カイリューといっしょ! 作:カイリューはいいぞ
『さてやるよ、行けるねミロカロス!』
「ふる!」
デボンボンベ越しにかけたもごもご声はミロカロスにきちんと伝わっているらしくて、ウサギ海王類を前にしたミロカロスの全身の筋肉に力が入って硬くなっていき、戦闘態勢に移ったのが如実に分かった。手ぶりで潜水艦に離れるように示すとルフィさんは拒否してたみたいだけどロビンさんが潜水艦を操って距離を取ってくれた。水中バトルなんてダイビングが許可されてる場所以来だし、頑張らないとね!
『ミロカロス!アクアテール!』
「ふる!」
私たちを食べようと大口を開けて此方に迫る海王類のかみくだくを紙一重で躱したミロカロス。ガチっという音が上から聞こえてくる。そしてミロカロスは宙返りするように圧縮された水を纏った尻尾を海王類の顎をかちあげるように叩き付ける。インパクトの瞬間に纏った水が爆発して衝撃波をあたりにまき散らした。顎を思いっきり殴り上げられた海王類の歯が砕け口の中を切ったらしい血が海水を汚す。そして顎がかちあげられて水中で立つような態勢になった海王類を見て私はにやっと悪い顔で笑う。お腹が丸出しだよ!
『ミロカロス!みずのはどう!』
「ふるるっ!!!」
ミロカロスの口元に海流が集まって水が圧縮されていく。そしてぎゅっと縮まった水が解放されて波動となって駆け抜け、海王類のお腹にしこたま撃ち込まれた。衝撃波を無理やり押し付けられた海王類は錐もみしながら吹き飛んでぷか~~と白目をむいて気絶。よし!私たちの勝ち!と私はミロカロスと尻尾と手でハイタッチ。いやーしかしまあ、こんなのがうようよいるんだねこの海。ホエルオーが山ほどいるみたいな感じかぁ。
改めて歯がバッキバキになっちゃった海王類をダイビングツールのライトで照らしていると気絶して大口を開けている海王類の口から何かが飛び出して来た。なんだ脱皮か!?と思いながらライトを当てるとそれは泳いでこっちに向かってきていた。私の目の前にやってきたのは上半身が人間で下半身は魚……。人魚だ!わー!足が分かれてないってことは30歳以下ってことで、私が想像する人魚そのものでちょっと感動した!
『わーーっ!!びっくりしたこんなところに人間の人がいるだなんて!消化されそうなところ助けてくれてありがとう!』
『は、はい……』
人魚の人はこっちに来ると私に頭を下げてくれた。まさか海王類に食べられていただなんて……私はボコボコとデボンボンベから空気の泡をだしながらわたわたしてどうしたもんかとまともに話せないので手を振り回してコミュニケーションをとろうと頑張ってると潜水艦が近づいてきて、ロビンさんが上を指し示すのが見えた。そうだよね船上で話した方がいいよね、ということで私も彼女に上を指し示すと人魚さんはああ、と納得したらしい。
『そっか、人間さんは海の中じゃ話せないもんね!パッパグ、いこ!』
『ミロカロス、上がるよ』
ミロカロスに抱き着いて合図を送ると彼女は猛烈な勢いで上に泳ぎ出した。ただ、潜水艦を引き離さないように速度には気をつけているらしくそこまで速くはない。遅くはないのだけれど、パッパグと呼んだヒトデを胸に抱いてそれについてこれている人魚さんは凄いな。白ひげさんの所に遊びに来た人魚さんが言うには人魚の遊泳速度は世界一だっていうけれどももしかして本気のミロカロスより速いなんてことも……むむ、ウチのミロカロスだって凄いんだぞ!
ざっぱーん!と海上に上がったミロカロスはジャンプしてサニー号に飛び乗る。空中でその蛇のように長い体をくねらせてサニー号の誰もいないところに着地した。噛んでいたデボンボンベを口から放し、ゴーグルを頭の上に乗っける。呆気に取られていたナミさんたちにひらひらと手を振った。
「ただいま戻りました~」
「戻りました~、じゃないのよユウリ!何当たり前のように潜水艦に同行してるの!」
「みんな驚くかなって!」
「キ・モ・が冷えたわよ~~~!」
「いひゃいひゃい、いひゃいですナミさん」
私が戻ってきたのを見たナミさんが目を吊り上げてほけほけしてる私に近づくと、思いっきりほっぺを上下に引っ張って私のことを怒り出した。心配したのよ、と言ってくれるあたり申し訳ないことをしちゃったかな。久しぶりにダイビングできるから調子に乗り過ぎちゃったかも、反省。ごめんなさい、と謝ればナミさんはため息をついて私のほっぺから手を離した。
「それでなんですけど、海王類に食べられてた人魚の人を助けました」
「ロビンから聞いたわ。どこにいるの?」
「ここに居るよ~~~っ!うわ~~~っ!?」
「美女が降ってきた~~!」
私と同じようにざっぱーん!と船の上にジャンプして上がってきた人魚さんは空中でミロカロスほど器用に動けなかったのかそのままサンジさんを押しつぶすように甲板に着地した。薄々感づいてはいたけど女性、特に美人さんに弱いらしいサンジさんは目をハートにして喜んでいる。それはそうと人魚さんは大丈夫なのかな?
「ごめんなさいぶつかっちゃって!私海獣に食べられやすくってかれこれもう20回目くらいなの!あ、言い忘れてた私ケイミー!何かお礼をしなくっちゃ!あ!たこ焼きとか食べる!?」
「たこ焼き~~~!?大好物!」
「あ、ルフィさんたち戻ってきた」
私に聞かれたたこ焼きを食べるかという問いに返事をしたのは潜水艦をサニー号の中に戻して上がってきたルフィさんだった。一人500ベリーになりまぁすという声にお金とるのか、と思ったらヒトデが喋って商売かと突っ込む。喋るポケモン……?テレパシーじゃないし……人魚にあえて夢心地のサンジさんを中心に騒がしくなっている隙に私はぶしゃーっとミロカロスに全身を水かけてもらって塩を洗い流してから着替える為に船室の中に入るのだった。
「あ、ユウリ戻ってきたわね。とりあえず方針が決まったわよ」
「そうなんですか?これからどうするんです?」
「シャボンディ諸島にタコ焼き食いに行くぞ!」
「違うっつーの!ケイミーの知り合いの人が人さらいに捕まってるみたいでね。だから今からシャボンディ諸島ってところまで助けに行くわ」
「シャボンディ諸島ですか……」
何時もの私はその名前に舌を巻いた。シャボンディ諸島、私が白ひげさんの所から旅立つ時に口が酸っぱくなるほど行くなら注意しろと言われた場所だ。いつものリボンワンピースにニットパーカーという服装に戻ってバッグを背負った私が甲板に戻ってくるとナミさんにそう言われて私は渋い顔をしてしまう。何でもシャボンディ諸島は天竜人とかいう物凄い気色の悪い貴族とか当然のように人を襲って売りさばくヒューマンショップだのが跋扈してると聞く。ポケモンなんか見せた日にゃ凄いことになりそうで恐ろしい。
「何か知ってるの?」
「又聞きなんですけど……シャボンディ諸島では人間を扱うヒューマンショップが沢山あって、人魚や魚人族も扱ってると聞きます。それに……天竜人がよく遊びにくると」
「天竜人……!行くなら注意すべきね。彼らに関わるべきじゃないわ」
「天竜人……ってなんだ?」
ルフィさんの言葉に私以外の全員がずっこけた。私、全く詳しくないから知らないっていう人側だもん。ずっこける立場じゃなくて教えてもらう立場。というか全員知ってるんだ、天竜人のこと。うーん、白ひげさんの所の話を聞くに海軍並みかそれ以上に嫌われているように思えたからいったいどんな奴らなのか逆に気になるんだけど……もしかしたらバイアスかかってるだけで一般市民的な立場から見たら普通の貴族かもしれないし。
「よくわかんねえけど安心しろよケイミー!たこ焼きは俺が助ける!」
「たこ焼きじゃなくてたこ焼き屋な」
「あれ?魚たちが悪いけどここまでって……」
「ってことはきたのか!?『トビウオライダーズ』が!」
トビウオライダーズとな?と私は知らない単語にまたまた首を傾げる。お魚さんがケイミーさんに協力して海面に矢印をつけていたみたいなんだけどその矢印が消えている。だけどその肝心のトビウオライダーズとやらの正体はよくわかんない。見えないから。何も見えねぇぞ!というルフィさんに空を見て!というケイミーさん、私たちが上を見ると……おっきなトビウオが空飛んでる!?
「気を付けて!一回飛んだら5分は空を飛べるの!」
「なんじゃそりゃ!?」
「おい攻撃してくるぞ!防げ!」
「ミロカロス!ミラーコート!」
トビウオの上に何かが乗っていると思ったらそれはなんだか人相が悪い人たちだった。その人たちは持っていた銃やバズーカ砲を躊躇なくこちら側に向けて発射する。拳銃はともかくバズーカ砲なんて当たったらヤバそうなのでメインマストに当たりそうだったバズーカ砲の弾をミロカロスに倍返しで弾き飛ばしてもらったら……避けられた。トビウオの表情からしてギリだったっぽいけど。
銃がサニー号のあちらこちらに当たるけど……思ったより無傷。あれ?木だよね?そんなことを思って次は感電でもさせてやろうかとデンリュウのボールに手を伸ばしたら……海の中に潜ってそれっきり上がらないでどこかに行っちゃったみたい。見聞色にも引っかからず、探知範囲にいないってことは逃げられた?何だったんだろう。
「……乗ってみてぇなあのトビウオ」
「開口一番それかい」
「とにかくあのトビウオたちのアジトにケイミーの言うはっちんがいるのね?それじゃあそのアジトまで行きましょ!」
ナミさんの音頭でこの近くにあるらしいトビウオライダーズのアジトに向かうことになった。あのトビウオに人が乗ってこれる範囲ってことだから多分結構近い範囲にあると思うんだけど……にしてもはっちんって人も大変だな、人さらいの集団なんかに捕まっちゃうだなんて。海上戦になるだろうからミロカロスには出たままでいてもらって……あとは誰がいいかな~~。カイリューは確定で、それと~~と私が編成について頭悩ませてたらサニー号の進路上に半月型の木でできたおっきなアジトが見えてきた。その半月の真ん中には檻があって、縛られた誰かが捕まってるのが見える。
「……タコ?の魚人さんですかね?」
「ユウリあんたこの距離であの檻の中身見えるの?」
「視力良くないとポケモンバトルじゃ致命傷になるんですよ」
具体的にはホーミングして飛んでくるミサイルばりとか影に紛れて打ってくるどくばりとかかぜおこしに紛れて打たれるエアスラッシュとかを見逃してしまう可能性があるのです。トレーナーは!目と!判断力と!知識が命!だけど8割はポケモンとの絆!ってそういう場合じゃなくて!檻の中に見えるのは吸盤が付いた腕が6本あってとげとげな髪形をしている魚人さんだった。多分タコ……なのかな?
あぁ?と唸ったサンジさんをはじめとして麦らの一味の中の人たちが懐疑的な視線をつかまってる人に注いでいた。つまり何がどうなっているのだろうか?ケイミーさんとパッパグさんの様子からしても彼がはっちんなのは間違いないだろう。そうすればさっさと助けるべき……とカイリューのボールを手に取った私を止める人がいた、サンジさんだ。
「おーい!アーロンは元気かー!?」
「にゅ~~!?アーロンさんは海軍に捕まっちまって俺は命からがら脱出してきたんだ~~!ってしまった!」
「やっぱお前かこのクソタコ野郎!てめぇなんか助けるか!」
「えぇっ!?なんですかこの掌返し!?」
「あ~~ユウリとかは知らねぇよな、実はだな……」
いきなり助けないと宣言したサンジさんに続くゾロさんルフィさんの言葉に私が愕然としているとウソップさんがどういうことか説明してくれる。何でもナミさんの故郷であるココヤシ村にて、アーロンっていう魚人を中心とした海賊団が圧政を敷いていたそうなの。で、目の前にいるはっちんさんがその魚人海賊団の幹部の一人、つまりはかつての敵というわけだ。はーなるほど、それは助けたくないね。どうやら話してもらえないだけでナミさんの負った傷も相当な様子。ふむ、なるほど……。
「とりあえず檻ごと攫いますか」
「おいユウリ聞いてたのか!?あいつはだな!」
「はい、ナミさんの故郷に酷いことをした人ですよね?確かに私も彼一人なら助けようとは思いませんけど……」
「じゃあ何だって言うんだ」
「ナミさんにとって彼は憎むべき相手でも、ケイミーさんにとっては彼は恩人ってことです。私はケイミーさんのために彼を助けます」
ゾロさんの厳しい言葉に私はそう返す。悪いことをした人で、多分本当なら海の藻屑にしたいほど憎んでいるのだろう。だけどケイミーさんが必死になって助けて欲しいとお願いするだけの価値がケイミーさんにとってはあるんだ、彼に。私は彼がした悪行を知らない、今聞いても実感が持てない。だから、直接聞いて判断したい。そのためにも、今彼に死なれたら困る、ケイミーさんとパッパグさんもね。
「なによユウリ、私の言うこと全部言っちゃって。いいわ、助けてあげましょ?あいつ、意外と無害なのよ、ね?ルフィ」
「まーお前がいいなら仕方ねぇ!たこ焼きのためだ!野郎ども!戦闘準備だ~~~~!」
ルフィさんの号令に私たちは鬨の声を返す。やはりみんな海賊なのか、戦闘となるとなんだか生き生きしてるように見えるね。あーあ、これがポケモンバトルなら私もきっとワクワクできるのだろうけど。それじゃあ、やろうかみんな!私は腰のボールに手を伸ばして、それを空中に投げるのだった。
麦わらの一味に足りない海中戦を補えるユウリさん、ジンベエが来るまでこれで安心ですね!正直はっちゃんがこんな役回りで出るとは当時の作者は思ってもみませんでした。
ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします