カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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合流と私と終戦

「———全員、ここは俺の顔を立ててもらおう」

 

 戦場の動きが完全に止まった。これ以上は無益であると説くシャンクスさんに何かを言い返そうとする赤犬を大仏の人が諫めた……シャンクスさんがセンゴクと言ったから、海軍本部元帥、センゴクなのだろう。話を聞く態勢になった海軍を前にしてシャンクスさんは口を開く。ずしん、とゲンシグラードン、ゲンシカイオーガ、そしてメガレックウザもそっちを気にして向き直る。

 

「悪いが白ひげの弔いは俺に任せてもらおう。戦いの映像は世に発信されていた、これ以上……そいつの死を晒す真似はさせん」

 

「何を!?火拳のエースの処刑に失敗した以上、その首を晒してこそ世の人を安心させられるというのに!」

 

「構わん!お前なら、いい。責任は私がとる」

 

「元帥殿!しかし!」

 

「フィルス中将、貴様はあの娘の怒りを買って、あの化け物どもに暴れられたら……今の海軍の状況で守れると思うか」

 

 厳しい顔をして私を見やるセンゴクに白ひげさんの首を晒すべきだと主張した中将は黙り込む。センゴクが攻撃をぶち当てたゲンシカイオーガはぴんぴんしている。もちろん、通用している、通用しているしダメージも通ってる。だけど……体力の桁が違う。すさまじい強さのゲンコツを当てられたゲンシグラードンもそれは同じ。戦闘続行可能だし、もう次やるならば私も島を気にしない。沈ませていいと指示するだろう。

 

「よく加減してくれたね、3匹とも。ありがとう、お疲れ様」

 

「っ……!?負傷者の手当てを急げ!戦争は!終わりだァ!」

 

 本当に、よく加減してくれた。怒りに任せてこの子たちを呼んでしまった時は、地図が書き換わるとどこか遠い私がそう思っていたのだけど……人なんかどうでもいいと考えているこの子たちが私の意を酌んでくれて、針の穴を通すような力加減で戦ってくれたおかげで、重傷者、意識不明者はいても直接的な死者はまだ出てない。これから負傷者の中から出るかもしれないけど……ホウエン伝説の3匹が揃って暴れたにしては被害は極めて軽微だ。

 

 3匹が光に包まれて元の姿に戻る。加減をした、のあたりでセンゴクがぎりっと歯を鳴らしたのが聞こえたがもう、彼が宣言した通り戦争は終わりだ、もう戦う必要はない。すた、すたとシャンクスさんが私に向かって歩いてくる。私はカイリューとザシアンをボールに戻して彼に向き直る。この3匹を収めるボールは、ない。ゲットしていないからだ。ただ、彼らが私を気に入ってくれてるから力を貸してくれているだけ。

 

「船を見ていたのはこいつらか」

 

「ええ、正確にはこの子、カイオーガです」

 

「クァァ……」

 

「悪いんだが、ルフィにあったらこれを渡しておいてくれ。赤犬のおかげで瀕死でな、意識もない」

 

「これは……わかりました。でも、白ひげさんは……」

 

 今ならわかる、魚人島を通り過ぎる最中に感じた懐かしい気配は、カイオーガだった。私はずっと、彼らに見守られていたんだ。呼ばれるまで、待っていた。シャンクスさんが差し出してきたものは、ルフィさんが肌身離さず持っている麦わら帽子だ。シャンクスさんとの約束の証だというソレをルフィさんが手放したということは、かなり切羽詰まった状況だったのだろう。

 

「ユウリ、エースのやつはやつの弟と一緒だよい。オヤジの弔いの時は必ず呼ぶ、今は仲間の所にいてやれ……きっと、オヤジならそう言うよい」

 

「マルコさん……分かりました!私、白ひげさんに顔向けできるように……生きていきます!」

 

「クァァ!」

 

「カイオーガ、送ってくれるの?」

 

「ああ、それでいいよい。情けねぇ兄貴たちの尻拭いをさせて済まなかった。お前があの時来てくれなかったら赤犬に……エースをやられてたよい。俺たちが迎えに行くまで、エースを頼んだ」

 

 マルコさんの言葉に頷いてから、私は駆け出した。カイオーガがゆっくりと後をつけてくるのが見える。グラードンは地面に潜り、レックウザはどこかに飛んでいった。でもきっと、私を察知できる範囲にいるのだろう。2匹分のプレッシャーから解放された戦場の空気が軽くなった。カイオーガが高くジャンプして海に突っ込む、それだけで軽い津波が発生した。私は、無事な船の上で安置されている白ひげさんのところに向かう。男泣きをしている船員や傘下の海賊たちはもっと顔を見ていたいだろうに私が来ると無言で道を譲ってくれた。

 

「白ひげさん……短い間でしたけど……娘と呼んでくれて嬉しかったです。私は、貴方を絶対に忘れません、私の……居場所、に帰ったら……いいお酒、持っていきますね」

 

 顔の半分が焼け焦げて、全身血塗れの白ひげさん、その顔は……満足気に笑っているように見えた。痛みによる苦悶なんて欠片も見せない顔で、彼は死んでいた。最後に顔だけ見たかった……だけど、少し関わっただけなのに、途中で涙が出てきて止まらなくなってしまった。泣いてんじゃねえよアホンダラ、という白ひげさんの声が聞こえてきそうで……深く頭を下げてから私は船を飛び降りる。

 

 海上に浮かんでくれていたカイオーガの背中に柔らかく受け止められて私は海軍本部マリンフォードから一足先に脱出する。シャンクスさんが睨みを効かせているなら、もう一度戦闘が再び発生するなんてことはないだろう。私は麦わら帽子をバッグの中に仕舞って……声をあげて泣いた。カイオーガしか聞いてない海上で、私はこの世界で初めて心を許した人の死を、悼んだ。

 

 

 

「ぶいぶい!ぶいっ!」

 

「慰めてくれるの?ありがとうイーブイ」

 

 思いっきり泣いて、心の整理をつけた私は船なんか目じゃないスピードで泳ぎ続けるカイオーガの上でイーブイに慰められていた。思いっきり戦ったカイリューとザシアンはお休み中。私が泣き止むまでモンスターボールに引っ込んだままだったイーブイは、私の膝の上でぶいぶいと私を慰めるように鳴いている。カイオーガがいるのに雨が降っていないということは、上にレックウザがいるのだろう、時折鳴き声が聞こえる。それに従ってカイオーガは方向を変えたりするのでルフィさんたちが乗っている船に誘導してくれてるのだろうか。

 

「クァァッ!」

 

「あ、見えてきた!なんかすっごい大きな人いる……!」

 

「ん?止まりなさいそこのアンタッチャブルガール!ヒーハー!ヴァナタだれ!?」

 

「私はユウリ!まだ手配書は出てませんけど麦わらの一味に入ってます!ルフィさんに会わせてください!」

 

 だ、だいぶファンキーな喋り方してるなこの人。第一印象は、すごいオカマ。とんでもない厚化粧と、巨大な顔面にあとアフロっぽい髪型。服装も結構過激で見る場所に困る。そんな人がカイオーガの上に立つ私に奪ったらしい軍艦からストップをかけた。アンタッチャブルガール、ってことは私がホウエンの伝説3匹と一緒に大暴れしたことは知ってるみたいだけど……

 

 うーん、どうしたものかと考えてるとぴこっと頭に天啓が走る。がさごそバッグを漁って麦わら帽子を取り出してオカマさんに見せると彼?彼女はそれを見てルフィさんの麦わら帽子だということが分かったのだろう。渋々ながら一応は味方だということは認めたらしい。それでルフィさんはと聞くとジンベエという人と合わせて重症の重症で手術中とのこと。手術!?となっていると軍艦の傍に潜水艦のような船が浮く。軍艦の上から物凄い美女が飛び降りてきて出てきた見覚えのある海賊に食って掛かった。

 

「ルフィ!ルフィの容体はどうなのじゃ!?」

 

「やれることは全部やった、オペの範疇では命は繋げているが……尋常じゃねえダメージが蓄積しまくっている。生きていられる保証はできねェな」

 

「あ、シャボンディ諸島のヒューマンショップにいた……」

 

「……麦わら屋の仲間と一緒にいた……お前海賊だったのか」

 

「当然だッチャブル!麦わらボーイはインペルダウンで既に立つことすらできない体になってたのよ!あそこまでよくもまあ暴れられたのは奇跡だッチャブル!」

 

 オカマさんのお話を聞く限り、ルフィさんはエースさんを助ける為にインペルダウンっていう海底牢獄に潜入、ズタズタのボロボロになるまで戦って、それでもエースさんを助ける為に海軍本部まで脱獄してやってきたとのこと。ウチの船長、無茶しすぎじゃないかな。いや、それだけお兄さんが大事だっていうことだよね。当たり前の話か。

 

 なぜかわからないけどルフィさんを助けたのはシャボンディ諸島のヒューマンショップにいた顔色の悪い海賊のお兄さんだった。彼は私がここに居ることにたいそう驚いたようだったが、私が甲板に移るのを許してくれる。なんだかとても怖い目をしている美人さんはとりあえず置いておいて、役目を終えたと判断して海に潜るカイオーガに手を振って見送る。

 

北の海(ノースブルー)のトラファルガー・ローじゃな……ハァ、ありがとう。命を救われた……」

 

「呆れた奴だな……寝てろ、死ぬぞ」

 

「……無理じゃ。わしにとって今回失ったものはあまりにもデカ過ぎる……エースさんもそうじゃろう」

 

「その火拳屋は?」

 

「ルフィ君についておる。白ひげの親父さんに加えてルフィ君まで死んでしまえば、エースさんは壊れてしまうじゃろう……」

 

 船の船室に繋がるドアを開けて出てきたのはボロボロで包帯に血が滲んだ割腹が良くて牙が生えている魚人さんだった。見るまでもなく超重症だけど、それよりも優先したい何かがあるということだろうか。彼はそこまで話して私に気づいたらしくて私を見て驚いたらしく、言葉を失った。

 

「お主は……」

 

「ユウリです、少し前に白ひげさんの船に乗ってました。今は麦わらの一味に所属してます」

 

「親父さんの船に!?そして今はルフィ君の一味とは……人生驚きはつきんもんじゃな」

 

「ケモノ!電伝虫はあるか?九蛇の海賊船を使えば凪の海を渡れる!ルフィの生存がバレれば追手がこよう。わらわたちが女ヶ島で匿うことにする」

 

 ケモノ、と呼ばれて一瞬イーブイを見たけど美人さんが話しかけたのは私の方じゃなくてローさんの海賊団の船員、というか二足歩行のくまさんだった。もしかして、ミンク族?白ひげさんの所で人魚さんが話してくれたヒューマンショップの話の時に触りだけ聞いたんだけど動物の特徴を持つ人たちなんだとか。またまた難しい種族が出てきたなあ。というか私まだルフィさんに会えてないんだけど? 

 

 オカマさんを乗せた軍艦はこのままカマバッカ王国とかいう名は体を表すとしか思えない国に帰るらしい。私はローさんに頭を下げてルフィさんを送り届ける場所まで同船させてもらうことにした。海賊女帝、ボア・ハンコックというらしい美人さんの島らしい女ヶ島にも立ち入らせてもらえるように頼んだら、女だからと許可を貰えた。男子禁制なのにルフィさん入れて大丈夫なんだ。

 

 ほどなくして超巨大な蛇が轢く海賊船がやってきて、その船の案内に従って女ヶ島に行くことになった。海に潜った潜水艦の中は、意外と広くて息苦しさも感じない。科学技術がなんかちぐはぐだよねこの世界。あ、カイオーガいるじゃん。もしかして守ってくれるつもりなのかな?さて、そろそろ……。

 

「ルフィさんの所に入ってもいいですか?」

 

「医務室は動物厳禁だ……入るならそいつ置いてけ」

 

「イーブイを?分かりました。はいどうぞ」

 

「ぶい?」

 

「…………」

 

「触りたかったんですよね?」

 

 ルフィさんとエースさんは医務室にいるらしいので私は早速医務室へ、という感じにしたらローさんからストップがかかる。動物厳禁なのでイーブイは置いていくように、とのことなのだがローさんの視線はちらちらとイーブイの耳や揺れる尻尾に注がれているのが分かる。ははーん?触りたいんですね?分かりますよ、イーブイはザ・小動物!というとっても可愛いもの好きにウケる容姿をしているのでね、はい。

 

 イーブイを両手で抱っこしてローさんに差し出すと、あからさまになんで俺に渡す、という顔をしていらっしゃったけど、普通に受け取ってもらえた。ふふふ、我が家のもふもふ大臣に抗えるものなどそんなにいないんですよ。ローさんの腕から肩に上ったイーブイはぐしぐしとローさんの頬に頭を擦り付けて私に行ってらっしゃいと鳴いた。まんざらでもなさそうなローさんに消毒しろよとだけ言われて私は医務室に向かった。

 

 消毒液で手を消毒した私が医務室のドアを開けると、全身包帯塗れ血塗れチューブだらけの状態で眠っているルフィさんと、その傍の椅子で座っているエースさんの姿があった。エースさんは無言で私を見るだけだったけど、私はとりあえずバッグから麦わら帽子を出してルフィさんの近くのテーブルに置いた。そのあとにエースさんに向き合った。




 戦争終結、エース生存確定です。いろいろ考えてみましたけどやっぱりこれが落とし所かなと。赤犬くんは命拾いしましたねぇ。

 ホウエン伝説3匹
 なんかお気に入りから殺すなオーラがビンビンにでてたので頑張って手加減した。褒めてくれて嬉しい。なお、トレーナーとバトルする喜びを知ってしまった(致命症)
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