カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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オークションと私と冥王

「おいデュバルさんよ、どうにか先回りしてケイミーちゃんが売られる前に奪還することは出来ねえのか!?」

 

「無茶言うんじゃねえよ黒足の旦那ぁ!ヒューマンショップがこの島だけでいくつあると思ってんだい!けどな……目星は付いてるぜぇ!」

 

「目星……!?それはどこなんですか!?」

 

「1番グローブだ!そこのヒューマンショップが今日大規模なオークションをするってんで話題なんだよ!人魚はいいたかねえが目玉商品だ、そこら辺のヒューマンショップに持ち込むよりも確実に高値を吊り上げることができる場所に卸す!」

 

 胸糞悪い話だなぁもう!こういうのって希少なポケモンを無理矢理に捕まえて売るポケモンハンター思いだして舌が苦くなるんだよ!そもそもケイミーさんは意志ある一つの人類でしょ!?白ひげさんだってそういう風に平等に扱ってたよ!この世界の歴史、私がいたところより500年弱遅れてるんじゃないの!?人種差別なんてかっこ悪いよ!

 

 デュバルが睨んでいた通りモトバロに設置されていた電伝虫が鳴り響いて、ケイミーさんの居場所が1番グローブにあるヒューマンショップだということが分かった。モトバロの遅い移動速度をカバーするためいち早く目星をつけて移動していたデュバルを見直した……んだけどモトバロが遅すぎて普通にトビウオに負けてた。そりゃないよ……。

 

「サンジ君!ユウリ!良かった間に合ったのね!」

 

「ああ!ナミさんオークションは!?」

 

「始まったばかりよ……ねえハチ、船の積み荷にある財宝……鑑定すれば2億ベリーは行くと思うわ。足りるかしら?」

 

「そ、そんなにあったら十分だけど……おれそんなに返せねえよ……」

 

「何馬鹿言ってんの!?私たちの友達を奪い返すのに惜しむお金なんてないわ!行きましょ!」

 

「いざとなれば私も出します。ため込んでますので」

 

 デュバルに道中みせてもらった各種族の相場表なる気持ち悪い紙に書いてあった内容によると、人魚の若い女性は2000万ベリーほどが相場らしい。2000万ベリーなら、こっちに来たときに倒した海賊の懸賞金が丸々残ってるし、バッグの中に換金用のきんのたまやでかいきんのたまがごろごろ転がっている。ひっくり返せばそれなりの金額になるだろうし、この際最悪ケイミーさんを攫って逃げるほうが賢いかもしれない。私がカイリューで攫った後に赤い土の大陸を越えて新世界側からケイミーさんに案内されて魚人島に行ってみんなと合流するのがいいかも。

 

「どうですか?これならいけるんじゃないでしょうか?私、まだ手配書で回ってませんし、麦わらの一味とも無関係扱いで行けると思うんですけど」

 

「そうね……最悪、それで行くしかないかも。でも……穏便に済ませられるならそれがいいわ。何せここ、海軍の駐屯地があるもの」

 

「そうですね……」

 

 成功率は高いと思うんだけど、ここの海軍の駐屯地はレベルが高いみたいで、天竜人が遊びにくるからか強い人たちが配置されていると聞く。白ひげさんの所を襲ってきた海賊の人たち並みに強いのがごろごろいるとかだと流石に面倒だ。特に覇気が使えたりすると負けないまでも時間がかかる。それでマルコさんですら注意しろと促す中将クラス以上の海軍の人が出てきちゃったらそれでもうアウトだ。大将が出張ってくるらしい天竜人がいたら目も当てられない。

 

 まだウソップさんやフランキーさんにルフィさん、あとお散歩中のゾロさんも来てないけれどケイミーさんが買われてしまったらことなので先に潜入することにした。入った瞬間にそこかしこからじろりという目線が突き刺さる、視線の先には海賊っぽい人たちが値踏みをする様に私たちを見ていた。会場では既にオークションが始まっていて、女海賊の人に既に値段がついて引き渡される所だった。そして次に出てきたひょろ長い海賊の男の人の競りが始まった、と思ったら、海賊の男の人の口から血があふれ出して会場がどよめく。思わず口を押えた。

 

「舌を……」

 

「噛んだ……んだな……くそ、なんで」

 

「人に飼われる人生よりも、最後に残された自由を行使したんだ。胸糞わりぃもん見せてくれるじゃねえか」

 

 咄嗟に私を抱きしめて目を塞いでくれたナミさんの献身もむなしく、私は初めてこの世界で人が死ぬところを見てしまった。ああ、くらくらしそう。チョッパーさんの奥底から絞り出すような声と吐き捨てるようなサンジさんの声。しかもこれは世界政府のお目こぼしを受けた事業。表ざたにはできないけど合法。腹が立ってしょうがない。

 

『さて!ではメーンイベントです!このシルエット!探し求めていた方も多いはず!魚人島より人魚のケイミーの登場だぁ~~!さあ!底値は3000万ベリーから!』

 

「ケイミーさん!」

 

「吹っ掛けるわよ!全財産ぶち込むわ!」

 

「5億で買うえ!5億ベリーだ~~~!」

 

 ナミさんがとりあえず全財産を提示して誰にも買えないように手をあげようとした瞬間、それよりも高い金額を出してそれを止めた人がいた。5億、5億ベリーだって!?破格にもほどがあるよ!?司会のファンキーな男の人ですら余りの法外な額に唖然としてしまっている。誰なんだ、と思わず声の方を見てハッとなってすぐに顔を戻した。マルコさんに聞いた特徴と一致する。無駄に豪華な潜水服のような服装と、頭についたヘルメットのようなシャボン玉……外界の空気を嫌うという天竜人の特徴だ。

 

「なんでここに天竜人が……!」

 

「まずいな、予測できなかった……!悪化しちまった……!」

 

「ユウリ、だめよ!待ちなさい……!天竜人よ……それを出しちゃダメ……!」

 

「けど……他にもう手段が……!」

 

 手段が完全に途絶えてしまったので、カイリューのモンスターボールに伸ばした手をナミさんに掴まれて止められた。首輪も、爆発させずに取り外す方法はある……!サーナイトに首輪だけテレポートさせればいいだけなんだから、私が行くのが最善のはずだ。それ以外にもう、ケイミーさんを救う手段がない!グッと唇を噛んで手段を模索していると、会場の屋根を突き破って何かが降ってきた……!トビウオ……!!ゾロさんとルフィさんだ!

 

「ケイミー!探したぞ~~!よかったあああ!!」

 

「にゅ~~~!待て麦わらぁ!ケイミーは爆弾の首輪をはめられてもう……!」

 

 ドンドンドン!と混乱した会場の空気を切り裂くようにいきなり銃声が響いた。ハチさんの説得を振り切ってケイミーさんの所まで行こうとしたルフィさんが振り返る。私たちも呆気に取られてしまった。警告も、何もなしに……ハチさんが撃たれた……!魚人だ……気持ち悪いという声がそこかしこから聞こえる。差別だ……!撃った天竜人は暢気に喜んでいる。

 

「仕留めたえ~~!持って帰るえ父上!人魚と合わせて得したえ~~」

 

「お前……!!」

 

「やめろぉ!麦わらぁ……約束しただろ……!どんなことがあっても、何をしても……!ハァ、ゼエ……!天竜人には逆らうなって!」

 

「……!!」

 

「何だえお前?その目、私が何か分かってるえ?ムカつくから死……ブヘェ~~~~!」

 

 急いでハチさんの所に戻ったルフィさんの裾を掴んでこれ以上何もしないように懇願するハチさん、無言のルフィさんの額に静かに青筋が浮かんでいく。剣呑な目で天竜人を見つめるルフィさんは静かにハチさんを置いて立ち上がり、チョッパーさんが小さくなって手当てに走るのに任せた。そして何も言わず、その鉄拳で世界貴族の頬を穿った。一撃で血反吐まき散らして吹き飛んだ世界貴族に会場中が信じられないものを見たかのようにルフィさんを見ていた。

 

「……悪い、お前ら。あいつぶん殴ったら大将が軍艦引っ張ってくんだって」

 

「……どーせやると思ったわよ。しょうがないわ、もう2,3発くらいはいいんじゃない?」

 

「斬り損ねた。おれに残しといてくれれば良かったんだがな」

 

「もういいですか?」

 

「いいわ」

 

 ナミさんの許可が出たので私は静かにサーナイトを呼び出す。ボールの中から状況を見ていたサーナイトはすぐさまテレポートでケイミーさんだけをテレポートさせて、私の傍に出現させる。金魚鉢のようだった水槽の中に残った首輪が大爆発を起こして、それを皮切りにヒューマンショップから蜂の巣をつついたような勢いで人が流れ出ていく。あー、もう。

 

「最初からこうすればよかったんですよ。この手に限ります」

 

「アンタ意外と好戦的よね?」

 

「バトルが趣味なので」

 

「おのれよくも天竜人を!ぐわあっ!?」

 

 しらーっとした顔でうそぶく私をナミさんは面白そうに笑いながらそんなことを言う。とりあえずサーナイトのマジカルフレイムで近衛っぽい感じの鎧きた人たちを吹き飛ばしていると、唐突になんだか物凄く大きな気配が黒焦げになった会場の後ろあたりからした。見聞色に引っかかる大きな気配、まるで白ひげさんのような……純粋な強さその物の気配だ。帽子を被った顔色の悪い海賊と何かを話していたルフィさんもそれを察したのか会場の方を振り返る。

 

「やれやれ……少々寝てたら随分な騒ぎになってるじゃないか……ん?ハチじゃないか!どうしたその傷!こんなところで何をやっとる!?」

 

「ニュ~~……レ、レイリー……!」

 

「む……ああ、なるほど……言わんでいいぞ。だいたい察した」

 

 会場の奥から出てきたのは白髪で眼鏡をかけた好々爺然とした人。少なくとも知り合いではない、私の方では。だけどケイミーさんとハチさん、パッパグさんとは知り合いの様子だ。サンジさんに抱き留められているケイミーさんの怯えた様子と爆発後、そして傷ついたハチさんで大体の状況を察したらしい。目をハートにしてるサンジさんの後頭部をぺしりと軽くはたいたサーナイトのおかげで真面目な顔に戻るサンジさん、いつもこれならいいのに。

 

 瞬間、バタバタバタッ!と会場にいた人たちが倒れ伏した。ああ、これ覇王色だ、と一人納得する私と混乱するみんな。もしかして覇気の存在って偉大なる航路の前半じゃ知られてないのかな?とりあえず何とかなったのかなーと私はサーナイトをボールに戻した。じろり、と周りを見渡したレイリーさんは私を見て片眉をあげるが、そのあとにルフィさんを見て破顔した。

 

「その麦わら帽子は……精悍な男によく似合う。会いたかったよ、モンキー・D・ルフィ」

 

「これは珍しいもんを見た。冥王……シルバーズ・レイリー……いいもん見せてもらった礼だ。帰るついでに表の掃除をしといてやるよ。ゆっくりしていきな」

 

 今の覇王色に気絶しなかった赤髪の海賊がひらひらと手を振って出ていくのにカチンと来たらしい顔色の悪い帽子の人とルフィさんが競い合うように外に出て行った。私はそれを見てがっくりと肩を落とす。ウチの船長も船長で子供っぽいなあ。私が言うのもおかしいかもしれないけれどさ。

 

「全員とはぐれたら13番グローブに集合してくれ。私はハチとケイミーを連れてここから出る!」

 

「フランキー!ケイミーちゃんを頼む!ユウリちゃんも連れてけ!」

 

「分かった!行くぜちびっこ!」

 

「はいっ!13番グローブですね!カイリュー!」

 

「りゅりゅっ!」

 

「ほぉ……こいつは、面白い!」

 

「一気に飛びます!フランキーさんはカイリューの背中に乗ってください!レイリーさんはどこかに捕まって!ザシアンっ!」

 

「悪い!頼んだ!」

 

 外では既にドンパチが始まっていた。私はカイリューを出して重症のハチさんと要救助者のケイミーさんを連れたフランキーさんを伴って離脱することにした。カイリューの背中に捕まったフランキーさんとカイリューの腕に抱かれたレイリーさん、都合大人4人以上の重さがあるにもかかわらずカイリューは軽やかに翼をはばたかせてモトバロに乗ってきたときに記憶した地図に従って空を飛び始めた。私もザシアンを呼び出して彼女に跨り戦場を離脱する。ナミさんが落とす雷の音が嫌に良く響いていた。

 

 

「か、か、か……海賊王のクルー~~~~!?しかも副船長~~~!?」

 

「ってことは白ひげさんともお知り合いで?」

 

「ああ、かつてはよく戦闘も小競り合いも飲み会も楽しんだ……君はやつを知っているのか?」

 

「少々お世話になったんです。娘、って呼んでくれて……すごく嬉しかったなあ……」

 

「ほぉ~~~!あいつがそう呼ぶほど気に入ったのによく船から降ろしたもんだ」

 

「巣立てって言われたんです。私には目的がありましたから」

 

 シャッキーズぼったくりバーというなんかすさまじい名前のお店に案内された私たち、少し待つと皆が続々と海軍を巻いて集まってきた。ハチさんは頑丈らしくて怪我はしたものの命に別状はないみたい、ケイミーさんも無傷。勝利と言えば勝利なんだけど要らない戦いのいらない結果なので難しいものだ。そして全員そろったところで明かされたレイリーさんの身の上は凄いものだった、大海賊時代を作り上げた海賊王、ゴールド・ロジャーの海賊団の副船長。思わず白ひげさんとの関係を聞いてみるとやはり知り合いだった様子。ふーんなるほどねぇ~。いろいろ気になる話が聞けそうでわくわくしてきた!




 デュバルってなんだかんだいいやつなのかもしれませんね。いや人さらいしておいて良い人はないか。義理堅いのかどうなのか、少なくともサニー号をまもり続けてはくれているようですし。全治一年とかやばすんぎ。

 さー、次回から物語が動きますね。ご期待ください。
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