カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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バトルと仲間とドラゴン

 海賊が襲ってきた、現実感のない言葉だ。少なくとも私の感覚では日常で使われる言葉ではない。というか話が違うじゃないか、だってここは白ひげって海賊の縄張りでその人は滅茶苦茶恐れられてるから縄張りの中で襲われることはないって商店街の店員のおじさんが言っていたものだから、海賊という気になる言葉はあれども思考の外に追いやっていた。だって、それよりも考えなきゃいけないこと沢山あったから。

 

 「お嬢ちゃん、悪いけど一旦これは返すわ。さ、すぐに逃げないと」

 

 「町の裏手にいけ!俺は他のとこ行くからばあさんは急げよ!」

 

 「え、あ、はい」

 

 状況を全く飲み込めてない私におばあさんはきんのたまを返してくれて、机の中から重そうな何かをごとりと出した。拳銃だ、それもフリントロック式の単発銃、少なくとも私の知るポケットモンスターのゲームが発売されてる年代で使われてるものじゃないし、ポケモンの世界はもっと未来的なものを使うだろう。ベリーという通貨単位といい、もはや完全に別世界と考えていいのかもしれない。

 

 それを神妙な顔で持ったおばあさんはきんのたまを仕舞ってまごまごしてる私の手を取ってドアを開け、走り出した。彼女に手を取られたまま訳も分からず走る私は、街の様子を見て目を見開く。海に面した港には、大きな木製の船が停泊していて、それには海賊旗が掲げられている、白ひげのものだというそれではない別のものが。

 

 街のあちこちでは悲鳴と、下卑た笑い声、そして黒煙、血の匂い……なんで、こんなことに?さっきまでは、何にもなかったじゃない。海賊なんて、遠い世界の話だと思ってた。目が覚めたら知らない場所にいて、知らない誰かになってて、カイリューがいて、わけのわからないまま街に行って……挙句の果てにその街は海賊に襲われる……厄日と言っても限度があるんじゃないか?

 

 「よう、ババア!どこ行こうってんだ?通行料払ってもらおうじゃねえの」

 

 「……っ!」

 

 「お?なんだ抵抗するのか?そのガキ渡すんなら見逃してもいいぜ?いい面してらぁ、売ったらいい金になりそうだ」

 

 「冗談はおよし、撃たれたくなければ道を開けなさい」

 

 曲がり角を曲がると、目の前にまるで巨人のような男が立っていた。目測で3m近く身長はあるだろう。大きなカトラスを振り上げておばあさんと私を脅している。おばあさんは拳銃を向けて相手を威嚇しているけど、威嚇が威嚇になっていない。大男にとって、おばあさんがもつ拳銃なんて文字通り豆鉄砲にしか見えないのだろう。

 

 それでも毅然とした態度を崩さずに、私を庇うおばあさん……私は、彼女の手を振りほどいて、前に出る。売ったらいい金になる、つまりは殺されないってことだ。死ぬよりひどい目に会うかもしれないけど……見ず知らずの子供相手に命を張ってくれるこの人が死ぬのは、嫌だった。

 

 「わかった、ついていく。だから……この人を傷つけないで」

 

 「聞き分けのいいガキだ、それじゃ……死ねっ!」

 

 素直についていく、といった私をおばあさんが肩を掴んで引き戻そうとしてくれる。私はそれを振り払って、大男の目の前に立った。近くに立つと、すっぱくてすえた感じの匂いが漂ってきて思わず顔をしかめる。大男は下卑た顔で口元に弧を描かせると何のためらいもなく私に向かって、大剣のようなカトラスを振り下ろした。

 

 嘘だったんだ、殺せれば何でも良かったんだ……!死ぬ寸前なのに、妙に冷静で、その切っ先が私の顔を叩ききるであろうことは容易に分かった。そして、それは予想外の方向から不発に終わることになる。ガキン、と音がしてカトラスが私の眼前で止まる。私の後ろから手を伸ばしてカトラスの刃を握って止めているのは……モンスターボールから勝手に出てきたカイリュー。

 

 「りゅううううっ!!!」

 

 「うわ、なんだこいつどこから!?ぐわああっ!?」

 

 「カイリュー……」

 

 腕力だけでカトラスを跳ね上げたカイリューは、翼をはばたかせるだけで強風を発生させて大男を吹き飛ばした。のっしのっしと悠然とした動きで私の後ろから前に出るカイリューに、おばあさんも、私も何も言えなくなる。私の前に立ち、大男に向かって立ちふさがる形になった彼女は、顔半分だけ振り返って私を見る。それは、トレーナーを信頼する、ポケモンの目だった。

 

 パシン、と私は顔を叩く。何で彼女が私にここまで信頼を置いているかは分からない、どうして、私が彼女の言わんとすることを理解できるか分からない。だけど……応えなきゃいけないと思う。初めてのバトルなのに、知っている感覚がする。感覚が研ぎ澄まされて、大男の動作全てが情報として私の中に入ってくる。カイリューと息が合わさっていく。

 

 「ふざけんな……さっさと死んどけよおおおお!」

 

 「カイリュー、しんそく」

 

 ぼっ、と音を立ててカイリューが消える。次の瞬間には、文字通り神速と化したカイリューの一撃が大男のどてっぱらど真ん中を撃ち抜いて、家屋を粉砕して壁の向こう側に吹き飛ばした。口ほどにもない奴め、と言わんばかりのカイリューのジト目が崩れた壁の向こうに注がれていた。

 

 少しだけ、今の光景の処理に時間がかかっている私より先に立ち直ったのはおばあさんだった。彼女は私とカイリューを交互に見ると、すっと構えていた拳銃を下ろした。カイリューが戻ってくるのを見て、私と関係があるということを見抜いたのだろう。早口で逃げるように促してきた

 

 「お嬢ちゃん、今すぐにそいつと一緒に街を出るんだ。いいね?」

 

 「いえ……私、戦います。今ここで逃げたら……この子に顔向け出来ません」

 

 「りゅっ!」

 

 それでこそ、といった感じのカイリューの鼻息荒い鳴き声が響く。直接戦うのは私じゃないけど……きっとこの子が戦うためには私が必要だ。今は、出来ることを出来るだけしたい。自らボールから抜け出して私を助けてくれたカイリューに報いるためにも。

 

 「りゅっりゅっ」

 

 「そうだよね、私が信じないことには始まらないよね」

 

 カイリューは、私が横に立つとしきりに私の腰を指さす。そこには、空のカイリューのボールのほかにも、5つのモンスターボールがあった。まるで、自分たちも出せというように揺れ続けるそのボールたちを手に取って、ボールのサイズを大きくし、私は躊躇うことなく5つとも空中に放り投げた。5つのボールが開いて、その中にいたポケモンたちが出てくる。

 

 出てきたポケモンたちが、一斉に咆哮をあげる。まるで最初から知っていたかのように、見ただけで何なのかが伝わってきた。2足歩行で黄色くて、尻尾と額に宝玉が付いているライトポケモン、デンリュウ、一目見ただけで美しいとわかるいつくしみポケモン、ミロカロス、鉄塊のような4本の足が特徴的なてつあしポケモン、メタグロス、まるでシャンデリアに炎が灯っているかのようないざないポケモン、シャンデラ……そして青とピンクに彩られた勇壮な狼のようなつわものポケモン、ザシアン。

 

 「お願い、街を守りたいの。手伝って!」

 

 「るおおおおおおおんっ!!!」

 

 声を張って、頼み込む。その返答はザシアンの荘厳な遠吠えだった。ザシアンは私のバッグを咥えると私ごと上に放り投げて自分の背中に乗せてくれた。それで戦闘態勢が整ったのかザシアンが走りだし、他のポケモンたちも一斉についてきてくれる。私はすぐにポケモン図鑑を取り出して彼らの使える技をチェックしていく。ありがとう、みんな。こんな何も分かってないやつのことを信じてくれて……!

 

 「なんだぁ!?」

 

 「デンリュウ、でんきショック!」

 

 「メェ~~!!!」

 

 元が羊のメリープだからか、予想外の鳴き声をあげたデンリュウのでんきショックが何事かを見に来たらしい海賊の一味を纏めて感電させて意識を奪う。続けざまにカイリューに指示したぼうふうが麻痺した海賊をゴロゴロと転がして一纏めにする。応戦していた街の男の人たちがこれ幸いとばかりに海賊たちを袋叩きにして拘束していった。

 

 「メタグロス、サイコキネシス!シャンデラ、ひのこ!ミロカロス、みずでっぽう!」

 

 「メッタ」

 

 「シャン!」

 

 「ふるるるっ!」

 

 飛行形態に変形したメタグロスが瓦礫を浮かせて海賊にぶつけ、シャンデラのひのこが後を追い、ミロカロスのみずでっぽうが海賊たちを押し流していく。まるで手足のように思った通りに、狙った場所にポケモンたちは攻撃を打ち込んでくれる。無駄に傷つけたくないから威力の低い技をチョイスしているけど、彼らの方でも手加減をしているようだ。

 

 「舐めるなああああ!!!」

 

 「っ!カイリュー!かみなりパンチ!」

 

 「りゅっ!!」

 

 見たこともない人種の海賊が立ちふさがった。まるで魚と人間をごちゃまぜにして割ったような感じで、水かきの付いた拳でこちらに攻撃を仕掛けようとしている。咄嗟に水タイプに有利な技をカイリューに指示した。そしてカイリューの電撃を纏ったパンチは一発で魚人間をノックアウトし、家の壁の中に埋めてしまった。それでも加減していたらしいカイリューは若干消化不良のような顔をしている。バトル、好きなんだ。ポケモンバトルはこの世界でできるのかな、いや、それは後に考えよう!

 

 「ザシアン、エアスラッシュ!シャンデラ!おにび!」

 

 「ヴォフッ!」

 

 「シャァァ!」

 

 ザシアンが吠えると空気の刃が無数に走り、こちらに走ってくる海賊たちの武器をまるでバターでも切るかのように一瞬でライフル銃も、カトラスも、刀も、サーベルも……それだけを狙ったかのようにバラバラにしてしまった。やれるかな、とは思ったけど本当にやり遂げるとは思わなかった。そして、指示だけで私の意図が完璧に伝わっている、これが……ポケモンバトル。相手はポケモンじゃないけれども。追撃のおにびが強烈な火傷を海賊たちにお見舞いし、海賊たちはそれの痛みにのたうち回っている。

 

 「カイリュー、残り全部いけそう?」

 

 「りゅっ!!」

 

 周りの様子を見て、街のあちこちでまだまだ海賊たちが好き勝手やってることが何となく、分かった。一度にどうこうするのはきっと……カイリューじゃないとダメそうだ。周りを見渡してカイリューに尋ねると彼女はぐっと親指?爪?を立ててから空へ舞い上がる。次の技まで分かってるらしい。

 

 「カイリュー、りゅうせいぐん!」

 

 「りゅううううっ!!!」

 

 カイリューの口から爆発するような音と勢いを立てて無数のエネルギーの塊が吐き出された。そのりゅうせいぐんたちは過たず街のあちこちで略奪と暴虐をしている海賊たちを過たず狙い打った。小さなクレーターの中で海賊たちは一人残らず気絶した。あとは……あの船だけ。とんとん、と私はザシアンの背中を叩いてその背中にぴったりと抱き着くように張り付いた。私の意を察知したザシアンが家の屋根を蹴り、大きくジャンプする。

 

 「グルル……!」

 

 空中で唸るザシアンの身体が変わっていく。編み込まれた三つ編みの鬣がほどけ、尻尾は膨らみ、まるで黄金でできたかのような翼の装飾が背中に生える。そして、勇者が持つ聖剣かのような大剣を口にくわえて、ザシアンは吠えた。地面に着地し、さらに大きく跳躍する。目標は港に浮かぶ海賊船……!その直上に躍り出たザシアンの眼下で、頭目らしい髭の生えた偉そうに座る男が、口を開けて必死に逃げるように指示を出しているのが見える。

 

 「お願い、ザシアン……!きょじゅうざんっ!!!」

 

 「グルアアアアアアッ!!!」

 

 ザシアンが咥える剣にエネルギーが集まり、光り輝く。ザシアンは大きく唸ると、身を捻ってその剣による巨大な斬撃を放った。振り落とされないように必死に掴まる私が見た全てを断ち切れそうなほどはちきれんばかりのエネルギーに満ちたそれは、たった一撃で、船を真っ二つに割って、さらにバラバラに引き裂いてしまった。残りの船員も、頭目らしい男も船の残骸と一緒に吹き飛ばされて海の中に沈んでいく。

 

 「るおおおおおおおんっ!!!」

 

 「ありがとう、みんな……!わぷっ!?わぅ!?わっ!?」

 

 元の姿に戻ったザシアンが遠吠えをあげる。ザシアンの身体から降りた私を出迎えたのはポケモンたちの強烈なスキンシップだった。ミロカロスには巻き付かれ、デンリュウには頭突きを貰い、メタグロスにはサイコキネシスで持ち上げられ、シャンデラは私の頭の上に乗り、ザシアンは大きな舌で私を舐めて、最終的には空から突っ込んできたカイリューに纏めてハグされる。

 

 暫くあっぷあっぷとしていると、徐々にぽつぽつと歓声が響いてくるのが聞こえた。シャンデラを頭から引きはがしてそれの出所を探ると、街の住人たちが隠れていた場所から出てきて、こちらに向かって思い思いの歓声をくれていたのだ。海賊たちはぐるぐる巻きにされて拘束されて、すでに項垂れていた。

 

 私はそれに、守れたのかなと安心して……ポケモンたちに押しつぶされるのだった。おもぃぃ……!




 初戦闘、終了です。基本この6体PTで行こうと思います。何やこの厨パ?違うんです好きなポケモン固めたらこうなっただけなんです。はい。

 ではまた次回に。感想評価を下さると作者は喜びます
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