カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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火拳と私と海侠

「お前は……」

 

「エースさん、ですよね?ルフィさんやマルコさんからお話は聞いてました。ユウリです」

 

「そっか……弟が世話になってるな」

 

 私に目を向けたエースさんは、上の空といった感じで私に返事をするとすぐに視線をルフィさんにもどした。私も近くの椅子を持ってきてそれに座ってルフィさんの顔を覗きこむ、深く眠っているようではあったけど、苦しそうな寝息を立てているわけではない。安らかとも言い難いが、生死をさまよっているという割には、生命力にあふれていると感じた。

 

「……オヤジは」

 

「亡くなられました。立派な最期だったと思います。マルコさんたちとシャンクスさんたちが葬儀の準備をするそうです」

 

「っ……!そう、か……」

 

 分かっていたのだろう、白ひげさんが死を覚悟してあの場に残ったということは、十中八九亡くなってしまったということをエースさんは知っていたはずなんだ。だけど、私が無事に戻ってきたから僅かな希望に縋り付きたくて、白ひげさんの安否を尋ねてきた。私だってウソであってほしかった、あの安らかな死に顔が、ただ眠っているだけであってほしかった。呼吸で胸が上下してないか、確かめてしまうくらいにそれにすがった。

 

「おれは……オヤジを、ルフィを……こんなにも……うっ、ぐ……」

 

「エースさん……」

 

「サッチが、ティーチに殺された時、オヤジは俺を止めたんだ……今回ばかりは追うなって……!なのに俺はそれを振り切ってティーチを追って……!結果がこれだ!弟を殺しかけ、オヤジを殺した……!俺はどう……償えばいい……!」

 

 ぼたぼたと、医療用ベッドの真っ白なシーツの上に大粒の雫がしみ込んでいく、エースさんが顔を歪めて泣いている。あれだけの大戦争の原因となった自分が、弟とオヤジと慕う船長両方を巻き込んで失ったものがエースさんを苛んでいる。私は、彼に何を、どういうべきなのだろう。白ひげさんは、悔いなく逝った。海軍と白ひげ海賊団の戦争は痛み分けに近い結果に終わったが、目的を達した白ひげ海賊団の勝ちだと、私は思っている。

 

 私はおもむろに、袖をめくって握りこぶしを作り、渾身の力を込めてエースさんを殴った。パンチなんか打ったことない私のヘロヘロナックルは、エースさんに接触した瞬間、その体をすり抜けた。すり抜けた部分は陽炎昇る炎となり、私の手を焼く。鋭い痛みに私が顔をしかめると同時にぎょっとしたエースさんが私の手を取り、怒鳴った。

 

「ばっ!?お前何やってんだ!?」

 

「生きてます」

 

「は?」

 

「生きてるんです。今、私たち。こうやって傷つけば痛い。後悔が胸を抉れば締め付けられる。白ひげさん……お父さんが死んでしまったのは、彼がそれを選択してでも貴方を助けたかったからです。償うんじゃなくて、精一杯あの人に報いるように生きてくしかないんです。私はそう、お父さんに約束しました」

 

 私は彼の揺れる目を見つめてそう宣言する。私はもう決めた、あの人に、白ひげさんに胸を張って報告できる生き方をすると。悪党だとか、正義だとかじゃない。白ひげさんがそうだったように、悔いなく笑って死ねる生き方をするのだ。そもそもなんだけど……

 

「なんて、そんなのエースさんの方が良く分かってますよね。私よりずっと長く、あの人の息子やってたんですから」

 

「……お前ほんとに見た目通りの年か?」

 

「んー、冒険の数ならエースさんにも負けませんよ?あの子みたいな不思議なことって、ごろごろ転がったりしてるんです」

 

「おわっ!?」

 

 ぽっかーん、とさっきまでの涙を引っ込めたエースさんが窓の外を見て飛びあがりかける。潜水艦の窓にはこちらと併走するカイオーガの姿がガッツリと映っているからだ。完全に送り届けるというか、そんな感じらしい。力は抑えているから天候を変えることはないだろうけど、それでも超ド迫力だ。見てるもんねーエースさん、マリンフォードで大暴れするカイオーガ。

 

「……ハァ、ウチの末の妹はびっくり箱みてーだな。ありがとよ、元気づけてくれて」

 

「いいんですか?私を妹と認めて」

 

「オヤジが船に乗っけてそう言ったんだろ?マルコだって認めてた。それなのに俺がちげーっていうわけねーだろ」

 

「しかし、人生分からないものですね。大海賊の船に乗った後に、今度は台風の目みたいな海賊の船に乗るだなんて。これで私も賞金首確定です」

 

 ふへー、と鞄からがさごそと火傷に効くでおなじみチーゴの実を出して一息に口に放り込む。もぐもぐと噛むと鮮烈なほどの苦みが口の中を暴力的に支配して思わず涙目になる。それを見たエースさんは私が薬を口にしたのを察した後に私の手にやけどがあることを思い出したらしくやっちまったと言う顔で包帯とか薬はどこだ!?と慌てだした。

 

「あ、エースさん悪くないですからね?私、エースさんは自然系だってカイリューを突撃させた時に知りましたけど、炎なのは知らなかったので。すり抜けるとは思ってましたけど火傷するのは想定外でした」

 

「そういう問題じゃねえ!だー!手ェだせ!とにかく水かなんかで冷やして」

 

「病室で騒ぐな、何やってる」

 

「あ、ローさん」

 

 騒ぎすぎてうるさかったのかこの船の船長さんがやってきた。私の手に軽いやけどがあるのを見たローさんはかなり懐疑的な視線をエースさんに注いだけど、私が慌ててあれこれと説明したら今度は私に馬鹿じゃないのかという視線を注いできた。それに関しては全くと言っていいほど返す言葉がないので私は縮こまるしかない。えへへ、ごめんなさい。

 

「それで、だ。ユウリ屋、外のアレ何とかならんのか。ウチの船員が使い物にならん」

 

「呼び捨てでお願いします。別に何もしませんよ?海王類とか来たら返り討ちにしてくれると思います。そもそも近づけないでしょうが」

 

「俺に指図するな。ともかくどうにかしてくれ」

 

「まあ、いいですけど」

 

 私は窓越しにカイオーガと目を合わせてついつい、と指で離れるようにお願いしてみる。カイオーガはそれを見てひと鳴きするとすぐにスピードを落としつつ深海に身を沈めた。んー、ゲットしてないのにどうしてこんなに言うことを聞いてくれるのか。そんなに好かれるようなことをした覚えは「ユウリ」にはないんだけどなあ。あ、でもレックウザと一緒に暴れる二匹に突っ込んで大立ち回りしたのは記憶にあるよ!

 

 はぁ、となぜかため息をついたローさんは私に腕を見せるように言うと、しゅぱぱぱぱと圧倒的な速度で軟膏を塗って包帯を丁寧に巻いてくれた。余計な面倒をかけるな、というがその手は優しいもので、私は意外な面があるんだなーと、医務室の扉の前で大人しく待っているイーブイを見ながら感心するのだった。

 

 

 

 

 女ヶ島、アマゾンリリーとも呼ばれるその島はなんと男性がいない島なのだそうだ。凪の帯という無風地帯かつ海王類の巣窟の中に存在するその島はハンコックさんが皇帝を務める島で絶対の掟として男性を島にいれてはならないというルールがあるのだそう。それが何を意味するのかということはつまり。

 

「病人が野宿ってわけですね」

 

「野宿とはちげえだろ。トラファルガーの船使わして貰ってるわけだし。ルフィは目覚めねえし」

 

「むしろ今目覚めたら俺は医者としての自分を信用できなくなる。それほどのダメージだ、ちょっとやそっとじゃ目覚めるわけねえ」

 

 女ヶ島の隅っこの隅っこにて、陣幕を張られ隔離された私たちは野宿というかキャンプを楽しんでいた。ローさんは、意外と話せば応えてくれる良い人で面倒くさがってはいてもちゃんとお話ししてくれるし、冗談も通じる。親切なのかなんなのか、ルフィさんの治療を続けてくれているわけだし、良い人なのが隠せてない。世間一般からしたらそりゃ悪い人なんだろうけど、私もそれに仲間入りしたわけだから私も悪い人!がおー!ってね。

 

「えー匂いじゃのう」

 

「俺腹減ってきたわ……」

 

「あとちょっとなので待っててくださいねー!」

 

 女ヶ島に到着してもう4日経っている。ルフィさんはこんこんと眠り続けたままだ。だけど医者のローさんから見てもルフィさんは驚異的な速度で回復し続けているらしい。私にはまだ傷だらけにしか見えないし、胸の中央にはジンベエさんを貫通して尚威力を保った赤犬の一撃が刻み込まれたままだ。傷跡は残るだろうなってローさんは言ってる。

 

 それで、私が何をしているかというと久しぶりにご飯を作っております!カレーだよカレー!お腹が減ったらカレーを食べよう!キャンプセットの中からポケモンと一緒に作るためにあるおっきなカレー鍋を取り出してポケモンたちと一緒に焚火を囲みながら鬱憤を晴らすがごとく欲望を詰め込んだカレーを作っているところです!匂いでルフィさん起きないかな!?

 

 そしたらいつの間にかエースさんが輪に入ってて次はそのエースさんを探しに来たジンベエさんが来て、そしたら今度はイーブイに気に入られたらしいローさんがイーブイに引っ張られてやってきて、なぜか代表者そろい踏みみたいな感じになっていた。エースさんに新しく薪を燃やしてもらって作ったコーヒーを配ると完全に雑談&会議みたいだ。

 

 ふふふ、今回のカレーはいつもとは違うのです!あの酒場で作ってたカレーはいわば初心者カレー!等級にしてマホミル級!だが!今回のカレーはいわばリザードン級のカレー!旅の中で編み出した私特性のレシピ!マトマの実の辛さ、シュカの実の甘さを中心にオボンで味を調え、隠し味のリュガの実をほんの少し入れる特別な日に作るカレーなのです!黄色いサフランライスが炊きあがったね!よーし!

 

「出来ました!私特製、キョダイマックスカレーです!」

 

「おお!うまそうじゃねえか!」

 

「量が多くないか?」

 

「なんじゃトラファルガー、小食か?」

 

「食えねえとは言ってねえ」

 

「食べてはくれるんですね」

 

 お皿にこれでもか!と盛りつけたサフランライスに、ドロッとしたカレーをその上からどばどばと惜しげもなくかける。そうして出来上がったキョダイマックスカレー、ド迫力の大ボリュームである。というわけで作った分をポケモンたちにあげてから、私たちの番に取り掛かった。どれくらい食べます~?と聞くと、全員大盛りで!と帰ってきた。まあ、沢山作ったので大丈夫なのだけれども。というわけではい!

 

「ジンベエさん、どーぞ!」

 

「……のう、ユウリ」

 

「どうしたの?」

 

「お主、わしを見て何とも思わんのか」

 

「……魚人がってこと?」

 

 大皿に盛った特盛キョダイマックスカレーをよたよたしながら両手で差し出すとジンベエさんは慌てて受け取ってくれる。その際、彼の手に私の手が触れた。水かきがあるしっとりとしている手の感触が一瞬だけ触れたけど慌ててジンベエさんは手を離した。私がそれに首を傾げてローさんの分をよそっているとジンベエさんはそんなことを聞いてくる。ああ、差別のことか、私この世界出身じゃないとはいえ純正の人間だしね。

 

「んー、どうでもいいかな!ジンベエさんは魚人、人でしょ?例えば、背の高い人とか、脚が大きい人、腕力が強い人なんて沢山いるでしょ?例えばそこに全身炎でできた人もいる!」

 

「……どうでもいい、か」

 

「区別はあると思うよ、ジンベエさんならデコピンで私殺せちゃうし。だけど、仲良くできないとは思わないし、魚人だからどうとかはないかな。そもそも、あそこにいる子たちはみんな私の大切な友達なの!だから、見てよ、見た目全然違うよ!?だけど、皆等しく私の友達!だから、魚人だからって先入観は持たない!見るのは人種じゃなくてジンベエさんかな!」

 

「ぐく……がっはっは!気持ちのいい子供がいたもんじゃわい!構えてた自分が阿呆のようじゃ!」

 

「ジンベエの親分よ、こいつはオヤジが認めて船に乗せてた子供だぞ?そんなつまんねえことするわけねえよ」

 

「じゃのぉ!一本取られた!ユウリ!有難くこのカレー、食わせてもらおう!」

 

「話は終わりか、うまいぞカレー」

 

「あってめトラファルガー!ユウリ!おかわりあるか?」

 

 そもそも私は見た目で差別はしない主義だ。ポケモンたちは千差万別、説明難しいやつから派手派手ミックスしてるやつまでいるわけだし、見た目でいろいろやってたらキリがないんだよ。ポケモンたちを指し示して私はジンベエさんその人を見て判断すると言ったら、一本取られたとジンベエさんは呵々大笑して大匙でカレーを口の中に放り込んだ。ローさんはその間にも勝手に食べてたらしく、結構好感触!よっしゃい!

 

 そんな感じで私も自分の分を、のまえに別のお皿にカレーをもって手を合わせる。それでみんな、白ひげさんの分だということが分かったのか黙とうをしてくれた。それが終わってからようやく私の分、まあほぼ空っぽなんだけど私の食べる量なんてたかが知れてるのでこれで十分。おかわりないですごめんなさい、と空っぽのカレー鍋を指さすとえーー!とエースさんのブーイングが飛ぶ。

 

 暫くどんちゃんとみんなでカレーを食べてたんだけど、ぷるぷるぷる、とエースさんの傍にいた電伝虫が着信した。エースさんが白い電伝虫をその電伝虫に繋げてから電話に出る。多分相手は、マルコさんだ。




 カレーようやく登場。ユウリさん、吹っ切れたのでメンタルくそお化けになっています。ホウエン伝説のせい、悲しいなあ
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