カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

41 / 52
狼と私と決闘

「そういえばなんですが、ミホークさんは何であの場にいたんですか?協定ってなんでしょう?なんですかその顔!?」

 

「ユウリ……お前世間知らず……ってそうだったな。海のこと知らねえで吹っ飛ばされたんだったなそういや。こいつは七武海の一人、世界最強の剣士だ」

 

「ああ!もしかしてゾロさんがザシアンを見て思い浮かべたっていう」

 

「ああ、そうだ。そういやお前どうやってあの戦争に行ったんだよ。どこに飛ばされてた?」

 

「え、新世界側の島に飛ばされたので近くにいたシャンクスさんに協力を仰いだ後根性で戻ってきました。意外と何とかなるもんですねはい」

 

「おまえ赤髪と一緒に来てたのか!?」

 

 ぎょっとした顔でマルコさんが目を剝く。そういえば話してはいなかったんだっけ?あれ?でもマルコさんはシャンクスさんと一緒に行動してたのでそこら辺聞く余裕が……あるわけないか。白ひげさんの、お父さんのことで色々あったんだから。はい、途中まで乗っけてもらったんですけど、待ちきれなくて先に突っ込んできたんです、というとマルコさんはいろんな意味で目が離せないよいという。えー?

 

「それで、覇気を身に着けるというがいささかお前の肉体では荷が勝ちすぎるだろう。あの戦争で暴れた獣がいれば必要あるまい」

 

「あー、あの3匹ですね。あの子たちは私と一緒にいるわけではなくてですね……呼べば来るんでしょうが、あまり頼りたくないです」

 

「理由は?」

 

「呼ぶたびに呼んだ場所が地図からなくなったら困るでしょう?あれはそういう存在なんですよ」

 

 いやホント、そうなんだよね。あの時、頭に血が上って完全に私、あとのこと考えてなかったんだよ。ザシアンみたいな、英雄伝説のような形で伝説のポケモンと呼ばれている存在もいるんだけど、伝説のポケモンって強さの上限が跳ね上がるの。個人的一番上がアルセウスとか、ディアルガパルキアギラティナみたいな神様たちで、その次あたりにグラードンカイオーガレックウザがいる感じ。その場にいるだけで日が照って大地が増えたり、海が増えて土砂降りが止まらなくなって洪水になったりとかする存在だよ?

 

 目的をもって力を振るえば想定以上の損害が出ちゃうんだよ。だからあの子たちを呼ぶのはホントの最終手段、皆が殺されかけるとか、私の命は危ないとか、そういうピンチの時だけに呼ぶ感じがいいと思う。それに彼らにばっかり頼っていても私は強くなれないし。ミホークさんにそう答えると一応彼は納得してくれる。

 

「まあ、そういうわけだよい。暫く騒がしくするが許してくれ。何だったら場所を離そうか?」

 

「必要ない。纏めて面倒を見ればいいだろう。その狼も、覇気を纏えば更なる高みに上る。それを俺は見たい」

 

「そうか、感謝する。おいエース、食ってばっかないでお前もなんとか言え」

 

「お?おう!世話になるぜ鷹の目!」

 

「構わん。ロロノア、猛者がこれほど集まるなど早々ないぞ。よく盗むがいい」

 

「いわれなくても」

 

 ゾロさんが剣呑な顔で笑っているのを面白そうに見るマルコさんとエースさん。絨毯の上で伏せて我関せずと私の足元で寝ていたザシアンは、ミホークさんの興味が自分に移ったのが分かったのか、片目だけ目を開けてそれを眺めたザシアンはすくっと立ち上がってお座りの状態になる。うんまあ、人斬りはお腹いっぱいでも強くなること自体には貪欲だもんね。

 

「明日、始めよう。客間を使え」

 

 ミホークさんはそう言ってコートをたなびかせてその場を去っていった。私たちは、もう日が暮れるのか、と窓の外を見て驚き、まだ震えてるペローナさんの案内で客間に行くのだった。途中で会えて嬉しかったらしい(魂ランチ的な意味で)シャンデラが勝手に出てきたせいでペローナさんは気絶してしまったけど。うーん、ごめんなさい。

 

 

 

 

「では、始めよう」

 

「よろしくお願いしまーす!」

 

「おい、なんか一匹足りなくねえか?」

 

「あ、メタグロスはルフィさんと一緒に修行してますよ」

 

 そうなのか、とトレードマークの3本の刀を差したゾロさんが頷く。目の前にいるのは私の手持ち全員、カイリューにザシアン、イーブイ、シャンデラ、サーナイト、デンリュウにミロカロス!それを前にしたゾロさんはいっとう大きかったメタグロスの姿が見当たらないことに首を傾げていたわけだ。それよりも修行である!トレーニングである!楽しみだなー!私は武装色は恐らく無理なので、肉体的に。見聞色を磨くわけなんだけど……。

 

「ユウリ、俺はお前を見るよい、これ付けろ」

 

「目隠しですか?」

 

「ああ、それをつけて……見聞色だけでこいつらを戦わせてみろ。お前自体が戦えないのなら、こいつらを長く、適切に、傷つけないように戦わせるのが一番いいだろうよい」

 

「そうですね。やってみます」

 

 渡されたのは白い目隠し、それをつけて目隠しポケモンバトルをしろときたか。難しいなあ!ポケモンバトルは手持ちの情報を探るのに目を酷使するものだから、状況が分からなければ指示の出しようがないんだけど……でも多分、見聞色のレベルあげるのならそれが一番いいのかな。それはそうと、ポケモンたちのために武装色の概要を聞いておきたいのでとりあえず待ち!

 

「ロロノア、刀を折られたことは?」

 

「———まァ、何度かな……一番初めに折ったのはお前ェだよ」

 

「そうか、あの時の黒鞘の刀……出来の割に鈍っているように思ったが……まぁいい。同じ刀でも覇気を纏えば折られることはない。ポートガス、手伝え」

 

「あいよ。まあ……これでいいか。よっと」

 

 エースさんはその場で首を見渡して、がれきの中から錆び錆びの残骸みたいな剣を引っ張り出した。グッと手を握ると手が武装色で硬化するのと同時にその剣も真っ黒になって硬化する。ん、と差し出したエースさんに向かってミホークさんは徐に背中の大剣を抜いてそれを斬った。明らかに手抜きだということが分かる一撃であったけど、エースさんの手にあったぼろっちい剣は、硬化したままの状態を保っている。

 

「おい、本気で斬る気かよ。つーか、折れるぞ」

 

「適当にものを選ぶからだ。だがまあいい、ロロノア。これが武装色の覇気だ。お前の腰にある刀……黒刀は、使い手に馴染み、成るものだ。全ての刀は黒刀になり得る」

 

「つまり、この和道一文字も、鬼徹も……覇気ってやつを使えば黒刀に変えられるってわけか」

 

「刃こぼれすら己の恥と思え。それを体得するまでお前は禁酒だ」

 

「あァ!?」

 

 ゾロさんからお酒取り上げちゃうのはかわいそうだなあ。かといってもそれは教育方針というかそう言う感じなので私が口を出すことじゃないのだけれど。それで、何でも武装色の覇気のイメージは見えない鎧を着こむこと、というらしい。私がそれに首を傾げるとポケモンたちも首を傾げる。見れば真っ黒に硬化してるのが分かるんだけど、そのメカニズムが不明なので私からこうするんだよとポケモンに言うこともできない。私が腕を組んで考えてると、ザシアンが私の背中を鼻で押した。

 

「どうしたの?ザシアン」

 

「ウルォン、ヴォフッ」

 

「えっ!?ミホークさんと一戦戦いたい!?どうしちゃったの!?」

 

「ほう」

 

 ザシアンが私に目をやって、それからミホークさんを静かに見つめる。この世界に来てから対人戦は必要なければやらないというスタンスを貫いてきたザシアンのいきなりの宣戦布告とも呼べる行為を私は飛びのくほどの勢いで驚いて大声をあげてしまう。ザシアンは、本気だ。私はカイリューに鉢巻を差し出して持ってもらい、ミホークさんにお願いしてみる。

 

「自分勝手で申し訳ないんですけど……ザシアンに付き合ってはもらえないでしょうか」

 

「構わん、元よりお前を見た時からあの戦争の時の続きをしたいと考えていた。願ったりかなったり、だな」

 

 ズアア……と、言葉に言い表すなら剣気ともいうべきものが重苦しくて冷たい空気となってミホークさんから発せられていく。私はそれにゴクリと唾を飲み込んだけど、むしろザシアンはその空気に踏み込むように前に出た。むしろこんなものなのか、と言わんばかりの表情で姿を変える。ふとうのけんを加えて喉を唸らせるザシアンにミホークさんが仄暗く僅かに微笑した。

 

「ウルォン」

 

「よかろう。ユウリと言ったな。貴様とこの獣の心力、強さ……見せてみろ!」

 

「言われなくても!ザシアン!ファストガード!」

 

「おいおいおい!まだ俺たちはいるだろうよい!」

 

 いきなり始まった戦いは、ミホークさんの抜きざまに放った巨大な斬撃だった。巻き込まれる形になったマルコさんはゾロさんを掴んで空に逃げ、エースさんは大ジャンプで逃れる。ポケモンたちは戦いを観察するつもりらしい。先制技に有効なファストガードで身を守ったザシアンに、お返しのエアスラッシュを指示する。弾幕のような数の飛ぶ斬撃をミホークさんは武装色を纏った剣で見事にガードしていく。ザシアンの目が、それを捉えているのが見える。

 

「せいなるつるぎ!」

 

「むんっ!」

 

 聖光が籠った剣をミホークさんに向かって袈裟懸けにするザシアン、ミホークさんは逆の袈裟懸けで応え、つばぜり合いの状況になる。ぎちぎちと剣同士で火花が散っている。お互いの斜め後ろで中途半端に放たれた袈裟懸けが地面に深い線を描く。膠着状態を破ったのはミホークさん、彼は柔らかく剣をしならせるとまるで背負い投げをする様につばぜり合いの状態のまま、力の流れを操作してザシアンを投げ飛ばした。空中に飛ばされたザシアンに一文字の飛ぶ斬撃が迫るが、身を捻ってギリギリでザシアンは躱す。はらはらと切断された彼女の毛がおちた。

 

「ほう……!」

 

「こうそくいどうからのインファイト!」

 

「グルァッ!」

 

 空中で残像だけ残し姿を消したザシアンが真後ろから迫る。即座に反転したミホークさんが剣で受け止める。さらにザシアンが口で操っているとは思えないほどの多彩な斬撃を上下左右斜め問わずすさまじい速度と精度、威力で繰り出していく。ミホークさんはそれを見た目には分かりにくいけど武装色を纏った剣で受けたり、いなしたりしていく。一瞬の拮抗ののち、ザシアンにカウンターを入れようとしたがザシアンも剣で受け止め、バックステップで私の前に戻ってきた。

 

「ウルォン!」

 

「……ザシアンもしかして、分かったの?」

 

「ヴォフッ!」

 

「……おれから盗んだか!武装色を!」

 

「ルォォォォンッ!」

 

 遠吠えをするザシアン、ふとうのけんがまるで焦げ付いていくかのように黒く染まっていく。だけど、かなり集中して覇気の操作を行っているようで、さっきまであった余裕が見られない。マルコさんとエースさんは覇気の難しさを知っているからか、目を剥いて口をあんぐりと開けて驚いている。ゾロさんは、目を皿のようにして天変地異のような剣戟戦を観察していた。

 

「よかろう!この一撃で終わりとするぞ!」

 

「グルルルッ!」

 

 さっきまでは無形、つまり構えずにザシアンと戦っていたミホークさんが、ここで初めて十字架のような剣を振りかぶる様に両手で構えた。見聞色を使わなくても分かるような覇気が刀に集中して黒い稲妻のようなものが剣に走っている。一方ザシアンもきょじゅうざんの構えに入り、武装色と融合したことで青白かったきょじゅうざんの色は真っ赤に染まり、同じく黒い雷を纏っているように見える。足元を陥没させて一人と一匹が同時に飛び出した。

 

「はあっ!」

 

「きょじゅうざんっ!」

 

「グルアアアアアッ!」

 

 カッ!と技がぶつかり合った地点から衝撃波の大爆発が駆け抜ける。私に迫るそれは、一瞬で私の前に躍り出たカイリューの守るによって防がれ、ミロカロスが体を支えてくれた。暴れる髪が落ち着いたころに二人の大技が炸裂した地点を見ると、少し離れた状態で背中合わせになるザシアンとミホークさんの姿があった。そしてその間には……クレーターとその中に走る深い十字傷が斜めに走っていた。お互いの技が弾かれあってこうなったんだ。

 

「ザシアンの……剣が……」

 

「此度はおれの勝ちだ。覇気に習熟すれば、結果は分かるまい。獣ながら……否、一人の剣士としてあっぱれだ。ザシアンと言ったな、心に刻んでおこう」

 

「グルルル……」

 

 ザシアンが口にくわえるふとうのけんは、剣先に近い部分に大きな欠けが生じていた。ザシアンの金属操作の力によってすぐさま修復されたけど……ふとうのけんを欠けさせたことには私はショックを隠せない。どんなポケモンバトルでも、どんなものを斬りつけようとも刃こぼれ一つ起こさなかったザシアンの剣が、欠けてしまうだなんて。

 

 私は世界最強の剣士という高みがどれほどのものかを今、思い知った。そして……私の手持ちたちも、真剣な顔で彼の顔を見つめていた。




 やはりミホークさん、強い。ザシアンならきっとぶっつけ本番でもできるんじゃないかなあって思います、はい

 ではまた次回に
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。