カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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鷹の目と私と狼 

「はいはーい!今日はマトマの実のパエリアと、パイルの実のサラダ!あと海獣のステーキです!」

 

「待ってました!」

 

「お、もうメシの時間かよい。エース、運ぶぞ」

 

「おうっ!」

 

 偉大なる航路(グランドライン)にしては珍しいほど穏やかな曇天の中、船の船室から私が顔を出して食事の時間を知らせる。帆を操っていたエースさんと海図とにらめっこしていたマルコさんはそれに反応して仕事の手をいったん止めて船室の中に入ってきた。せまーいキッチンの中でどうにか頑張ってドカンと大皿に盛りつけた料理、私なんか運べないほど重いんだけどそれを軽々と持った二人がテーブル代わりの木箱にそれを置いてくれる。

 

 メタグロスとルフィさんと別れてはや4日、私たちは記録指針を頼りに偉大なる航路(グランドライン)を逆走し、クライガナ島の元シッケアール王国を目指して船を走らせていた。小型の中型船、という3人で操作するには大きいけどかといってそれ以上人が乗るかどうかは分からない船を見事に操る頼もしいマルコさんとエースさんに挟まれて、私の仕事は専ら3食のご飯を用意することだった。

 

 別にエースさんもマルコさんもお料理ができないわけじゃないんだけど、エースさんのお料理は火を通して塩コショウパッパみたいな物しかないみたいだし、マルコさんはそれよりも器用だけど男飯っていう範疇を抜け出せない。そんなわけで力仕事は役立たずの私だけどもお料理のレパートリーだけは無駄に豊富なのでコックさんもどきをやっているわけです。

 

「辛い!うまい!いやー、ユウリがいるお陰で船上でうまい飯にありつけるのはいいな!」

 

「だな、4番隊の連中もそうだが……飯を食わせてくれるやつらを無碍に扱ったらいけねぇよい。航海中の楽しみが一つどころじゃないくらい減る」

 

「ふふ、デザートにモモンのパウンドケーキも作ってあるので食べてくださいね。それよりも、まだつかないんですか?」

 

「ああいや、もう島が見えてるよい。2時間もありゃ到着だ。本格的に修行に入るぞ」

 

 麦わらの一味におけるサンジさんの重要性を再確認したところで私は最重要事項がさらっと流されたことに咳き込みそうになったけど、二人にとっては目的地に到着することなんてもはや当たり前と化しているのか分からないが、何というか反応が薄い。うーん、私は旅をしてると新しい地方とか街にはワクワクしてくるんだけどなあ。

 

 もっさもっさとパウンドケーキ1本を頬張るエースさんのほっぺをタオルで拭ったりしながらまったりしてると、先に外に出てたマルコさんから到着だよいという報告がドアの外からした。パウンドケーキを頬張っていたイーブイが私の頭の上に移動して出発進行と声をあげ、残りのパウンドケーキを包もうとしたら既にエースさんが食べちゃってた。えー……。

 

「クライガナ、というだけあってどんよりしてますね。しかしまあ、残骸と言えばいいのか何というのか……」

 

「内戦があったらこんなもんだよい。それよりも注意しなきゃならんやつがいる」

 

「といいますと?」

 

「あれだ」

 

「あ、猿」

 

「マンキ―!?」

 

 クライガナ島に入島した私たち、目の前にあるのは今にも降りそうな真っ暗な曇り空、微かな焦げ臭さと、見渡す限りのがれきの山。遠くに見える古城が物悲しさを助長している。注意しなきゃいかんやつ、とマルコさんが教えてくれたのはウホウホ、ホキャホキャ言いながら私たちの前に躍り出てきたお猿さんたちだった。鎧や錆びた剣なんかで武装していると注釈がつくんだけど。はぇー、ギルガルドを持つローブシンとかは見たことあるんだけど、こういうのもあるのかぁ。デカヌチャン……?みたいな?

 

「こいつらはヒューマンドリル。人を真似する猿だよい。穏やかな人の傍で育てば優しい性質になるんだが、内戦があった場所で育てば」

 

「こういう風に危なくなるわけか」

 

「そういうこった。殴り倒してもいいが動物相手だしな……エース、いいか」

 

「おう」

 

 ズアッと空気が張り詰めてヒューマンドリルというらしいお猿さんたちは白目をむいて泡を噴きだして気絶してしまう。頭の上のイーブイは気持ちよく寝てたのにそれのおかげで起きて、一瞬で毛玉のようになってしまった。覇王色だー、エースさんも使えるんだ。なんか、限られた人しか使えないとかいう割に、私使う人をたくさん知ってるよ。よくわかんないや。

 

「エースさん、覇王色使えたんですね」

 

「ああ。俺はまあ、オヤジがオヤジだからな両方。戦争の時は正直使えるほど余力がなくてなあ」

 

「イーブイ、平気平気。ね?」

 

「ぶい~~」

 

「悪いな!ボールの中入ってりゃいいのによ」

 

 毛玉状態のイーブイを宥めつつ詳しいことを聞いていくと、そういえばエースさんはゴールド・ロジャーの実の息子だという話を思い出した。覇王色は血統でも遺伝することもあるらしいし、なるほどという感じだ。しかし、このヒューマンドリル変だね。武器や防具にどれも一文字に切り傷が入ってるし、その下に治癒しかけの生々しい切り傷がある。弱ってるのに威嚇しに来たあたり、ちょっと怖いのだけど。

 

「ウルォン」

 

「あれ?ザシアン。どうしたの?」

 

「ほう、おれの気配を察知したか。強き獣、そして不死鳥と火拳……そして、厄災の子供」

 

「きゃーーーっ!!!やめてくださいその二つ名!痛々しいったらないんです!うわーん!」

 

「鷹の目……!なぜおまえがここに居る?」

 

 ザシアンがいきなりボールから出てきたと思ったら軽く喉を震わせて威嚇し始めたと思ったらいきなり見聞色をすり抜けるように現れた人についてしまった痛々しい二つ名を呼ばれて私は悲鳴を上げてイーブイを抱きしめて転げまわる。それをはいはいと宥めてくれるエースさんの力を借りて助け起こしてもらって改めて声の主を見ると……。あっ!

 

「ザシアンと戦った人!」

 

「ジュラキュール・ミホークだ。海賊界隈でおれを知らないものがいたとはな。先の戦争の重要人たちがこんなところで何をしている」

 

「そりゃこっちのセリフだよい。さっきの質問にはまだ答えてねえだろ」

 

「もともと4年前からここは俺が拠点にしている。いきなり覇王色をまき散らされたから見に来てみれば、なかなかどうして面白いことになっているではないか」

 

「おいミホーク、いきなりどこ行って……ってお前!?」

 

 うそっ!?瓦礫を乗り越えるように現れたのは、ところどころ包帯を巻いてはいるものの結構元気そうなゾロさんだった。ゾロさんは私を見つけると彼には珍しく笑顔になった。私は彼に駆け寄って思いっきり抱き着いて、再会の喜びを表す。ルフィさんには狙って会いに行ったけど、ゾロさんに会えたのは望外の喜びだった。いやーよかったよかった!

 

「ああ、また会えてよかった!ってそうだお前!ルフィは今どうなってる!?無事なのか!?」

 

「えーっとそれはですね……」

 

「……麦わらのことについてはもう政府との協定外だ。今ここで言っても何もせん」

 

「……無事ですよ!超元気です!大怪我はしましたけども!」

 

「……そうかぁ……それならいいんだ。メッセージも受け取った。俺も強くなる」

 

「ぎょわああああっ!?お、お前はスリラーバークにいた……」

 

「あ、ペローナさん」

 

 敵だったミホークさんを気にして私が口ごもったけど、知らんぷりをしてくれるらしいので話しちゃう。噛み締めるように船長の無事を聞いたゾロさんは張りつめていたものが緩んだかのようなため息をついたが、清々しそうだった。そこでまた聞き覚えある悲鳴がしたと思ったらスリラーバークで消えちゃったペローナさんだった。

 

 彼女はよっぽど私とシャンデラがトラウマになったらしくて、青い顔をして私をわなわなと指さして震えている。試しに両手をあげてがおーっとしてみたら変な叫び声をあげて城の方に逃げて行ってしまった。あー、やり過ぎたのかな……?

 

「しかしお前、なんでまたルフィの兄貴と旅してるんだ?あとそっちのは?」

 

「この人はマルコさん、白ひげ海賊団の一番隊の隊長さんです。あれです、白ひげ海賊団のナンバーツー。私、2年間修行をしながらお友達を探すことにしたんです。だからまず、偉大なる航路(グランドライン)を遡っているわけでして」

 

「マルコだ、まああんま気にしなくていいよい」

 

「修行か、なるほどな。で、いつまでにらみ合ってんだお前ら」

 

 とりあえずの自己紹介を済ませた私たちは、にらみ合うザシアンとミホークさんに向き合う。無言の重圧が一人と一頭を支配するなか、ゾロさんの空気を読まない突っ込みが響き渡る。私が察するに、ザシアンに死合を申し込みたいミホークさんだけど、ザシアンはもうサラサラ戦う気はないから無言の拒否をしている感じかな。お互い静かなクチだから無言の重苦しい空気になっているだけで。

 

「先の戦争ではどうも消化不良で終わってな……今一度と思ったが今度は拒否ときた」

 

「ザシアンは人斬りにはどうも消極的でして……本気で必要じゃなければしないと思います」

 

「ルォン」

 

「おれの斬撃をああも容易く受け反撃してくる獣など初めてだったのだがな……ヒューマンドリルでもああはなるまい」

 

 とにかく腰を据えて話した方がいいだろう、とミホークさんは今居城にしている古城の中に私たちを案内してくれた。姿勢よく私たちの前を歩くミホークさんが背負っている巨大な十字架のような黒い剣はザシアンが持っているふとうのけんと同じような重圧感を備えているように感じられた。大きな城門の中に入ると中は意外と整理されていて、玉座に当たる場所にはソファが備え付けられていた。客室はないそうだけど。

 

「みぎゃああああ魂は取らないでくれ~~~!」

 

「……がお~~」

 

「ひゃああああ!!!」

 

「あまり遊んでやるな」

 

「いや、私相手にあそこまでビビる人なんていなくて逆に新鮮で。がお~~ってやってあの反応なんてないですよ普通」

 

 先に帰ってたらしいペローナさんは私が居城に入ってきたことでまた七転八倒して壁を背にしてガタガタ震える。流石にビビり過ぎではと思ってもう一度やってみたらさらにビビッてしまって面白いことになってる。それがあんまりにも哀れなのかミホークさんから注意が入った、そもそも魂を取るのは私じゃなくてシャンデラなんですけどね。

 

「お前俺らが先行った後何したんだよあいつに」

 

「まともに相手したら殺しちゃいそうだったので魂ぶっこ抜いて燃やしてやるぞって脅しました」

 

「そりゃああなるだろ普通の女なら」

 

「……目の前にいるの、普通の女ですかね?」

 

「……」

 

 黙っちゃった!?なんか、今にも漏らしちゃいそうなほどに私にビビり散らかすペローナさんがあまりにも可哀想すぎてああ、やり過ぎちゃったんだなと今さらになって後悔している。そういえばなんでペローナさんがここに居るんだろうとは思ったけど、もしかしてあれか?スリラーバークでナミさんが言ってたくまに飛ばされた女の子ってペローナさんのことだったのかな?それでまた、ここに。なるほど。

 

「それで、何をしにこんなところに来た。白ひげ海賊団の1番隊、2番隊の隊長が揃って、子供のおもりか?」

 

「はは、まあ間違ってはないよい。覇気の修行だ、元シッケアール王国、壊しまくっても何も言われることもない」

 

「……なるほどな。ロロノアと同じ、というわけか」

 

「その覇気ってやつは、実際何なんだ?」

 

「これだよい」

 

 マルコさんがグッと手を握ると、その手は真っ黒に染まり黒々とした硬さを備える。ゾロさんはその現象を始めてみたらしく目を見開いて何事かと疑っている。にしし、と笑ったエースさんが足を真っ黒にするのを見て悪魔の実の能力ではないことが分かったのだろう。私を見るけどごめんなさい、私はできないんです。

 

「えっと、覇気っていうのは人間、というか生き物全般に眠っている力のことで、気合とか、根性とか、そういう類のものを突き詰めた結果、らしいですよ」

 

「んでそれが、どういう意味があんだ?」

 

「一番わかりやすく言うと、使うと自然系に攻撃が当たる様になります。レイリーさんが黄猿の攻撃を防いだの覚えてますか?他にもいろいろあるんですけど、悪魔の実の能力に対抗できます」

 

「悪魔の実にか……なるほどな。ミホークが俺に身につけさせたいって言ってたのもこれか」

 

「そういうことだ」

 

 へー、ゾロさん、ミホークさんに弟子入りしたんだ。そういえばミホークさんってどういう人なのかな?私、この人がどういう人なのか全く知らないや。頂上戦争にいたってことは政府側の人だと思ってたんだけど今は協定の外だとかなんだとかで全然襲ってくる様子もないし。何なんだろうか?聞いてみたら答えてくれるかな?




 ギルガルドを持つローブシンって自分でも書いててクソ強そうって思いました。ギルガルド折れちゃいそうだけど

 エースさん、覇気3色使えるんすよね...ノベル読むまで知らなかったのだ。ペローナさん、おいたわしや...
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