カイリューといっしょ! 作:カイリューはいいぞ
「オーズが……!このガキ……何もんだお前!そのわけわからん生き物といい、能力者の弱点である海水を出しやがったり、オーズの腕を切り落とした狼といい……!」
「さあ?何分私もよくわからないですから。ただ……この子たちは私の大切な仲間だってことです」
「ふざけやがって……ふん、仲間……ね。確かに麦わらはいい部下に恵まれたらしい。いたぜ、俺にもそういうやつらがなぁ……だがな、全て失った!」
仰向けになったオーズの口からルフィさんの影が出てくる。オーズの腹から這い出すように出てきたモリアはその影をむんずと捕まえ、自身の体の中に押し込んだ。こいつ……まだやる気だ。けど……オーズ本体より強そうな雰囲気はない。オーズがあそこまで厄介かつ強かったのは、オーズが痛みを感じなかったために怪我をしても100%のパフォーマンスで反撃してくることに加え、強靭な肉体と大きさ、さらには中身がルフィさんということが大きく影響しているからだ。
それが、モリア一人だというなら話は変わる。私はボールの中に技の撃ちすぎで疲弊しきったシャンデラを戻しながらメタグロスのボールを手に取る。私にはまだフルパフォーマンスを発揮できるポケモンがミロカロスを含めて3匹残ってる。ザシアン、サーナイトも継戦可能だ。私自身の体力が結構まずいっていうことを除けば……モリア相手に対抗は出来ると思う。でも……多分もう私の出番はない、元々彼の獲物だし……と私はボールを収めて踵を返した。モリアが後ろでイラっとしているのが見える。私は見聞色に引っかかったとある人が目の前に着地したので後をお願いすることにした。
「後をお願いしてもいいですか?正直疲れました」
「ああ、任せろ!遅れちまった……モリア~~~!!!!」
「麦わら……か?キシシシシ!随分とまあイメチェンに凝ったな!それなら俺に勝てるか?」
「勝つんだよ!俺が今!お前をぶっ飛ばす!」
まるで空を飛んできたかのような勢いで目の前に着地したのは身長3mを超える大男、上半身の盛り上がった筋肉と背中の刀が特徴的だ。見た目はかけ離れているけど、見聞色で読み取れる気配は変わっていない。この人はルフィさんだ、何をどうやったのか1夜にしてルフィさんは結果にコミットしたらしい。私の未熟な見聞色でもビンビンに強い気配を感じることができる。後ろで笑うモリアよりも。十分に離れた私は、いつも通りとぐろを巻いたミロカロスの上に座って結果を見守ることにする。もしルフィさんが負ければ、次は私だ。だけど……負ける姿が思い浮かばないのはなぜだろうか。
空がいつの間にか白んできた。タイムリミットが近い証……影を奪われた人は太陽の光を浴びると存在を保てずに消滅してしまう。故に、この霧の海域でもないと昼間に活動できなかった。だが、移動する島であるスリラーバークが海域から出たらしく、空にはいつのまにか星空が広がっていて、水平線が少し明るくなってしまっている。時間にしてあと10分もないだろう。
「行くぞモリア~~!ゴムゴムのぉ!ブレット!」
「変われドッペルマ……ぐああああっ!?」
「ルフィ~~~!!!」
ウソップさんがルフィさんの頼もしさに泣きながら喜んでいる、けど……私は目を見開いて言葉も出ない。いつの間にかけんのおうから元に戻ったザシアンは目で追えている、つまりは対抗できるみたいだけど……私には残像しか見えなかった。一瞬の踏み込みで腕をその場に置いて伸ばしつつモリアに接近し、殴り飛ばした。モリアは影を身代わりにしようとしたみたいだけど……入れ替わる前に殴られた。そして、橋の残骸の中にすさまじい音を立ててモリアは吹き飛ばされる。
「キシシシ……!なるほどなぁ……お前影を取り込んだのか。俺の能力を逆に利用するとは腹立たしい……!」
「何だ、文句あんのか」
「あるわけねえだろ。海賊の喧嘩……戦争だぜ?何でもありの何したっていい!どうやらお前新世界に行きてえようだな……?すべて失うぞ、俺はそうだった。仲間なんざ生きてるから失う、だから俺は最初から死んでるゾンビを選んだ……!」
「うるせえ!それで俺たちは何年も迷惑してんだ!もうここまで滅茶苦茶になったらお前の負けだろうが!殺される前に俺たちの影を返せよ!」
モリアの言葉に激昂したのはこの島のどこかにいたらしい影を取られた海賊。そうか、この人たちがルフィさんをここに案内したんだ。そして、ルフィさんが強くなっているのは取り戻した影をゾンビに押し込んだようにルフィさんの体に押し込んだから……!じろり、とその海賊を見たモリアの眼力に震えあがった被害者の人はすぐに瓦礫に隠れる。
「殺しが脅しになると思ってる腑抜けがいたとはなあ……いいぜ麦わら……ここまで滅茶苦茶にされちゃ俺の計画もパァだ。お前が取り込んだ影の数……ざっと100体ほどかぁ?すくねぇなおい……!」
「だからなんだ」
「お前が100なら俺は……500,600,800……1000体だ!グッ……オオ……プ」
モリアの影が鳴動し、島のあらゆるところに伸びる。まるで血管のようにドクンドクンと脈動して……モリアに何かを送っているのが見えた。まさかこれ……影?島中の、ゾンビの中にある影を全部集約して自分の中に集めているんだ。ルフィさんはそれを阻止できるだろうに完全に静観の構え。ブクブクと肥え太る様に巨大化したモリアは勝ち誇ったように笑う。ルフィさんはそれを見て両脚に力を籠めると、両足がポンプのように一瞬動いて、彼の身体が赤く火照り、蒸気を出し始めた。
「行くぞモリアアアアアア!!!」
「死ね!麦わらああああ!!!」
巨体の割に軽やかに跳ねたモリアと、足元を爆発させるような勢いで飛び出したルフィさんがぶつかり合う。モリアの攻撃をかわし、腕をかき消す程の速さで顔面に一撃加えるルフィさん、だけど躱したモリアの攻撃は地面に当たり、島を割るほどの亀裂が走る。吹き飛んできた瓦礫はミロカロスが水鉄砲で残らず落とした。危ないけど……見届けないと、私たちの喧嘩の行く末を。
JETバズーカ!の声と共に衝撃波が走るほどの一撃がモリアの鳩尾を確かにとらえる。規格外の一撃にモリアは口から大量の影を吐き出しつつ吹き飛ばされる。許容量を上回ったから……?とにかく、攻撃を加え続ければ間違いなく影を吐き出させることができる。すさまじい速度と威力、勢いで繰り出されるルフィさんの攻撃にモリアは何もすることが出来ずにただ殴られ、影を吐き出すのみになってしまった。圧倒的だ。
「皆わりぃ!俺ちょっと今から無茶するからよ!あとのこと……頼んだ!」
「当然だろ、てめぇは気にせずとっとと暴れとけ、船長」
「おう!ぶっ飛ばせー!」
「ルフィさん!頑張って!」
ルフィさんがさらにドルルン!と音を立てて蒸気を体から噴出し、指を口にくわえる。そして大きく息を吸い込むと、指に空気を思いっきり送った。腕がまるで風船のように膨らみ、体の中を移動する様子が如実に見て取れる。ゴムゴムって技名があるくらいだからルフィさんの体はゴムなんだろう、悪魔の実の力は訳が分からない。ゴムになったって息を吹き込んで膨らむとかありえないし……
現実にできているからそれは信じざるを得ないのだけど。そしてルフィさんの両手が一気に巨大化し、モリアを強い瞳で見据えた。先ほどの一撃のダメージが抜けきれないらしいモリアは口を押えて影を吐き出さないように必死にこらえることで精いっぱいだ。ルフィさんは容赦なく攻撃の準備に入る。
「終わりだモリアアアアアア!ゴムゴムのぉ~~!ギガントJETガトリング~~~!!」
「ぬぐわあああああああっ!!!!??」
モリアに叩き込まれるのは、先ほどのオーズの手に匹敵するほどの拳による打撃の連打。残像を置き去りにして手がぶれるほどの速度で叩き込まれるそれはモリアに悲鳴すら許さずに致命的なダメージを与えていく。モリアが割った大地の地割れをさらに悪化させて島ごと沈みそうなルフィさんの連打は、モリアが地面に埋まって見えなくなるまで続いた。土煙が晴れると……虫の息のモリアと、私サイズまで縮んでしまったルフィさんが両方倒れ伏していた。
「お、おい!影が、影があるぞ!!!」
「麦わら~~!!やってくれたなお前!ありがとう~~!」
「勝っちゃった……ルフィさん」
「ま、当然だな。やっぱ影がねえと落ち着かねえわ。おいチョッパー、ルフィのやつの手当て行くぞ」
「医者~~~~!!!っておれだ!分かったサンジ!」
モリアの支配が解けたからかいつの間にか影を奪われてた人の足元には自らの分身がきちんとあった。朝日に照らされて地面に映し出されたそれに、ルフィさんに協力したらしい海賊の人はとても喜んで地面に倒れるようにその影を抱きしめようとしたり、感涙にむせび泣いたり……自らの元に戻ったそれを喜びとともに迎え入れる。倒れ伏したルフィさんに近づくと、彼は何と寝息を立てていた。これつまり極度に疲労したってこと?!あんな無茶苦茶やってそれで済んでるなんて……ポケモンより頑丈じゃないかな……?
「あんたたち……礼が遅れて申し訳ない!スリラーバーク被害者の会一同……!この恩は決して忘れないわ!ありがとうございました!」
「礼を言われてもな……俺たちはこっちの都合で戦っただけで、お前らはついでに助かっただけだ。気にするほどのことじゃほぶっ?!」
「ナミさんなんでぶったの!?」
「何言ってんの!折角お礼をしたいって人々に!ここで財宝お宝をがっぽがっぽ……!?」
「ナミさん?どうしたの~?ナミさ~~ん?」
刀を背中に2本背負った女の人を始めとしたモリアに影を奪われてた人たちが何かお礼をという提案をすげなく断ろうとしたゾロさんにナミさんは平手で思いっきりビンタした。激戦の後なのに容赦のないそれに私は飛びあがって座っていたミロカロスのとぐろの上から転げ落ちそうになる。尻尾で支えてくれたミロカロスに掴まって何でゾロさんをぶっちゃうのか聞いたら何とも欲にまみれた答えが返ってきた。え~~~~。
ま、まあある意味海賊らしいというか奪えば全部!みたいな感じのことをしないあたりナミさんはまともなんだろう。そうしているとナミさんはいきなり口元を抑えて怯えたような顔になる。急転直下のご機嫌ジェットコースターに私は不思議に思って彼女の前で手を振る。見えてないのでミロカロスの尻尾もぶんぶん、これも見えてない。しょうがないサーナイト、サイコキネ……あ、だめ?はい。
「……そうだわ私大変なことを忘れて……!」
『悪い予感が的中したというわけか。やっとクロコダイルの後任が決まったというのに、また一つ七武海の席を開けるのはまずい』
「落ち着いて聞いてみんな……モリアにいっぱいで頭から抜けてたけど……!この島にはもう一人七武海が来てたの……!」
「今なんて言ったナミ!?じゃああいつが!?」
「あれは……!七武海、バーソロミュー・くま!?」
何か他人と喋る声が上から聞こえたと思ったら私たちのはるか上、がれきの山の頂点にて受話器の付いたカタツムリと何か話している物凄く怪しい大男がいた。怪しいなんてもんじゃない、頭にクマの耳付いてるし、なんだか不穏なこと口走ってるし。というか七武海って言ったよねナミさん?つまりモリアと同じくらい、あるいはそれ以上に強いと。四天王戦じゃないんだから勝ち抜きバトルなんて遠慮して欲しいなあ!
『この情報を世界に漏らすべきではない……麦わらの一味を含むこの島にいる者たちを抹殺せよ。世界政府からの特命である』
「容易い……!」
「いま、抹殺って言わなかったか!?俺たちを殺すのか!?」
「そりゃあねえだろ!七武海と連戦だなんて!」
「みんな気を付けて!あいつの手……!触られたらまずいの!さっきサニー号の近くで女の子が一人、あの手に触られて消えたわ……!」
ナミさんの警告は情報だけで言えばかなり重要度が高い、ようは一撃必殺技を常時使ってくるってことか……!反則じゃないか!?当たっちゃだめってことだよねつまり、被害者の会の女の人が言うには七武海らしいバーソロミュー・くまはその手に付けている手袋を外して、その場から消えうせた。速すぎる移動?それともテレポート!?見聞色で見て取れる気配は真後ろ!
「くそっ!やっちまえお前ら!麦わらの一味に負けんな!」
「よしなあんたたち!相手が悪すぎる!」
ボッという音を立てて挑みかかった海賊を貫通するように不可視の何かが駆け抜ける。一瞬で複数人が気絶してしまい、そしてまたくまは姿を消す。静観の構えを取っていたザシアンは低く唸り始め、サーナイトは私がいつもやる様にほっぺをはたいてから戦闘態勢に入った。私はミロカロスから降りて、周囲を警戒する。ミロカロスのアクアリングがザシアンとサーナイトを覆って体力を回復させた。
「海賊狩りのゾロ、お前から始めようか……!」
無機質な人とは思えない瞳を前にして、私の背中に悪寒が走る。それでも、引くわけにはいかなかった。
モリアくんはルフィがぶっ飛ばしてくれました。次回はvsくまですね。連戦多すぎでは...?次回もよろしくお願いします