カイリューといっしょ! 作:カイリューはいいぞ
海賊狩りのゾロ、それがゾロさんの二つ名なのか……。私は悪寒に従って振り返るとちょうど私たちを見下ろし睥睨するような形でバーソロミュー・くまが聖書を片手に私たちを見下ろしていた。この世界じゃあ平均身長がとても高いということは身にしみて感じているんだけどいい加減首が痛くなってくる。危険度を感じ取ったらしいザシアンの唸り声が一層大きくなる。
テレポート、あるいはそれに類する技術がこの世界、もしくは悪魔の実の力にあるのかは知らないが……厄介だな。勇んで迎撃にかかった被害者の会の皆は逆に返り討ちにあった人を介抱しようとしている。おそらくは生きているだろうけど、かといって軽傷なんてレベルじゃない、辛うじて息があるレベルだ。それに恐れおののく人たちをゾロさんが一喝する。
「良いから下がってろお前ら!ご指名はおれだ……!聞こえなかったか!?売られたケンカだ、買わせてもらう。加勢すんじゃねえぞ、恥かかすんじゃねえよ……!」
「……中々評判がいいぞお前たち。麦わらのルフィの船には腕の立つ、よく出来た子分が数人いるとな」
「……一人残らず照れてる場合じゃないと思うんですけど」
くまの言葉にゾロさんを除いて一人残らず照れる麦わらの一味に私は思わずじっとりとした目で突っ込みを入れてしまう。わかるよ?多分皆さん凄い人ばっかりなんだっていうのは。だからって今から私たちを殺すって宣言している敵の誉め言葉、というかリップサービスにこんな相好を崩して喜んじゃいけないんじゃないの?うーん、海賊って不思議。
「おいゾロ!待てって無茶だろ絶対!オーズ相手にどんだけ殴られたと思ってるんだ!死んじまうぞ!」
「災難はいつだって理不尽にこっちにくるもんだ……ゲホ!死んだら俺はそこまでの男!二刀流居合!羅生門!」
ゾロさんが放った居合は、一瞬で姿を消したくまのかわりに背後のがれきを真っ二つに両断して不発に終わる。ゾロさんの目の前にまた出現したくまの掌底を何とか躱したゾロさんは追撃の貫通する何かを息を切らしながら躱す。無茶苦茶だ、私ははっきり言ってほとんど無傷だけど直接オーズと戦ったみんなの傷は深い。それであんな強い人と戦うのはダメだ、どこかで止めないと……!ゾロさんが刀を振るうと、驚くべきことに斬撃が飛んだ。飛んだその斬撃はくまの掌で、ぷに、という効果音と共に明後日の方向に逸らされる。あれがくまの能力の片鱗……!
「あらゆるものを弾き飛ばす能力……!俺はニキュニキュの実の肉球人間……!お前らの疑問に答えてやろう、さっきの攻撃の正体がこれだ」
「っ!!フランキー!!!」
「
いきなりの別人への攻撃、衝撃波に貫かれたフランキーさんはその場に崩れ落ちる。チョッパーさんが安否を確認する中私は驚きを隠せないでいた。肉球にそんな力があるんだ……!肉球って確かに分かるよ、気持ちいい。ニャルマーとか、エネコとか肉球の感触すごい好きだもん。だからってそうはならないでしょ?そうしてる間にも戦闘は続く、斬撃をあっさり弾かれて吹き飛ばされるゾロさんに入れ替わる様にサンジさんの回転踵蹴りがくまの顔面に直撃する、そしてダメージを受けて崩れ落ちたのはサンジさんだった。
くまの顔面の硬さ……まさか武装色?でもそんな気配はない、武装色を使えばいくら私の未熟な見聞色とは言え察知できる。つまりこれは素の硬さ。コンクリートでも砕き割りそうなサンジさんの蹴りよりくまは硬いんだ。ウソップさんの火の鳥をかたどった狙撃も肉球で逸らしたくまは、つまらなそうに手を振った。すると、周囲の大気が目に見える形で圧縮されていく……大気の圧縮……!あれは、衝撃波の爆弾だ!あの大きさの大気が一斉に元に戻ろうとする衝撃波は想像に難くない威力を持っているだろう。どうする……!?
「政府の特命はお前らの完全抹殺だが……!あまりに弱すぎて面白みの一つもない。一つ条件を呑めばお前らの命を助けてやろう。麦わらのルフィの首を俺に差し出せ」
「仲間を売れってのか……!」
「さぁ……麦わらを渡せ」
「断る!」
全員が死神の鎌を振りかぶった状態でこちらに圧をかけるくまにたいして同じことを言う。私だってノーだ。私にとっての大切な仲間、それこそポケモンを差し出せば命を助けるだなんて言われても頷く気なんてさらさら起きない。それをするくらいなら殺されるその時まで抵抗を続ける。そうじゃないと、私を信頼してくれるこの子たちに顔向けできないから。くまは残念だ、と前置きして掌以下にまで圧縮した大気を解放した。
「
「ありがと、サーナイト。さてくまさん……ここからは私たちが相手だよ。文句あるかな?」
「どのみち全員殺すなら、関係ない話だ」
「ありがと」
圧縮された大気が炸裂する瞬間に、サーナイトのテレポートで大気があった空間を切り取って上空に飛ばした。遅れた衝撃破の音だけが私たちに届く。サーナイトを伴ってくまの目の前に立った私を見下ろすくまの目は凪いでいて、本当に何も関係なく順番が変わっただけだという感じ。目配せでミロカロスとザシアンにみんなを守るように指示を飛ばす。私が前に出たことでナミさんがヤバいと思ったらしく一歩踏み出そうとした瞬間にザシアンの前足の斬撃がナミさんの前に深い線を作り出した。
「ユウリ!止めなさい!ゾロやサンジ君がかなわなかったのよ!?あなたみたいな子供じゃ……!」
「じゃあ無抵抗でいろってことですか?いやですよ、死ぬなら全力で抵抗して死にたいですし、見ててください。サーナイト、久しぶりにトリプルやるよ。アレでいこう!出ておいで!メタグロス!デンリュウ!」
「サナッ!!」
「メッタ!」
「メェ~!!」
「お前も能力者か」
くまがぼそりと口に出した考察を私は心の中で違うんだけど、と切り捨てる。ザシアンとミロカロスは後ろに下がって静観の構えだ。うん、こっちの方が慣れてる、相手がポケモンじゃなくてポケモンじみた人間だっていうこと以外は。出てきたメタグロスとその上に乗ったデンリュウのやっと出番か、という声に頷く。くまはそれを見ても特に何も言うことなく先ほどと同じように
「つっぱり
「サーナイトとメタグロスはひかりのかべ!デンリュウはでんげきは!」
「防いだか」
「貴方もね」
メタグロスが一番前に立ち。サーナイトと協力してひかりのかべを張る、そしてその後ろからデンリュウがでんげきはを発して攻撃を仕掛ける。
「その不可思議な生き物たち……お前自身は弱くともそれは厄介だ。飛ばすか」
きたっ!直接攻撃!またパッと消えてぱっと現れたくま、目の前にいるのはメタグロス。彼に向けて振りかぶった掌を叩きつけようとするくまに対して私は指示を飛ばす。一発くらいなら当てられるでしょ!
「メタグロス!こうそくいどうからバレットパンチ!」
「メタァ!」
巨体に似合わないほどの速度で後ろに下がったメタグロスが攻撃のモーション中のくまに容赦なくその鉄足で顔面に思いっきりパンチを入れる。素早さをあげる技と先制技、まさかあの巨体がこれほど素早く動くとは予想できなかっただろう。後ろに吹き飛ばされたくまは屋敷の壁を突き破って中に消える。メタグロスを見ると何かされた様子はない。周りの人たちの驚愕の声がうるさい、同じ生き物なんだから虚を突けば攻撃に当たるくらいはするでしょう。
「なるほど、油断した。だが……それだけだ」
「それ、自分を弾いて移動してるの?」
「だとしたら?」
「こういうのには対応できるのかなって。サーナイト、テレポート」
フォンっとほぼ無音でサーナイトがくまを無理やりテレポートさせる。あらゆるものを弾き飛ばす能力で自分を弾いて移動してるのだとすれば、いきなり位置を変えられたらどうする?例えばその先が、大放電の最中だった場合とか、ね。くまが移動したのはほんの2m先、ただし……既に全身に力を込めて放電一歩手前のデンリュウの真上だ。
「デンリュウ!ワイルドボルト!!!」
「~~っ!!!メェェェェッッ!!!!」
雷がいくつも傍に落ちたかのような轟音と閃光があたりに響き渡る。迸る電気が周囲のがれきを粉砕し、焦げ臭いにおいが立ち上った。ぱっと私の隣にデンリュウがサーナイトによってテレポートで位置を移動させられる。反動で自傷する技を指示したせいかデンリュウ自身も多少傷ついてはいるけどまだまだ元気。そして、あまりの電流にクレーターとなった技の発射点の中には、片膝をついたくまがバチバチと帯電した状態で佇んでいた。焦げてはいるものの目立ったダメージはない……おかしいな、さっきから武装色の気配はないのに、直撃したのにもかかわらずダメージが少なすぎる。
「ナるほド……どうやらオマエは、今この中で一番、テ強いラシイ……!」
「七武海をここまで一方的に……!ユウリ、お前いったい何なんだ……!?」
「何なんだ、と問われたら……私はポケモントレーナーだよ。強いのは私ではなく、この子たち」
「というかおい!あいつ!服の下……!機械じゃねえか!!!フランキーと同じサイボーグか!?」
「それとは随分違う。おれは未完成の人間兵器『パシフィスタ』ベガパンクの試作品だ……だが、もうそれはいい。気が変わった。ユウリといったな」
チョッパーさんが恐れおののいたように私に言葉を投げかける。私を表す言葉、確実にそれと言えるのは私はトレーナーであるということだけだ。そして、バチバチと体から電気を漏らすくまに私は眉をひそめる。デンリュウの電撃で帯電しているのかと思ったけど、どうも中から電気が漏れてるように見える。焦げてボロボロになった服の下から覗くのは動力パイプに鉛色、メーター、ガラス……およそ人の体についているものではなかった。くまがいう、パシフィスタというものが何かは知らないが、この人の体の半分は機械でできているのだろう。
「なんでしょう?」
「ここまでやられれば、麦わらの首は諦めざるをえまい。ただ、おれもそれでは引き下がれん。久しぶりに面白い戦いができた……!もう一手付き合え、そうすれば何もせずに帰ろう」
「……そもそもまだ終わってないでしょう」
「————そうだったな」
デンリュウの電撃の威力に体中の機械が耐えきれなかったのかあちらこちらからオイルなんかを垂れ流すくまの提案に私はまだバトルの途中でしょうと返す。多分もう、テレポートでかく乱作戦は通じない。さっきの衝撃波爆弾はサーナイトがいればどうにかなる。けど……サーナイトの消耗も激しい。そうすれば……軸はメタグロスだ。
「一撃だ、これを耐えれば……お前たちの勝ちだ……」
「メタグロス、いけるね?」
「メッタ!」
ずしーん、ずしーんと白ひげさん並みの巨体で四股を踏むくま。そんな傷だらけでなんで戦いを挑むかは……少しだけわかるような気がする。私の場合はポケモンバトルになっちゃうけど……強い人とのバトルは楽しいんだ。正直私はポケモンバトルじゃない戦いを肯定的には見れないけど、ポケモンバトルとしてみるならそう思っている。だから、きっと「ユウリ」はバッジを求めた。くまは体を捻り、腕を大きく引いた。真正面から行く感じの構えだ。メタグロスはずしんずしんと私の前にでて、吠える。動いたのは同時。
「いくぞ……!ぶちかまし
「メタグロス!てっていこうせん!」
「メェェタァァァ!!!」
突き出されたくまの右手から私でも視認できる弾かれた大氣の衝撃波のビームが見えた。メタグロスの口の前に集まった鋼色の光弾が解放されて極太のビームになり発射される。メタグロスの体力の半分を削って打ち出された鋼の大砲とくまの超巨大衝撃砲がぶつかり合う。衝撃波とビームがまじりあって大爆発を起こす。メタグロスが耐えたのは見えたけど、私は吹き飛ばされて空中でザシアンにキャッチされて地上に着地した。余りの大爆発に他の人たちも巻き込まれ何が起こったのか戦々恐々と爆心地を見ている。
「……引き分け、いや……目的を果たせぬおれの負けか。ユウリ、お前の名は覚えておこう。じきに手配書も出る」
「え゛っ!?」
「モリアとの戦いで生き残り、政府の特命を受けたおれを退けて政府に牙をむいたのだぞ、出ないわけがない」
「り、り、り……理不尽な!!!」
「フッ……楽しみにしてるといい」
技同士は相殺した形になったので傷が増えたわけではないくまはその言葉だけ残してパッ、と消えた。自分を弾いてどこかに移動したのだろう。それよりも私はあまりの事に一瞬でくらってきて地面にうつぶせに倒れる、前にザシアンに支えられた。もふもふの毛並みの彼女に顔をつけて私は嘆く、どうしてそうなるの!
悲報 ユウリちゃん賞金首確定。死にたくないから全力で抵抗した結果がこれだよ。ちなみにルフィくんは気持ちよさそうに眠っています。あとゾロくんの漢気イベントは消えました。仕方ないね
ではまた次回にて