カイリューといっしょ! 作:カイリューはいいぞ
「すいませんサンジさん、厨房貸してもらってもいいですか?」
「なんだいユウリちゃん。おやつが欲しいならすぐ作るぜ?」
「ああ、いえそうではなくてですね」
私が麦わらの一味の船に乗ってから数日、飴の雨や槍の波、海王類とかいう大きな生物、遊蛇海流など普通の天候が恋しくなるでおなじみな偉大なる航路の気が遠くなる天気を乗り越え航海は進んでいた。そんなサニー号の航海の中で私はすっかりサンジさんのお手伝いとしてのポジションを確立し、食事の用意のお手伝いから細々した雑用まで頑張っています。
サニー号の甲板の上にはナミさんが持ち込んだらしいみかんの木があるんだけど、あれはナミさんの大切なものらしくて勝手に手をつけちゃいけないんだって。それで、まだスペースが余ってることに気づいた私はいくつか場所を頂いてそこで木の実の栽培を行うことにしたのだ。真水ならミロカロスがいくらでも出せるし……木の実は肥料なんか要らないのでお水あげれば勝手に育ってくれる。翌日から実をつけだした木の実にナミさんは度肝抜かれてたけど。あとナミさんはみかんっぽいオレンの実が好きなんだって。美味しいよね、分かる。
それでいくつかの木の実を収穫した私は今、籠に入ったそれを片手にサンジさんにサニー号の甲板の上で正座で向き合っていた。私に倣ってたかなぜか正座をするサンジさんにお腹が空いてるなら何かを作ると言われたのだけどそうじゃなくて、私が作りたいのはポケモンたち用のポフィンとポロックなんだ。ポロックはブレンダーがないから原始的な手段になるけど、切った木の実を天日干しして乾かして粉にした後ブロック状に固める感じにする。
で、問題なのはポフィンの方だ。ポフィンどうしても火がいるんだよね……なので薬研があればとりあえずいいやなポロックはともかく、ポフィンを作るにはサンジさんのお城を借りる必要があるわけで。そんなわけでどうにかお願いできないでしょうかとこうやってサンジさんに直談判中なのだ。私が作るポフィン、手持ちたちに大人気だからそろそろケースに中身を補充したくて……。
あれそれこうで、どうにかお貸し願えないでしょうかと頭を下げるとサンジさんはなんだそういうことか、とよっこらせといった感じで立ち上がった。
「いいぜ。ただ、レシピが気になるんで俺も一緒に作らせてくれ。何かに応用できるかもしれないしな」
「それは構いませんけど……特に何か特別なことはしないですよ?」
「それでもさ」
あ、これ言外に私一人厨房にいれてなんかあったら怖いからってことだな?うん、まあ納得よね。一味のお腹を満たすコックさんの聖域である厨房を借りるわけであるし、それは普通のことに違いない。話は決まったので籠を両手で抱えて立ち上がる私からひょいっと籠を取ってすたすたと厨房に入っていくサンジさんに急いでついていく。彼は調理台の上に籠を下ろすとちょっとワクワクした顔で私に振り返ってきた。
「で、何がいるんだ?」
「木の実一つでオッケーです。よいしょっと」
「毎度思うがそのバッグどうなってんだ?」
「デボン驚異の技術力です」
ずるり、とバッグから鍋を引っ張り出した私にぐるぐるとした眉をあげたサンジさんに聞かれる。このバッグに関しては私はいまいちよく分かってないし、もはやそういうものだという認識でしかないのだ。そんなことをしていると今日の外当番のミロカロスが器用に厨房のドアを開けて顔を出した。甲板にはまたまたエレファントホンマグロが横たわっているのが見えて、ルフィさんが涎を垂らしてた。
「ミロカロス、ありがとう。サンジさん夕食のおかずが増えましたね」
「あのバカどもの釣りよりよっぽど役に立つな……。一品増やすか」
ミロカロスは尻尾で生簀になっているらしい下の階の蓋を開けるとペイッという感じで生簀にエレファントホンマグロを落として蓋を閉めた。甲板で海水を粗方振るい落としてそのままダイニングに入ってきて、キッチン越しに顔を私に擦り付けて甘えだした。よしよし、と私は顔を抱きしめて離すと、ミロカロスは満足したのか何時もの様にとぐろを巻いてダイニングの片隅で待つことにしたようだ。収穫したズリの実を見せるとパッと体を起こして目を輝かせるのが可愛くて、思わずそのままズリの実を一つ上げてしまった。
「料理人の前で料理するのってなんだか緊張しますね……」
「気にすんな。そもそも入ってから毎日一緒にやってるだろ」
「何というか、気分的に?」
そんなことを言いながら私は鍋にひたすらズリの実を入れて火にかけてかき回し始める。水を加えて一旦ジャムみたいに煮立たせる方法もあるんだけど、味が濃厚になるから無水カレーのごとく水を足さないでやるのがうちのポケモンのお好みなのでしょうがない。火にかけると割とすぐにズリの実の原型がなくなってスープのようになった。ここから焦がさないようにずっとかき混ぜ続ける!そして少しもったりして来たら回す速度を速めていく。さらに重くなったら火力最大からの全力かき混ぜである!サンジさんは鬼気迫る勢いで鍋をかき回す私を面白そうに見ていた。
生地が完成したのでそのままオーブンの天板に油を塗って、出来た生地が冷めないうちに形を整えて配置してオーブンにドォン!そこからおおよそ10分ほどで真っ青な渋いポフィンの完成である。独特な匂いに待っていたミロカロスは待ちきれずにそわそわと体を揺らしていた。寄ってきた彼女にポフィンをあーんする。ボリボリと音を立ててポフィンを食べるミロカロス、可愛い。
「美味しい?」
「ふるっ!」
「どれ、俺も……」
「あっ!サンジさんそれは……」
「渋っ!?なんだこりゃ!?」
「ごめんなさい、人間用に作ってなくて……甘い味だと食べられるんですけど木の実の味を特化させて作ってるんで渋い木の実は滅茶苦茶渋いポフィンになるんです」
「ほぉ~。だが木の実ってやつは面白いな。色んな料理に応用できそうだ」
さくり、とポフィンをかじったサンジさんが思わずうなるほど渋いポフィンだ。ズリの実100%で作ったポフィンだし、そりゃ渋い。隠し味にするならともかくそれ単体で食べるべきじゃないもの。サンジさんはかじりかけのポフィンの残りを平らげると意外と癖になるな、と笑った。食べ物を無駄にしないというポリシーが見えるね。それはともかく鍋を洗った私は次のポフィンの準備にかかる。カイリュー用のマトマの実を使った激辛ポフィンである。サンジさんはとことんまで付き合ってくれるつもりらしくどうするんだ、と聞いてきた。私はそれからポフィン作りのレクチャーを始めるのだった。
「見えたぞ~~!赤い土の大陸!」
「何だか懐かしいわね……感慨深いわ」
「あの日は嵐だったっけなあ……それも結構ひどかった」
航海を進めるほど数日で、サウザンドサニー号は赤い土の大陸にたどり着いた。甲板上に出て赤い土の大陸を見つめる麦わらの一味の感慨にふけった表情に、なんだか羨ましさを感じる。ここまで来るのに沢山の冒険を繰り広げてきたんだろう、私は始めから新世界にいて逆行する形でこっちに来てしまったからあまりその感慨深さを共有できないのはちょっと寂しいかな。それよりも、と私はナミさんの腕についた記録指針を見る。私が持っている3本の指針が付いた懐中時計のそれではないけど、一本の指針は真下に向かってビーンとなっていた。つまりここから船ごと深海に潜る方法を探さないといけないわけだ。
「んで!こっからどうすりゃいいんだ?フランキー!サニー号って潜水艦になったりしねえのか!?」
「いくら何でも無茶言うんじゃねえよ。とりあえず下を見るのが一番だと思うが……よし!お前らソルジャードックシステム3!シャークサブマージ3号で偵察に出る気のあるやつは!?」
「いくーーっ!!」
「ヨホホホホ!!行きたいです深海!」
「私もいいかしら?」
「アウ!じゃあロビンに操縦方法を教えるぜ!それと反対側にプール作るから入りたいやつは入れよ!」
へー、サニー号には潜水艦が乗ってるのかぁ……技術レベルおかしくない?冷蔵庫がまだ一般的じゃないのにそれをはるかに凌駕する技術が必要になるであろう潜水艦が作れるフランキーさんってもしかしてすごいのでは!?じーっと私はフランキーさんを尊敬の目で見つめるとよせやいと大きな手で頭を撫でられた。アニキオーラすごい、それよりもプールっていったのかな!?ってことは泳げるのかぁ……!海水浴になるんだろうけど折角だし泳ぎたいな。
潮風で錆びるのが嫌だと今日の甲板当番のメタグロスは食事以外ではボールにこもってしまっているので一緒に泳ぎたい子……はいボールの揺れからミロカロスかな。カイリューは昨日一緒に空飛んだもんね。あと食糧庫を荒らすつもりのシャンデラ、君はダメだ。次やったら釣り餌にされるよ、サンジさんに。
「あら?ユウリ何それすっごい可愛いじゃない!」
「えへへ、ちょっと背伸びしたかもしれないですけど……」
プール!ということで船内で水着に着替えた私が甲板に出るとすでにウソップさんとチョッパーさんがサニー号の横に空いた穴から伸びたゴムの仕切りの中で泳いでいるのを見つけた。ナミさんたちは電伝虫という電波を発するカタツムリを改造した通信機で潜水艦の中のルフィさんたちと通信してたみたいだけど、水着に着替えた私を見てすごく褒めてくれた。デボン製らしい白色のビキニとパレオは着心地がいいなあ。
しかしそっかあ……今頃ルフィさんたちは深海5000mにいるのかぁ……面白そうだし会いに行こうかな?手首にダイビング用ツールを括りつけた私は甲板で待っていたミロカロスに掴まってプールの横に思いっきり飛び込んだ。大きな水しぶきが上がってチョッパーさんとウソップさんにかかった。
「ユウリ!お前も泳ぐのか?」
「ちょっと潜ろうかなって。ウソップさんナミさんたちによろしくお願いしますね。ミロカロス、ダイビング!」
「はっ!?えっちょっユウリお前どこ行くんだ!?」
ダイビング用のゴーグルをつけ、はぷっとデボンボンベを咥えた私がミロカロスにダイビングを指示する。ダイビングには2種類あって、バトル用のダイビングと秘伝技としてのダイビングだ。今から使うのは秘伝技の方、自分の周りの水圧やらを一定にすることでどこまでももぐることができるらしい凄い技だ。秘伝と名がつくわけである。当然ながら他の秘伝技もバトル用と秘伝用で違いがあったりするものもある、波乗りとか空を飛ぶとか。
段々とサニー号から離れて行ってぐんぐんと下にもぐっていく。しかし水深5000m以上の深海があるなんてなあ。グソクムシャとか、ヨワシとかランターンとかそういう深海にすんでるポケモンのパラダイスだ。あとカイオーガとかルギアとかもいる。何だったらもっと深い所に。ミロカロスの潜航速度は滅茶苦茶速くて既にもうあたりは真っ暗、光が届かなくなってしまっている。
腕時計型のダイビングツールを起動してライト機能であたりを照らす。うっへー、なんかすごい大きな生き物とか周りにたくさんいる。ミロカロスが上手く視界に入らないように立ち回ってくれるけど見つかったらめんどくさそうだ。負けるとは思えないけど、ただ大きいだけだし。ミロカロスはこれだけ暗くてもあたりがバッチリと見えているようで、見つけてと頼んだ潜水艦に向かってまっすぐ進んでいく。
『おお、あったね。流石はミロカロス!』
「ふるっ!」
ライトが照らす先にはルフィさんたちが乗るサメ型の潜水艦の姿があった。まだこっちには気づいてないみたいだから後ろから近づいて驚かせちゃえ。そんな感じでミロカロスの首元を叩いてから後ろから回り込むように指で指示するとミロカロスはふんすと頷いてから一気に後ろから潜水艦に近づいて横に併走。そして私はこんこんと窓をノックした。
『#$%$#%%&~~~~~っ!?!?』
『驚いてる驚いてる、ふふっ』
ノックされた窓を覗き込んだブルックさんが私と目が合って声にならない声をあげて驚いてるのが見える。目はないんですけど!といいそうだ。それに伴ってルフィさんもやってきてロビンさんも窓越しに私と目が合った。ルフィさんが顎が外れんばかりに驚いてて私としてはサプライズ大成功で滅茶苦茶楽しかった。ロビンさんが電伝虫に何かを話している……あ、私を指さしてるってことは私がこっち来たってことを報告してるのか。べったりと窓に張り付くルフィさんが楽しそうに私を見ている。すると何かに気付いたような顔でしきりに私の後ろを指さしだした。んん?と怪訝に思った私が振り返ると……。
『おお~~~』
『ふる~~~』
思わずミロカロスとシンクロして暢気に驚きの声をあげる。目の前にいたのは潜水艇も一口で食べられそうなほど大きなウサギとアザラシを足して混ぜて割らなかったみたいな感じの生き物だったからだ。地上だったら唸り声が上がっていることだろう。ミロカロスに行けるかと首を叩いたら、力強く頷きが返ってくる。よし、やるぞー!
秘伝技が秘伝技たる所以が必要でした(こじつけ)
ポケモン世界の料理って難しいですね。木の実を入れるだけでスープ状から急速に固まるポフィンとか何でできてるんだろう?あと主人公が持ってるツールは大体デボン製です。マクロコスモス製やシルフカンパニーもありますが。作者はデボンが好きです、はい。
ではまた次回、ダイビングバトルからお送りします。それでは