カイリューといっしょ! 作:カイリューはいいぞ
「その小さいのであちきとやり合うつもり!?覇気も使わねえで舐め腐んなよ!」
「小さいからって舐めてもらっちゃ困るよ!いくよ!イーブイ!」
「ぶいぶいっ!」
一撃で自分の所の船を全壊一歩手前まで追い込んだ頭突きを放ったうるティは標的をとりあえず私に変えたらしくて普通の人サイズだった体をむくむくと大きくして私を睨みつける。覇王色もビックリな威圧感を前にして、私はカイリューに相手をしてもらおう、かと思ったけどそれより先に私の前に出てきたのはびりびりエレキで粗方の船員を麻痺させてきたイーブイだった。
やる気十分頑張るよ!と私に向かって鳴いたイーブイを信頼しているカイリューはボキボキと鳴らしていた指を引っ込めて私の後ろにドスンと陣取る。なーるほど、久しぶりに私と一緒にやりたいと、そうだね?それじゃあ頑張ろうかイーブイ!しっかりとぶち壊されたせいで傾斜が付いた甲板の上で4つ足を踏みしめてうるティに対して威嚇をするイーブイとアイコンタクト、よし!
「行くぞチビィ!!」
「イーブイ!スピードスター!」
「鬱陶しい!」
「駆け上ってロケットずつき!!」
「ぶいいいいっ!!!」
「んなっ!?」
甲板を完全に踏み抜いてこっちに迫るうるティに対して回り込むように距離を取ったイーブイが放つスピードスターがうるティに迫る。うるティは星形のエネルギー弾を上に飛びあがることで避けてギラリ!と目が赤く染まって見えるほどの怒りの視線を私によこした。身震いしそうなそれに勝ち気な笑みで返した私はうるティがジャンプした瞬間に速度を上げてマストを駆け上っていたイーブイにロケットずつきを指示する。
エネルギーをたなびかせてうるティに頭からぶつかっていくイーブイ、空中で身動きが取れないうるティではあったが、彼女が選択したのは防御ではなく攻撃だった。振りかぶって頭突きするのは間に合わないと判断したのだろう。武装色で拳を硬化させてイーブイを殴りに来た。イーブイのロケットずつきと拳が衝突し合う。一瞬の拮抗ののち重さで劣るイーブイは跳ねのけられてこちらに戻ってくる。
「てんめぇ……!」
「うーん、強いね。流石四皇の船員さんだ。どう止めようか」
「ぶーい……」
「当然だろぉ!あちきは百獣海賊団真打ち!どこの誰かも分かんねえ奴に負けるかぁ!」
軽やかに私の前に着地したイーブイに目立ったダメージはない。技同士はぶつかり合って相殺されたのだろう。だけど、膂力の差、体重の差、そして覇気の有無は大きかった。イーブイはまだまだやる気マックスだけど、そもそも相手が強い。くまを相手にしたときのようにポケモン複数匹でかかるレベルの相手だ。
シャンクスさんは……だめだ、隣の船で無双ゲームしてる。なんか若干手加減してる、というか確実に手心を加えているんだけどなぜだろう?私の方に邪魔を入れないため?何でもいいけど分かるのは、試されてるんじゃないかなってことか。正直目の前のうるティは強すぎるくらいに強いから、私の方は加減する必要はなさそう。
「お前ごとぶち割ってやる!」
「よーしカイリュー出番!」
「りゅりゅっ!」
「ばかぢから!」
ぎちぎち、めきめきと音を立ててうるティの全身が変化していく。やっぱり能力者、それもマルコさんと同じ、動物系悪魔の実の珍しいタイプ!確か古代種っていうタイプが、恐竜とかの力を持っていたはず!うん、ズガイトスというよりもラムパルドが近いね、やっぱり。目測大体2.5m、カイリューより大きいや、負ける気はしてないけど。
恐竜の2脚で突撃してきたうるティとカイリューがぶつかり合う。武装色を纏った両手とカイリューのばかぢからを込めた手が組み合って押し合いになる。形は違えど竜同士の衝突だ。ドラゴンのカイリューと恐竜のうるティ、その力比べは両者一歩も譲らず、メキメキと甲板の木材が悲鳴を上げている。そして、忘れちゃいけないのはカイリューのほかに、まだイーブイが元気一杯で残ってるってことだ。
「ぶいぶいっ!!」
「行くよイーブイ!ブイブイブレイク!」
「ぶぶぶ~~いっ!!!」
「まずっ!?この!放せってんだこのデブ!」
「りゅ~~~!」
全身の毛を逆立てさせたイーブイが、その体躯にふさわしいくらいに可愛い咆哮をあげる。カイリュー、ドラゴンポケモンの中では結構な力持ちの部類なんだ。それがばかぢからを使って全力全開で対抗してきた挙句、腕をつかまれていればどう頑張っても抜け出すのには時間がかかる。私のパーティーのスピード自慢のイーブイの方が、速い!
「ぶいいっ!!!!」
「ぼへぅっ!?」
「よし入った!」
トレーナーへの信頼を力に変えるイーブイ最大の必殺技、黄金の光に包まれたイーブイの全力突進がうるティの横っ腹に突き刺さる。カイリューはイーブイがぶつかる一瞬前に力を強めてうるティを振り回し、イーブイに衝突させて技の威力を跳ね上げる。吹き飛んだうるティは船室の入り口をぶち壊しながら吹き飛んで、船の下層に消える。それでもまだ、終わってない。全然余裕そうな空気が見聞色から伝わってくる。
「いっっってぇなああああっ!!!」
「うそだー……」
「りゅ……」
「ぶい……」
バゴン!と船室を吹き飛ばした獣型のうるティが吠える。多少はいたかったみたいなんだけど、応えてない、効果はいま一つだったのかな。まるでハイパーボイスのような大音響、これはもう無理じゃないかな。かますか、一発。カイリューとアイコンタクト、左手が上になる様に両手を交差させて前に突き出す。大きく前後に足を広げそのままぱしんっと手を叩いて竜の口をかたどったように手を広げ、そのままその顎を上下に広げる。
「いきなりどうした、ふざけてんのかああっ!?」
「いーや、いたって真面目!」
左手のZリングが光り輝き、その蒼の光は収束してカイリューに降り注ぐ。これはアローラ地方特有のポケモンの強化方法、Zワザだ。見た目、ふざけているように見えるのはこの方法、他のやつと違ってそれぞれ技の予備動作をトレーナーが行ってZリングから力を引き出し、それをポケモンが技に代えて発射するという段階を踏むためだ。ゼンリョクポーズと呼ばれるそれは、正直恥ずかしいんだけどね……!
「グルルルッ……!」
「こいつっ……!」
「さあ行くよカイリュー!Zワザ!アルティメットドラゴンバーン!」
「グルアアアアアッ!!!」
「舐めんな!ウル
恐ろしいほどの唸り声をあげて喉から零れ落ちるような紫色の炎を漏らすカイリューを見たうるティはそれがどうしたとばかりに自らに喝を入れて頭を武装色で硬化させる。そして戦場のがれきを全て吹き飛ばす勢いで踏み込んでまっすぐこちらに向かって頭突きを繰り出して来た。
まともに受ければカイリューもお陀仏の頭突きだ、一撃で瀕死にまで陥るだろう。船を半壊させた頭突きに対して、カイリューは全身の力をありったけ引き出して紫色の巨大な火球を吐き出した。その火球は吐き出された瞬間に形を変え、巨大な竜の形をとると炎の翼をはばたかせてまっすぐにうるティに向かい、頭突きと炎が衝突した。
「もらったああああっ!」
「さあもう一撃!」
「っ!?!?」
爆発、炎上。うるティの頭突きはカイリューのアルティメットドラゴンバーンとぶつかり合い、灼熱の大爆発を引き起こした。燃えそうなほど熱い爆風の中から、ところどころ焦げて火傷を負ったうるティが勢いをそがれつつも姿を現し、勝ちを確信したように吠えるが、私が新しく別のZワザのゼンリョクポーズをとっているのを見て呆気にとられたような顔になる。
左手を上に交差させて突き出したポーズから、今度は左手を上に、右手を下に、体全体で大きなZの文字を現したものだ。またまた光り輝いたZリングからエネルギーが一直線に降り注ぐ、そこにいたのは茶色の毛玉なマスコット、イーブイ!Zパワーのオーラを身にまとったイーブイがまるで大砲が発射されたかのような音を立ててぶっ飛んだ。
「いっけええ!!ウルトラダッシュアタック!!」
「ぶいぶいぶいぶい~~~~!いぶっ!!!!」
「ああああああっ!!?」
ブイブイブレイク以上のエネルギーを纏った全力の突進と勢いを失ったうるティの頭突きが空中で衝突して、さっきの光景とは逆に、今度はうるティが吹き飛ばされる。衝撃が船体を真横に真っ二つにした、片割れに突っ込んだうるティがさらに半壊になった船の残骸を粉々にしていく。そこまでやってまだ……意識があるらしい。ふるふると震えながら瓦礫を押しのけて立ち上がろうとする。
「ま、だ……!」
「……出ておいで、メタグロ」
「そこまでだ」
ずしっ、と心臓を引き抜かれるような悪寒が私を襲った。覇王色、それも今までで一番重くて鋭いもの。完全に止めを刺さないといつまでも立ち上がってくると判断した私は葉っぱのような模様が這った虹色の宝石をトップにしたペンダントを引き出してもう片手にメタグロスのボールを手に取っていたんだけど、それを止めたのは四皇、赤髪のシャンクス。
「悪いな、これ以上は小競り合いじゃすまなくなる。ユウリ、お前予想以上だ。四皇の幹部の一人だぜ、うるティは。勝っちまいやがって」
「……最初からそれでよくないですか?」
「言い訳が必要なんだよ、こいつらにも。善戦したけど負けましたってな。あとそもそもうるティに俺の覇王色は効かん、ここまで弱ってなければだけどな。まぁカイドウも馬鹿じゃねえ、おれ相手に挑んでこれで済んだってのならまあ見逃すだろ」
「船一つオシャカで軽いんですか、怖いですね……」
サーベルを鞘に納めたシャンクスさんが軽い足取りでイーブイとカイリューの戦いで弱ったせいかシャンクスさんの覇王色で気絶してしまったうるティを沈んでいく船の片割れから持ってくる。降伏したらしい百獣海賊団の面々も海に飛び込んで船員を救助してシャンクスさんが無傷制圧してしまった残り1船と赤髪海賊団が制圧した残り1船に詰め込んでいく。
「回れ右して帰ることだな!これ以上やるなら……本気で沈めるぞ」
こわっ!覇王色が出てないのにもかかわらず、残った船員に脅しをかけるシャンクスさんの顔は白ひげさんが敵船に脅しをかけるのを同じくらいには怖かった。こ、これが大海賊の貫禄、とごくりと喉を鳴らした私がレッド・フォース号にカイリューに乗って戻ると、赤髪海賊団の面々からやるじゃないか!とかすげーな!という歓声が響いてきた。いやいや、とちょっと照れながら私はカイリューをボールに戻す。お疲れ様、カイリュー。
「さてイーブイも戻ろっか」
「ぶいっ!」
「あっ!逃げるな、もう!」
「はは、まあ無理に仕舞うことはないさ。それよりもユウリ、よくやったな!途中助けられるようにしてたんだが、いらん心配をしてたようだ」
ボールを見せるといやいやという感じで私の肩から飛び降りたイーブイがボールの光線から逃げ回り、最終的にはシャンクスさんの肩に上って拒否を示した。それにからからと笑ったシャンクスさんは指先でイーブイの喉をくすぐると、そのままその大きな手で私の頭を包んで撫でた。それがまた、白ひげさんのそれとは違う安心感があって、ちょっとだけ落ち着いた。まあ、それでも
「つまりわざとあの人と私を戦わせたと?」
「あー、なんだ、その……悪く思わないでくれ。白ひげがどうして子供、それに女を船に乗せてたのか解せなくてな。さっきのを見てようやっと納得できたところだ」
「まあ、乗せてもらっている立場なので文句は言いませんけども」
「そうぶすくれるな。あー、ヤソップ」
「大頭、子供にはよええなあ!」
ぶっすー、と表情に出ているらしい私を持て余したらしいシャンクスさんは苦笑いしながら子持ちの父親のヤソップさんに私の機嫌を取る様にパスをした。シャンクスさんの様子を見る限り、もし負けそうになる、もしくはポケモンたちが危なくなった時点ですぐに助けてくれたのは間違いないし、怒るのは筋違いだろう。どっちにしろ、Zワザじゃないと倒しきれない人間がいるっていう方が私にとってインパクトは大きかった。危なすぎる、今の段階で気づけて良かったよ。
私がボールを仕舞ったのを見たイーブイがシャンクスさんの体を飛び降りて私の胸に飛び込んでくる。しょうがないなあと私は彼女をキャッチして抱っこの態勢になった。レッド・フォース号には傷一つなく、しかも船体には幾人もの船大工たちがシャボンディ諸島で見たシャボン玉の液のようなものをバケツで抱えて船体に繋げるように塗っている、コーティング作業が始まっていたんだ、私たちが戦っていた時には既に。
もうすぐ戻れる、と私はちょっと強めにイーブイを抱きしめてはやる気持ちを抑える。イーブイは満足気に、私の胸に顔を擦り付けていた。
うるティ撃破。この後きっとお父さんがカチコミしてくる模様。やっちゃいましたねユウリさん。そしてボール拒否イーブイ。かわいい。でもやっぱりカイリューがナンバーワン!
ではまた次回。感想評価よろしくお願いします。