カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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大将とくまと私

「もろもろ積もる話もあるが、コーティングの話だったな……どんなに急いでも3日はかかる。命に関することだ、半端な仕事はできない」

 

「じゃあ……私たちはそれまで身を隠しておかないといけないのね……」

 

「そうなる。船は41番グローブだったな?私が勝手に行って作業をしておこう。だが場所は変えると思うぞ。シャッキー、あれがあったろ」

 

「ええ、1枚だけね」

 

 なんかもう……疲れた……。レイリーさんの話はどれもこれもこの大海賊時代の核心を突くもので、知れば知るほどもうお腹がいっぱいになっていくものばっかり。海賊王が処刑の時には重い病だったこととか、歴史の真実を知った話とか。私もあった赤髪さんが海賊王の船の見習いだったこととか、ルフィさんと赤髪さんが知り合いだったこととか。胸やけしそう……プラズマ団のNの部屋を見た時並みの胸やけを感じるよ。

 

 レイリーさんの話の中には海賊王に繋がる話もあったのだけど、ルフィさんの楽しくない冒険はしたくないという一喝でウソップさん計画の「楽して海賊王大作戦」は白紙に戻ることになった。ウソップさんも物の弾みで言ったみたいで、聞きたくないから喋るなみたいに言ってたけどね。そこで始まったのはコーティングの話だ、これが本来の目的だし。

 

 それでその、肝心要のコーティングなんだけど凄腕の職人らしいレイリーさんでも3日間はかかるみたい。それもそっか、という納得はある。深海10000mも下にある魚人島に船ごと行かせるためのコーティング作業なのだ。逆に数時間ではい完成―と言われたら私ちょっと不安になるね。

 

 シャッキーさんというお店の女主人が出してきたのはビブルカード、それをそれぞれ破って私たちに配ってくれる。うーん、私のバッグの大切なものポケットが尋常じゃないことになってるなあ。白ひげさん、赤髪さんのビブルカードときて今度は海賊王の右腕のビブルカードときた。おっも~~~。常に背負ってるバッグの重さが10倍になった気がするよ……。

 

「ヨホホホホ!それでは3日間サバイバルですね!」

 

「ユウリ、今度こそ一緒にショッピングしない?ね、ロビン」

 

「そうね、いいんじゃないかしら」

 

「そうですね~~まあ、もういいんじゃないですか?」

 

「よせよせ!みろ!ユウリが呆れて目が死んでるぞ!?追われてんだから身を隠すんだよ!」

 

 そこまでしてショッピングがしたいんだナミさん……まあ、そんなに誘ってくれるならお付き合いするのもやぶさかではないし、天竜人をぶん殴った時点でもう色々諦めて開き直った方が正しいんじゃないかという思考が脳の9割を侵食していたのでナミさんに賛同しようとするとどうやら私の目はハイライトがそらをとぶしていたらしくてウソップさんに肩を掴まれて揺らされ、私は正気を取り戻した。だってー、もう試合終了だもの、諦めたほうが楽そうだもの。大将がなんぼのもんじゃーい!

 

「おれのために大変なことにしちまって申し訳ねぇ……!3日後までに動けるようになって必ず魚人島に案内する!約束だ!」

 

「本当にありがとうねみんな!私、絶対この恩忘れないから!」

 

「3日後に会いましょう。見送りに行かせてもらうわ」

 

 シャッキーさん、ハチさん、ケイミーさんにパッパグさんに見送られて私たちはぼったくりバーを後にした。ここから3日、限られたこの諸島で海軍大将たちのしらみつぶしの狩りを耐えないといけないわけだ。うひー、怖いなあ。あの、マルコさんが厄介と称する海軍のトップを張る大将が来てるわけなんだから、今まで以上に慎重に……あれ?この海賊団慎重になんかやったことあるの?うん?うーん、まあいっか!

 

 そんなことを考えながら皆と一緒にマングローブからマングローブへ移りながらあーだこーだ益体もないことを話しつつどうするかを考える。ホテルには泊まれないしなあ~~。テントは一人用だし……野宿は賞金稼ぎが怖い。うーん、かといってサニー号には戻れない。うんうんと私が一人唸っていると、皆が足を止める。ぽふ、と前を歩くナミさんの背中にぶつかった私が鼻を抑えて前を見ると……うそ……!

 

「バーソロミュー・くま……!!」

 

「ユウリお前知ってんのか!?」

 

「ルフィ、話しただろ。お前が寝てる時、ユウリが追っ払った七武海だ。手から衝撃波を出してくる、受けたらゴムのお前でもやべえぞ!」

 

「そうか!そいつが……!!お前ら行くぞ!」

 

 ルフィさんの号令で私たちは戦闘の態勢に入る、だけど私の見聞色が何かが違うと訴えかけていた。唐突に表れた目の前のバーソロミュー・くまは、贋物じゃないかと。強さの桁、言うなればレベルが違う。私のデンリュウの全力放電を耐えきったあのくまとは違い過ぎる。まるで別人のようだ。そして、手袋をとった仮称くまがこちらに手を向けると、発射されたのは肉球型の衝撃波じゃなくてビームだった。

 

「衝撃波じゃねえじゃねえか!あれは……ビームじゃーん!」

 

「喜んでる場合か!」

 

「あんときゃよくもやってくれたな!風来砲!」

 

 着弾時に爆発したレーザーに冷や汗を垂らした私がボールに手をかける。そしてフランキーさんの組んだ両手から発射された空気砲がくまを吹っ飛ばした。その隙に私はボールを投げる。乱戦だから多く出せば混乱の元だ。こういう時は最も信頼できる彼女に頼むべき、と投げたボールから出てきたのはカイリュー、くまを見ると彼女は瞳を鋭くして私の前に立ち指示を待った。

 

「六百煩悩砲!」

 

「羊肉JET!」

 

「協力してカイリュー!かみなりパンチ!」

 

「りゅぅっ!!!」

 

ルフィさん、サンジさん、ゾロさん、そしてカイリューの攻撃が同時にくまに突き刺さる。うん……違う!確信した、私があったくまなら今の攻撃のいくつかは肉球で弾くか自分を弾いて躱しているはず……!!目の前にいるのは贋物だ!多分……くまが言ってたパシフィスタっていうのの完成系……!本人じゃないんだ。

 

「おいぐるまゆ!こっちによこせ!」

 

「指示してんじゃねえ!画竜点睛ショットォ!」

 

「鬼気九刀流……!阿修羅!魔九閃!」

 

「カイリュー!ドラゴンテールで打ち上げて!」

 

「いくぞ……!ゴムゴムのぉ……!巨人の回転銃(ギガントライフル)!」

 

 まるでキャッチボールのように吹き飛ばされ続ける偽くまを最後はカイリューの尻尾が跳ね上げて空中で身動きを取れないところにルフィさんの巨大化したコークスクリューブローが決まり、偽くまは電源を切ったように動かなくなる。それで気の抜けたみんなは座り込んでしまった。ビームを紙一重で躱し続けたおかげで体中が痛いし、爆発で軽いやけどを負った。この贋物のくま一人で一味の全力が必要になってしまったのだから。

 

「何してるPX-4!お前らを作るために軍艦一隻分の費用が掛かってるんだぜ?しっかり働け!」

 

「新手……!しかも同じやつが……!」

 

「パシフィスタ……!めんどくさいですね……!」

 

「本物だろうが贋物だろうがどうでもいい……!もうあんなのと連続して戦う体力はねえぞ……!」

 

「ふん、あのパンク野郎になんて報告すればいいんだか……!始めるぞPX-1!」

 

「みんな、くるよ!」

 

 まさかりを持ったおかっぱ頭の男がPXー1と呼んだくまからまたビームが発射される。そのビームは容易く建物を貫通して爆発で吹き飛ばす威力がある。発射されると躱せないけど、射線上に入らなければ平気だ。なぜなら直進しかしないから……!連射されるビームをカイリューに抱えられて躱す私、そして決意したようなルフィさんの声が響いた。

 

「ここは逃げるぞ!バラバラに!皆サニー号に3日後、集合だ!」

 

「わかった大賛成~~!必殺!超煙星!ゾロ君!おれを守ってくれたまえ!」

 

「くっつくな!っち!ブルック!こい!」

 

「んナミさ~~~ん!俺がキミを守るよぉ~~!」

 

「ええ、ありがとサンジくん!ユウリ!アンタはこっちよ!」

 

「はいっ!」

 

 ルフィさんの判断に一も二もなく賛成した私たちは3手に分かれてそれぞれで脱出を目指すことにした。ナミさんに呼ばれた私がカイリューの背中に乗り直し、ナミさんも後ろに飛び乗る。フランキーさんとサンジさんもカイリューに掴まって私たちが空から脱出しようとしたときだった。見聞色が、私の背中に氷柱を差し込んだ。悪寒に従って必死になってカイリューに指示を出す。

 

「カイリュー!まもる!」

 

「りゅぅっ!!!」

 

 巻き込まないようにナミさんたちを振り落としたカイリューが私を抱え込んで緑色の障壁を発生させた。その障壁越しに私が目にしたのは、まばゆい光と、革靴の踵。振り下ろされたそれが障壁ごとカイリューを押しやって地面に叩き付ける。障壁は割れずともすさまじい威力が私たちを襲う。カイリューが私を放して前に出る、警戒をあらわに、唸り声をあげて。

 

「おォ~~。今ので立つ動物がいるなんてねェ~。それに、見聞色……キミがセンゴク元帥が言ってたユウリだねぇ~?」

 

「……海軍大将、黄猿さんですね」

 

「いかにも。怖いねぇ~~、ぴんぴんしてらっしゃる」

 

「ユウリ!逃げろ!」

 

 ルフィさんの声が耳朶を打つ。出来ればやってる、けど……背を向けた瞬間に、殺される。氷柱なんてレベルじゃない、背骨を全部ぜったいれいどで凍らされたみたいに止まらない悪寒。間延びした口調と裏腹に、子供だからと私を侮ってない。冷静に、処理するべき敵として見られている。油断してくれていた新世界の海賊とは、違う。

 

「マルコさんから聞きました。ピカピカの実の光人間、自然系の悪魔の実の能力者だと。あったら逃げられないよい、って褒めてましたよ」

 

「マルコ……ああ、不死鳥マルコか……白ひげ海賊団の人間かぁ~。ますます逃がすわけには行かなくなったねェ~。投降する気は?」

 

「ありません!」

 

「結構!」

 

「カイリュー!かげぶんしん!」

 

 脚を光らせる黄猿に対し、カイリューは残像を使っていくつもの自分の分身を生み出して撹乱する。そのうち一つに飛んだ光は、カイリューの分身を貫いて巨大なキノコ雲が出るほどの爆発を引き起こした。規模が違う……!そしてカイリューの位置を把握されてる!カイリュー自身が物凄く素早いから躱せているだけで、意味はないかもしれない……!

 

「カイリュー!ドラゴンクロー!」

 

「天叢雲剣」

 

「グルルルッ!!」

 

 カイリューがドスのきいた唸り声をあげてエネルギーを帯びた両爪を使って黄猿に斬りかかる。自然系に対しては弱点を突くしか攻撃方法がない……!武装色の覇気は私もカイリューも使えないから!辛うじて読み取れる見聞色で黄猿の攻撃を防ぐように合わせるカイリュー。だけどそれも長く続かなくて、一閃でカイリューの両腕を跳ね上げて胴体をがら空きにさせた。そのままの突きがカイリューの胸を穿とうとする……!

 

「やめてっ!カイリュー!避けて!お願いっ!」

 

「まず一匹……!」

 

「よしたまえ、黄猿君!若い芽を摘むんじゃないよ!」

 

「あんたは……冥王レイリー……!アンタの出る幕かい?」

 

 ギリギリのギリギリで、カイリューの胸を貫くはずだった光の剣は割って入ったレイリーさんの剣で逸らされる。九死に一生を得たカイリューはすぐさま私の傍に戻ってきてくれた。ああ……!よかった……!止めてくれたレイリーさんのそのまま逃げたまえ!という指示に私は一も二もなく頷いてカイリューに掴まって飛び立った。

 

「お前ら!何でもいい!逃げることだけ考えろ!今の俺たちじゃあ!こいつらには勝てねぇ!」

 

「潔し……!腹が立つねぇ」

 

「走れ!逃げろ!」

 

「おっさーん!ありがとう!」

 

「レイリーさん、ありがとうございます!」

 

「うむ、無事を祈る!」

 

 纏めて逃げるとはもう言ってられなかった。私はとにかく離れることを優先して戦場に背を向ける。偽のくまを率いていたまさかりの男は黄猿ほど速くはないみたいだし、偽のくまは本物のような超速移動が出来るわけでもない。注意するべきは大将黄猿ただ一人……!爆発音と剣戟から背を向けて、とりあえず隣のグローブに逃げた私はカイリューと物陰に隠れる。

 

「みんな、どこ行っちゃったかな……」

 

「りゅ~~~……」

 

疲れた~~……と羽根から力を抜くカイリューをうんと褒める。殺されそうだったのに、よく勇気を奮い立たせてくれた。そのおかげで、生き残ることができた。少し休んだら空から皆を探そう、と思考に耽る、直前にまた、内臓が掴まれるような恐怖の感覚が背後からした。同時に私とカイリューは後ろを振り向く。

 

「旅行に行くなら、どこに行きたい?」

 

「く、ま……!」

 

 私の口がその二文字を発する前に、カイリューが動く前に……私は今度こそ本物のバーソロミュー・くまの掌に触れられた。ぷに、という気の抜けた音と共に、私は……シャボンディ諸島から、弾き飛ばされた。

 

 




 くまさん、警戒が先んじていの一番にぷにっとしに来るの巻。流石に大将クラス、それも自然系はキッツいですね。武装色ないし、弱点ってなんだよ。シャドーボールとか?

 ではまた次回、感想評価よろしくお願いします
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