カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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霊獣と私と真実

「それでさゴリラくん、聞きたいことがあるんだけど?」

 

「ウホッ……」

 

「なんか……可哀想になってきたな」

 

「ちょっと私が酷いことしてるみたいじゃないですか!」

 

「実際ぶん殴った上でヤキ入れてるよい」

 

 ゴリラくんの顔をしたから覗き見る私と冷や汗だらだらのゴリラくんを見てエースさんが気の毒そうな顔をする。ちょっと!私は一応防衛行動をしただけであって害する気持ちはないんですからね!先制はしたけども!手を出そうとしたのはあっち!マルコさんのぼやきのとおり確かにぶん殴った上でおいジャンプしろよまだ持ってんじゃねえかみたいなことしてるけども!

 

 とりあえずゴリラくんがジェスチャーで伝えてくれることには、燃える霊獣に心当たりがあってベガパンクの爆発した研究所の中のサイボーグアニマル達とは無関係の何からしい。それで、なんで私たちの前にこのゴリラくんが現れたのかというとなんとこのゴリラくんはここら辺のサイボーグアニマル達のまとめ役兼守護者みたいな役割で、怪しい私たちが恩人のベガパンクの思い出の場所に近づかないよう警告しに来たらしい。なるほど

 

「ベガパンクのことには全く興味ないんだけど、その燃える虎ってやつの行き先知らない?」

 

「ウホウホ、ホキャホキャ」

 

「ふんふん、よくわからないけど爆発で開いた洞窟っぽい場所に入っていくのを見た子がいると。そこ案内してもらえないかな?ほら、これあげるから」

 

「うっほー!」

 

「バナナで釣れやがった……というかエース、何言ってるか伝わるかアレ?」

 

「わっかんねえ。ユウリはよくわかるな」

 

 ルフィさんとかなら伝わりそうなんだけどなこのジェスチャー会話。どうやらエースさんは文明に触れすぎた結果野生を忘れたらしい。かといって私が非文明の人間というわけではなく、ポケモン相手にしてると観察力と理解力が磨かれるんですよ。あとこれバナナじゃなくてナナの実だよ?ホラー、好物でショー?なんてね。ジェスチャー見れば大体何言いたいのかくらいはわかるよ。というかなまじ改造動物だけあって頭がいいから分かりやすいね。

 

 傷薬をスプレーしてあげるとパンパンに張っていたほっぺは元に戻り、ゴリラくんはナナの実を美味しそうに一口で頬張った後こっちに来いと手招きしてナックルウォーキングで先に進んでいく。なんだ話せばわかるじゃん、殴ってごめんね。

 

 

 

「ウホウホ、ウキ」

 

「あ、ここ?穴……塞がってるのかな?」

 

「凍り付いてるな……エース溶かしてくれ」

 

「おう!離れてろよ……おらっ!」

 

 じゅわああああああっ!と氷を一瞬で沸騰させたエースさんの火力のおかげで目の前の氷の壁は一瞬で消えうせた。ゴリラくんの案内の元登山をして私たちは切り立った崖の中腹にやってきた。雪が降り積もってて足跡も、においも何も分からないんだけど、その場所だけ変に雪が新しくて違和感バリバリだった。それはビンゴで、エースさんの炎で熔けた氷の先にはぽっかりと人工的な洞穴が姿を現したのだ。

 

 案内したからここで、と帰るゴリラくんにナナの実をもう一つ上げてから私たちは中に入る。古びてはいるけどこの世界に来て初めてかなりの機械的な施設を私は目にする。まるでカロスのボール工場のようだ。うーん、やっぱりこの世界ちぐはぐだね、いろんな意味で。科学技術はあるのに妙に原始的でアンバランスだなあ。

 

「っ!何かいるぞ」

 

「この部屋ですね……」

 

「まどろっこしいな!ほいっ!」

 

 寒々しい明りの無い廊下を、デンリュウが発光することでその明かりを頼りに進んでいく私たち、すると一つの扉の先でなんだか何かを組み立てるような音がするのが聞こえる。それに気づいたマルコさんとエースさんはエースさんを先頭にして鉄製っぽいけど頑丈なのに軽いという矛盾を孕んだ扉を蹴破る。蹴破った先の人物に私は悲鳴を上げた。

 

「にゃああああっ!?変態さん!?」

 

「アウ!嬉しいこと言ってくれんじゃねえかってお前ユウリか!?何でこんなところに!?」

 

「虎の敷物被った焦げ付いた変態さんに知り合いなんていませんっ!」

 

「メェ、メェ~~」

 

「えっ!?うそフランキーさん!?」

 

 部屋の中にいたのは、真っ黒こげだけど虎と分かる敷物を羽織って何やら火花を立てていろいろやっているブーメランパンツを輝かせた変態さんの姿だった。私が悲鳴を上げたせいで戦闘態勢に入っちゃったマルコさんとエースさんをよそに、デンリュウがおっ!久しぶり~みたいなノリで手をあげるからよくよく見てみたら、声がフランキーさんだった。何事!?というかなぜここに!?

 

「おう!オレぁ泣く子も黙る改造人間(サイボーグ)!フランキー様だぜ~~~!ん~~~~スーパー!」

 

「そのポーズは確かにフランキーさん!いや、びっくりしました……人相がだいぶ変わっちゃってるから気づけなくて」

 

「まぁな!色々あって前の方ぶっ壊れちまってなぁ……暫くここに居ることにしたってわけよ!お前も無事でよかったぜユウリ!しかもお前何大物引き連れてきてんだって話だ!」

 

「初めましてだな、弟が世話んなってる。ポートガス・D・エースだ。こんなところでよく生きてたな」

 

「マルコだ。しかしなんだ、麦わらの所の一味にまた会えるとはな。海賊狩りに続いてな」

 

 フランキーさんもしかしてエースさんとマルコさんのこと知ってるのかな?知ってて当然なのか二人とも世界最強の海賊団の隊長張っていた人だし。エースさんに至っては完全に渦中の人だ。うんうん、しかしホントに何があったんだフランキーさんは。こっち向いた顔が怖い、機械むき出しの髑髏かつ黒焦げで真っ黒黒、それにところどころショートしてるのか配線がきれたり火花が散ったりしてる。むしろそれで生きていると言えるのだろうか?

 

 怖いのは慣れっこなのでまあフランキーさんとわかれば余裕なんだけど、子供泣くよこの形相だと。目がぎょろぎょろ動いて、焦げた髪の毛が癒着したりしてて。でも、フランキーさんだ!と私は駆け寄って彼に思いっきり抱き着く。いつも近くにいるとするコーラの匂いはしないけど、受け止め方はフランキーさんそのものだった。煤で汚れた私が服をはたいているとマルコさんが言いにくそうに話しを進めた。

 

「なあおいお前さん、それどうしたんだ?」

 

「ああ、なんかこの島に飛ばされた後の話なんだけどよ。ベガパンクの研究所の中にあったでっけぇ海賊マークのボタンを押したら大爆発が起こってな」

 

「ってことはベガパンクの研究所が爆発したのはお前のせいかよい!?」

 

「自爆スイッチがあるってのは聞いてたんだがな……もしそれ押しちまったとしたらそれって俺のせいか?」

 

「まごうことなくお前のせいだろ。はー、ルフィの仲間は楽しいやつらだな」

 

「褒めるなよ、照れるだろ」

 

「半分呆れてますよ」

 

 なははと笑い声をあげるフランキーさんに私たちは脱力する。だって、海軍側じゃ人類の至宝とも呼ばれるドクターベガパンクのまだ実現していない研究が眠っている研究所にある自爆スイッチをおして大爆発させた挙句こんなところまで逃げ込んでいるだなんて。それでも無事?なのかどうなのかは分からないけれど五体満足で会えてよかった。ちょっと瞳が潤んじゃう。

 

 というかなんで自爆スイッチなんてもんが研究所にあるんだ?しかも不用意に触れた時点で即爆破するような物凄く危険なものが。逆に良く死ななかったなフランキーさんは、と私は感心して彼の上から下までを眺める。んん?まって、えーと虎の敷物、焦げている、この近くで叫んで走り回ってた……まさか!?

 

「フランキーさん、いくつか質問しても?」

 

「ああ、どんとこい!」

 

「その敷物、いつから着ていました?」

 

「あー、爆発の後むき出しの顔面がこえーっていうもんで被ったんだ。まだまし、らしい」

 

「ふむ、それ最初から焦げてました?」

 

「あ?あー、暖炉に火を入れたら燃え移っちまってなあ」

 

「もしかして火が付いた後外を叫んで駆けまわりました?」

 

「そりゃー熱いし、パニックになるし消火は出来ねえしで雪ン中走り回ったぜ」

 

「なるほど、マルコさんエースさん、バルジモアの霊獣さんです。写真撮影をどうぞ」

 

 いくつか質問をして確信を持った私はフランキーさんこそがバルジモアの燃える霊獣ということを完全に確信して指をさす。あ?と首を傾げたフランキーさんをよそに私たちは肩をがっくりと落とす。も~~~!変に色々心配しちゃったじゃん!野生の子がきちゃってるのかなとか、私を見守っている伝説のポケモンが増えたのかなとか!それが、海賊団の仲間だったなんて!良かったのかよくなかったのか分かんないよもう!ふへ~~~……

 

「次は俺に質問させてくれ、ルフィは無事なのか?今何やってる?」

 

「ルフィさんは無事ですよ。新聞を通じてメッセージは伝わってますか?」

 

「ああ、2年後っつーはなしだろ?だから俺はここに居るわけよ」

 

「はい。ルフィさんも強くなるためにレイリーさんに鍛えられてます。私は、残りの友達を見つける為に偉大なる航路(グランドライン)を遡ってます。エースさんとマルコさんが協力してくれてて」

 

 なるほどな、とフランキーさんは唸る。イヤしかし、こんな風に一味の仲間に会えるだなんて思ってもみなかった。ゾロさんもそうなんだけど、やっぱりみんな「持っている」のだろう。私ももしかしたらそうなのかもしれない。何かの運命の糸のようなもので繋がっているのかも、だなんて冗談でも言えたらなあ。そういうことできそうなポケモン、いるし……。

 

 そういえばお前が仲間に入った理由も、友達を探すためだったかとフランキーさんはさび付いた機械みたいな音を出して頷く。自分で自分を改造したサイボーグだっていうことは聞いてはいたけれど、どうやったんだろうか?しかも、技術水準がぶっ飛んでいるくらいには数世代先だし。というか燃料がコーラっておかしくない?やっぱりみんなすごいのかもしれない。

 

「んで、ここ何なんだよい?」

 

「ん、ああここはベガパンクの研究所だ。爆発したほうが第一ならこっちは第二ってところだろうな」

 

「なんで分けたんだ?」

 

「ここにゃ、表に出せない研究がわんさかある。いわゆる「兵器的」な研究だ。爆発したほうは比較的クリーンな研究が置いてあったんだろ。俺が見てぇのはむしろこっちだな」

 

 なるほど、こんな切り立ったおかしな場所にあるから何なんだろうと思ってたらこっちもベガパンクの研究所だったんだ!しかし、動物を改造してサイボーグ化するっていう結構おぞましいことをしておいてまだ表に出せる類の研究所だったんだ……。じゃあここで研究されてたのってどれだけ恐ろしいものなんだろう……?毒ガスとか、核爆弾とかだったりしないよね!?

 

「ユウリが考えてる研究とはちょっとちげえぞ。図面を見る限りここにあるのはレーザービーム、合金、合体機構……ベガパンクってやつはとんでもねえロマンチストだったらしい」

 

「合体、ですか?」

 

「ああ、合体ロボ、だ」

 

「なんだそりゃイカスじゃねえか!」

 

 フランキーさんの説明で示された図面を見ると、私には理解できない言語と数式がずらずら書いてあったけど、示されている絵は合体をして立つ二足歩行のロボットぽいものだった。なんか、やべーマッドサイエンティストっていうベガパンクのイメージがちょっとだけ愉快なものに置き換わってしまった。エースさんも合体ロボというものには興味があるのか瞳を輝かせている。マルコさんも気になるらしい。

 

「だが、ま……これを実現するにゃまだまだ時間がかかるし、この研究所じゃ無理だろうな」

 

「あ?ここはベガパンクの研究所だったんだろ?何でこの場所がダメなんだ?」

 

「そりゃあ単純さ、ここにある機械は全部動かねえ。エネルギーが不足してるんだよ。暖房一つかからん。生きてはいるんだけどな」

 

 ああ、なるほど。そういえばデンリュウが真昼間のごとく明るくしてくれているからあまり気にしてはいなかったんだけどそういえばこの場所明り一つないし、真っ暗だし、しかも機械も全く動いてない。それも当たり前の話で、そもそもここは故郷を出て行ったベガパンクが放棄した研究所ですべてがそっくりそのままになっていれどもとっくの昔に何もない状態だったんだ。そりゃ動かない。

 

「一応エネルギー源はでんきだし、大型の貯蔵バッテリーも見つけた。とりあえずはそれを満タンにすることから考えねえと」

 

「え、電気なんですか?」

 

「おうよ。どうやら雷からエネルギーを受け取る構造らしいが、肝心の雨雲発生装置が見当たらねえ。発電機を作らねえといかんが、今はその材料すらことかいてやがる」

 

 なるほど、電気。それならば適任が目の前にいるじゃないか!デンリュウがパッと光を強めて胸をドン!と叩く。電気が必要ならば、この子に任せればいい。雷なんて目じゃない発電量だよ!フランキーさん!案内して!

 

 




 残念だったなユウリちゃん!いたのはポケモンじゃなく自他共に認める変態船大工だったのさ!しょうがないね。
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