カイリューといっしょ! 作:カイリューはいいぞ
「ぶい!いぶいっ!ぶ~~いっ!!」
「うん、うん、わかった。分かったってイーブイ。会えてうれしいよ」
「ヤソップ、誰だこの子供?」
「ルフィの海賊団の仲間なんだと。色々あってこっちに飛ばされたらしい」
「おっ!白ひげの所にいたやつじゃないか!元気に冒険してるか!?」
イーブイは私に会えたのがよっぽど嬉しかったのか頭に乗ったり肩に降りてみたり抱っこを要求して全身の匂いを擦り付けるように私に引っ付いてみたりと非常にアグレッシブかつ情熱的に再会の喜びを表してくれる。強くハグをしてくれたサーナイトよりもよっぽどしつこいくらいに。まあ、私が抱えたらちょうどいいサイズの子だけあって非常にすばしっこくて捕まらない。ようやく抱っこで落ち着いてくれたイーブイはぺろぺろと私の手を舐めている。
ベック、と呼ばれた人が私を指さしてヤソップさんに質問するとヤソップさんは私のことをルフィさんの仲間だと紹介してくれた。ベックさんは信用できんのか、みたいな顔をしたけどすかさずヤソップさんはウソップのこと知ってたんだ、まず間違いねえと言ってくれてベックさんも一応納得してくれた様子。そして赤髪さんはかなり気さくに私に挨拶してくれた、覚えててくれたんだ。
「元気といえば元気ですが、2日くらい前黄猿とかいう光る人間に会って死にかけました」
「あー、そりゃ不幸だったな。二日前っていうとシャボンディか。ニュースになってるしな。ん?ここまでどうやって来たんだ?」
「バーソロミュー・くまに弾かれてしまいまして。ニュースというとどんな風に?」
「やっぱりか。くまがルフィの一味を壊滅させたっていうもんだからおかしいって思ってたんだが……逃がされたんだなお前ら、黄猿から」
「……逃がされた、ですか?そもそもお知り合いで?」
赤髪さん、シャンクスさんが言うにはくまは政府に盲目的に従うような男ではないということらしくてニュースによるとあのあとやっぱりくまによって私たち麦わらの一味は全員離散したということになってるみたい。一人も殺さずこんなことをしたのなら何か理由か意図があるってシャンクスさんはいうのだ。ふーむ、よくわかんないけど。
ポフィン頂戴とぶいぶい要求してくるイーブイにすっぱあまポフィンをあげてからとりあえずどうするべきか考える。一味の皆がどこに飛ばされちゃったかは分からないのだけど、新世界側か偉大なる航路の前半側のどっちにしろまたシャボンディにくるのは時間がかかるだろう。期限の3日まであと1日ないし、ここからじゃどうやってもシャボンディ諸島に1日以内にたどり着くのは難しい。
「……とりあえずモビー・ディック号を探してみます。赤い土の大陸の方向だけでも分かればいいんですけど」
「まさか、何も知らないのか?白ひげは今魚人島かもしくは前半にいるぞ。ニュース・クーの新聞の号外、見たか?」
「世界経済新聞ですか?実はシャボンディ諸島についてから見る暇がなくて……」
「百聞は一見に如かずだ、読んでみろ」
世界経済新聞、この世界で唯一と言っていいほど普及している新聞のことだ。8割くらいはゴシップとかエンターテインメントなんだけど割と重要な情報があったりするのでネットニュースとかと同じくらいのノリで信用していいものだと思っているんだけど、シャボンディ諸島についてからはそれを売るニュース・クーというカモメに会ってないので読めてなかったんだよね。
シャンクスさんにベックさんが渡したちょっと前の世界経済新聞を受け取った私はなになに……と見出しを見ただけで冷や汗を垂らした。白ひげ海賊団2番隊隊長「火拳のエース」公開処刑の決定。まず驚いたのが、白ひげさんの所の隊長さんに勝てる人が普通にいるということと、こんなことしたら白ひげさんは黙ってないということ、恐ろしくて震えるくらいに怒ってるんじゃなかろうか。
「……海軍は自殺志願者の集まりか何かなんですか……?」
「ホントにそうなら俺たちも面倒がなくていいんだけどな~~」
「問題なのは大真面目にそれってことだ。つまり白ひげ相手に全面戦争を挑むつもりなんだよ、海軍は。俺はベン・ベックマンだ」
「そういやお前の名前まだ聞いてなかったな。俺はシャンクス、よろしくな」
「ユウリです。名前いう前にビブルカードだけ渡して帰っちゃいましたもんね」
ビブルカードを渡した、のくだりでベックマンさんはじとり、とシャンクスさんをジト目になって睨んだ。わざとへたくそな口笛を吹くシャンクスさんはとりあえず置いといて、結局服の中に入り私の首元から顔を出すことにしたらしいイーブイを服が伸びるからやめなさいと抱っこしてえらいこっちゃと私は青くなる。全面戦争、カロス地方とかじゃないんだからそういうのやめない?無理なのは分かってるんだけど……。
「とりあえず、私も海軍本部に行くことにします。エースって人は、ルフィさんの義理の兄らしいですし。多分ルフィさん殴り込みに行くでしょうから」
「……本気か?」
「いたって真面目ですけど」
「戦争だぞ?」
「天変地異レベルなら多分生き残れるかと」
ほら、グラードンとカイオーガとレックウザがゲンシカイキ&メガシンカして三つ巴バトル!とかが私の死ぬかもラインなんだけど、そんなの早々ないと思うんだよ。それだと島一つ沈む程度ならかわいいもので、普通に1地方がしっちゃかめっちゃかになって大陸の形変わるとかがデフォじゃん?ほんとに運良かったな私……。他にも時間と空間の神と破れた世界の神と創造神と勝ち抜きバトルしたりとか、真実の英雄と理想の英雄の英雄との全面対決とか、起動した最終兵器相手に身一つとポケモンで立ち向かうとか……そんな記憶ばっかりだね「ユウリ」の体験は。何だ歴戦の勇者か何かか?危ないなんてレベルじゃないよ。
「遊びならやめとけ」
「っ……!遊びで行くつもりは一切ないです。命くらいなら掛けますよ、恩人と船長のためですから」
「シャンクスの覇王色を……!」
どさり、と私の後ろにいたロックスターさんが倒れる。眉間にしわを寄せたシャンクスさんの覇王色の覇気の余波だ。当然急にそれを向けられた私もタダじゃすまない、けど軽い気持ちでそこに行くと決めたわけじゃないのだ。全身の毛を逆立てたイーブイを撫でて落ち着かせる。あーあー、尻尾が2倍くらいに膨らんじゃって……。悪いんだけど、引くつもりはない。
白ひげ海賊団のエースさんとルフィさんの義兄が同一人物だと知ったのはスリラーバークを出港してすぐのことだ。不思議なこともあるもんだなあとは思ってたけど、公開処刑となれば事情が変わる。ルフィさんは助けない、という選択をあの時は選んだが、確実に殺されると知れば多分、いや絶対に助けに行く。会える前提だったのと違って、会えなくなってしまうからだ。
「流石は白ひげが船に乗せるのを認めただけはある、覚悟も本物か。俺たちも海軍本部に用があってな、ついてくるか?」
「いいんですか!?」
「ああ、戦争は確実に起こるがそのあとを考えないとな」
「おいシャンクス」
「べック、どうせほっといてもこの子は海軍本部にたどり着くぞ。たとえどんな姿になろうともな。白ひげはとんだじゃじゃ馬をこの海に放ったらしい」
戦争の後……つまりは後始末、かな。私もちょっとはこの世界に慣れてどういうパワーバランスでこの世界が動いているかを段々と理解してきている。4人の海の皇帝の一人である白ひげさんと、表面上とはいえこの世界全体の秩序を保っている組織である海軍が真正面から衝突する。そして、結果はどちらかの負けになるのだろう。
これはどっちが負けても、都合が悪い。その尻拭いをするつもりらしいシャンクスさんに私がどう見えてるのか分からないけど、確かに手持ちのポケモンに頼んで頑張ってもらえばシャボンディ諸島に戻って、レイリーさんに協力を仰ぎ海軍本部に行くことはできるはずだ。手持ちに相当な無理を強いることになるし強行軍にはなるんだけどね。
シャンクスさんはどうやら私がまた覇王色を耐えたことで同行を認めてくれるらしい。とてもありがたい話だ、強行軍をしていたら手持ち、特に主力ともいえるカイリューやメタグロスは確実に戦闘は出来なくなっていたと思う。戦争、と称するだけの戦闘の中に突っ込むのに、それは本気で自殺しに行くようなものだ。万全でこそ、勝機を手繰り寄せられるのだから。
出港するぞ、と声をあげたシャンクスさんの号令に従って周りで覇王色の余波を食らって気絶していた人たちを起きていた幹部格の人たちがバケツの水をぶっかけたりして起こしている。覇王色やめてくださいよ、という文句が出てシャンクスさんが軽く悪い悪いと言っているあたりこういうのは日常茶飯事なのだろうか。
「ぶい~~……」
「落ち着いた?イーブイ。ありがとうございました。私の友達を保護してくれて」
「ん?ああ、そいつな。前の島でシャンクスが気に入ったとかなんとかで連れてきたんだが……見た目は可愛いから女連中に人気だし愛想もよくて頭がいいと来た。シャンクスは完全に飼う気だったから気にすんな」
「俺はまだあきらめてないぞ」
「私の大切な友達なのであげられません」
「冗談だ、見てりゃわかる。お前はこいつにとっていい主人みたいだな」
毛を逆立てすぎて毛玉のようになってたイーブイがようやく落ち着いてため息を吐いた。ボールを見せるといやいやと首を振るのでしょうがなく外に出しておくことにする。定位置!と言わんばかりに肩に乗ったイーブイを苦笑いで見ているとカイリューのボールが揺れる。まあ、ミニリュウ時代は私に巻き付くのが趣味だったからね、ハクリューやカイリューになってからは出来なくなったけども。
出港準備が着々と進んでいく中、シャンクスさんは私に進路の説明をしてくれる。なんでもこのまま魚人島を経由して新世界から一気に偉大なる航路の前半まで戻るらしい。この島にいたのはたまたま、というか無人島なだけあって肉類や果物類が豊富にあってそれ目当ての補給だったらしい。
良くも悪くも俺たちは有名だからな、という通り白ひげさんと同列に語られる四皇の地位にある赤髪さんは滅茶苦茶有名な海賊だ、移動するだけで世界が震撼するレベル、白ひげさんと同じように縄張りと言われる場所はあるんだけど勢力図的に航海に使う場所は他の四皇の縄張りで街に寄って補給というのがしづらいらしい。だから、縄張りじゃない島で野生動物相手に補給をしていたわけだ。
「処刑の日取りまでは若干余裕があるが……まず間違いなく一戦交える。覚悟しておいた方がいいぞ」
「一戦を交えるというと……?」
「白ひげが勝つにしろ海軍が勝つにしろ面倒臭い戦争したがりの四皇がいるんだよ……そいつは多分自分も混ぜろと海軍本部に乗り込むだろうし、それとかち合う形に進路をとる」
「なるほど……戦闘狂ってやつですか。でもなんでわざわざ白ひげ海賊団を助けるような真似を?」
「白ひげを助けるわけじゃない、力をつけさせたくない男がいる」
ドタバタと出港準備が進む中、どうして利敵行為になる白ひげ海賊団の尻拭いに近い行為をしようとしているのかをシャンクスさんに尋ねると顔をかなりシリアスに引き締めてそう言った。四皇であるシャンクスさんを相手に、あの白ひげさん相手に笑顔で話しかけていたシャンクスさんがここまで警戒する相手がいただなんて……必然、私の顔も引き締まる。
「今回、この戦争の全てのトリガーとなった男だ。マーシャル・D・ティーチ、白ひげ海賊団の鉄の掟を破り、エースを捕えて海軍に引き渡した男……!」
「鉄の掟……?まさか、仲間殺しですか!?」
「そうだ。やつは4番隊隊長のサッチを殺し、悪魔の実を奪って逃走、それを追った2番隊の隊長であるエースが餌食になった」
「そういう、ことだったんですか」
ここまで聞いてようやく、私は事の全貌を把握することができた。モビー・ディック号に乗っていた時からあった違和感、殺された4番隊の隊長と不在の2番隊の隊長、だけど皆何があったかを詳しく教えてくれることはなかった。それがここで今、繋がってしまった。全ては白ひげ海賊団の中から始まっていた……それが世界を飲み込む潮流となって、今世界の向きを変えようとしている。
「大頭ァ!出向の準備が完了しました!」
「よし!行くぞ!……どうしたユウリ、ついてくるんだろ?」
「……っ!!はいっ!お世話になります!」
「今からそれじゃ、倒れるぜ?もっと肩の力を抜け、全力出すのは……戦う時でいい」
「うわわっ!?」
出港準備が整った、と赤髪海賊団のクルーが報告に来て、シャンクスさんが歩を進める。私は考えに没頭していたせいで反応が遅れ、シャンクスさんに背中を叩かれる。私の返事に緊張を感じ取ったらしいシャンクスさんは私を軽々と肩に座らせるように担ぐと、軽い足取りでレッド・フォース号のタラップに乗り込んでいった。高い景色なんてカイリューで慣れっこなのに、シャンクスさんの肩から見る景色は、妙に広く感じてしまった。
ユウリさん、事態の全貌を知るの巻。こうなれば特攻しに行きますよねぇ?というわけで戦争にカチコミじゃおらああああ!!!
ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします。