 

 ルフィさんは、私の同行をあっさり認めてくれた。私は頬をパチンと両手で叩いて、意識を入れ替える。ごめんねナミさん、絶対助けるから!




 新手持ち合流、サーナイト♀です。趣味です。可愛いから。活躍に乞うご期待!

 ではでは次回にまた。感想評価をよろしくお願いします
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