カイリューといっしょ! 作:カイリューはいいぞ
「サーナイト、シャドーボール!シャンデラはほのおのうず!」
「サナッ!」
「シャァンッ!」
鉢巻きによる目隠しをした私が見聞色のみに頼って指示を出す。サーナイトのシャドーボールが、ほのおのうずにのまれて爆発し、空中に花火のような鮮烈な火花を飛び散らせた。続けざまにサーナイトがにほんばれを発動し、シャンデラの熱線のような火炎放射が空中に模様を描く。白ひげ海賊団のマークを見たマルコさんとエースさんからおおッという声が聞こえた。次は麦わら海賊団のマーク!うん、把握できてるね!
今何をしているのかって?いきなり見聞色だけでバトルはちょっと難しいのでちょっと別方面からアプローチをかけてみてるの。具体的にはポケモンコンテストのアピール部門だね。演技をその場で組み立てて、出来るかどうか試しているわけなんだけど結構いけてない?目を閉じたことで気配を鋭敏に察知することができるので見聞色が研ぎ澄まされている気がするよ。
シャンデラやサーナイトは遠距離攻撃主体のポケモンで、武装色に頼れないから私と一緒に見聞色を磨くことになっていて、みーんな目隠ししてる。だからさっき空中でシャンデラとサーナイトがごっつんこしちゃったりしてるし。もっとうまくやらなきゃ。カイリューとかの物理攻撃主体組は武装色の習得が急務なので何とミホークさんから武装色を盗んでしまったザシアンの指導で武装色の習得に励んでいる。
「いやしかし、いきなり武装色を発現させるとはなあ。驚いたよい」
「あー、まあ俺が武装色使えるようになったのも新世界入る前に中将と殴り合った時にいきなり発現したわけだしない話じゃないだろ」
「チッ、どうやってんだこりゃあ……」
「素養は十分ある、壁を越えろ。ロロノア」
分かってんだよ、というゾロさんのぼやきが聞こえる。もしかして、ミホークさんって意外と褒めて伸ばすタイプだったりするのかな?と思ってるとカイリューが吠えた。なにごと!?とびっくりした私が目隠しを外してカイリューを見ると、かなり消耗した様子のカイリューの腕に、硬化して黒くはなってはないもののうっすら、ほんのうっすら武装色の覇気が纏っているのを感じ取れた!
「えっ!凄いカイリュー!さっすが私の相棒!」
「りゅっ!?」
「あ、ごめん」
「りゅ~~~~~」
思わず大声でカイリューを褒めるとそれに驚いたカイリューは集中力が途切れちゃったらしくて腕に纏っている武装色が煙のように霧散してしまった。ちょっと~~~と私をジト目で見るカイリューに謝る。ふん!と拗ねてしまったカイリューにごめんなさーい!と抱き着くとしょうがないなあとハグをして許してくれる。
今日で修業は1週間になるんだけど、一週間で武装色の糸口を掴めるだなんて凄いなあカイリュー、デンリュウなんかは首を傾げているくらいなのに。君はノリと勢いで何とかする感覚派だもんね。いたるところが切り傷と穴だらけ、クレーター塗れになったシッケアール王国の残骸。ミホークさんにビビってヒューマンドリルはいなくなっちゃうし。ペローナさんはいい加減慣れたのかお話してくれるようにもなった。シャンデラにはビビり散らかしてるけど。
「一度感覚を掴めばそこからは速い」
「だな。発現するまでがなげーんだ普通は。硬化までは発現しちまえば感覚で行けるんだがな。まあ、それも鍛錬次第だよい」
「そうなんですねえ。そろそろご飯にしましょうか」
お?メシか?とエースさんが破顔する。エースさんもマルコさん相手に物凄い模擬戦を繰り広げたりしてて白ひげ海賊団の2番隊隊長は伊達じゃなかったんだなあと思い知らされたかな。戦争の時は度重なる拷問と牢屋で海牢石をつけられたまま拘束され続けて弱り切っていたみたいだし。それでも戦えるのは凄いと思う。
ご飯にしましょう、私が言うと待ってましたとみんなが集まってくる。今日のご飯はチャーハンだよ~~。何とサンジさん直伝の海鮮チャーハン!ゴロゴロ大きなエビが入って、ふわふわ卵とニンニクが効いたパンチのあるチャーハンなの!しかもこれ、冷めてもパラパラのままだっていう凄いレシピ!ミホークさんが作ったローストビーフと、ペローナさんが作ったパンプキンパイも合わせて一緒に食べよう!
「ほ~~ゴースト娘、やるなお前」
「そ、そうか!?なんだかんだ話が分かるじゃねえか不死鳥!モリア様も喜んでくれるかな……」
「健気だな~~」
「う、うるせえ!ネガティブにするぞお前!」
「きゃ~~~」
ペローナさんはゲッコー・モリアが大好きなんだねえ。確かにほっぺたが落ちそうなほどおいしいパンプキンパイを頬張って思わず健気なんですねえと弄ってしまうと一気に顔を真っ赤にしたペローナさんががおーとでもいわんばかりの感じで私に物理で襲い掛かってきた。暫くきゃいきゃいしてるとチャーハンを食べ終わったゾロさんが意外そうな声をあげる。
「お前ら……いつの間にそんな仲良くなったんだ?」
「な、仲良くねえよ!?」
「えぇ……私はペローナさんのこと友達だと思ってたのに……」
「ち、ちちちちげーよ!?確かにちょっと可愛くて料理が上手で話せばわかるやつだとは思ってるけど……」
「全部褒めてるよい」
仲良くなれたと思ったらそうじゃなかったのかと私があからさまにシュンとすると大慌てになったペローナさんはツンデレっぽい感じで言い訳を繰り広げるが、最終的に真っ赤になって湯気をあげてしまった。やだー、ペローナさん可愛い~~とハグをすると遠慮がちに抱きしめ返してくれる。むふふ、敵対していたとは思えないね。お友達!
なんだかんだ言って女の子同士だもん、話題さえあればいつの間にか急接近してお友達にだってなれるもんねー。とお腹いっぱいになった私たちがいちゃついているとマルコさんが腕につけてる記録指針を見て声をあげた。溜まってる、ってことは記録指針が次の島を指したのか。ということは……
「記録が溜まったんで俺らは次の島に行くよい」
「世話んなったな鷹の目。うちの弟の船員を頼む」
「えーーっ!ユウリお前行っちまうのか!?」
「そうか……お前の目的もあるだろうしな。ルフィの無事を教えてくれたのは感謝してる」
思い立ったが吉日、というのが私の旅の醍醐味なんだけど結構急だな……折角ゾロさんと会えたのに。でもやっぱり、私の残りの手持ちが心配なので別の島に探しに行くのは大事だと思う。結局、手掛かりなんてほとんどないんだけどね。不思議な動物の噂とかが立ったらその島に行くんだけどなー。ニュース・クーが落とす新聞にもそういった話はない、というか未だ戦争の時の話だ。
まあ、私はエースさんが東の海にあるという故郷を目指して行くのにくっついているだけなので、ついでに修行をつけてもらえてる時点で万々歳なわけです。しかし、ポケモンでも覇気は習得できるっていう事実を知れたのが今の一番の収穫かなあ。カイリューもそうだけど、見取り稽古みたいな形で武装色を習得しちゃったザシアンも!私は誇りに思うよ!
「ユウリ、提案だが……ザシアンを置いていかないか?」
「ウルォン」
「ザシアンを、ですか?むー……ザシアンはどうしたい?」
この1週間何度もザシアンと模擬戦というか戦争みたいな剣戟戦を繰り広げていたミホークさんが、ザシアンを置いて行けというのだ。むむぅ、メタグロスに引き続き……分かってるんだ。寂しさはあるんだけど、ザシアンがどうしたら強くなれるのか、伝説のポケモンというある意味で極みにいるザシアンの剣をまともに受けて尚上回るこの人じゃないと、ザシアンを本当の意味で強くすることはできないと。
ザシアンの目の前にある分厚くて大きな壁をぶち壊すにはそれくらい過激なことをしないといけないと、私でも思うのだから。きっとザシアンも同じ気持ちだよね。事態の推移を見守っていたザシアンに目を向けると彼女は私に駆け寄ってきて、覆いかぶさるように抱き着いてきた。押し倒された私は、いまだかつてないくらいに激しくスキンシップを取ってくるザシアンの意を察することができた。
「ザシアンを、強くしてくれますか?」
「約束しよう。ロロノアと同じ高みへ、必ず連れて行く」
「ザシアン、頑張れる?」
「ヴォフッ!」
頑張れる?だなんて聞かないでも分かるようなことなんだけどね。寂しいなあ、それでもみんな、強くなりたいのだから。新世界の荒波を進むために。私もザシアンに負けないように早く残りの子たちを見つけなきゃ。ザシアンに開放してもらって私はゾロさんに腰からザシアンのボールを手渡す。ゾロさんは神妙な顔で受け取ってくれた。
「……無くさないでくださいよ?」
「失くすか!2年後、シャボンディで必ず返す。約束だ」
「はい、約束です。ペローナさん!」
「な、なんだ!?」
「お別れなので、お友達の印にこれをどうぞ。きっと、役に立ちます」
「お、おお~~~!なんかおどろおどろしいお札!大事にする!」
約束、とゾロさんが言ったので私は小指を差し出す。ゾロさんはしょうがねえなという顔をしていたけど、しっかりと小指を絡めてくれた。1週間で仲良くなったペローナさんにも餞別ということでのろいのおふだをプレゼントする。人にプレゼントするのにそれはどうなのという感じだけど、ペローナさんの技の大部分はきっとゴーストタイプに準ずるのでこれは役に立つはずだ。実際めっちゃ喜んでるし。
でもなー、役に立つとはいえのろいのおふだ……なんか私が嫌だ!渡しておいてなんだけども!というわけでもう一つ!きのみの詰め合わせセットを渡しておこう!ふかふかの土に埋めれば遅くても四日で実がなって、美味しく食べられて尚且つお料理にも役に立ち!あと美容にもいい!オレンパックとか割とポピュラーですよ?どうぞ!
「
「ああ、つってもここから行ける島は分かんねえんだけどな」
「……海域的に前の海は冬島だが……この針に従っていくのがいいだろう」
「なんでだ?」
「その針の行き先はバルジモア、ベガパンクの故郷だ。ここ最近妙な噂を耳に挟んでな」
ベガパンクって確か……あのくまの贋物こと人間兵器パシフィスタを作ったりだとか、いろいろやってるマッドサイエンティストなんだっけ?怖いなー、私の手持ちが捕まってなんかされてたら……許せないな!うん!今度こそ本格的に手持ち救出ののちに島ごとぶっ飛ばしてやる。まあ、いない人の罪をでっちあげちゃいけないよね。確証持てるまではちゃんとしないと。
「妙な噂ですか?」
「バルジモアの悪夢といってな……昨日の新聞の見出しだ。ベガパンクが幼少を過ごした廃研究所が突如として爆発した。それに伴って、燃える獣が目撃されたのだという」
「燃える獣……どうしよう、心当たりがありすぎる」
「んじゃあ次はそこだな!」
からからと笑うエースさんに反して私の心は波立っていた。燃える獣、そして爆発……思いつくのはほのおタイプの中でもギャロップやマグカルゴ、コータスといった子たちなんだけど……私の手持ちの中にシャンデラ以外の純ほのおタイプはいないんだ。野生の子、もしくは伝説のポケモンかもしれない。うーん、空のボールはあるんだけど仮に野生の子だったらめんどくさいぞ!?だって、私のポケモン以外がここに居るってことになって、その子たちを回収しないといけなくなる!
責任が重くなっていくよお……野生の子なら残していってもいいかもしれないんだけど、仲間と会えなくなっちゃうのはかわいそうだし……うーん、誰が何を思って私をこの海に放り込んだんだろう……?バルジモアの燃える霊獣伝説!?と銘打たれた記事の見出しを見ながら私は気が遠くなっていくのを感じた。むむー……。
「食料は、倉庫から持っていくがいい」
「気前がいいな、鷹の目」
「2年は退屈せずに済みそうだからな。まあ、息災でいろ」
「ザシアーン!ゾロさーん!元気で―!ミホークさんにペローナさんも!」
「ああ、2年後にシャボンディでな」
「このお札大切にするからなー!モリア様にあったら教えてくれー!」
「強くなるがいい」
「ウルォォォォォン!」
ザシアンの遠吠えに見送られて私たちに小さな船は出港する。少しだけ軽くなった腰に寂しさを覚えないこともないけれど、ゾロさんが一緒なんだから大丈夫。そういえばゾロさんは壊滅的な方向音痴らしいのだけれどそれもザシアンがいれば大丈夫。迷うことなくきっと2年後にシャボンディ諸島まで来てくれるはずだ。そう信じて私は自分の手持ちを彼に託したのだから。
目的は冬の気候のバルジモア!燃える霊獣の調査だ!甲板で何とか武装色を纏おうとするカイリューに抱き着きながら、私は懐中時計を開けて、記録指針の一本を確認するのだった。
ザシアン、離脱。そして燃える獣を求めてバルジモアへ!というわけでこんな感じで3D2Yは進めて行こうと思います。ではまた次回に