カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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戦争と私と海軍

 結局何だったんだろう、と私は海底に進むレッド・フォース号の甲板にある樽の上に座りながら首を傾げる。カイドウは本当に興が冷めたって感じでさっさと帰っちゃったんだけど、目的は海軍本部に乗り込んで戦争に参加することだったはずなのにあんなあっさりと帰っちゃってよかったんだろうか。うーん、四皇っていうのは不思議だ。というか時間取られ過ぎた、エースさんの処刑に間に合わなくなっちゃう!

 

「納得いかねえ、って顔してんな」

 

「あんなに大暴れして途中で切り上げたりして、何がしたいのか分かんないなって思いまして」

 

「カイドウはそういうやつだ。話なんか通じねえ、お前が面白かったのは事実だろうが、俺たち全員敵に回して相手する方がめんどくさかったんだろうな」

 

「ぶいぶい!」

 

 一人で首を傾げ続ける私に話しかけてきたのはヤソップさんだ。シャンクスさんはベックマンさんと難しそうな顔であれこれ話してる。カイドウの攻撃の余波でコーティング作業が大幅に遅れちゃったからエースさんの処刑に間に合うかどうかわかんなくなっちゃったんだよね、実の所。勝手に出てきたイーブイが私の膝の上に陣取ってへそ天をして撫でろアピールをするのでわしゃわしゃしながら意味不明な最強生物のことはとりあえず忘れることにした。

 

 遅れを取り戻そうとしているのか、そもそも海流が早いのか結構な速度で進む船、潜っていくにつれてどんどんと加速していっているように思える。私の膝の上で丸くなって寝てしまったイーブイを撫でているとシャンクスさんとベックマンさんが私の所にやってきた。

 

「ユウリ、お前白ひげのビブルカードとか持ってないか?」

 

「持ってますけども」

 

「だよなー、持ってないよなー……持ってるのか!?」

 

「え、はい。シャンクスさんが私に渡したのに自分が渡さないのは癪だっていってくれました」

 

「でかした!ビブルカードを利用して進むぞ!そうすれば間に合うかもしれねえ!」

 

 ダメでもともと、という顔をしたシャンクスさんではあったけど、私が白ひげさんのビブルカードを持っている、と知った途端にぐっと手を握った。がさごそと大事なものポケットから白ひげさんのビブルカードを取り出して、手のひらに乗せるとずりずりと移動していく、その方向に合わせるようにレッド・フォース号は舵を切った。処刑の時刻まで残り1日もない、間に合うかな……。

 

「魚人島は経由せず補給はなしで行くぞ。カイドウに思ったより時間を取られた」

 

「コーティングを途中で台無しにされたからな、あっつい息なんか吐きやがって」

 

「……おい、ユウリ?どうした?」

 

「あっ!?はい!?ごめんなさいぼーっとしちゃって!」

 

「いや、色々あって疲れてんだろ。上がるまで寝てたらどうだ?」

 

「……そうですね、そうさせてもらいます」

 

 シャンクスさんが、シャボンの外を見ていた私が上の空なのに気づいて声をかけてきた。おかしいな、巨大な海王類やクラゲの気配に紛れて、とてもよく知っている気配を感じた。とてもよく知っている、ポケモンの気配。一瞬、黄色い瞳が深海の闇の中に見えた気がして、その方向をずっと見つめてしまっていた。

 

 だけど、気のせいだったのか、ここ何日か危機の連続で死にかけてて疲れていたせいなのか分からないけど見聞色で探ってみても一瞬だけ感じたソレの気配はもうなくて、やはり勘違いだったのかと私はぱちくりと目を瞬かせる。後で返してくださいね、とシャンクスさんに白ひげさんのビブルカードを預けて私は船室に入り、イーブイを抱っこして眠りについた。

 

 私が目を覚ました時には船はもう海上に上がっていて、いつの間にか魚人島を過ぎていたみたいで、何と深層海流の速度が通常よりも速かったそうなのだ。何かあったのかなあ、と思っているんだけど結局早く終わったのならいいことだ。それよりも、そろそろ処刑の時刻が近づいている。間に合うのかな……。

 

「ユウリ、ビブルカード返すぜ。ここまでくりゃ、海軍本部は目と鼻の先だ。どうする?」

 

「行きます」

 

「即答か、そりゃそうだな。気をつけろよ、お前がやられたっていう黄猿と同じ肩書のやつが2人、その上が一人、そんくらい強いのが少なくとも一人はいるし、王下七武海も全員来ているだろう」

 

「そうでしょうね。ですけど……どうにかしますよ。ね、カイリュー」

 

「りゅっ」

 

 改めて見聞色で周りを探ってみても、あの一瞬だけ感じた気配は影も形もない。やっぱり気のせいだったのかな、と思って私はシャンクスさんから白ひげさんのビブルカードを返してもらう。ここで、彼らとはお別れだ。戦争の後処理が主目的の赤髪海賊団は、海軍か白ひげ海賊団のどちらかが負けた後に、これ以上戦火を広げないようにするストッパーとしていくんだ、勝敗には関与しない。それは、白ひげさんに対する彼の礼儀だろう。

 

 カイリューに飛び乗る。ここ一番の勝負所だから、ちゃんと着替えた。ガラルでジムチャレンジをしていた時に来ていた白のユニフォーム。ズボンのポケットの中にいれたビブルカードを握って進む方向を確認する。左腰にある6つのボールと右腰にある2つのボールを確認、大丈夫。ダイマックスバンド、Zリング、大丈夫。ネックレスもオッケー。よし、行けるね。

 

「お世話になりました」

 

「ああ……死ぬなよ」

 

「はいっ!」

 

 ぱしん、とカイリューの背中に飛び乗って彼女の首を叩くと彼女は心得たとばかりに鳴いて飛び立った。今回はそのまま戦場に行くので、体の動きを邪魔してしまうライドギアはつけてない。大丈夫、そもそもカントーやジョウトなんかじゃそんな便利なものなかったんだからなくたって平気。シャンクスさんの激励に大きく返事をした私は、手を振る皆さんに頭を下げてレッド・フォース号を後にした。

 

 

 

 カイリューに目一杯急いでもらう、音を超え衝撃波をまき散らして飛ぶカイリュー、途中でスピードを上げる為に彼女に抱えられた私は必死に抱き着きつつ時折方向を確認して海軍本部、マリンフォードに向けて飛び続ける。カイリューが本気で飛べばあっという間、新世界からじゃ流石に遠すぎるけど、近くまで送ってもらえたのだから間に合う、間に合わせる!

 

「見えてきた!頑張ってカイリュー!」

 

「りゅっっ!!!」

 

 私の声と共に一層頑張ったカイリューが翼をはばたかせて加速していく。城壁のようなものに囲まれている、海軍となぜか漢字で書かれた大きな建物。そこかしこから黒煙が立ち上り、悲鳴と銃声と、そして赤い血がこの距離からでも見える。そして、それを見たカイリューが高度を上げてそのまま直滑降に落ちるような形でマリンフォードを目指す。そして、見つけた。白ひげさん、そして……ルフィさん!だけど、座り込んで動けないのをいいことに手をマグマに変えて黒煙を立ち上らせる男の人がルフィさんを攻撃しようとしてるのが見えた。間に合えっ!

 

「カイリュー!ギガインパクト!」

 

「なんじゃ!?ぬぅっ!?」

 

「……ユウリ?」

 

「ま、間に合った……!ありがとサーナイト」

 

「サナッ!」

 

 私はカイリューから飛び降りてスカイダイビングのような態勢になる。身軽になったカイリューは全身をエネルギーで包み込み、さらにスピードを上げてマグマの男にぶつかる。ルフィさんを庇おうとした人を押しのけて入った一撃は自然系の能力者だったらしい男をマグマをまき散らして跳ね飛ばした。ダメージはないだろうけど、防げた。腰のボールを叩いて、そこから出てきたサーナイトのサイコキネシスでルフィさんの前に着地した私に対して、ルフィさんが唖然としたような声で私を呼ぶ。

 

「あー、ルフィさん。お久しぶりです。助けに来ましたよ、船長」

 

「ユウリイイイイイ!!!」

 

「わー!?なんですか急に!?まだ何も終わってませんよ!?」

 

 どばぁ、と全身血塗れにもかかわらず顔を涙やら鼻水やらで台無しにしたルフィさんは私に会えたのが相当嬉しかったようで私に縋り付いた。カイリューに押しのけられた、正確には攻撃に巻き込んじゃったけど自然系だったから効かなかったらしい男の人はカイリューを警戒しながらも私の近くにやってくる。とりあえずルフィさんを引きはがしてその人に向き直った。

 

「誰だか知らんがありがとよ。もう少しで俺の大事な弟が死ぬところだった。お前、ルフィの所の船員か?」

 

「お前の妹でもあるよい、エース。オヤジが娘と認めた子だよい」

 

「マルコさん!お久しぶりです!サーナイト、外しちゃって」

 

 見た限りの特徴から海牢石製の手錠をつけられてしまっているマルコさんが走ってこっちに来てくれる。サーナイトがテレポートで足元にそれを転移させると自由になったマルコさんはお礼を言って飛び立った。少し先には白ひげさんの姿が見える。乱戦が過ぎてよくわからないけど、立って、動いているのは分かった。

 

「オヤジが船に乗せたのか……!赤犬がくるぞっ!」

 

「報告にあった娘か……ようこんなところまで来たな悪党。ここで死んで行け」

 

「イヤです、悪党らしく、好き勝手させてもらいますよ!」

 

「ユウリ!あとは逃げるだけなんだ!無茶すんな!」

 

 ボコボコと鳴動するマグマが地面を溶かしながらこちらに迫る。足が震えてるルフィさんも、全身から火を漏らすエースさんも限界が近そうだ。赤犬、海軍大将赤犬か。マグマ人間だって聞いた、ポケモンに表すならほのお・じめんもしくはいわ

ってところだろうから、シャンデラのもらい火じゃ難しいかもしれない。私はサーナイトに目配せ、続いてカイリューにも。よし、いけそう!

 

「大噴火!なんじゃと!?」

 

「カイリュー!はかいこうせん!!」

 

「ぐぬおおおおおっ!?」

 

 マグマの手をロケットパンチにして打ち出そうとした赤犬の首に、さっきサーナイトが外した海牢石の手錠の鎖が巻き付く。海牢石は能力者の能力を封じてしまう海と同じエネルギーを持った石、自然系には私は弱点を突くしか方法がないけど、奇襲なら効くでしょう!?強制的に能力を封じられたうえに体の力が抜けた赤犬は完璧なタイミングで発射されたカイリューのはかいこうせんをまともに受けて吹き飛んでいった。ちょうど、白ひげさんのところまで。

 

「グラ、グララララ!ええ、おい赤犬……!ウチの息子と娘に手を出そうとしたんだ、きっちり落とし前付けてけよアホンダラァ……!」

 

「エース!さっさと弟連れてこっちこい!逃げるぞ!オヤジの意思を無駄にするな」

 

「っ!ああ……!」

 

「白ひげさんは!?」

 

「オヤジは……ここに残る!新たな時代を守るために!」

 

 そんな……!こっちに向いた白ひげさんの状態がやっと見えた顔の半分がなくなっていて、胸の真ん中に焦げた大きな穴が開いている白ひげさんの姿を。何とかして巻き付いた海牢石の鎖をほどいた赤犬の顔面に、白ひげさんの大きな拳が容赦なく叩きつけられた。地震その物な揺れと共にとんでもない威力を持って島を割ってしまう。続けざまの蹴りが倒れ込んだ赤犬を跳ね上げ、さらに追撃の拳がまともに赤犬を捕える。吹き飛んだ赤犬に遅れてやってきた地震のエネルギーが海軍本部に甚大なダメージを与えていくのが分かる。

 

「お~~、シャボンディ諸島ぶりだねえユウリちゃん」

 

「ちゃん、なんてあなたに呼ばれたくないです」

 

「そりゃごめんなすって」

 

「おい黄猿、さっきはよくもやってくれたよい」

 

 白ひげさんが島を分断してしまったので海軍と海賊で別れてしまったマリンフォードはすさまじい大混乱だ、私が現れたことに気づいた黄猿が光となって私の前に現れる、だけどそれをマルコさんの武装色を纏った蹴りが押しのける。エースと弟を逃がせ!という声がそこかしこから聞こえてくる。

 

「ゼハハハ!オヤジィ!死に目に会えそうでよかったぜ!」

 

「ティーチ……!」

 

「黒ひげ海賊団だぁ!」

 

 目まぐるしく変わる戦場の中、サーナイトをボールに戻してカイリューと一緒に空を飛ぶ。空中を蹴り上げてくる海軍の人たちをカイリューと一緒に蹴散らしながら、眼下に映るルフィさんとエースさんから目を離さないよう努める。海軍の大きな悲鳴じみた声を聴いて後ろを振り返ると、かなりふくよかでところどころ歯の抜けた顔をした男が白ひげさんの前に立っていた。

 

 男の手が黒い闇のようになって白ひげさんを捕える。白ひげさんは持っている巨大な薙刀で彼を切り倒し、押し倒して……思いっきり地震を込めた拳で殴った。男の悲鳴があたりに響き渡る。だけど、それまでだった。黒ひげと呼ばれる男の後ろにいた配下たちが容赦なく銃に刀、やりを白ひげさんに浴びせていく。

 

「オヤジ~~~!!」

 

「おっさん!!!」

 

「行くな!エース!オヤジの最後の船長命令を聞くんだ!」

 

「白ひげ、さん」

 

 めった刺し、撃ちにされる白ひげさんを見た私の中で、何かがぷつんと音を立てて切れる音がした。急速にあたりの音が遠くなっていくのがわかる。許さない、あの人たち。私の意を察したカイリューが、反転する。




 赤犬が吹き飛ぶわけねえだろというツッコミに対する言い訳ですが、作者は自然系の中でも実体のあるものとないものに分けられると考えていまして具体的にはピカピカやゴロゴロ、メラメラといったエネルギーの塊みたいなタイプは攻撃を受けてもすり抜けて吹き飛ばせない、もう一つはマグマグやヒエヒエ、ヌマヌマみたいな物質として存在するタイプは全身あますところなくぶっ飛ばすみたいな方法で「押す」ことができると考えています。言い訳ですはい。

 エースは助かりましたがあとは...次回をお楽しみにどうぞ
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