カイリューといっしょ! 作:カイリューはいいぞ
「もうすぐ、ですか」
「そうだな、どうだ!ウチの船大工は優秀だろう!」
「私コーティング作業の速さを比べられるほどコーティング見たことないんですけど……レイリーさんは3日って言ってました」
「ああ……あの人一人でやるからなあ……それで3日、そんじょそこらのコーティング屋より速いし丁寧でしかも頑丈。流石はレイリーさんだ」
コーティング作業を始めて2日目、ニュース・クーが運んでくる新聞にはエースさんの処刑の日取りまで何日という煽りが入っていること以外は特に何かあるわけでもない。麦わらの一味の皆の情報は入ってこないし、どこにいるかも分かったもんじゃないのだ。レイリーさんのコーティングの期限3日もとっくに過ぎてしまっているし、私は集合場所を無視して海軍本部に行こうとしているし、もうわけわかんない!おのれバーソロミュー・くま!逃がしてくれたらしいとはいえ次あったらデンリュウでZワザをぶち込んでやるんだから!
それはそれとして、サニー号も心配だ。いま、サニー号の中には財宝が山ほど積まれている上に、誰もいない。船ごと持って行かれちゃう可能性もあるんだ、うーん困った。レイリーさんやトビウオライダーズの皆が守ってくれるのを期待したいところだけど、それは求めすぎなのかもしれない。レイリーさんには黄猿の件で助けてもらったし、デュバルはもともとこっちを恨んでいた。サニー号が無事だといいなぁ。
「……なんか来てません?」
「来てるな、俺もよく知ってる気配がする。めんどくさいやつだ」
「そうですか、私今にも気絶しそうなんですが」
「冗談よせよ、ぴんぴんしてるじゃねえか。俺はもうお前を子供としてみれないぞ」
ずしっ、と空気が重さを持ったような粘っこいものに変わった感覚がする。私提供のモーモーミルクでコーティング作業の進捗について話していた私とシャンクスさんは、私にとっては見覚えのない強大な気配と、シャンクスさんにとってはイヤというほど知っているらしい同じ気配を見聞色で察知した。シャンクスさんは私より前にめんどくさそうな顔をしていたので私より早く気づいていたみたい。
ちょっと集中して見聞色で探ってみると私たちの周りを囲んでいた軍艦の気配が一つ、また一つと消えていくあたりかなりの強者だと思う。コーティングが始まってから都度3回百獣海賊団のうるティの襲撃を含まず海賊団の襲撃にあっているので私としてはもう「またか」くらいの域に達してしまって遠い目をしているのだ。もう律儀に付き合わずにミロカロスに波乗りで船ごと沈めてもらおうかな……。
「それで、今度は誰なんでしょうか」
「ああ……こりゃカイドウだな。隠してねえし」
「……四皇の?」
「ああ」
「最強の生物ってみんなが言ってる?」
「ああ」
「慌てるべきでは?」
さーーっと青ざめた私がシャンクスさんにそういうと慌てて何とかなるなら慌てるが、あいつは慌てたところでどうにもならんと言われて妙に納得した。それに、元々カイドウ本人と揉めるつもりであの小競り合いを起こしたって説明された。何でもカイドウっていう四皇は自殺が趣味らしくて、死に場所を求めてはいるものの本人のその圧倒的な強さのせいでどんなことをしても死ねずにいるらしい。
それで、趣味の一環かそれとも別の目的か分からないけど白ひげ海賊団と海軍本部の戦争に横やりを入れにくるとシャンクスさんは確信してるみたいだ。ミホークのやつも来るだろうしな、って言ってるし。ミホークって確かゾロさんが言ってた現世界最強の剣士だよね?バタバタと幹部格が気づいたせいか敵襲のコールが鳴り響く中、シャンクスさんはぐいっとモーモーミルクを飲み干した。私もそれに倣う、海軍本部に行く前に疲れちゃうよ、もう。
「あれ、一隻???」
「百獣海賊団の本船だな。っし、やるぞお前ら!」
おおおおおーーーっ!!!とコーティング作業をしている人も含めてこれからが本番とばかりに鬨の声が返ってくる。覇気が入り混じったそれらが私の体をびりびりと揺らした。レッド・フォース号と百獣海賊団の本船が相対し合う、どちらも大型船だけあって沢山の部下が乗っている。百獣海賊団の本船にいるのは、ナマズ髭にいかめしい顔をした筋肉質でこれまた大きな大きな人、寒々しい気配を放つ金棒を携えていて、口元は弧を描いていた。
「ウオロロロ!赤髪ぃ!うるティが世話になったみてぇじゃねえか!礼をしに来てやったぜ小僧!」
「ほ~、親バカかカイドウ!大看板の3人はどうした!?」
「遊びに行くのに必要あるか!ウオロロロ!それより……うるティをやったガキはどいつだ?」
「……遊びに行く感覚で海軍本部に行かれちゃ面倒だ。悪いが、ワノクニまで帰ってもらおう」
すっと、舳先にカイドウが立った瞬間にロックスターさんやヤソップさんをはじめとした赤髪海賊団の面々が私を隠すように前に立った。それほどまでに危ない人ということだろうか。確かに……見る限りでも滅茶苦茶強そうだ。イーブイの威嚇が止まらないくらいに。私はイーブイを有無を言わせずにボールに戻した。いつもは抵抗するイーブイも、私の意図を察してボールに戻ってくれる。
この世界、海賊の海戦にはいくつか種類があって大半は全員が船をくっつけて海賊団全員で船に襲い掛かるものと、もう一つ船を壊されちゃ困るので海賊団の代表同士、この場合は大体船長同士になるんだけど、その代表の決闘で雌雄を決するというものがあるの。この二つがメジャーで、他にはデービーバックファイトっていう形式のものとかもあるとか。
四皇同士ともなるとぶつかり合うだけで周辺被害がとんでもないことになるので自然と船長同士の決闘とかそういう形になるらしい。例えば白ひげさんの所にシャンクスさんがやって来た時とかがまさにそれで、交渉は決裂となったみたいだけど両海賊団に被害のない船長同士の決闘で済ませた。そして今回はどうなるか……。
「いくぞ赤髪ぃ!」
「こい!」
どうやら、今回は船長同士の決闘、という形になったみたいだ。それもそうなるだろうけど……カイドウは、そもそも海軍本部に行きたいのであって赤髪海賊団と戦うのはおまけもいいところだ。船が沈んだりしたら元も子もないし、小競り合いじゃすまない。対して赤髪海賊団もこれが終われば海軍本部に行くことになる。つまりこの決闘で勝った方が海軍本部に行くことになるってわけで……あれ?仮にシャンクスさん負けたら私言葉で言い表せないくらい凄惨な目に合うんじゃあ……?
が、がんばれシャンクスさん!私、ポケモンのためとかなら割と死ぬ覚悟固まってるけどまだ手持ち全員に会えてないから死ぬわけには行かないし白ひげさんにもお礼出来てないし何だったらルフィさんたちと冒険もしてない!すらり、と片手でサーベルを抜いたシャンクスさんに応えるようにカイドウは肩に刺々しい金棒を担いだ。武装色が黒い稲妻に見えるほどに武器に付与されていくのが見える。
「雷鳴八卦!」
「神避!」
二人が船を飛び出して空中で激突する。スピードが速すぎて一瞬で見失った。そして、遅れて天が割れる。これは白ひげさんに聞いた話だけど、覇王色を持つ人がさらに覇気を研鑽していくと覇王色を「纏う」ことができるらしい。覇王色を纏えば武装色の攻撃の威力は格段に増し、そしてその優れた覇王色同士のぶつかり合いで初めて天空が割れる現象を見れるらしい。
空中にも関わらず器用に攻撃をぶつけ合う二人、シャンクスさんは片手なのに全く苦しんだ様子はない、表情こそ険しいものの防御も攻撃もすべて余裕をもって行っているのが見える。対して凄惨に笑うカイドウもそれは同じで、私なんか落としただけで潰れちゃいそうなほど重そうな金棒をまるで体の一部かのように操ってシャンクスさんと空中戦を繰り広げている。そして、そのどれもが攻撃が触れてない。
覇王色を纏った攻撃は相手に触れずとも効果を及ぼすらしいのだけど、武器同士がぶつかり合うとああなるのか。触れずに反発しあうサーベルと金棒を見て私は爆風と衝撃波に髪を暴れさせながらそんな感想を抱く、一撃一撃がまるで伝説のポケモンが放つ技のようだ。そうしてる中で、シャンクスさんを金棒を振り飛ばすような感じで弾き飛ばしたカイドウの瞳と私の目が合ってしまった。あ、見つかった……?
「ウオロロロ!!お前か!うるティをぶちのめした生きモンの主人ってのは!ええ!?」
「……そうですけども、それが?」
「……期待外れだな」
期待してきた割には私の見た目がしょぼかったせいか、カイドウの瞳に失望の光が灯る。そしてそこから、ブワアアアッ!と覇王色の覇気を思いっきりまき散らして来た。邪魔だから私を気絶させるつもりだったのだろう、赤髪海賊団も百獣海賊団もその覇気の余波でばたばたと気絶するものがでる、けど……いい加減慣れた。質の違いも何となく分かってきたぞ、カイドウの覇王色は、殺意の塊みたいだ。カロスにあった最終兵器と似た感じがする。
「カイドウ、そいつ……覇王色効かねえぞ」
「らしいな、面白い!ガキ!この一撃を凌いでみろ!もしも生き残れたら、俺の傘下に加えてやる!」
「私にメリットないんですが!」
「
「っ!!あー、もう!シャンデラ!お願いっ!」
吹き飛ばされたシャンクスさんが何をどうやっているのか空中を蹴り上げて戻ってくる。ゴミ扱いした私に覇王色が通用しないことを見たカイドウは完全に興味を私に移したらしく、シャンクスさんと違って、足元に雲のようなものを出して空に浮かびながら、体を変形させていく。魚のような鱗が上半身に出現して厳めしかった顔が余計険しさを増した。
そして、その口が煌々と光り輝いて、熱線のような火炎が私に向かって発射される。口元から火が見えた時点でほのおタイプに類する技が来るとあたりをつけていた私は攻撃が来る前に船の前にボールを投げてシャンデラを呼び出す。仮にこれが別のものだったら私もシャンデラもレッド・フォース号ごと死ぬけれども、避けることが無理な時点でもう賭けるしかなかったから。
「報告にねぇ生きモンだな……おれの
「この子の特性はもらい火……炎の攻撃を無差別に吸収し自分の力に変えるの。こういう風に!シャンデラ、だいもんじ!」
「シャァァァン!!!」
「金剛鏑!」
あたりをつけた通り、さっきの攻撃はほのおタイプに類する攻撃だったみたいで、シャンデラはそれを吸収し、その炎を燃え上がらせた。そして、続けざまに指示しただいもんじがカイドウに向かって放たれる。吸収した熱量のせいか、「ユウリ」の記憶にないほど巨大なだいもんじが放たれて、一直線にカイドウに向かっていく。カイドウはそれを見て鼻で笑うと、金棒から衝撃波を放ってだいもんじにぶつけて相殺してしまった。
正直それには、あまり驚いていない。直撃してもどうせ効かないだろうなー、って思ってたし。そもそも当たってくれるかどうかすら曖昧だったもの。爆炎が空に咲くのを見守りつつ、どうやって生き残るかを私は考える。脳みそフル回転だ、今あるどんな手札を使っても目の前のあの人には逆立ちしても勝てそうにない。例えばこれが陸上だった場合、ザシアンを主軸にすればワンチャン……あるかどうかって感じか。海戦、空戦だと無理としか思えない。
「ウオロロロロ!!いい!いいぞガキ!俺の
「……生き残れるかな」
「俺ら忘れてんじゃねえよカイドウ」
背中に流れる冷たい汗を感じながらバトルの構えに入った私にストップをかけたのは覇王色で気絶しなかった赤髪海賊団の面々だった。シャンデラが先んじて対処したけども、シャンデラがいなくても何とかなったんだと思う。慌ててなかったし、よく頑張ったなとヤソップさんは私の頭に手を置いて、背負っている長いライフル銃を構えた。ベックマンさんがピストルを抜いただけで私は、冷や汗が引いていくのを感じた。皆、強いんだやっぱり。
「……興醒めだ。しょうがねえ、今日の所は引いてやろう」
「なんだ、気持ち悪いな。どんな心境の変化だよ」
「ガキ相手に本気になるほど暇じゃねえんだよ。ガキのお守りしてる海賊団もな」
赤髪海賊団が本気で戦闘態勢になった瞬間に、カイドウは大きくため息をついて自分の船に帰った。私はいきなりのそれにポカンとしてしまう。さっきまでやる気満々だったのに、どうしたことだろうか?空中を蹴り上げて戻ってきたシャンクスさんを見ると彼はにやっと笑って私の頭をグシャグシャにしてしまう。百獣のカイドウ……よくわからないけど、はた迷惑な人だったな。
カイドウさんは強い獣が覇王色に耐えるとはいえクソザコナメクジな主人公に従っていることに解釈違いを起こしました。面白いとは思ったけどコレチガウみたいな
ではまた次回に